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2011年9月

2011年9月30日 (金)

シナリオ 春の風景(第一話) 異動

≪脚色≫

      春の風景Photo_2
 
     
(第一話)異動
 
   登場人物
   湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   湧水道子  ・・母 (主  婦)[32]
   湧水正也  ・・長男(小学生)[8]  

   その他   ・・猫のタマ、犬のポチ

○ 台所 朝
   食卓テーブルを囲み朝食中の家族四人。
  道子  「あなた、どうなの?」
  恭一  「どうなのって?」
  道子  「異動よ、異動。決まってるでしょ」
  恭一  「なに云ってる。全然、決まってない(話題にするな、と云わんばかりに)」
   二人、黙ってしまう。恭之介は夫婦間の雰囲気を察知したのか、話さない。正也も同様。
  正也M「朝から夫婦間の雲行きが誠に宜しくなく、じいちゃんも黙々と食べているだけで、ひ
と言も話そうとはしない。じいちゃんの場合は、黙々にモグモグを含んでいる」

○ メインタイトル
   「春の風景」

○ 
サブタイトル
   「
(第一話) 異動」

○ 玄関 内 朝
   朝日がサッシ戸に当たる快晴の朝。恭一が出勤しようとしている。框(かまち)を下りる恭一。
鞄を渡す道子。
  恭一  「じゃあ、行ってくる」
   靴を履こうとしている恭一を追い越し、バタバタと正也が出てきて靴を履く。ポチの頭を撫で
る正也。ポチがクゥ~ンと愛想よく鳴く。
   玄関を出る正也。
  道子  「いってらっしゃい。車に気をつけてね!!」  
  恭一  「ああ、そんなこたぁ、分かってる!(道子の言葉を煙たそうに聞き、靴を履く)」
  道子  「あなたに云ったんじゃないわよっ…。正也っ!(少し、膨れて)」 
  恭一  「…!(返さず、黙って家を出る)」 

○  同  外 朝 
   玄関から家を出て行く恭一。膨らみ始めた木枝の蕾。
  正也M「いよいよ厳しかった冬の寒さから僕達を解き放つ春の鼓動が聞こえ始めた。僕は小学校へ一生懸命、通っている。父さんも一
生懸命? いや、これに関しては僕の方が長けているとは思うのだが、兎も角、会社へ
日々、通っている」
   青空(朝日)。
   O.L


○ 玄関 外 朝
   O.L
   青空(西日)。
   下校し、帰宅した正也。玄関を開ける正也。


○ 玄関 昼
   玄関を入る正也。
  正也  「ただいまっ!」
   足早に台所から玄関へ出てきて、正也に手招きする恭之介。
  正也M「学校を終えて家へ帰ると、珍しくじいちゃんが玄関へ現れ、招き猫のように僕を手招
きした」
   怪訝な表情で靴を脱ぎ、框を上がる正也。手招きする恭之介に従い、廊下を歩く正也。
  恭之介「正也、恭一には暫(しばら)くつまらん話はするな。奴は浮き足だっている…」
  正也  「…? うん!(訳が分からず、素直に可愛く)」


○ 居間 夜
   庭が見える縁側の廊下で座布団を敷き将棋を指す恭之介と恭一。長椅子(ソファー)に座り、二人の様子を眺める正也。控え目に王手を指す恭
一。し考え、禿げ頭に手をやり、困り顔でこねくり回す恭之介。居間へ入ったタマが正也の膝
に乗り、ニャ~と鳴く。
  恭之介「いや、参った。お前、腕を上げたな(盤面を見た姿勢のまま、老眼鏡の眼鏡越しに恭
一を見て)」
  恭一  「ははは…、まぐれですよ(陽気に小笑いして)」
  正也M「たぶん、じいちゃんは将棋を態(わざ)と負けたに違いないのだが、父さんは仏頂
(づら)を崩して素直に喜んでいる。じいちゃんも、いいところがあるなあ…と、僕は二人の様子を覗きながら、ふと、そう思った」
   盤面を見る姿勢から、急に姿勢を正し、恭一を正視する恭之介。
  恭之介「こういう風に、会社でも、ピカッ! と光る存在になれ(やや強い口調で)」
  恭一  「はいっ!(笑顔から、突然、素に戻って)」
  正也M「じいちゃんの物言いは、いつも、ひと言が多い(諦め口調で)」


○ エンド・ロール
   また、次の一局を指し始めた二人。何やら語り合う姿。
   テーマ音楽
   キャスト、スタッフなど
   F.O


 ※ 短編小説を脚色したものです。小説は、「春の風景(第一話) 異動」 をお読み下さい。

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2011年9月29日 (木)

シナリオ 冬の風景 特別編(下)禍福は糾(あざな)える縄(2)

 ≪脚色≫

      冬の風景

  別編(下)禍福は糾(あざな)える縄(2) 
  

    登場人物
   湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   湧水道子  ・・母 (主  婦)[32]
   湧水正也  ・・長男(小学生)[8]
   その他   ・・叔母、従兄弟

○ (回想) 勉強部屋 夕方
   従兄弟とフィギュアを手に遊ぶ正也と従兄弟。和気あいあいの語らい。上がる二人の笑声。
  正也M「(◇)同伴の従兄弟と楽しく遊べる時間も出来たりして、今年の冬休みは、例年より好調に推移していくように思われた(×へ続けて読む)」

○ (回想) 玄関(外)
   送り出す家族四人。挨拶をして帰る叔母と従兄弟。
  正也M「(×)ところが、である。叔母や従兄弟が一泊して慌しく帰った後、また悪いことが派生しようとしていた」


○ (回想) 台所 昼
   食卓テーブルで入れ歯を外し、いじくる恭之介。不機嫌な顔。隣から様子を窺う正也。
  正也  「じいちゃん、どうしたの?」
  恭之介「ん? いや、どうもありゃせん…(不機嫌に)」
  正也  「…」
  正也M「入れ歯の不具合により、じいちゃんのテンションが低いのに加えて(△に続けて読む)」

○ (回想) 夫婦部屋 昼
   ベッド上。氷枕を頭に乗せて寝込んでいる恭一。傍らに道子が体温計を手に立つ。
  正也M「(△)今度は父さんが流行りのインフルエンザでダウンしたのである。幸い、休日診療所なるものがあって事無きを得たのだが、ふたたび散々な、お正月へと逆戻りしてしまった」
   体温計の温度を見る道子。
  道子  「もう、大丈夫! 微熱に下がったわ」
  恭一  「…そうかぁ?(薄眼を開け、疑い顔で)」

○ 居間 昼
   賀状と一通の封書を手に立つ道子。
  正也M「今年の冬休み、結局、ローテンションで終わるのか…と、僕が諦(あきら)めた矢先である」
  道子  「あらっ? お父さま宛だわ。…何かしら?」
   怪訝な表情で封を切る道子。某会社からの旅行招待券、案内状、パンフレット。読み終えた後、喜色満面になる道子。道子の嬌声。驚いて駆け寄る恭之介。充分に話せない口で、フガフガと道子へ何やら語りながら喜びを露にする恭之介。
  正也M「じいちゃんが応募したクイズが当選し、五泊六日の海外旅行に二名様を、という豪華な通知のパンフレットが同封されていた。父さんも、風邪でベッドに横たわりながら、その報に接し、元気を取り戻したようだった」

○ 離れ 夜
   稽古用広間で居合いの形(かた)を示す恭之介。その様子を見守る正也。
  正也M「しかし、また、ひとつの問題が生じた 二名…、さて誰が行くんだ? ということである。僕は一計を案じることにした」
  正也  「父さんと母さん、旅行したことって余りないし…。じいちゃん、どう思う?」
  恭之介「フガ? フガフガ…。フガガ、フガフガフガ」
  正也M「解説すれば、じいちゃんは抜け歯語で、『ん? そうだな…。わしは、どうでもいい』と云ったのだ」

○ 台所 朝
   朝食風景。和気あいあいの家族四人。
  正也M「その努力の結果は、すぐに現れた。冬休みも残り僅かになった頃、僕の家の食事風景は、ふたたび活況を呈しだしたのである。じいちゃんだけは、相変わらずフガフガとテンションが低いけれど、それでも、入れ歯を歯医者へ持ってった結果、すぐ修理できるそうで、以前よりは明朗さを取り戻しつつあった。よく考えれば、“禍福は糾(あざな)える縄のごとし”…で終始した冬休みだった。まあ、“終り良ければ、全て良し”とも云うから、父さんと母さんが海外旅行できるようになった、という素晴らしい結果などを踏まえて、良し!! ということにしたい」

○ エンド・ロール
   冬の湧水家の畑。湧水家の全景。
   テーマ音楽
   キャスト、スタッフなど
   F.O


※ 短編小説を脚色したものです。小説は、短編小説 冬の風景☆特別編(下)」をお読み下さい。

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2011年9月28日 (水)

シナリオ 冬の風景 特別編(下)禍福は糾[あざな]える縄(1)

 ≪脚色≫

      冬の風景

   
特別編(下)禍福は糾[あざな]える縄(1)  


    登場人物
   湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   湧水道子  ・・母 (主  婦)[32]
   湧水正也  ・・長男(小学生)[8]

 台所 夜
   鳴る除夜の鐘。食卓テーブルを囲み年越し蕎麦を啜る家族四人。テレビが映す年越しの中継。撞かれる除夜の鐘の音。
  正也M「年が暮れようとしている。除夜の鐘が静寂を破ってグォ~~ンと撞かれる。人間が持つ百八つの煩悩とは、いったい何なのか…。小難しいことは僕には分からない。それでも煩悩を抱く人間感情を洗い清める鐘の音だとは理解できる。ただし、明日以降に頂戴できるであろうお年玉の総額を頭の中で勘定している僕などには、遠い悟りの世界のように思えてならないのだが…」

○ メインタイトル
   「冬の風景」

○ 
サブタイトル
   「特別編
(下) 禍福は糾[あざな]える縄」

○ 台所 夜
   食卓テーブルを囲む四人。
  恭一  「今年の蕎麦は、なんかグルメだな…」
  道子  「そんな訳でもないんだけど…。料理番組の受け売りよ。どう? 美味しい?(恭一に美味いと云わせよう…という気持ちで)」
  恭一  「ん? ああ…。まあな」
   無言で食べる恭之介と正也。恭之介を見る道子。
  道子  「お父さまは、どうです?」
  恭之介「こりゃ、知らない味だ…。なかなか美味いですよ、道子さん(少しヨイショぎみに)」
  道子  「そうですか?…(言葉で謙遜し、外づらはニタリと、まんざらでもなさそうに微笑んで)」
   道子の様子を垣間見る正也。美味そうに啜り続ける四人。
  正也M「後日、母さんに、そのレシピを聞くと、葱と鶏肉を胡麻油で軽く炒めるのがポイントだそうで、そこへ市販の麺つゆを濃いめに入れ、砂糖で少し甘味のある出汁(だし)に纏めるのが、いいらしい。僕も確かに美味しいと思ったし、例年だと残る蕎麦が全く無くなったことを思えば、今年の蕎麦が好評を博したことは語る迄もないだろう」
   美味そうに啜り続ける四人。

○ 居間 朝
   新年の賀を祝う家族四人の食事風景。長椅子を囲む四人。おせち、のお重。屠蘇、燗酒の銚子、雑煮の入った椀。ジュース入りのコ
   ップ。オードブルの馳走などが所狭しと並ぶ。紋付き袴姿の恭之介。着物姿の三人。
  正也M「凧揚げ、独楽(こま)回し、羽根つき、カルタ取りなどを楽しむ、といった世相ではなくなったけれど、それでも、お年玉を戴けるという慣習は現代も残っているから、僕達にとっては誠に有り難い」
   美味そうに雑煮を食べる四人。咀嚼中、急に食べるのを止め、入れ歯を外す恭之介。
  恭之介「し、しまった!・・儂(わし)と、したことが…。お前が、つまらんことで笑わすからだっ!(急に怒り出し)」
  恭一  「どうも、すみません…」
  道子  「お父さま。お正月ですから…」
  恭之介「あっ! そうでした。すまんかった、恭一」
  恭一  「いえ…」
   入れ歯を外したまま、ふたたび、フガフガと食べ続ける恭之介。あとに続く三人。   
  正也M「正月ということもあり、歯医者は休業中であったから、じいちゃんは仕方なく、不調の入れ歯を口から外し、フガフガモグモグと、数日はやっていた。だから、いつもの精悍さは、どこか影を潜めているように僕には思えた」

○ 子供部屋 夕方
   机横の畳で胡坐の正也。十数枚のお年玉袋。したり顔で、お年玉袋から出したお年玉の額を数える正也。
  正也M「悪いことがあれば、いいこともあるものだ。二日目、三日目と過ぎると、お年玉のトータル額は昨年の倍増という営業実績を示すに至り、僕としては、ラッキーな結果となった(◎に続けて読む)」

○ (フラッシュ) 居間 昼
   馳走が置かれた長机上。長机を囲み歓談する叔母、従兄弟と家族四人。
  正也M「(◎)加えて、叔母さんが帰ってきて、(◇に続けて読む)」


                           (明日へつづく)

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2011年9月27日 (火)

シナリオ 冬の風景 特別編(上)いつもの癖(2)

 ≪脚色≫

      冬の風景
 
      
特別編(上)いつもの癖(2) 

 
   登場人物
   湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   湧水道子  ・・母 (主  婦)[32]
   湧水正也  ・・長男(小学生)[8]

○ 台所 朝
   朝食後。一人、恭一だけがテーブルの椅子に座り、新聞を読んでいる。
  正也M「(◎)しかし、このお灸の効果も一過性のもので、長続きしないのが玉にキズだった。今朝も、そのようで、食後、続きを読み始めた父さんは、母さんに時間を云われるまで、新聞紙面に釘づけ状態だった」
   炊事場で洗い物を済ませ、ふと、恭一を見る道子。
  道子  「あなたっ! 遅れるわよ」
   腕時計を見て、慌てふためいて軽くお茶を飲み、立つと上着を持つ恭一。バタバタと玄関へ急ぐ恭一。
  正也M「こんな親を父親に持った僕は、身の不運を嘆くしかないのだろうか」

○ (フラッシュ) 街の歳末風景 夜
   閑静な田舎街の夜景。うらぶれた街頭のイルミネーション。オレンジの一色灯で点滅しない。とぼとぼと歩く正也と恭一。立ち止まり、イルミネーションを見上げる二人。溜息をつき、ふたたび歩きだす二人。逆V型に垂れ下がり、クリスマスツリーを想像させるだけの華やいだ雰囲気がないイルミネーション。
  正也M「クリスマスのイルミネーションが都会
ほどではないにしろ、僕の街にも輝き始めた。しかしそれは、都会のそれと比較できるほど、きらびやかなものではない。それは一色のみで、しかも点滅などはせず、加えて、垂れ下がっているというだけの…ただ、それだけのものなのである(△に続けて読む)」

