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2011年12月

2011年12月31日 (土)

☆時代劇シナリオ・影車・第三回☆生臭坊主(10)

    影車      水本爽涼
    第三回 生臭坊主(10)


45.  同 (寝所の前廊下)・夜
    家臣①、座ったまま、ウトウトしかける。背後へ静かに近づく留蔵。   
    家臣①の口を押さえ、両眼へ真っ赤な大鎌の刃を押し当てる。
    (焼きいれの音ジュ~S.E)呻く家臣①。(焼け爛[ただ]れた両眼)
    なおも、その大鎌で頚動脈(首)を掻き斬る。派手に吹き散る血し
    ぶき。家臣①、刀の柄(つか)に手をかけたまま、前へと崩れ落ち
    る。留蔵、それを見届け、闇へと消える。家臣②、物音を察知して、
    走りながら寝所へと近づく。前へ伏す形で息絶えた家臣①に気
    づき抱え起こす家臣②。その時、ふたたび真上の天井板が音もな
    くスゥーっと開き、家臣②めがけて鉄製大丼鉢が垂直に落下。
    (鐘の音S.E)呻く家臣②。頭へスッポリ被った大丼鉢。S.E=鐘
    楼で撞(つ)く鐘の音(グォ~~ン))家臣②、被ったまま息絶え、崩
    れる。
    (テーマ曲のオケ3 オフ)

46.  病院の診察室・現代 C.I
    シーン42.と同じ診察室。
   医師  「今日は、重なりますなぁ…。お気の毒です(軽く頭を下げ
        て)」
    と、カメラ目線で素人っぽく笑う。
    C.O
47.  白河宗庵の屋敷(寝所の前廊下)・夜

    伝助が近づき、家臣①を担ぎ、
   伝助  「ふぅー、今日は大忙しでぇ。まだ一人、いやがる…」
    と云って闇へと消える。縄で下へ降りた又吉、大丼鉢を家臣②
    の顔から取り、
   又吉  「今日は手間取っちまったぜ…」
    と呟き、鉢を背の袋に納めると、縄を器用に昇る。

48.  江戸の街通り(細道の路地)・夜
     (テーマ曲のオケ1 イン)
     店へと帰途を急ぐ但馬屋多兵衛。
   多兵衛「色坊主の相手で、すっかり遅くなってしまったよ」
     と愚痴り、早足に急ぐ。そこへ、闇から現れた仙二郎、行く手を
     塞ぐ。      
   多兵衛「(手提灯で確認して)これはこれは、お役人様。夜分、お
        役目ご苦労に存じます(軽く会釈して)」
     と云い終わらないうちに、仙二郎、脇差しを抜くと、近づいて心
     臓を一突き。
   仙二郎「悪いが、今日は役人じゃねえんだ。娘の怨み、晴らさせ
        て貰うぜ。地獄へ落ちろぃ!」
     と云って、深く心臓を抉(えぐ)る。(ブシュブシュっという音S.E)
     多兵衛、仙二郎が刃を抜くと、崩れ落ちる。燃える手提灯。
     S.E=豚や牛の肉塊をナイフ等で切り裂く音。
   仙二郎「伝助様、今日は、大仕事だぜ…」
     多兵衛の息が絶えたのを見届け、闇へと消える仙二郎。
     (テーマ曲のオケ1 オフ)
49.  若年寄・稲葉下野守の屋敷(寝所)・夜
     (テーマ曲のオケ2 イン)
     寝息を立てる稲葉。そこへ音もなく天井から舞い降りた、お蔦。
     静かに稲葉の布団へ近づくと、馬乗りになり、鼻と口へ濡れた
     一枚の和紙を貼り付け、そのまま手で押さえ続ける。息苦し
     さで目覚める稲葉。 しかし力尽きて、そのまま絶命。その死
    に顔を見遣って、
   お蔦  「世のためだからね。悪く思わないでおくれよ…」
     と呟き、闇へと一瞬に消える。
    (テーマ曲のオケ2 オフ)