○ 子供部屋 昼
   机椅子に座り、勉強するでなく、ぽつねんと物想いに耽る正也。声のみで正也を呼ぶ道子。
  [道子]「正也~! 正也~!」
  正也M「(△)そんな悠長なことを詳しく報告している場合ではない。というのも、先ほどから母さんが呼ぶ声が五月蝿いのだその声は、次第にトーンを上げつつある。実は、年末の大掃除を手伝えと彼女は命じているのだ。母さんの機嫌が損なわれない内に、僕は手伝いをしようと思う。だから、今日のところは、少し短くなったけれど、これまでにしたい」
   机に両手を突き、顔を伏せる正也。道子の呼ぶ声。

○ エンド・ロール
   大掃除をする恭之介と道子。手伝う正也。
   テーマ音楽
   キャスト、スタッフなど
   F.O


※ 短編小説を脚色したものです。小説は、「短編小説 冬の風景☆特別編(上)」をお読み下さい。

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2011年9月26日 (月)

シナリオ 冬の風景 特別編(上)いつもの癖(1)

 ≪脚色≫

      冬の風景

       
特別編(上)いつもの癖(1) 
 
 
   登場人物
   湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   湧水道子  ・・母 (主  婦)[32]
   湧水正也  ・・長男(小学生)[8]
   その他    ・・猫のタマ、犬のポチ

○ (フラッシュ) 子供部屋 早朝
   布団で眠る正也。目覚ましの音。うつつで目覚ましを止める正也。ふたたび眠る正也。恭之介の寒稽古の声。飛び起きる正也。また布団にもぐりこむ正也。

○ (フラッシュ) 台所 早朝
   片隅に置かれた猫用ボックスの中で熟睡するタマ。恭之介の寒稽古の声に飛び起きるタマ。

○ (フラッシュ) 玄関 内 早朝
   犬小屋の中で熟睡するポチ。恭之介の寒稽古の声に飛び起きるポチ。

○ 子供部屋 早朝
   恭之介の掛け声で眠れず、仕方なく起きだし、窓から庭の稽古の様子を眺める正也。上半身裸で寒稽古に汗を流す恭之介の姿。エイ~! ヤ~! と、凄まじいばかりの鬼気迫る声が聞こえる。
  正也M「寒くなってきたので、寝起きはどうも時間どおりいかず億劫である。起きるのは目覚ましでなく、いつも決まった時間に始まる、じいちゃんの寒稽古の掛け声によってである」

○ メインタイトル
   「冬の風景」

○ 
サブタイトル
   「特別編(上) いつもの癖」

○ 庭 朝
   ガラス戸を開け、縁側の足継ぎ石から庭へ下りる正也。冬寒の晴れた朝。
  恭之介「おっ! 起きてきたな(ニコッと笑い)」
   上半身に汗が滴り、それを手拭いで拭く恭之介。おはよう!」
  恭之介「ああ、おはよう。明日からは早く起きろよ。稽古だからな(優しく)」
  正也  「うん!(可愛く頷いて)」 
  恭之介「…七時か…。道子さん、もう飯の準備、出来たかな… (縁側の廊下に置いた腕時計を、おもむろに覗き見て、楽しそうに)」

○ 台所 朝
   朝食前。小忙しく炊事場で朝食を準備する道子。食卓テーブルの椅子に座り、ネクタイ姿で呑気に新聞を読む恭一。洗面所から台所へ入る正也。別方向から台所へ入る、赤ら顔でいい風情をした着物姿の恭之介。食卓に着く二人。食器や食べ物を運ぶ道子。テーブルに並べる正也。
  道子「あなた! 御飯ですから!!」
   全く意に介しない恭一。道子の声に驚き、ニャ~と鳴くタマ。
  恭之介「オイッ!!」
   声に一瞬、手をビクッ! と震わせ、恭之介の顔を垣間見る恭一。新聞を置いて読むのをやめる恭一。
  恭之介「いつもの癖だな…。お前のは止(や)まらんなあ、正也の寝起きより、たちが悪い(不平っぽく)」
  正也M「じいちゃんによる父さんへのお灸は効果バツグンだ(◎に続けて読む)」

                          (明日へ続く)

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2011年9月25日 (日)

シナリオ 冬の風景(第十話)みんなの癖

≪脚色≫

      
冬の風景

      
(第十話)みんなの癖                 

    登場人物
   湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   湧水道子  ・・母 (主  婦)[32]
   湧水正也  ・・長男(小学生)[8]
   その他   ・・猫のタマ、犬のポチ

○ 居間 昼
   片隅に置かれた注連飾り、ウラジロ、半紙などの神棚等から下げられた正月もの。それを
新聞紙で包み、括る正也。居間へ入って正也に気づく恭一。チラッと見て、長椅子に座る恭一。
  恭一  「今度こそ、終りか…」
  正也M「じいちゃんが外した注連飾りが部屋の片隅に置かれている。僕はそれを神社へ持っ
ていこうと新聞紙に包み、紐で括りつけていたところだった。そこへ、父さんが通り掛かったという塩梅だ。じいちゃんは幸いにも離れへ行って不在だったから、思わず口から漏れたひと言のように思えた」

○ メインタイトル
   「冬の風景」

○ サブタイトル

   「(第十話) みんなの癖」

○   同  昼
   居間へ入る正也。長椅子に座っている恭一。
  正也  「それじゃ、これから持ってってくる…」
  恭一  「ああ…(新聞を読みながら)」
   正月ものを持って部屋を出る正也。
  正也M「僕は父さんとは違い、主体性と責任感を今後も維持したいから、すぐ家を出た」


○ 渡り廊下 昼
   廊下へ出た正也。離れからやってきた恭之介。二人が鉢合わせ。
  恭之介「おっ、正也。持っていくのか?」
  正也  「うん!」


○ 玄関 内 昼
   玄関の框(かまち)を下り、靴を履く恭之介と正也。ポチが、犬小屋の中から顔だけ出し、ク

   ゥ~ン・・と鳴く。

○ 玄関 外 昼
   玄関を出て歩きだす二人。
  恭之介「よしっ、一緒に行くか。…いやな、儂(わし)も左義長の飾り付けを神主さんに頼まれた
んだ…」
  正也  「ふ~ん、そうなんだ…。父さんは左義長で見たことがないね」
  恭之介「ああ…恭一なあ。あいつは行事には無頓着だ。そのくせ、宴会などはその逆だが
な…。お蔭で、儂が正也に、いつも云ってる安定したヒラだ、ははは…(大笑いしながら)」
   細道を歩き、鎮守の森へと近づく二人。鳥居が見える。
  正也M「確かに、じいちゃんが云うように、父さんの安定感は抜群で、他者の追随を許さな
い」
   鳥居前に来る二人。正面に見える神社の拝殿。


○ 空の太陽の動き(高速撮影)
   昼下がりの位置から西山への日没まで。


○ 玄関 内 朝
   戸を開けて入る正也。ポチが、犬小屋の中から顔だけ出し、クゥ~ンと鳴く。
  正也  「ただいまっ!」
   靴を脱ぎ、小まめに整え、框(かまち)を上がる正也。


○ 居間 朝
   恭之介と道子が談笑している。恭一は黙って新聞を読んでいる。居間へ入る正也。
  正也M「左義長も終って家へ帰ると、じいちゃんが頭を撫で回しながら母さんと談笑してい
た。毛のない頭を撫で回すのは、じいちゃんの癖だ」
  恭之介「道子さんは相変わらず綺麗で、結構結構。恭一は幸せ者です…」
  道子  「あらっ、お父さま、嫌ですわ・・(笑って)」
   二人の会話を聞かなかった態で、台所へ反転して歩く正也。
  正也M「母さんの癖は? と考えれば、そう目立った癖はない。強いて挙げれば、父さんや、
じいちゃんと話す時、『…ですわ』みたいに、少しお上品に語るところだろうか」

○ 台所 朝
   冷蔵庫からジュースを出し、コップへと注ぐ正也。グビッと、ひと口、飲む。タマも、ペロペロ
と水を飲む。
  正也M「『さて、どんじりにぃ控(ひけ)えしはぁ~~』と、じいちゃんに聞いた白浪五人男の口
上のように僕の癖を云うなら、こうして家族のことを観察眼をもって記録し、更にはそれを、皆様方に延々と語るという、何とも嘆かわしいところだろう。だが、語る大方は事実であり、温かな我が家の一コマなので、お許し戴きたいと思う」

○ エンド・ロール
   湧水家の朝食風景。
   テーマ音楽
   キャスト、スタッフなど
   F.O


※ 短編小説を脚色したものです。小説は、「短編小説 冬の風景☆第十話」  をお読み下さい。 
 
 

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2011年9月24日 (土)

シナリオ 冬の風景(第九話)鏡開き

 ≪脚色≫

      冬の風景

      
(第九話)鏡開き  

    登場人物
   湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   湧水道子  ・・母 (主  婦)[32]
   湧水正也  ・・長男(小学生)[8]


 (フラッシュ) とある田舎の畦道 昼
   青空に揚がる凧。凧を揚げる恭之介。横で見る正也。
  正也M「凧も無事に大蛸によって揚げられ、今年も本懐を遂げて事無きを得た(◎に続けて読む)」

○ 居間 昼
   床の間に飾られた鏡餅。
  正也M「(◎)さて、そうなると、次はいよいよ正月のクライマックス、鏡開きとなる」

○ メインタイトル
   「冬の風景」

○ 
サブタイトル
   「
(第九話) 鏡開き」

○   同  夕方
   神棚、床の間、玄関、仏間などに飾られた三方(さんぼう)や、お供えを下げる恭之介が小忙しく動く。座ったまま、黙って見守る正也。着物に襷掛け、袴姿の恭之介。
  恭之介「正也、三方の餅と栗と干し柿を分けてな…」
   云われるまま、集まった三方から、栗、干し柿、餅を分別する正也。
  正也M「じいちゃんの指示で、僕は神棚や仏壇から下げられた供物を分別する労働に従事することとなった。何年もやっているレギュラーだから、手慣れたものだ。瞬く間の手際よさで分別を終えた」
  恭之介「そうそう…。こうしておくと、また、お八つで食えるしなぁ。…餅は、じいちゃんが切る」
  正也  「うん!(可愛く)」
   台所へ包丁と、まな板を取りに行く恭之介。ぽつねんと畳に座る正也。
  正也M「師匠は、ただ切るのではなく、刀で斬るように斬るのだろう。そこへ父さんが、現れなくてもいいのに現れ、つまらないことを口にした」
  恭一  「いやぁ~、終りましたね、正月も…」
  恭之介「ふん! まだ終っとりゃせん。今が最高の見せ場だっ!」
   そそくさと居間を去る恭一。
  正也M「危ない危ない…と、父さんは、じいちゃんの雷が落ちる前に上手く身を翻し、退避した」
  恭之介「あいつは、いつもアアだ…。正也はアアはなるなよ、ムゥ~ッ!!(餅を切りながら)」
   気合い諸共、鏡餅を一刀両断し、返す刃で四つ、八つと包丁で刀のように斬り割る恭之介。
  恭之介「儂(わし)が出来んようになったら、正也、お前が、やれ。恭一はせんだろう…」
  正也  「うん…(可愛く)」
  正也M「餅は、いつも町内の又吉さんの家で搗(つ)いて貰う。又吉さんも大工で世話になっている手前、いつも快(こころよ)く引き受けてくれるので、僕の家は大層、助かっている」
   台所から居間へ様子を見に入り、二人を見下ろす道子。
  道子  「切れたようですわね、お父様…。美味しいお善哉を作りますわ」
  恭之介「ははは…(笑いながら)、アレは美味いですからなあ。楽しみにしとります」
  正也M「父さんのアアと、善哉のアレとでは偉い違いだな…と、僕は思った」
  道子 「頭領には、いつもお世話になって、本当に助かってます…」
  恭之介「又さん、ですか。確かに…」
   畳上の新聞紙の上に置かれた切餅を見る三人。
  正也M「鏡開きは、こうして終結した。切られた、いや、光り輝く頭のじいちゃん侍によって斬られた餅は、焼いたり善哉にされて、その生涯を終えるのである。今年も、じいちゃんの斬れ味は鋭かった」

○ エンド・ロール
   見事に切り分けられた餅の山。
   テーマ音楽
   キャスト、スタッフなど
   F.O


※ 短編小説を脚色したものです。小説は、「短編小説 冬の風景☆第九話」をお読み下さい。

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2011年9月23日 (金)

シナリオ 冬の風景(第八話)雪の朝

≪脚色≫

      冬の風景

     
 
(第八話)雪の朝    

    登場人物
   湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   湧水道子  ・・母 (主  婦)[32]
   湧水正也  ・・長男(小学生)[8]


 勉強部屋 早朝
   パジャマ姿で寒そうに窓から外を見る正也。辺り一面、銀世界と化した雪景色。深々(しんしん)と降る雪。
  正也M「起きると、辺り一面は雪に覆われていた。それも何年かに一度という積雪に思えた」
   震えながら剣道着に着替える正也。庭の雪景色。深々と降る雪。包む静寂。雪灯りに映える窓。

○ メインタイトル
   「冬の風景」

○ 
サブタイトル
   「
(第八話) 雪の朝」

○ 庭 早朝
   寒稽古をする恭之介と正也。二人の素振りと掛け声。小降りになった雪。

○ 洗面所 早朝
   風呂場のシャワー室を出て、渡り廊下を歩く正也。
  正也M「じいちゃんの慈悲で二十分、短くして貰い、寒稽古を済ませた後、シャワー室で汗を流した」
   居間へと向かう正也。部屋から洗面所へ出てきた恭一。途中の洗面所前で出くわす二人。
  恭一  「参ったなぁ…。いやぁ、参った参った(歯磨きチューブを絞り出し、歯ブラシにつけながら)」
  正也  「おはよう!(笑顔で可愛く)」
  恭一  「◎※▲×…!(歯ブラシを口に突っ込んで歯を磨きながら)」
   止まらず、恭一と擦れ違い、居間へと向かう正也。
  正也M「何を参っておいでなのか知らなかったので、僕は愛想をふり撒いて、居間へ行った 」
   裏戸から中へ入る、上半身裸の恭之介。赤ら顔で竹刀を片手に持つ恭之介。その恭之介の肩から昇る幾筋もの湯気。出くわす恭之介と正也。止まる正也。
  恭之介「ははは…、洗い場で拭こうとしたんだが、この雪で生憎(あいにく)、足場が悪くてなあ…」
  正也  「けっこう、積もってたね(可愛く)」
  恭之介「そうだな…。ここ最近、見ない豪雪だ。三十、いや四十ほどはあったな」
  正也  「足が冷たかったけど、直ぐ温まった…((可愛く)」
  恭之介「ははは…。正也には悪いが、これも長い目で見れば、お前の為だからな。頑張れ!(正也の頭を撫でながら)」
  正也M「大蛸に頭を撫でられたが、まさか僕も伝染して蛸頭になるとは思えず、されるまま従っておいた。まあ、いずれにしろ、師匠に
逆らうなどということは出来ないのだが…」

○ 台所 朝
   食卓テーブルで、バタつきながら味噌汁を飲む恭一。呆れながら恭一を見る道子。
  道子  「あなた、そんなに急いで…、身体に毒よ!」
   箸を止め、道子を見る恭一。
  恭一  「そうは云うがな。会社の初打ち合わせがあるんだ。この雪なら、恐らく交通マヒだろう。間に合うか、冷や汗もんだしな…」
   ふたたび、聞く耳を持たない態で、食べ急ぐ恭一。
  恭之介「恭一!! もっと、よく噛んで食べなさい!」
   いつの間に現れたのか、道子の後方に立って恭一を見る恭之介。
  恭一  「(驚いて見上げ)…はいっ!」
   食べる速度を落とす恭一。
  正也M「母さんの後方には、仏様の光背のように光り輝く禿げ頭のじいちゃんが立っていた。迂闊にも父さんは、じいちゃんを見落としていたのだ。じいちゃんの声を耳に受け、急に父さんの食べるペースが落ちた。まあ、父さんも、この程度のものだ」

○ エンド・ロール
   恭之介の立ち姿と光背のように輝く禿げ頭(特撮)。
   テーマ音楽
   キャスト、スタッフなど
   F.O


※ 短編小説を脚色したものです。小説は、「短編小説 冬の風景☆第八話」をお読み下さい。

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2011年9月22日 (木)

シナリオ 冬の風景(第七話)タコづくし

≪脚色≫

      冬の風景

      
(第七話)タコづくし 

    登場人物
   湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   湧水道子  ・・母 (主  婦)[32]
   湧水正也  ・・長男(小学生)[8]


○ とある田畑の広がる畦道 昼
   晴天の風がある日。恭之介が試しで凧を揚げている。恭之介の隣で見上げる正也。
  正也M「蛸が凧を揚げている…と云えば、これだけでもう、笑って戴けると思う。更に僕は、その蛸の横で上空に高く揚がった凧を見ているという寸法だ。さて、その凧は師走も半ばとなると、じいちゃんの竹取りから始まり、ひご作り、紙貼りを経て、今日のような試し揚げとなる」
  恭之介「正也、今年は、調子いいぞぉ~(機嫌よく)」
  正也  「うん!(可愛く)」

○ メインタイトル
   「冬の風景」

○ 
サブタイトル
   「
(第七話) タコづくし」

○ 離れ 昼 
   凧を仕上げる恭之介。絵の具で紙に色彩を施す恭之介。傍で、その様子を見る正也。
  正也M「試し揚げが成功裏に終われば、絵の具により色彩が施され、晴れの正月を迎えて揚げられるのだ。これも、僕の家では冬の風物詩の一つになっていて、大いに楽しみにしているのである」
  恭之介「まあ、少し違うが、これでよかろう…」
   怪訝な表情で恭之介の顔を窺う正也。
  正也M「何が少し違うのか迄は分らないが、兎も角、今年の凧は、じいちゃんに及第点を貰えたようだった。凧が蛸に…と思えば笑えるから、ここは我慢して続けたい」

○ 湧水家の玄関 外 朝
   玄関の鴨居の上に飾られた注連飾り。獅子舞の講社の一行が獅子舞を演じている。それを見る家族四人の笑顔。踊る獅子舞。奏でられる笛と太鼓の音。
  正也M「正月が明けた」

○ 座敷 朝
   紋付き袴姿の恭之介。着物姿の恭一と道子。七五三の時の着物を着た正也。長机の上に置かれた、屠蘇や、おせち料理、お雑煮の入った椀など。
  恭一  「おめでとうございます(緊張気味に)」
  恭之介「いや、おめでとう…(厳かに)」
  道子  「おめでとうございます(明るく)」
  正也  「おめでとうございま~す(小さな声で、可愛く)」
  恭之介「さあ、戴くとするか…」
   恭之介の言葉を合図に、一斉に箸に手をつける三人。
  正也M「僕は雑煮の後、好物の酢醤油蛸を軽く一膳の御飯で食べるのが至福の極みなのである。僕は酢醤油蛸も含めて、これを、━ 正月の三ダコ ━ と呼んで崇(あが)めている。勿論、残りの二ダコとは、じいちゃんの蛸頭と空に揚げる凧であることは云う迄もない」
   雑煮を食べる手を止める恭一。
  恭一  「父さん、今年はいつ揚げるんです?」
  恭之介「ん? フガガ△◇※、フガ◎×●…(餅を咀嚼しながら)」
   怪訝な表情だが、深追いはしない恭一。
  正也M「口の動かし方からして、恐らくは、『決まっとるだろうが、風のある日だ!』と、云ったように思えた。事実、元旦は終日、風が無く、凧にお呼びは掛からなかった。部屋の片隅でその凧は寂しそうにしていた。まあ、酢蛸は僕に食べられて満足だったろう」
   茹で蛸のように赤みを帯びる恭之介の頭。機嫌よく屠蘇を飲む恭之介。機嫌よくジュースを飲む正也。御光のように輝く恭之介の頭。緊張気味に屠蘇を飲む恭一。上品に屠蘇を飲む道子。

  正也M「じいちゃんの蛸頭は相変わらずの照かりで、衰える気配は禿げ頭だけに毛頭ない、と云っておこう。凧も数日中には揚がるだ
ろう。三者三様に、年の始まりをタコづくしで寿(ことお)いでいる」

○ エンド・ロール
   座敷・床の間に飾られた鏡餅。正月の食事風景。
   テーマ音楽
   キャスト、スタッフなど
   F.O


※ 短編小説を脚色したものです。小説は、「短編小説 冬の風景☆第七話」をお読み下さい。

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2011年9月21日 (水)

シナリオ 冬の風景(第六話)電気ごたつ

 ≪脚色≫

      冬の風景

      
(第六話)電気ごたつ 

    登場人物
   
湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   
湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   
湧水道子  ・・母 (主  婦)[32]
   
湧水正也  ・・長男(小学生)[8]

○ 湧水家の外景 朝
   灰色の空。小雪が混じる寒い朝。

○ メインタイトル
   「冬の風景」

○ 
サブタイトル
   「
(第六話) 電気ごたつ」

○ 茶の間 朝
   朝食後。長椅子に座り、思案顔の恭一。傍に座る正也。俄かに立ち上がり、バタバタと何やら探し始める恭一。渡り廊下のガラス戸越しに見える小雪が舞う庭。恭之介がする寒稽古の声。
  恭一   「ふぅ~、クーラーだけでは寒いな。おーいっ! 電気ごたつは物置だったなー?! (台所の方を見て、やや大きめの声で)」
   台所の炊事場から声だけ返す道子。
  [道子]「はーい! 確かその筈です!(やや大きめの声で)」 
  恭一  「分かったぁ!」
   物置へ向かう恭一。付き従う正也。
  正也M「そろそろ寒くなってきたということで、父さんは物置から電気ごたつを出して茶の間へ据え付けようとした。ところが、ここで大事件が勃発した。…と、云えば、お宅の家で何か起こるのは父親がいる時だけだな、と思われる方々も多いと思うので、父さんの名誉のために云っておきたい。大事件とは、僕が多少、オーバーに云ってることで、そう大した事柄ではない」

○ 物置 外 朝
   入口の戸を開け、中へ入る恭一。付き従って入る正也。恭之介が庭でする寒稽古の大きな声。

○ 物置 内 朝
   雑多な収納品が格納された内部。恭之介が庭でする寒稽古の小さな声。こたつを探す恭一。見守る正也。
  恭一  「よしっ! あった、あった。正也、そこのコードだけ持ってってくれ」
   云われるまま黙ってコードを手にし、物置を出る正也。

○ 茶の間 朝
   電気ごたつの配置を一通り終える恭一。コンセントへ繋いでスイッチを入れる恭一。点灯しない赤外線ランプ。
  恭一  「…こりゃ、ヒューズが切れたかぁ?」
   恐る恐る裏返し、凝視する恭一。ヒューズが切れた電気ごたつの裏。溜め息をつき物入れから修理工具と予備の温度ヒューズを取り出す恭一。悪戦苦闘し、やっと取り替える恭一。ただ見ている正也。
  恭一  「よーしっ! これでOKだっ!」
   ニコッと笑ってスイッチを入れる恭一。瞬間、また曇る恭一の顔。点灯しない赤外線ランプ。
  恭一  「…妙だなぁ~。これ以上は無理だしなぁ…」
   首を捻りつつ、ブツブツと云う恭一。暫く、こたつと睨み合う恭一。茶の間を出る恭一。そのまま長椅子に座る正也。置かれた新聞を読み始める正也。

○ 台所 朝
  恭一  「ちょっと、電気屋へ行ってくる…」
  道子  「こんなに早く、開いてる」
  恭一  「あそこは朝早いし、開けてくれるんだ」
  道子  「そう…。でも、もう、ご飯ですよ!」
  恭一  「…」
   無言で玄関へ向かう恭一。恭之介の寒稽古の声が止まる。
   台所に掛けられた ━ 極 上 老 麺 ━ の額(がく)。
   O.L

○ 台所 朝
   O.L
   台所に掛けられた ━ 極 上 老 麺 ━の額(がく)。電気パーツを手にして、喜び勇んで戻ってきた恭一。さっぱりした着物姿で食卓テーブルの椅子へ座る恭之介。台所に入り、恭之介の横へ座る正也。鴨居の上に掛けられた ━ 極 上 老 麺 ━ の額。
  恭之介「おい、どうした? 恭一」
  恭一  「いや、どうも故障のようでして、替えを…(手に持った電気ごたつのパーツを指さし)」
  恭之介「フン! 儂(わし)みたいに寒稽古をしてりゃ、そんなもんは、全くいらんのだ! 情 けない…。なあ、正也」
  正也  「…」
   これ以上、小言を貰ってはたまらん…と、逃げるように茶の間へ向かう恭一。付き従う正也。

○ 茶の間 朝
   電気ごたつのパーツを付け替える恭一。見守る正也。いつの間にか道子も炊事場から現れ、見守る。
  正也M「日曜だというのに寒い中、仕方なく準備して、その結果、修理に至り、更には買い替えの為に外出する破目となり、父さんはサッパリなのだ。そこへ輪をかけて、光沢を放つ蛸頭の小言(こごと)である。我が家としては小事件だったが、父さんにとっては散々な一日となってしまった。だが、世界各地では悲惨な戦闘による犠牲者が、未だ絶えない昨今だから、今日の炬燵の一件は、大事件とは云わず、茶飯事として喜ばねば罰(ばち)が当たるだろう」

○ エンド・ロール
   付け替えが終った電気ごたつ。電気コードを繋ぐ恭一。恭一に云われ、スイッチを入れる正也。赤く点灯する電気ごたつ。喜び顔の
恭一。馬鹿馬鹿しいと云わんばかりの面立ちで台所へ去る道子。   
   テーマ音楽

   キャスト、スタッフなど
   F.O


※ 短編小説を脚色したものです。小説は、「短編小説 冬の風景☆第六話」をお読み下さい。

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2011年9月20日 (火)

シナリオ 冬の風景(第五話)食べもの

 ≪脚色≫

      冬の風景
 

     (第五話)食べもの 


    登場人物
   湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   湧水道子  ・・母 (主  婦)[32]
   湧水正也  ・・長男(小学生)[8]
   その他    ・・猫のタマ


○ 台所 夜
   夕食前。食卓テーブルのいつもの定位置に座る三人(恭之介の横に正也、恭之介の対面に恭一)。賑やかな音がテレビから流れる。炊事場とテーブルを往復して料理などを運ぶ道子。置かれた皿、鉢、茶碗を並べて手伝う正也。片隅で正月用の餌を食べるタマ。
  正也M「僕は年に似合わず里芋の煮っころがしが好きだ。それに加え、じいちゃんには悪いが、茹(ゆだ)った蛸のスライスを酢醤油で戴く…、というこの二つに尽きる。勿論、食べものには好き嫌いがない僕だから何だって食べるが、まあ、この二点である。あっ! それに銀ムツの味噌漬け焼きも捨て難い。って云うか、僕にとっては法外で髄一のご馳走だ」
   ワイワイと賑やかな音がテレビから流れる。新聞を読む恭一。テレビを観る恭之介。手伝う正也。タマが、『お先に…』とばかり、ニャ~と鳴き、食べ終えて、どこかへ姿を消す。

○ メインタイトル
   「冬の風景」

○ 
サブタイトル
  
 「(第五話) 食べもの」

○   同  夜
   食器などを並べ終えた正也も恭之介の横の席に着き、テレビを観る。
  正也M「今年の正月も恒例のお節(せち)料理が食卓を賑わせた。毎年、母さんが重労働に汗して家族のために調理してくれるのだから、感謝して賞味せねばならないだろう。とか云いつつ、食べる段になると味わうことのみに気が走り、その感謝の念を忘れがちな僕なのだが…」
   新聞を読み終え、テーブル上を見る恭一。
  恭一  「そろそろ、お節も飽きてきたなあ…(道子を見て)」
  恭之介「馬鹿者っ!! 世界には食いもんがない人々も多くいるんだっ! そういう罰(ばち)当たりを云うんじゃないっ!」
   シュンとして、固まる恭一。二人の様子を窺う正也。
  正也M「じいちゃんの食卓での落雷は珍しい」
  恭一  「…すみません、そうでした」
   頭を下げ、殊勝な態度で謝る恭一。
  恭之介「ん? …いや、儂(わし)も少し興奮したかな。ハハハ…(誤魔化すように笑って)」
   食卓テーブルの恭一の横(正也の対面)へ座る道子。フゥ~っと、ひとつ溜息を吐く道子。いつの間に戻ったのか、タマが床に腰を下ろして尻尾を振り、ニャ~と鳴く。
  道子  「さあ、夕飯にしましょ…」
   おあずけのOKが出たかのように、形だけ手を合わせると、食べ始める三人。遅れて食べ始める道子。
  恭之介「武士は食わねど高楊枝…とは云うが、昔の武士は食らう事より武道を尊んだそうだ…(思い出したように箸を止め)」
  恭一  「食べものが無かった時代に、その精神ですからね。昔の人は大したもんだ…」
  恭之介「そうそう。今は食いものがあり過ぎて捨てたりする御時世だからなあ…」
  恭一  「はい…。幸せな日本だけに余計、残念です」
  恭之介「その通りだ。今日の恭一は偉く物分かりがいいなあ。まるで別人だぞ」
  恭一  「いやあ、そうでもないんですが…」
   謙遜しつつ、褒められたのが、まんざらでもない様子の恭一。二人を見遣る正也。
  正也  「酢蛸は、もうなかった?」
  道子  「昨日、全部、食べたでしょ」
  正也M「僕は、ついうっかりして、昨日、最後の残りの四切れを食べ尽くしたことを忘れていた。出来のいい僕にしては失態である」
  恭之介「里芋の残りが、あったぞ」
   賑やかに笑いつつ下段のお重を指さす恭之介。顔が緩む正也。しみじみと恭之介を見る正也。
  正也M「じいちゃんは僕の好物だということを知っていて残してくれていたのだ。蛍光灯に照らされた笑顔は、正に茹った蛸で、その姿からは、とても剣道の師範だとは想起出来ない。馬鹿げたことを話しているうちに、今年の冬休みも、とうとう残り少なくなってきた」