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2011年12月30日 (金)

☆時代劇シナリオ・影車・第三回☆生臭坊主(9)

    影車      水本爽涼
    第三回 生臭坊主(9)


37.  同 (寝所)・夜
    (テーマ曲のオケ1 イン)
    青山、布団へと入る。燭台の灯りが微かに揺れると同時に、天井
    裏に忍んでいた、お蔦、音もなく舞い降りる。青山の背後に素早く
    近づくと片手で青山の口を封じ、もう片方の手で背中の三味線の
    仕込み刀を抜く。もがく青山。有無を云わさず頚動脈(首)を居合い
    斬りする、お蔦。吹き出す血しぶき。青山、お蔦が手を離すと、赤
    く染まった布団へ無言で崩れ落ちる。
38.  白河宗庵の屋敷(別棟の寝所)・夜
    宗庵が娘との睦み事を終え、満足げに布団を抜け、身嗜(だしな)
    みを整えて寝所を出る。
39.  同 (寝所の前廊下)・夜
    厠(かわや)へと向かう宗庵(白衣姿)。満足した口調で、控えの家
    臣①に、
   宗庵  「もうよい、明日にでも始末せい」
    と、冷たく云い捨てて廊下を歩む。その後ろ姿に、
   家臣①「ははっ!」
    と、恭順の声を出す。
    (テーマ曲のオケ1 オフ)
40.  同 (厠)・夜
    (テーマ曲のオケ2 イン)
    宗庵が小便をしている。その時、天井の戸板がスゥーっと音もなく
    開き、鉄製の大丼鉢が宗庵めがけて垂直に落下。(鐘の音S.E)    
    呻く宗庵。頭へスッポリ被った大丼鉢。S.E=鐘楼で撞(つ)く鐘の
    音(グォ~ン) 宗庵、被ったまま崩れる。
    (テーマ曲のオケ2 オフ)
41.  頭部のレントゲン映像 C.I
    シャウカステン上のレントゲン撮影されたフィルム映像。
    C.O
42.  病院の診察室・現代
    医師(配役は無名の外科医)が椅子に座りカルテを書いている。カ
    メラ、医師の姿。医師、シャウカステンのレントゲン撮影されたフィ
    ルム映像を見た後、カメラ目線で素人っぽく、
   医師  「今回も頭蓋骨陥没骨折による即死ですなぁ(笑って)。お気
        の毒でした…(軽く頭を下げて)」
43.  白河宗庵の屋敷(厠)・夜
    (ふたたび テーマ曲のオケ2 イン)
    いつの間にか忍び込んだ伝助、大丼鉢を床へ置き、宗庵を担ぎ去
    る。天井から縄で伝い降りた又吉、大丼鉢を背の袋に入れ、両手
    に金具付手袋を装着すると、器用に縄を昇る。
    (テーマ曲のオケ2 オフ)
44.  同 (寝所近くの間)・夜
    (テーマ曲のオケ3 イン)
    留蔵が携帯用の鞴(ふいご)を手で押して準備する。真っ赤に焼け
    た鉄の大鎌の刃、闇に映える。無言で頷き確認すると、それを手
    に障子戸をスゥーっと開ける留蔵。

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2011年12月29日 (木)

☆時代劇シナリオ・影車・第三回☆生臭坊主(8)

    影車      水本爽涼
    第三回 生臭坊主(8)