○ エンド・ロール

   テーマ音楽
   キャスト、スタッフなど
   F.O


※ 短編小説を脚色したものです。小説は、「短編小説 冬の風景☆第五話」をお読み下さい。

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2011年9月19日 (月)

シナリオ 冬の風景(第四話)生体リズム

≪脚色≫

      冬の風景

      
(第四話)生体リズム 

    登場人物
   湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   湧水道子  ・・母 (主  婦)[32]
   湧水正也  ・・長男(小学生)[8]
   その他    ・・猫のタマ、犬のポチ


○ 湧水家の庭 朝
   居間から庭の足継ぎ石へと下りる、ジャージ姿の恭一。ガラス戸の隙間から外へ飛び出すポチ。恭之介と正也の前で、ワン! と元気に、ひと声吠え、尻尾を振るポチ。寒そうに震える恭一。寒稽古を終えた上半身裸の恭之介と正也。汗を流し、湯気が立つ二人の身体。

○ メインタイトル
   「冬の風景」

○ 
サブタイトル
   
(第四話) 生体リズム」

○ 湧水家の庭 朝
   無造作に動き回る恭一。
  恭一  「ふぅーっ! 寒い寒いっ!」
  正也M「たまの長休みで父さんが五月蠅く吠える。冬は誰だって寒いんだから、せめて一家の長はデン! と構えていて欲しいぐらいのものだ」
  恭之介「お、お前は…(恭一を見遣り、呆れて、それ以上、ものを云えず、口を閉ざし)」
   恭一を無視し、洗い場の湧き水で身体を拭く恭之介。居間へ引っ込む恭一。続いて、足継ぎ石から居間へと上がり、家の中へ入る正也。
  正也M「生体リズムの個人差を一人一人、分析すると、父さんは崩れやすく、じいちゃんは年からすればかなり頑丈だ。母さんと僕はほぼ安定、云わば普通である。父さんは剣道でもして、安定させる努力をした方がいいかも知れない」

○ 台所 朝
   食卓テーブルを囲む家族四人。勢いよく食べる恭之介と正也。細々と食べる恭一。普通に食べる道子。恭之介と正也が並び、対面には恭一と道子が並んで椅子に座る(恭之介の対面に恭一、正也の対面に道子)。御飯を食べる恭之介達。ただ一人、トーストを齧る恭一。片隅で餌を食べるタマ。食べ終え、ニャ~と、ひと声、鳴くタマ。
  正也M「運動の後だから当然、ご飯も美味しく二膳は優に食す。じいちゃんは最低、三膳だ。父さんはと云うと、からっきしで、半膳かトースト一枚が関の山だ。今朝も食欲が今一だとかで、パンを齧っている情けない駄目親父なのである(◎に続けて読む)」

○ (フラッシュ) 庭 朝
   寒稽古をする上半身裸の恭一。横に正也。二人に対峙する態で指導する恭之介。竹刀を振る三人。
  正也M「(◎)その父さんも、いつだったか一度、じいちゃんの寒稽古に加わったことがある。まあ、結果は云う迄もなく玉砕で、三日坊主の三日も持たず、二日で音をあげた(△に続けて読む)」

○ (フラッシュ) 寝室 朝
   ベッドで氷枕を頭に置き、臥せる恭一。赤ら顔。心配そうに体温計を見る道子。
  正也M「(△)しかも翌日には高熱を発し、会社を休むという体たらくで、これには流石の母さんも呆れ果てたという過去がある」

○ もとの台所 朝
   食事を済ませた三人。席を立つ道子。棚から使い捨てカイロを取り出し、恭一へ手渡す。
  道子  「あなた、これ…」
  恭一   「ああ…、すまないな(受け取りながら)」
   茶を啜りながら新聞に目を通して寛ぐ恭一。恭之介は、離れへと席を立つ。安堵感が漂う恭一。正也も席を立つ。
  恭之介「フン! 嘆かわしい奴だ。武士など、とても勤まるまい…」 
   呟きながら台所を出る恭之介。その後ろを弟子のように従う正也。恭之介の頭を見上げる正也。
  正也M「じいちゃんの頭は光沢を増し、窓ガラスから射し込む陽光を一身ではなく一頭に受けて輝かせている。エコが叫ばれる昨今、僕はじいちゃんの余熱を父さんに回す有効利用の方法はないものかと、真剣に考えている。じいちゃんの熱気と父さんの冷え症が相殺されれば幸いだ」

○ エンド・ロール

   テーマ音楽
   キャスト、スタッフなど
   F.O


※ 短編小説を脚色したものです。小説は、「短編小説 冬の風景☆第四話」をお読み下さい。

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2011年9月18日 (日)

シナリオ 冬の風景(第三話)教養人

≪脚色≫

      冬の風景

      
(第三話)教養人 

    登場人物
   湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   湧水道子  ・・母 (主  婦)[32]
   湧水正也  ・・長男(小学生)[8]

   その他   ・・従兄、叔母

○ 湧水家の玄関 外景 昼
   玄関戸の上部に飾られた注連飾り。どこからか聞こえる獅子舞が奏でる笛、太鼓の音。

○ 子供部屋 昼
   従兄と楽しそうに話をする正也。みかんを食べる二人。二人が愉快に話す光景。
  正也M「久しぶりに都会の叔母と従兄弟がやって来た。大人同士の会話もいいとは思うが、子供同士の会話というのも、いいもので教養深く乙なものだ。話は弾んで、年末年始の諸収入の話となり、クリスマスで、せしめた贈りもの談義も大いに盛り上がって、サミットは閉幕した」 

○ 湧水家の玄関 外景 夕方
   従兄弟、叔母が帰る姿。見送る家族四人。

○ メインタイトル
   「冬の風景」

○ 
サブタイトル

   「(第三話) 教養人」

○ 台所 夜
   食卓テーブルの椅子に座る恭之介。後片付けを炊事場でする道子。
  恭之介「道子さん、お疲れでした。毎年のことながら、ご苦労をかけます(炊事場を見ながら)」
  道子  「あらっ、お父様。そんなお気遣いは無用に願います。ここが実家なんですから、お帰りになって当然ですわ」
  恭之介「はあ、そらまあそうですが…」

○ 居間 夜
   長椅子に座り、本を読む正也。台所から聞こえる恭之介と道子の声、そして見える遠景。
  正也M「最近、嗜(たしな)み始めた碁の本を居間で読んでいると、そんな二人の会話が聞こえてきた。すると…(◎へ続けて読む)」
   恭一が居間へ入る。続けて、テーブル椅子を立った恭之介も台所から居間へ入る。暗黙の了解が出来ているように、窓際へ向かい将棋を指し始める二人。
  正也M「(◎)二人はいつの間にか将棋を指し始めた」
   ふと、将棋盤から視線を長椅子へ移す恭一。
  恭一  「おい、正也。何、読んでんだ?」
  正也  「ん? 五目並べの本だけど…」
  恭一  「五目並べか…。父さんや俺の跡を継いで、将棋をやれ。…なら、三代目も夢じゃない」
  恭之介「まあ、お前、そう云うな。正也には正也の生きる道ってもんがある。それに、五目並べと馬鹿にするが、なかなかどうして、奥深いものなんだぞ。連珠と云って、プロの有段者もいる」
  恭一  「ほお…、そうなんですか? …王手!」
  恭之介「ウッ! いつもながらズルい奴だ。儂(わし)にしゃべらせておいて油断させるとは…。呆れてものも云えん!」
  恭一  「父さんが勝手に話してんじゃないですか」
  恭之介「うるさい! 黙りおろぉ~~!!」
  正也M「ピカッ! っと光る、じいちゃんの時代劇言葉が炸裂して父さんを直撃した。父さんは防御のバリアを張って、だんまりを決め込み、己が身を守る。暗黙の了解が出来た関係はどこへやら、両者の間に暗雲が漂う」
   チューハイのレモン割りのコップとツマミの小皿を載せて入る道子。恭之介と恭一が座る畳横へ、しゃがみ込み、静かに盆を置く道子。
  恭之介「あっ、これは…。いつもすみませんな、道子さん(軽く会釈して)」
  道子  「いいえ…」
  恭一  「気が利くな(道子を見て)」
  恭之介「当たり前だ! (恭一を見て、笑顔で)」 
   笑いながら、無言で居間を出る道子。その様子を見遣る正也。
  正也M「二人の機嫌は一変し、すっかり仲良くなった。僕は二人の様子を見て、この教養人の方々には、とても勝てない…と確信した」

○ エンド・ロール
   ほろ酔い気分で談笑する恭之介と恭一。二人を見遣る正也。
   テーマ音楽
   キャスト、スタッフなど
   F.O


 短編小説を脚色したものです。小説は、「短編小説 冬の風景☆第三話」をお読み下さい。

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2011年9月17日 (土)

シナリオ 冬の風景(第二話)氷結

≪脚色≫

      冬の風景

      
(第二話)氷結      

    登場人物
   湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   湧水道子  ・・母 (主  婦)[32]
   湧水正也  ・・長男(小学生)[8]

○ 湧水家の外景 早朝
   屋根の残雪。朝日が家を照らす。
  正也M「冬の風物詩といえぱ、僕達の田舎では軒から垂れ下がる氷柱(つらら)だ。叩いて遊んだり、キャンデーよろしく齧ったりする楽しみがある」

○ 洗い場 早朝
   玄関軒(のき)に垂れ下がった氷柱。恭之介と正也が上半身裸で身体を拭く。身体を拭きながら軒を眺める正也。恭之介も気づいて軒を眺める。
  恭之介「昨日の晩は冷えたからなあ…」
  正也M「じいちゃんは夜冷えが厳しかったことを強調する。水が凍って氷柱になる訳だ。自然の壮大さには、唯々、脱帽するのみである。勿論、光り輝くじいちゃんの頭は、その比ではないのだが…」

○ メインタイトル
   「冬の風景」

○ 
サブタイトル
   「
(第二話) 氷結」

○ 屋根(軒の樋)
   樋から垂れ下がる氷柱。朝日に融け、ポタポタと落ちる雫。
  正也M「科学を紐解けば、水は流れ動くが氷は動かない。恰(あたか)も時間が閉ざされたかのようである」  

○ 台所 朝
   朝食後。食べ終わった後、食卓テーブルの椅子に座り、口へ楊枝を運ぶ恭之介。隣に座る正也。対面に座る恭一と道子。
  恭之介「一昨年(おととし)の正月は入れ歯で難儀したから、今のうちに歯医者で調整しておくか…」
  正也  「じいちゃん、それがいいよ(可愛く)」
  正也M「じいちゃんが、早くも正月の食い気に想いを馳せている。これも、よ~く考えれば、過去の失敗が氷結した記憶として残っているのである」

○ 奥の間 夕方
   背広を脱ぎながら道子に話す恭一。
  恭一  「今朝は危なかったよ。うっかりして、道で滑るとこだった…」
   背広を受け取り、ハンガーに掛ける道子。
  道子  「そう…、注意してね。冬は凍るから…」

○ 台所 夜
   食卓テーブルの椅子に座る正也。テレビを観ながら二人の会話を聞く正也。
  正也M「母さんは、云うほど心配していないように僕には思えた」
   突然、現れる恭之介。椅子には座らず、立ち止まったままの恭之介。
  恭之介「お前の滑り癖は小さい頃から治らん。大学も
       三浪だったしなあ…(奥の間を見遣って)」
   禿げ頭を撫で回しながら、ふたたび歩きだす恭之介。
   恭之介を見遣る椅子に座った正也。
  正也M「こりゃ、まずいな…と、僕は思ったが、じいちゃんは追撃を敢行せず、光る頭に手をやると、撫でながら消えた。母さんがいて、ばつが悪かった、ということもある」
   台所の入口に掛かった額(がく)を、一瞬、立ち止まって見上げる恭之介。恭之介を見遣る椅子に座った正也。

○ C.I 台所の額 夜
   額に書かれた ━ 極 上 老 麺 ━ の墨字。

○ 台所 夜
   ふたたび歩き出し、立ち去る恭之介。恭之介を見遣る椅子に座った正也。
  正也M「通りすがり僕の前で、ふと見上げたのは、じいちゃんが大事にしている額縁である。その額縁は、氷結していつも僕達家族を見下ろしているのだ。何故、額装せねばならない程の重要物なのか僕には分からない。これは、アインシュタインでも分からない謎だと思う」


○ エンド・ロール
   ━ 極 上 老 麺 ━ と書かれた墨字の額。

   テーマ音楽
   キャスト、スタッフなど
   F.O


※ 短編小説を脚色したものです。小説は、「短編小説 冬の風景☆第二話」をお読み下さい。 

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2011年9月16日 (金)

シナリオ 冬の風景(第一話)本音

 ≪脚色≫

      冬の風景

      
(第一話)本音          

    登場人物
   湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   湧水道子  ・・母 (主  婦)[32]
   湧水正也  ・・長男(小学生)[8]
   その他    ・・猫のタマ、犬のポチ


○ 湧水家の庭 朝
   白絨毯を敷き詰めたように霜が降りた庭。朝日が、下りた霜を照らす。 
  正也M「朝起きると、初霜が降りていた(◎に続けて読む)」

○ 湧水家の畑 朝
   白絨毯を敷き詰めたように霜が降りた家前の畑。
  正也M「(◎)庭や家の前の畑は白々と輝き、白砂を敷きつめたようだった。・・と、云うのは少しオーバーな云い回しなのだが…」

○ メインタイトル
   「冬の風景」

○ 
サブタイトル
   「
(第一話) 本音」

○玄関 内 朝
   ポチが玄関脇の犬小屋で餌を食べている。

○ 洗い場 外 朝
   玄関前の湧き水の洗い場で手を洗う正也。湧き水から湯気が昇る。庭から回って、やってきた上半身裸の着物姿の恭之介。流れる汗を拭く恭之介。朝日に映え、恭之介の身体から上がる湯気。洗い場で濡れた手拭いを絞る恭之介。
  恭之介「フゥ~。ひと汗、掻くと気分がいい…(誰に云うでなく、笑顔で汗を拭きながら)」
  正也M「上半身裸で汗を拭きながら、じいちゃんが笑顔で呟くように云った。じいちゃんの身体からは湯気が出ていて、それが朝陽に照らされて昇っている。僕は丁度、洗顔を済ませた後、タマとポチに餌をやり終えたところだった」
   手拭いを湧き水に浸けて絞ると、また身体を拭き、上半身の着物を纏う恭之介。
  恭之介「おい正也!  明日から恒例の寒稽古だったな。…いつもより三十分、早く起きろよ(気持ちよさそうに)」
  正也  「うん! 分かってる(可愛く)」
  正也M「嫌だ! と本音を漏らせばいいのだが、毎年この時期に付き合わされる半慣習的な行事なので、敢えて逆らうことなく今年も、じいちゃんに奉仕することにした」

○ 台所 遠景 夜
   食卓のテーブルで新聞を時折り見ながら夕食を食べる恭一。鍋の味噌汁を椀に掬い、恭一の前へ置く道子。落ちついた物腰で食事をとる恭之介。普通に食べる正也。台所の片隅で餌を食べるタマ。家族の食事の遠景。なにやら恭一に問い掛けている道子。

○ 台所 近景 夜
  恭一  「別にペコペコされたくもないさ、ハハハ…(笑って暈し)」
  恭之介「そうは云うがな、恭一…(最後までは云わず、口を噤んで)」
  道子  「別に気にしてませんから、お父さま…(云い繕った後、正也の顔を見て微笑んで)」
  正也M「母さんは云い繕い、微笑んで僕の顔を見た。彼女の内心には、あなたの不出来な分は僕が補って余りある…という本音が見え隠れする」

○ 居間 夜
   夕食後。長椅子に座り、ゴルフのクラブを磨く恭一。台所から居間へと移動してきた恭之介。
  恭之介「おう、よく光っとるな(感心した口調で)」
  恭一  「はい…(小声で)」
  正也M「素直に父さんは小声で返した。その小声の奥には、次に浴びるであろう嫌味を未然に回避する、緊急避難的な彼の本音が隠されているのだろう。人は建て前で生き続ける。僕は本音で生きたい…と、頑張っている」

○ エンド・ロール
   よく光ったゴルフのクラブと恭之介の頭。
   テーマ音楽
   キャスト、スタッフなど
   F.O


※ 短編小説を脚色したものです。小説は、「短編小説 冬の風景☆第一話」をお読み下さい。

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2011年9月15日 (木)

シナリオ 秋の風景 特別編(下)芸事(2)

≪脚色≫

      秋の風景

       特別編
(下)芸事(2) 

    登場人物
   湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   湧水道子  ・・母 (主  婦)[32]
   湧水正也  ・・長男(小学生)[8]


○ 小学校 教室 昼
   黒板前。台本を持ち、学芸会の練習をする生徒達。その中に正也もいる。指導する丘本先生。
  正也M「学芸会が間近に迫っていた。僕はこの中で、演目である浦島太郎に出演が決まっていたのだ。主役の太郎なら文句なくいいのだが、生憎(あいにく)、僕は亀の役だった」

○ 台所 夕方
   食卓テーブルの椅子に座ってテレビを観る恭之介と正也。なにやら話している。
  恭之介「先生に抜擢されたとは、大したものだ…」
  正也  「だって、じいちゃん、僕は亀だよ。嫌だなあ…」
  恭之介「おいおい、そうガックリするな、正也。準主役なんだからな、亀は…」
  正也  「そうか!(明るさを取り戻し、可愛く)」
  恭之介「ああ…」
  正也M「じいちゃんは慰めのような、そうでもないような云い回しで僕を和らげた」

○ 学校 講堂 昼
   学芸会。多くの父兄と生徒達が観客で劇を観る。演じる正也達。演目は浦島太郎。時折り客席から湧き起こる拍手と笑い声。ハリボテの甲羅を背負い、帽子風に作られた役絵キャップを被り懸命に演じる正也。観客の中にいて、声援を送る恭一と道子。
  正也M「僕の学校は明治時代に建てられた建造物で、県の指定文化財にもなっている立派な建物なのだが、その講堂で学芸会は行われた」

○ 湧水家 遠景 夜
   秋の田舎っぽい夜景。薄闇に見える電気の灯り。虫の集(すだ)く声。

○ 台所 夜
   食卓を囲む家族四人。夕食中。和気あいあいと会話が弾む。笑い声。
  正也M「兎に角、僕の亀役は無事終わったのだが、まあ概してこんな程度で、抜きん出て、といった技量のプロ芸を熟(こな)す者はいない…と結論づけられる」

○ (フラッシュ) 馬場 昼
   手綱を握り、馬を走らせる凛々しい姿の恭之介。その雄姿を柵外から見守る正也。晴れ渡った青空。
  正也M「あっ、忘れるところだった。じいちゃんには隠された、もう一つの芸事があった。馬術である。じいちゃんは、僕がもう少し大きくなったら教えてやると云った」

○ 居間 夜
   蒼白く煌々と照らす中秋の名月。庭前の渡り廊下の小机。小机の上に飾られた三方の月見団子と花瓶に活けられたススキ。虫達の集く声。月の光に照らされ輝き光る恭之介の頭。月と恭之介の頭を比較して見遣る正也。
  正也M「秋の虫達が賑やかに秋を唄っている。実に上手い。じいちゃんは蛸頭を照からせている。実に素晴らしい」

○ 居間 夜
   渡り廊下で月を見ながら下手なハーモニカを奏でる恭一。
  正也M「父さんはハーモニカを奏でている。実に拙(つたな)い」

○ (フラッシュ) 居間 夕方
   ススキを花瓶に生ける道子。見守る正也。
  正也M「母さんはススキを花瓶に生けて飾る。実に見事だ。孰(いず)れにしろ、、が家の連中は少し素養がある程度のもので、まずマスコミに騒がれるような事態はないだろう。・・傍に置かれた三方(さんぼう)のお団子。この秋、もう一度ぐらいは食べられるだろうか…。こんな下劣な計算をしている僕は実に、さもしい。もう少し高尚な存在になりたい…とは思っている」

○ エンド・ロール
   離れ(夜)の広間で作務衣姿の恭之介が居合いの形を示す。菓子を頬張りながら鑑賞する正也。
   テーマ音楽
   キャスト、スタッフなど
   F.O

※ 短編小説を脚色したものです。小説は、「短編小説 秋の風景☆特別編(下)」をお読み下さい。

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シナリオ 秋の風景 特別編(下)芸事(1)

≪脚色≫

      秋の風景

      
特別編
(下)芸事(1) 

    登場人物
   湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   湧水道子  ・・母 (主  婦)[32]
   湧水正也  ・・長男(小学生)[8]


○ 居間 夜
   長椅子に座り、コップのジュースを飲みながら寛ぐ正也。居間の渡り廊下で十六夜の月を見ながらハーモニカを下手に奏でる恭一。
   上空に煌々と輝く十六夜の月。釣られて呟くように唄い出す正也。
  正也  「「♪更けゆくぅ~ 秋の夜ぉ~ 旅の空のぉ~♪(小声で唄う)」 
  正也M「父さんのハーモニカが物悲しく響く。それは決して上手くて物悲しいというのではなく、何年も吹いている割に、さっぱり上達しないから僕には物悲しいのである」

○ メインタイトル
   「秋の風景」

○ サブタイトル
   「特別編
(下) 芸事」

○ 居間 夜
   風呂上がりの恭之介が赤ら顔で居間へ入ってくる。
  恭之介「なんだ、正也。まだ寝んのか?」
  正也  「うん、明日は日曜だから…(曖昧に暈して、可愛く)」
  恭之介「そうか…。いい月夜が続くなあ」
   やんわりと返し、長椅子の正也の隣へに座る恭之介。美味そうに、手にした缶ビールをグビグビッと三分の一ほど飲み、それ以上は正也に突っ込まない恭之介。
  正也M「土曜の夜ということもあり、僕はいつもより三十分ほど長く居間で寛いでいた。この日は珍しく、父さんは将棋盤を広げておらず、庭へ出てハーモニカを下手に吹いていた訳だ」
   恭一がハーモニカを奏でる姿を垣間見る恭之介。
  恭之介「ふん! 相変わらず、上達せんな…(諦め顔で)」
  正也  「…」
  正也M「父さんには悪いが、全く聴くに堪えない演奏である。芸事の大会とかに出場するほどの腕なら未だしも、△◇★%&… だから、フォローのしようがない」

○ 台所 夜
   道子が台所に入る。居間にいる正也に気づく道子。
  道子  「正也、まだ起きてるの? 早く寝なさい!」

○ 居間 夜
   道子の声に、少し慌てる正也。
  正也  「うん!」
  正也M「父さんだけじゃなく、僕も母さんには “青菜に塩”なのだ」

○ (フラッシュ) 離れ(剣道用の広間) 早朝
   剣道用の作務衣で刀を抜く恭之介。居合いの形(かた)を示す恭之介。広間の鴨居上に掛かった、「銃砲刀剣類登録証」入りの額(がく)。同様に掛けられた、「心 技 体」と墨書された長額。
  正也M「芸事と云えば、じいちゃんの抜刀術がある(◎に続けて読む)」

○ (フラッシュ) 和間 昼
   着物姿で花を生ける道子。
  正也M「(◎)母さんには生け花がある。僕は…と考えると、多少、他と比較すれば頭脳明晰のようだという以外には何もない。父さんは? と云えば …(△に続けて読む)」

○ (フラッシュ) カラオケ店 夜
   お得意先の接待中。常時と違い、陽気にハンドマイクで唄う恭一。頭にネクタイを巻き、赤ら顔で絶唱する恭一。
  正也M「(△)・・・と、いうことである(+へ続けて読む)」  

○ もとの居間 夜
   長椅子から立ち、子供部屋へ引き上げる正也。下手なハーモニカを奏でる恭一。少しほろ酔いの恭之介。下手なハーモニカを聴かされ、余り気分よさそうには見えない恭之介の顔。
  正也M「(+)無論、父さんの下手なハーモニカは芸事には入らないから、宴会部長を除いては何もない」

                            (明日へ続く)

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シナリオ 秋の風景 特別編(上)スーパーじいちゃん(2)

≪脚色≫

      秋の風景
    特別編
(上)スーパーじいちゃん(2) 

    登場人物
   湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   湧水道子  ・・母 (主  婦)[32]
   湧水正也  ・・長男(小学生)[8]


○ 台所 夕方
   熊手で落ち葉を掃く恭之介を見遣る食卓のテーブル椅子に座る正也。
  正也M「剣道の猛者(もさ)だけのことはあり、僕とは違って一意専心である。滑るほどに照かった禿げ頭に一匹の赤蜻蛉が止まっていることなど全く知らぬ気で、見事な熊手の捌きだ。頭の輝きは、ただただ見る者をして唖然とさせるのだから大したものだ」

○ 台所 夜
   夕食。食卓を囲む四人。茶碗蒸しがテーブルに出ている。箸で中から銀杏(ぎんなん)を探し出す恭之介。
  恭之介 「おっ、銀杏ですか…。これは、これは…」
  正也M「夕飯の茶碗蒸しを食べながら、箸で実を探し当てたじいちゃんが、ポツンと云った」
  道子  「ええ…そうです。お父様がこの前、拾ってらした実ですわ」
   食卓を囲む四人。

○ (フラッシュ) 神社 昼
   古い社。鎮守の森。その中に聳(そび) える一本の銀杏(いちょう) の大木。銀杏(ぎんなん)を拾う恭之介と正也。
  正也M「家から五分ほど歩いた所には、古いお社がある。その中の鎮守の森に、一本の大層、大きな銀杏(いちょう)の木が聳(そび)えており、毎年、たわわに実をつけるのだ」

○ もとの台所 夜
   食卓を囲む四人。
  正也M「銀杏は食すまでが、ひと苦労なのである。さあ、これで食べられると思いきや、(◎に続いて読む)」

○ (フラッシュ) パケツに浸かったクルミの実
   バケツの水に浸かって黄色くなった銀杏の実。中の種を取り出す作業をする恭之介と正也。
  正也M「(◎)まずは、実の中の種を出す工程がある(△に続いて読む)」

○ (フラッシュ) クルミの実
   ペンチでクルミの種を割る恭之介。割れた種から実を取り出す選別をする正也。
  正也M「(△)さあ、これで食べられると思いきや、さにあらず。続いて、種の殻を割る工程が今や遅しと待ち構えている(◆に続いて読む)」

○ もとの台所 夜
   食卓を囲む四人。会話の弾む食事風景。電灯光に輝く恭之介の頭。
  正也M「(◆)じいちゃんは、そういうこともした上で恍(とぼ)け顔で母さんに、『おっ、銀杏ですか…』と、云ったのである。じいちゃんには口で表現出来ない包容力というか、偉大さというか…何かそういったオーラが漂っているのである。これは、光り輝く禿げ頭の力によるものではない。じいちゃんに自ずと備わった仁徳のようなものであろう。まあ、スーパーマンと迄は云えないが、大したスーパーじいちゃんなのである」


○ エンド・ロール
   夜の家族団欒風景。
   テーマ音楽
   キャスト、スタッフなど
   F.O

※ 短編小説を脚色したものです。小説は、「短編小説 秋の風景☆特別編(上)」をお読み下さい。

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シナリオ 秋の風景 特別編(上)スーパーじいちゃん(1)

≪脚色≫

      秋の風景
    特別編
(上)スーパーじいちゃん(1) 

    登場人物
   湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   湧水道子  ・・母 (主  婦)[32]
   湧水正也  ・・長男(小学生)[8]


○ 台所 昼
   食卓テーブルの椅子に座りテレビの競馬を観戦している恭一。恭一の隣で仕方なくテレビ観戦に付き合わされている格好の正也。熱の入る恭一。つまらなく観る正也。風呂から上がり、蛸頭に湯気を立てて現れた恭之介。
  恭之介「おっ! 秋の天皇賞だな…」
   食卓テーブルの椅子に、どっかり座る恭之介。   
  正也M「父さんは日曜なので、テレビで競馬中継を見ている。そこへ、じいちゃんが風呂場から蛸頭に湯気を立てて現れ、ひと言、そう云った」
   やや緊張し、恭之介に備える恭一。少し襟を正して観続ける恭一。つまらなく観る正也。恭一の対面へ座る恭之介。テレビで競馬中継するアナウンサーの声。

○ メインタイトル

   「秋の風景」

○ 
サブタイトル

   「特別編
(上) スーパーじいちゃん」

○ 台所 昼
   チラッと、恭一を見る恭之介。
  恭之介「お前、買わん割りには、結構、当てるな」
  恭一  「ははは…、そう云いますが、私は馬のことは少し五月蠅いですよ(笑顔で)」
   少し見栄を張った顔で恭之介を眺める恭一。
  恭之介「馬鹿を云え。お前のは、ただの馬通(つう)だ。儂(わし)の如く、馬の何たるかが全く分かっとらん!」
  正也M「いつもの落雷である。父さんは、笑顔を引っ込め、真顔になった」
  恭之介「だいたい、馬のことを語るのは百年早いっ! 飼い葉やり、寝床作り、馬糞や身の世話、体調管理…そんなことをしている者の云うことだっ!」
  正也M「じいちゃんは次第に、お冠(かんむり)である」
  恭一  「はい…、すみません」
  恭之介「まあ、二人とも儂の話を聞くんだ…」
   神妙になる恭一と正也。
  正也M「こうなっては万事休す…である。最低、小一時間は覚悟せねばならない」
   馬のことを諄々(くどくど)と語り始める恭之介。意気消沈して話を聞く二人。
   O.L

○ 台所 夕方前 
   O.L
   意気消沈して話を聞く二人。道子が台所へ現れ、夕飯の準備を始める。少し話し声を小さくするる恭之介。
  道子  「正也! 早く入ってしまいなさいっ!」
   風呂の催促をする道子。一瞬、喜色満面になる正也。
  恭之介「…まっ! 今日は、これ迄にしよう。続きは、またな…。正也、風呂だっ」
   喜び勇んで椅子を立つ正也。
  正也M「この場合の僕は軽く腰を上げた。重い腰を上げることは、よくあるだろうが、軽く腰を上げたのは、この場合の僕ぐらいだろう」 

○ 風呂場 内
   浴槽へ気持ちよさそうに浸かる正也。

○ 台所 夕方
   風呂場から台所へ入る正也。入れ違いに、食卓椅子を立つ恭之介。
  正也M「風呂から上がると、外はもう暮れ泥(なず)んでいた。秋の陽は釣瓶落とし…とは、よく云ったものだ」

○ 庭 夕方
   庭に下り、落ち葉を掻き始める恭之介。恭之介の頭に停まる一匹の赤蜻蛉。気づかず、見事な熊手捌きで掃き続ける恭之介。夕日に映え、輝く頭。その頭に停まる一匹の赤蜻蛉。


                                (明日へ続く)

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シナリオ 秋の風景(第十話)マフラーの夢

 ≪脚色≫

      秋の風景  
      
(第十話)マフラーの夢 
  
 

   登場人物                           
   湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   湧水道子  ・・母 (主  婦)[32]
   湧水正也  ・・長男(小学生)[8]

   その他   ・・マフラーの精

○ 台所 夜
   テーブルに座り、奥の間の道子を見ている正也。
  正也「もういいよ! 古いのがあるから…(大声で)」
○ 奥の間 夜
   箪笥を開け、マフラーを探している道子。正也の言葉を聞かなかった態で、必死に箪笥の中を探す道子。
  道子  「確か…このタンスへ入れたんだけど…」
  正也M「僕がゴネているのには、明確な理由がある。実は明日、巻いて出ようと思っていたお気に入りのマフラーが見つからないのだ」
  道子  「ほんと、どこへ入れたのかしら…。嫌になっちゃうわ、もう!(少し、ヤケっぽい口調で)」
  正也M「宝探しでもあるまいし、ところ構わずイジれば出てくるというものではないだろうとは思うのだが、稼ぎのない居候の身では返す言葉もなく、好きにして戴くしか、手立てはない」

○ メインタイトル

   「秋の風景」

○ 
サブタイトル

   「
(第十話) マフラーの夢」

○ 奥の間 夜
   奥の間へ部屋へ入ってくる恭一。
  恭一  「…なんだ、探しものか?(道子を見下ろして)」
  道子 「ええ…、ちょっと(座って、手だけを小まめに動かしながら)」

○ 台所 夜
   正也がテーブル椅子に座ってテレビを観ている。離れから現れる恭之介。
  恭之介「なんだ? 飯はまだか…。正也、道子さんはどうした?」
  正也  「ん? 探しもの…」
  恭之介「探しもの、とな? …よく分からんが、飯より大事なものらしいな」
  正也M「僕は敢えて答えなかった。武士に対して、『僕のマフラーを…』などとは、とても尋常に云えたものではない。まず、そんなことはないとは思うが、茹で蛸に変身した武士に包丁でスッパリ斬られては、元も子もなくなる」
   暫くして、諦めたのか、うなだれて台所へ入る道子。夕飯準備の続きにかかる道子。

○ 家の外景 夜
   湧水家の全景(外景)。射す月光に照らされる田舎っぽい家周りの景観。

○ 台所 夜
   ワイワイと語りながら食卓を囲む四人。
  正也M「その日の夕飯はいつもより雑然とはしたが、それでも平穏に終わった」

○ (夢の中) 正也の部屋
   マフラーの精が正也に話しかけている。布団に寝たまま、目を開けて話を聞く正也。
  正也M「その晩、僕はマフラーの夢を見た。夢の中へ探していたマフラーが現れたのだ」
  マフラーの精『私は、ドコソコに、おりますから…』
   頷く正也。布団で目を閉じる正也。
   O.L

○ 正也の部屋 朝
   O.L
   布団で目を開ける正也。目を擦り目覚ましを見る正也。小鳥の囀り。窓から射し込む朝日。起きると、着替えずに、そのまま台所へ向かう正也。

○ 台所 朝
   炊事場で朝食準備をする道子。台所へ入る正也。夢の話を道子に告げる正也。ドコソコへ小走りする道子。
  正也M「朝、目覚めた僕は、朝食の準備をしている母さんに、そのことを云った。母さんは、ドコソコへ小走りした」
   暫くして、出てきたマフラーを手にし、得心して台所へ戻る道子。マフラーを笑顔で正也に手渡す道子。受け取る正也。

○ 台所 朝
   朝の食事風景。テーブルを囲む四人。食べながら賑やかに語り合う四人。
  正也M「この一件は我が家で物議を醸し出し、一週間に渡り、この話題で持ち切りとなった。今思えば、僕の記憶のどこかにマフラーを収納する母さんの映像が残っており、単に夢となって現れたのだ…と思える(◎に続けて読む)」

○ 玄関 朝
   出勤する恭一。見送る道子。慌ただしく走って玄関へ出てくる通学する正也。窘める道子。靴を履き、玄関を飛び出す正也。
  正也M「(◎)また、そう思わないと、秋が更けていくというのに夏場の怪談めいて寒くなる(△に続けて読む)」

○ 離れ 朝
   畑着に着替える恭之介。部屋に飾られた刀掛けの二振りの刀。剣道師範免許の額。警察表彰の額。
  正也M「(△)まあ、じいちゃんの神々しい頭だけは、夢ではなく、紛れもない事実なのだが…」

○ エンド・ロール
   マフラーをして道を歩く正也の通学風景。
   テーマ音楽
   キャスト、スタッフなど
   F.O


※ 短編小説を脚色したものです。小説は、「短編小説 秋の風景☆第十話」をお読み下さい。

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シナリオ 秋の風景(第九話)独演会

≪脚色≫

      秋の風景
 
     
(第九話)独演会  

    登場人物
   湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   湧水道子  ・・母 (主  婦)[32]
   湧水正也  ・・長男(小学生)[8]


○ 台所 夜
   食卓テーブルの椅子に座っている恭之介。徐(おもむろ)に、卓上のリモコンを手にする

○ メインタイトル

   
「秋の風景」

○ 
サブタイトル

   「
(第九話) 独演会」

○   同  夜
   映し出された、とあるテレビ画面。画面を観る恭之介。
  正也M「秋と云えば、何といっても芸術だろう。じいちゃんが芸術を堪能するのはテレビだ。今夜も台所のテレビのリモコンボタンを押し
       た」
   晩酌の準備をする道子。風呂を上がって台所の冷蔵庫へ近づく正也。
  道子  「明日はPTAの役員会なの。…正也、後は頼んだわね」
  正也 「うん…」
   部屋へと消える道子。冷蔵庫へ近づく正也。
  恭之介「最近は、なんか風情のある番組が減ったなあ…。クイズと云やぁ~賞金、サスペンスと云やぁ殺人。それに報道と云やぁ~知る必要
もない暗い、悪い、陰気なニュースだ。いったい、汗水流す人間のためになってんのかっ?! うぅぅ…、まだあるぞ!」
  正也M「誰も話す相手がいないのに、じいちゃんは独りごちて怒っている。風呂上がりだったので、いつもの楽しみにしているジュースを取りに、僕は冷蔵庫へと近づいた。今思えば、これがいけなかった」
   正也が冷蔵庫を開ける音。気づく恭之介。  
  恭之介「おっ、正也。まあ、ここへ座りなさい」
   声にビクッ! とし、ジュ-スをコップに注いだ後、渋々、テ-ブルに近づく正也。椅子に座る正也。
  正也M「僕は光る頭の蛸蜘蛛の糸に引っ掛かり、哀れにも長話を聞かされる破目に陥ってしまったのである」
   正也を相手に語り出し、独演会を始める恭之介。
  恭之介「どう思う?」
  正也  「…ん? どおって?」
  恭之介「儂(わし)の小言(こごと)、聞こえてなかったか?」
  正也  「まあ、一応は…」
   正也をマイクに見立て、突然、凄い剣幕で語り出す恭之介。聞き上手になる正也。
  恭之介「正也はどうか知らんが、どうも最近のテレビは面白くない!!」
  正也  「そんなこと、僕に云ったって…(迷惑顔で)」
   諄々(くどくど)と話す恭之介。相槌を打つ正也。二人の姿。
   O.L
   二人の姿。諄々と話す恭之介。聞き疲れた正也。
  正也M「滾々(こんこん)と湧き出る洗い場の水のように二十分は優に聞かされ、その夜の僕はジュースで寛(くつろ)ぐどころか、じいちゃんで
疲れ果てた。しかし、捨てる神ありゃ拾う神あり…とは、よく云ったものだ。そこへ、神では毛頭ないが…」
   終い湯に入り、風呂掃除を終えた恭一が、やれやれという顔で台所へ入ってくる。その恭一に気づく恭之介。
  恭之介「おっ、恭一。いいところへ来た。まあ、座って聞け」
  恭一  「えっ? 何をです? 風呂番で疲れまして…、ビールで一杯やろうと思ってたんですが。・・父さんも、どうです?」
  恭之介「…、それは、まあな…」
   沈黙する恭之介。テレビを見ながら隣りの席で二人の様子を窺う正也。
  正也M「流石は父さんだ…と、僕は思った。逃げの壺を心得ている」
   三分の一ほどジュースが残ったコップを持ち、スゥ~っと静かに立つ正也。消えるように忍び足で台所から去る正也。

○ 湧水家 外 夜
   煌々と家を照らす蒼白い月。流れる薄雲。

○ 台所 夜
   ビールを飲み、すっかり出来上がっている恭之介。少し、ほろ酔い加減で迷惑顔の恭一。ふたたび、空コップを持ち洗い場へ入る正也。コップを洗いながら二人の様子に耳を欹てる正也。呂律が回らない態で恭一に話す恭之介。迷惑顔で相槌を入れる恭一。いつの間にか増えているビール瓶の本数。
  正也M「僕が台所へ戻ると、じいちゃんは相変わらずテレビ番組をネタに愚痴りながら、独演会を続けていた」
  恭之介「△◎$&・・△√%…だ。…●▽なっ!(呂律が回らず)」
  恭一  「「ええ…」
  恭之介「分か…●▽◆□、…なっ!(呂律が回らず)」
  恭一  「はい…」
   憂さを晴らすようにコップを干し、ビールを注ぐ恭一。
  正也M「安定したヒラの父さん、役員の母さん、孤高を持するじいちゃん、出来のいい僕…。各人各様に、平和な家庭の秋の夜長が更けていく」

○ エンド・ロール
   独演会を続ける酩酊状態の恭之介と、迷惑顔で聞き
   役を務める恭一。
   テーマ音楽
   キャスト、スタッフなど
   F.O


※ 短編小説を脚色したものです。小説は、「短編小説 秋の風景☆第九話」をお読み下さい。

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シナリオ 秋の風景(第八話)お彼岸

 ≪脚色≫

      秋の風景

      
(第八話)お彼岸 

    登場人物
   湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   湧水道子  ・・母 (主  婦)[32]
   湧水正也  ・・長男(小学生)[8]


○ 山の中腹の墓地 昼
   家族四人が墓へ参っている。昔ながらの手押式汲み上げポンプで桶に水を入れる恭一。恭一を見遣る三人。お供えの花を包んだ袋を持つ道子。線香や蝋燭、小箒などの小物袋を持つ恭之介。お供えの菓子袋を持つ正也。麗らかな小春日和。青空に浮かぶ鰯雲。

○ メインタイトル
 
  「秋の風景」

○ 
サブタイトル

  
(第八話) お彼岸」

○   同  昼
   家の墓へと歩き進む四人。
  正也M「今日は彼岸の入りが父さんの休みと重なったので、 珍しく家族全員でお墓へ参った。お墓は、いつも、うらぶれた佇(たたず)まいで僕達を迎える。夏場ではないから、そう怪談めくということもないが、場所柄(がら)、気持ちがいいという所では決してない」
   桶の水を花筒に入れ、花を供える道子。除草する恭一。
  恭之介「恭一、それくらいでいいだろう」
  恭介  「はい…(除草の手を止め)」
   手を洗い、水を墓石に掛ける恭一。菓子を供える道子。線香に火を着け供える恭之介。黙って見ている正也。手を合わせる四人。何やら呟きながら泪を流して嗚咽する恭之介。
  正也M「剣道の猛者(もさ)も師範もあったものではない。じいちゃんのワンマンショーが御先祖様と僕達を前にして開演した」
   耳を欹(そばだ)てる正也。凍ってうつむき、手を合わす恭一と道子。
  正也M「耳を欹(そばだ)てると、ばあちゃんに対して、どうの、こうのと語っているのだった。残念ながら、僕は、ばあちゃんを知らない。それも当然で、僕が生まれる遥か昔に、ばあちゃんはお墓へ引っ越したのだ」
  恭之介「ばあさん…儂(わし)も、すぐ行くからのう。ウゥゥ…」
   目を瞑って手を合わせる恭一と道子。目を開いて手を合わせ、恭之介を見遣る正也。
  正也M「いや、いやいやいや…、それはないだろう、と僕は直ぐ全否定した。意気益々、盛んなじいちゃんが、すぐお墓へ引っ越す訳がないのである」
   恭之介に痺れをきらし、立ち上がる恭一。未だ、しゃがんで恭之介に従い、手を合わす道子と正也。

○ 西山に傾きかけた釣瓶落としの秋の陽

○ 山の中腹の墓地 昼
  恭一  「お父さん、そろそろ帰りましょう!」
   目を開け、ギロッ! と、恭一を見上げる恭之介。
  恭之介「お、お前は薄情な奴だ! …ばあさんが草葉の陰で泣いてるぞっ!(態度を豹変させ、涙声で怒りながら)」
   西日を浴び、輝く恭之介の頭。眩しさで目を細める正也。
  道子  「お父様、そろそろ帰りましょうか?」
  恭之介「そうですね、道子さん…(素直になって)」
   紅く咲く彼岸花。釣瓶落としの西日。
  正也M「青菜に塩…と云うが、正に今のじいちゃんがそれで、紅く咲く彼岸花にも似て、派手だなあ…と、僕は、しみじみ思った」

○ エンド・ロール
   西日の中、墓地を歩き去る四人。
   テーマ音楽
   キャスト、スタッフなど
   F.O


※ 短編小説を脚色したものです。小説は、「短編小説 秋の風景☆第八話」をお読み下さい。

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シナリオ 秋の風景(第七話)秋霖[しゅうりん]

≪脚色≫

      秋の風景

   
(第七話)秋霖[しゅうりん]   

    登場人物
   湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   湧水道子  ・・母 (主  婦)[32]
   湧水正也  ・・長男(小学生)[8]


○ 小学校の教室 昼
   雨空。陰鬱にシトシト降る雨。給食中。窓際に座り、給食を食べながら降る雨を眺める正也。
  正也M「雨が陰鬱にシトシト降っている。昨日は清々(すがすが)しい快晴で、学校の遠足がある日だったので助かったし、充分に満喫させて戴いて本当によかった。万一、今日だったらと思うと、ぞっとする」
  運動場にシトシトと降る雨。

○ メインタイトル

   「秋の風景」

○ 
サブタイトル
   「(第七話) 秋霖[しゅうりん]」

○ 細い道路 昼
   下校途中の正也、雨傘をさして、トボトボと歩く。シトシトと陰鬱に降る雨。

○ 家の玄関・外 昼
   帰ってきた正也、傘を閉じる。戸を開け玄関内へ入る正也。

○   同  ・内 昼
   靴を脱ぎ、框(かまち)へ上がる正也。靴を揃える正也。

○ 勉強部屋 夕方
   机前の椅子に座り、宿題をする正也。机上でノートに鉛筆を走らせる正也。ふと、頭を上げる正也。外の様子を見ようと、窓を開ける正也。止みそうにない、庭に降る陰鬱な雨。
  正也M「帰っても、雨はいっこう止む気配を見せず、ただ降り続いていた」
   机を立ち、部屋を出る正也、居間へ向かう。

○ 居間 夕方
   居間の渡り廊下から庭を眺める恭一。やってくる正也。
  正也  「父さん、今日は早いね」
  恭一  「ん? ああ・・。会社の接待が早く終わってな」
  正也  「ふ~ん、そうなんだ…」
  恭一  「よく降るなあ。まあ、今の雨は梅雨と違ってモノが黴(かび)ないからいいが…(誰に話すでなく)」
  正也  「ほんと、よく降るね…」
  正也M「大人なんだから、もう少し子供を唸らせることを云えよ…とは思うが、一家の長である以上、そんなことは口が裂けても云えない」
   バタバタと通り過ぎる道子。ただ雨を眺める恭一と正也。
  道子  「洗濯ものが乾かないから困るわ…」
  正也M「母さんも、この秋霖にはお手上げのようだ。主婦泣かせの雨、それが秋霖か…と、思った」

○ 台所 夜
   夕食中。家族四人がテーブルを囲む。テレビの天気予報官が秋霖を説明している。
  恭之介「間引き菜のオヒタシは美味いですねえ…(道子へ語りかけるように)」
  道子  「はいっ」
  恭一  「父さんの、お手間入りですから…」
  恭之介「当たり前だ。秋霖の時期は、すぐ苗が大きくなる。それに雨降りは何故か畑へ行き辛い…(予定外の者の言葉に嫌々、答えるように)」
   沈黙して、箸を動かす恭一。
  道子  「でも、地面が濡れて土埃(つちぼこり)が家の中へ入りませんし、掃除は助かりますわ、お父さま」
  恭之介「はあ、それはまあ、そうでしょうな…」
   静かになる食卓。テレビの声。
  正也M「僕は最初、どっちだっていいやと思っていた。ところが、よ~く考えれば外で遊べないから、やはり青空が広がる爽快な晴れの日がいい、という想いに至った次第である。晴れの日だと、じいちゃんの頭が光沢を増すという特典も加味される楽しみもあるから、そろそろ秋霖は御免蒙りたい」

○ エンド・ロール
   湧水家の全景とシトシトと降る夜の雨。
   テーマ音楽
   キャスト、スタッフなど
   F.O


※ 短編小説を脚色したものです。小説は、「短編小説 秋の風景☆第七話」をお読み下さい。

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シナリオ 秋の風景(第六話)静と動

≪脚色≫

      秋の風景
      
(第六話)静と動 

    登場人物
   湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   湧水道子  ・・母 (主  婦)[32]
   湧水正也  ・・長男(小学生)[8]


○ 山の遠景 夕方
   山影に姿を没しつつある夕日と周囲のオレンジ色の空。山へ帰るカラス達の飛ぶ姿。カラスの鳴き声。畦道に立ち、山影に没っする夕日を見つめる正也。
  正也M「九月を過ぎた頃から、日増しに日没が早くなったように思う」

○ メインタイトル

   「秋の風景」

○ 
サブタイトル

  「(第六話) 静と動」

○ 居間 夜
   ハイボールを片手にサラミを齧り、小説を読み耽っている恭一。
  正也M「秋の夜長は凛と空気が澄んで読書には快適だ。僕はそう、本を読む方ではないが、父さんは結構、静の読書派である。じいちゃんは正反対の動で、もっぱら剣道と畑作りを人生の生業(なりわい)としているから、本などは一冊も読まない」

○ 離れ 夜
   障子を開け恭之介の広間へ入る正也。正座姿で刀に打ち粉をする着物姿の恭之介。部屋に掛かった剣道師範免許、銃砲刀剣類登録証、警察暑長表彰状等の額。蛍光灯が明々と照らす稽古場仕立ての部屋。
  正也M「今夜は、じいちゃんの離れへ用もなく行ったのが運の尽きで、延々と長い講話に付き合わされる破目となってしまった」
  恭之介「おう、正也か…(打ち粉の手を止め)。父さん、まだ本、読んでたか?」
  正也  「うん…(畳に座って)」
  恭之介「そうか…。頭でっかちなどは、この世では無用の長物だ。人間は、実践あるのみ! 結果がものを云い、ものを生み、ものを救うんだぞ、正也。よ~く覚えておきなさい。まあ、頭脳労働は頭でっかちとは、また違うがな。兎も角、試行錯誤…ちょいと難しいか。要は、まず動いてやってみて、失敗するのはいいんだ」
  正也  「うん!(可愛く)」
  恭之介「まあ、恭一がそうだ、という訳じゃないが…」
   母屋から離れへと入り、部屋の障子を少し開ける道子。
  道子  「お父様、テーブルに置いときましたから…(隙間より部屋中を垣間見て)」
  恭之介「あっ、道子さん。今夜も、すまないですねえ…(障子を見ながら)」
  道子  「正也、早く寝なさいよ」
  正也  「うん…(やや小さめの声で)」
   障子を静かに閉める道子。打ち粉を続ける恭之介。じっと見守る正也。
  正也M「じいちゃんの晩酌は、いつも熱燗が二本の日本(二本)男児だ。父さんの洋酒党を小馬鹿にしている節もある。その実、ビールに限っては、いいらしい」
  恭之介「正也、もういい…。早く寝なさい」
  正也  「うん!(可愛く)」
   立って部屋を出る正也。障子を閉め母屋へ向かう正也。母屋へ入り、洗面所へ向かう正也。
  正也M「母さんの助け舟があったお蔭で、僕はじいちゃんから解放されることになった」

○ 洗面所 夜
   歯を磨く正也。遠目に見える台所で日本酒の晩酌をする恭之介の赤みを帯びた頭。テレビの落語に興じる恭之介の笑う顔。遠目に見える居間で洋酒を片手に本を読む、青みを帯びた恭一の真剣な顔。
  正也M「動で笑うじいちゃんの頭は、熱燗二本で赤みを帯びるという特性を有している特別天然記念物なのである。片や静の、青みを帯びた父さんの真剣な顔には目立った特長らしいものはない。そして…(◎に繋げて読む)」
   家事を終え、ほっとしながら肩を片手で叩く道子。
  道子  「…(無言の疲れ声)」
   正也がいる洗面所を通過して風呂場へ向かう道子。
  正也M「(◎)母さんは? というと、家事を終えたらしく、動で疲れ果てて漸く風呂に入り、僕達三人から解放されたところだ」
   遠目に見える、本を読み続ける恭一。部屋へ戻る正也。
  正也M「僕は三人の付き合いに疲れきったので、もう寝ようと思っている」

○ エンド・ロール
   灯りの漏れる湧水家の夜景(全景)。虫の音。揺れるススキ。
   テーマ音楽
   キャスト、スタッフなど
   F.O


※ 短編小説を脚色したものです。小説は、「短編小説 秋の風景☆第六話」をお読み下さい。

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シナリオ 秋の風景(第五話)お月見

≪脚色≫

      秋の風景

      
(第五話)お月見 

    登場人物
   湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   湧水道子  ・・母 (主  婦)[32]
   湧水正也  ・・長男(小学生)[8]


○ 居間(庭前の渡り廊下) 夜
   煌々と照らす月。月を並んで愛でる恭之介と正也。


○ メインタイトル

   「秋の風景」


○ サブタイトル

   「(第五話) お月見」

○ 居間(庭前の渡り廊下) 夜
   輝く月。月を沈黙して愛でる恭之介と正也。
  正也M「名月を 取ってくれろと 泣く子かな。こんな句を、じいちゃんから聞いたことがある。僕の場合、別に泣きはしないが、名月には付き物の月見団子を頬張りたいとは思う」
  恭之介「明日はいよいよ十五夜か…。朧月もいいが、何といっても中秋の名月だ。月々に 月見る月は 多けれど 月見る月は この月の月、というのもあるからな」
  正也  「ふ~ん」
  正也M「よく分からない僕は、じいちゃんの隣りで適当に合いの手を入れておいた。まあ、早口言葉のようだから学校で流行らせてみよう…とは思ったのだが」
   少しの間合い。名月を愛でる二人。
  正也  「じいちゃん、さっきの、どういう意味?」
  恭之介「ああ・・確か、道長という平安時代の偉い人が詠んだ和歌だ」
  正也  「そうなんだ」
  恭之介「そろそろ、寝なさい。また、母さんに怒られるぞ」
  正也  「うん」
   部屋へ戻る正也。月を愛でる恭之介。

○ 正也の部屋 朝
   小鳥の声。布団で寝ている正也。戸口から聞こえる恭之介の声。
  恭之介「正也、ちょっといいか」
  正也  「じいちゃん? おはよう。うん、いいよ。入ってよ(眠そうに)」
  恭之介「いや、ここでいい。昨日のな。あれは作者不詳なんだ。道長のは、この世をば 我が世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも なしと思えば、だった…」
  正也  「そうなの? …どうでも、いいんだけど」
  恭之介「いや、いかん。それは・・いかん。いかんいかん。じゃあな・…」
  正也  「うん…」
   唐突に布団から半身を起こし、両手を広げる正也。朝日が窓から差し込む。

○ 居間 夜
   煌々と照らす中秋の名月。庭前の渡り廊下の小机。小机の上に飾られた三方の月見団子と花瓶に活けられたススキ。庭傍の畳に陣
取り将棋を指す恭之介と恭一。どっかりと座布団に座わり、盤上に釘づけの二人。 
  正也M「夜になるとじいちゃんが云っていた中秋の名月が、僕の家に挨拶にやってきた」
   ふと、盤上から視線を庭先の中秋の名月に走らす恭一。
  恭一  「なんか、ススキと月が似合いますねえ…」
   声に促され、中秋の名月に視線を走らせる恭之介。
  恭之介「…そうだなあ。秋の月には確かに合う。おい、正也、すまんが電灯を消してくれ」

○ 台所 夜
   台所でテーブルの椅子に座り、新聞を読む正也。
  正也  「ああ、…ハイッ!」
  正也M「僕は師匠に即答して、ご機嫌を伺った」
   立つと、電灯のスイッチを切る正也。俄かに薄暗くなる家の中。蒼白い月明かりが照らす家の中。

○ 居間 夜
   薄暗くなった居間で将棋を指す二人。月明かりに照らされた恭之介と恭一。月明かりに照らされ、電灯のようにピカッと輝く恭之介の
禿げ頭。
  正也M「電灯を消した居間は妙な静寂が流れ、蒼白い月明かりが煌々と文明以前の時代を照らし出しているように思えた。特に、じいちゃんの禿げ頭は、磨いたタイルのようにテカっていた」
  恭一  「さあ、団子をお相伴にあずかりますか?」
  恭之介「おっ、そうだな」
   居間へ入ってくる道子。
  道子  「綺麗なお月様…。今、お茶にしますね」
  恭之介「道子さんは、いつもタイミングがいい!」
  正也M「ベンチャラの積もりでもないんだろうが、じいちゃんは、いつも母さんに一目、置いているように思える」
   静まり返った居間に月明かりが射す。黙して月を愛で、団子を頬張り、茶を啜る四人。突然、話しだす恭一。
  恭一  「父さんに叱られないんで、今夜は返って気味が悪いですよ」
  恭之介「ははは…(軽く笑って)。今日ぐらいは、な。まあ、そのうち纏めさせて貰う」
  恭一  「怖いですねえ」
   笑い合う、家族四人。
  正也M「中秋の名月が照らす居間に、いつまでも四人の笑い声が響いていた」

○エンド・ロール
   花瓶に活けられたススキと中秋の名月。
   テーマ音楽
   キャスト、スタッフなど
   F.O


※ 短編小説を脚色したものです。小説は、 「短編小説 秋の風景☆第五話」をお読み下さい。

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シナリオ 秋の風景(第四話)遺伝

≪脚色≫

      秋の風景

      
(第四話)遺伝    

    登場人物
   湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   湧水道子  ・・母 (主  婦)[32]
   湧水正也  ・・長男(小学生)[8]


○ 居間 夜
   着物姿の恭之介。開襟シャツにズボン姿の恭一。どってりと畳上の座布団に座り、将棋を指す二人。盤面に眼を釘づけにする二人。

○ メインタイトル

  「秋の風景」

○ 
サブタイトル

   「
(第四話) 遺伝」

○ 居間 夜
   唐突に、恭一の頭を見る恭之介。
  恭之介「お前…年の割には白髪(しらが)もなく、禿(はげ)もせんな」
  恭一  「えっ? ははは…。そのうち、父さんみたいになりますよ」
  恭之介「そうかぁ?」
  恭一  「ええ…間違いなく。遺伝的なものがありますから…」
  恭之介「そうとは限らんだろう…」
  恭一  「まあ…そうとは限りませんが。…王手!」
   突然、手を動かし、駒を掴むと音も高らかに盤面へ打ち据える恭一。ギクッ! として、盤面へ眼を落とす恭之介。
  恭之介「ウッ! …しかし、相変わらず付和雷同だな、お前の性分は…」
  恭一  「そうかも知れません」
  恭之介「やはり、付和雷同だ。そこは、『いいえ、違います』だろうが?」
  恭一  「はあ…(恐縮して)」」

○ 台所 夜
   台所テーブルの椅子に座りテレビを観る風呂上がりの正也。テレビのスイッチを切る正也。恭之介と恭一が将棋を指す様子を、美味そうにジュースを飲みながら遠目で眺める正也。冷蔵庫からビール瓶を出し、ツマミ、コップ(2)とともに盆に乗せる道子。盆を手に居間へ向かう道子。
  正也M「今夜も将棋の大一番が展開する居間である」

○ 居間 夜
   盆を手に、居間へ入る道子。
  道子 「お父様、ビールとおツマミ、ここへ置いときます」
   盆を長机に置く道子。
  恭之介「あっ、道子さん。いつも、すまないですねえ」
  恭一  「俺のコップは?」
  道子  「あなたの分も、あります!」
  恭之介「そんなこと訊くか? 普通…。忰(せがれ)とはとても思えん。儂(わし)なら当然、持ってきて下さったと思う。これが双方の信頼関係だ。お前、儂の遺伝子を持ってる筈なんだがなあ…」 
   渋い表情の恭一。聞いていない態で、微笑みながら台所へ向かう道子。

○ 台所 夜
   台所へ入る道子。
  道子   「正也、もう寝なさいよ…」
   洗濯機を見ようと、そそくさと通り過ぎる道子。
  正也   「うん…」
  正也M「母さんがバタバタしているのは家事であり、遺伝によるものではないだろう」

○ 居間 夜
   禿げ頭を手の平で、こねくり回す恭之介。
  恭之介「いや~、今日は参った、惨敗だ。頭がいいのも儂の遺伝か?(顔を赤らめ、笑顔で小笑いして)」
  恭一  「はい、そのようです…(小笑いして)」

○ 台所 夜
   恭之介と恭一の笑顔で話し合う姿(無音)。それを見る正也。コップを手に椅子から立つ正也。炊事場でコップを洗う正也。台所を去る正也。

○ 居間 前廊下 夜
   前廊下を歩く正也。首筋を同じ仕草で撫でる恭之介と恭一。ニタリと笑いながら部屋へ向かう正也。
  正也M「これは遺伝によるものに違いないと思った」
   電灯の光を受け、輝く恭之介の頭。
  正也M「光沢を放つじいちゃんの頭。こんな頭に父さんがなるのが大いに楽しみだ」

○ エンド・ロール
   談笑する恭之介と恭一。
   テーマ音楽
   キャスト、スタッフなど
   F.O


※ 短編小説を脚色したものです。小説は、「短編小説 秋の風景☆第四話」をお読み下さい。

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シナリオ 秋の風景(第三話) 焼き芋

 ≪脚色≫

      秋の風景

      
(第三話)焼き芋 
    登場人物
   湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   湧水道子  ・・母 (主  婦)[32]
   湧水正也  ・・長男(小学生)[8]


○ 裏庭 昼
   弱い北風が時折り吹く。落ち葉を掃く恭之介と正也。葉をすっかり落とした庭の樹木。

○ メインタイトル
   「秋の風景」

○ 
サブタイトル
   
(第三話) 焼き芋」

○ 裏庭 昼
   唄いながら落ち葉を箒で掃き集める正也。
  正也  「♪~垣根のぉ 垣根の回り角ぉ~ 焚き火だ焚き火だ 落ち葉焚きぃ~♪」
  恭之介「よし! 正也、これくらいでよかろう」
   手を止める恭之介。同じように、従って手を止める正也。恭之介と正也の間に出来た、こんもりとした落ち葉の山。袋のサツマ芋を取
り出す正也。
  正也  「芋は四本だったよね?」
  恭之介「ああ…、恭一と道子さんの分も焼いてやろう(柔和な笑みを浮かべて)」
   四本のサツマ芋を落ち葉の山へ入れる正也。
  正也  「じいちゃん! バケツに水、入れておいた」
   片隅に置いた二つのバケツを指さす正也。   
  恭之介「おお・・よく気づいたな。偉いぞ、正也」
   照れる正也。一つのバケツを手にして、落ち葉の山の周りに軽く水を撒く恭之介。火を着ける恭之介。勢いよく燃えだす落ち葉。
  恭之介「乾いているから、よく燃えるなあ、正也」
  正也  「そうだね…」
   燃える落ち葉に見蕩れる正也。落ち葉を継ぎ足す恭之介。煙を上げ、燃える落ち葉の山。
   O.L 


○ 裏庭 昼
   O.L
   ほぼ、灰になった落ち葉の山。木の枝で焼き芋を取り出す恭之介。
  恭之介「おう、焼けた焼けた。もうよかろう。正也、この新聞紙に包んで持ってってやりなさい」
   首を縦に振る正也。新聞紙に包む正也。
  正也M「僕は、じいちゃんの命令に従った。隊長の命令は絶対、なのである」
   恭之介に対し、停止敬礼して走り去る正也。

○ 茶の間 昼
   卓袱台に座っている恭一と道子。テレビを見ている二人。新聞紙に包んだ焼き芋を手に、走って入る正也。
  正也  「じいちゃんが、これを持ってってやれって…」
   新聞紙に包んだ焼き芋を示す正也。
  道子  「そう…、有難う(笑いながら)」
  恭一  「そうか…(感極まり、一瞬、目頭を熱くし)」
  正也M「芋一本で父さんを釣り上げたんだから、じいちゃんは大した釣り名人だと思えた」
   茶の間へ入ってくる恭之介。
  恭之介「もう食ったか?」
   目元が赤みを帯びた恭一。
  恭一  「いえ、これからです…(平静を保ち、素直に)」
  道子  「今、お茶を淹れますわ」
  恭之介「あっ、ああ…そうして下さい、道子さん」
   台所へ立って去る道子。

○   同  昼
   急須と三個の湯呑みが乗った盆を持って現れる道子。卓袱台の上で急須の茶を、湯呑みへ注ぐ道子。卓袱台を囲み、焼き芋を食べ始める三人。誰からとなく笑いだす三人。西日を受け、光り輝く恭之介の頭。

○ エンド・ロール
   焼き芋を食べながら談笑し、卓袱台を囲む笑顔の四人。
   テーマ音楽
   キャスト、スタッフなど
   F.O


※ 短編小説を脚色したものです。小説は、「短編小説 秋の風景☆第三話」をお読み下さい。

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シナリオ 秋の風景(第二話) 吊るし柿

≪脚色≫

      秋の風景
 
     
(第二話)吊るし柿 
 
   登場人物
   湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   湧水道子  ・・母 (主  婦)[32]
   湧水正也  ・・長男(小学生)[8]


○ 裏庭 朝
   蒼々と澄み渡った青空。オレンジ色の実をたわわにつけた一本の柿の老木。見上げる正也。剪定用長鋏で柿を収穫する恭之介。    
  正也M「僕の家には、かなり古い柿の木がある」
  正也  「じいちゃん、この柿、いつ頃からあるの?」
  恭之介「ん? ああ・・これなあ(しみじみと木を見て)。儂(わし)の子供時分には、もうあったな、確か…」
  正也  「ふう~ん。大先輩なんだね」
  恭之介「そうだな…(小笑いして)」 
  正也  「温泉にでも、ゆったり浸かって休んで貰いたいね」
  恭之介「(小笑いして)正也は優しいなあ…。柿の木が喜んでるぞ」
   大笑いする恭之介。釣られて笑う正也。実のついた枝を切り落とす恭之介。一生懸命、柿を籠へ入れる正也。

○ メインタイトル
   「秋の風景」

○ 
サブタイトル
   「
(第二話) 吊るし柿」

○ 茶の間 昼
   柿の皮を剝く恭之介。熟れた実を選別する正也。廊下から入ってくる恭一。
  恭一   「今年も嫌になるほど出来ましたね…」
  恭之介「フン! いい気なもんだ。お前に手伝って貰おうとは云っとらん! なあ、正也(剥きながら見上げ)」
   しまった! と、口を噤む恭一。
  正也   「ん? うん…」
   下を向いて聞いていない素振りで選別する正也。
  正也M「気のない返事で曖昧に暈し、飛んできた流れ矢を僕は一刀両断した」
   茶の間へ入ってくる道子。
  道子  「これでいいんですね?」

○ 籠に入れられた熟し柿の山

○ 茶の間 昼
  恭之介「はい、それを持ってって下さい。熟れてますから…」
  道子  「美味しいジャムが出来そうですわ」
   恭之介と正也の作業を、ただ、無表情に眺める恭一。
  正也  「吊るして、どれくらいかかるの?」
  恭之介「ひと月もすりゃ食えるが、正月前には、もっと美味くなるぞ(正也の顔を見て、微笑みながら)」
  恭一  「毎年、我が家の風物詩になりましたね」
  恭之介「ああ…、それはそうだな…(恭一の顔を見ず、穏やかな口調で)」
  正也M「今日は荒れないなと安心したのも束の間、父さんが、いつもの茶々を入れた」
  恭一  「吊るし柿は渋柿じゃなかったんですか?」
  恭之介「やかましい! 家(うち)のは、こうなんだっ!」
   駕籠の柿を持ち、笑って台所へ去る道子。ふたたび、氷になる恭一。
  正也M「じいちゃんは、これが我が家の家風だと云わんばかりに全否定した。よ~く考えれば、この二人の云い合いこそが我が家の家風なのである」
   西日が窓ガラスから射し込んで、恭之介の頭を吊るし柿のように照らす。神々しく輝く恭之介の頭。それを見て、ニヤッと笑う正也。

○ エンド・ロール
   沈み往く夕陽と、そのオレンジ光を受けて輝く恭之介の頭。
   テーマ音楽
   キャスト、スタッフなど
   F.O


※ 短編小説を脚色したものです。小説は、「短編小説 秋の風景☆第二話」 をお読み下さい。

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シナリオ 秋の風景(第一話)キノコ採り

 ≪脚色≫

      秋の風景
 
     
(第一話)キノコ採り 

    登場人物
   湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   湧水道子  ・・母 (主  婦)[32]
   湧水正也  ・・長男(小学生)[8]


○ とある山道 朝   
   蒼々と澄み渡った青空。黄橙に色ずく山の遠景。心地よい朝の陽射し。山道を歩く正也、恭之介の遠景。山道を長閑に歩く二人の近景。    
  正也M「今日は天気がよいので、裏山へキノコ採りに出かけた」
  正也 「よく晴れたね、じいちゃん!(ウキウキした口調)」
  恭之介「ん? そうだな…(青空を見上げて)」
  正也 「僕、初めてだよ、山は…」
  恭之介「ほお、そうだったか? 儂(わし)が元気なうちに、正也に、いろいろ教えておいてやろうと思おてな…」
  正也M「何を? と訊くと、じいちゃんはキノコのことを語りだした」
   笑って歩く二人の近景。笑って歩く二人の遠景。朝日を浴びる山の木立。小鳥の囀り。広がる青空。


○ メインタイトル
   「秋の風景」

○ 
サブタイトル
   「
(第一話) キノコ採り」


○   同  朝
   蒼々と澄み渡った青空。黄橙色に色ずく山の遠景。心地よい朝の陽射し。緩やかな山道の傾斜を登る二人。
  恭之介「この辺りは、シメジだ。ずっと登った向うの赤松の一帯はマツタケがよく出るな…」
  正也 「そうか! なるほど…」
   真剣に聞く正也。講釈する恭之介。
  正也M「一生懸命、さも、専門家きどりで得意満面なじいちゃんの鼻を、へし折るのも如何かと思え、僕は、そ知らぬ態で聞き上手になった」
   足を止める二人。辺りを見渡す恭之介。
  恭之介「どれ、ここから入るか・・」 
  正也 「うん!」
   山道から木々の茂みに分け入る恭之介。後方に従う正也。

○ 山中・木々の茂み 昼
   キノコを散策する二人。なかなか見つからない正也。すぐ見つけ、収穫する恭之介。それを見て、恭之介に駆け寄る正也。楽しそうに話す二人。
  正也M「僕達は、快晴の蒼々と広がる空と澄みきった空気を満喫しつつ散策を楽しんだ」

○ 山中・平坦地 昼
   下界の展望が利く山の平坦地に座り、弁当に舌鼓を打つ二人の姿。青空にポッカリ浮かぶ秋の雲。
   O.L

○ 家の洗い場 昼下がり
   O.L 
   青空にポッカリ浮かぶ秋の雲。洗い場でキノコを洗う正也。
 正也M  隣りで身体を冷水で拭く恭之介。
  「じいちゃんは年の功というやつで、キノコ採りの名人と思えた。収穫量は、まずまずだった」
   部屋の外窓を突然、開ける恭一。正也か洗う下の洗い場を見下ろす恭一。
  恭一 「おお…、随分、採れたじゃないか!」
   手を止め振り返り、見上げる正也。
  正也 「松茸に黄シメジ、…ナメコもあるよ」
  恭之介「お前も来りゃよかったんだ…(身体を冷水で拭きながら)」
  恭一 「今日は生憎(あいにく)、会社から持って帰った仕事がありましたから、ははは…又(また)。又、この次に…(軽い笑いを交えて)」
  恭之介「お前のは、いったいどういう又なんだ?又、又、又、又と、又の安売りみたいに…(少し怒り顔で)」
   洗いながら、二人の遣り取りを眺める正也。
  正也M「上手いこと云うが、じいちゃんは相変わらず父さんには手厳しい。父さんも只者ではなく、馴れもあって、そうは気に留めていない」
  恭一 「安売りと云やあ、この不況で私の会社の製品、値下げなんですよ」
  恭之介「そんなこたぁ、誰も訊いとりゃせん!(怒って)」
   返せず、沈黙する恭一。台所の戸を開けて出てくる道子。
  道子 「ナメコとシメジは汁物にして、松茸は炊き込み御飯と土瓶蒸しにでも…(キノコを眺めながら)」
  恭一 「偉く豪勢じゃないか…(道子に向って)」
  道子 「あなたの給料じゃ、手が出ないわ(窓を見上げて、嫌味っぽく)」
  正也M「母さんは珍しく嫌味を云った」
  恭之介「…その通りだ、恭一。道子さん、上手いこと云いました。これはタダですからな」
   しくじったか…という態で、窓を少しずつ閉じる恭一。

○ 台所 夜
   四人の食事風景。賑やかに語らう恭之介、道子、正也の三人。テレビを見つつ、一人、黙々と箸を動かせる恭一。
  正也M「その晩は賑やかにキノコ料理を堪能した。でも、父さんだけは一人、黙々と箸を動かせていた」

○ エンド・ロール
   テーブルに並べられたキノコ料理を食べながら談笑す
   る家族四人。
   テーマ音楽
   キャスト、スタッフなど
   F.O


※ 短編小説を脚色したものです。小説は、「短編小説 秋の風景☆第一話」をお読み下さい。

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2011年9月14日 (水)

☆お知らせ☆

 本日、ブログを開設いたしました。よろしく、お願い致します。順次、作品を掲載させて戴きたいと思っております。どうぞ、お楽しみに!

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