32. 白河宗庵の屋敷前・夜
    仙二郎が表門から遠ざかる姿。
   仙二郎「金の出所(でどこ)は但馬屋か…。これもワルだな」
    と呟いて去る。
33. 河川敷・深夜
    二人の娘が切り捨てられて倒れている。立ち去る侍(宗庵の家
    臣①、②)二人。その様子を離れた木陰から窺う、お蔦の姿。
   お蔦  「とうとう、やっておくれだよ。まあこれで手筈だろうねぇ
        …」
34. 河堀(橋の上)・夕刻
    柳、屋形船あり。いつものように、仙二郎と、お蔦が話をする。
    仙二郎、欄干に凭(もた)れて、
   仙二郎「そうかい、とうとうやっちまいやがったか…」
   お蔦  「阿漕(あこぎ)な奴らだよぉ」
   仙二郎「手筈だな! 皆を集めろい。明日の宵、五ツ、いつもの
        小屋だ…。少し派手にやらかすか」
    と云って笑い、歩き去る仙二郎。お蔦も瞽女(ごぜ)に戻って、
    反対側へと消える。
35. 河川敷の掘っ立て小屋・夜(五ツ時)
    仙二郎、留蔵、又吉、伝助、お蔦といった、いつもの面々が
    一堂に会する。
   仙二郎「若年寄の稲葉、目付の青山、これは、お蔦、お前(めえ)に
        任せた」
   お蔦  「あいよっ!」
   仙二郎「他の者(もん)は、各自、手筈どおりやってくれ」
    留蔵、又吉、伝助、頷く。
   仙二郎「お蔦、今度ばかしは、ちと的(まと)がでけぇ。命の保障
        がねえから、お前(めえ)には先渡しだ、受け取れ。しく
        じるなよ」
    と、小判を一枚、土間へと置く。
   お蔦  「(少し笑いながら))諄(くど)いねぇ、帰れなきゃ、化けて
        出てやるよ(土間に近づき、一両を拾い)」
   仙二郎「口の減らねぇ、お姐(あね)ぇさんだ」
    と嫌みを云う仙二郎。一同、笑う。
   仙二郎「いつもの手筈でいくぜ。伝助、稲葉は晒(さら)さなくてい
        い。お前 (めぇ)が、しくじったら大変(てえ)へんだからな。
        …そい   じゃ、お開きでぇ」
    伝助、頷いた後、土間の蝋燭を吹き消す。暗黒の闇。
36. 青山監物(けんもつ)の屋敷(廊下)・夜
    青山(白衣姿)が寝所へと向かう。
   青山  「昨夜は、いい味見をさせて貰った。あの娘、殺すには惜
        しいのう…。口封じか…、但馬屋の申すことも一理ある。   
        まあ、仕方あるまいて…(嗤い)」
    と云って寝所の障子戸を開ける。廊下に控える側用人、青山に   
    座したまま一礼。
   青山  「大儀!」
    とだけ声をかけ、寝所へと入り障子戸を閉める。

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2011年12月28日 (水)

☆時代劇シナリオ・影車・第三回☆生臭坊主(7)

    影車      水本爽涼
    第三回 生臭坊主(7)

29.  同 (中書院・奥座敷・天井裏)・朝
    忍び込んで下の様子を窺う、お蔦。一部始終を聴き終えて、
    お蔦  「こりゃ、庶民が泣く訳さね。ここにもワルが一匹いたよ」
    と小さく呟いて、闇の中へ消える。
30.  うどん屋(内)・昼
    仙二郎、宮部と昼食にうどんを食べている。後ろの町人が二人、
    何やら話す。
   町人A「ぶっそうな世の中に、なっちまったもんだぜ。街の娘達ゃ
        よう、夜分どころか日中(ひんなか)だって外を歩けねえっ
        てんだからな」
   町人B「お役人は、いってえ何してんだろうねえ(仙二郎達を見て)」
    仙二郎、宮部、その言葉を背に受けて、思わず喉を詰めかけ、箸
    を置き、茶を飲む。
   町人A「まあ、お上(かみ)のしなさるこってぇ。俺達貧乏人風情が愚
        痴ったところで、仕方ねえやな」
   町人B「違(ちげ)えねぇ!」
   町人A「おめえよ、それがな…(声を小さくして)余(あんま)り、おおっ
        ぴらにゃ云えねえんだがな…、奉行所が手出しできねえん
        じゃねえかって云う者(もん)もいるんだ」
   町人B「それってよぉ、ご大層なお方が裏にいらなさるってことか?」   
   町人A「まあ、話の筋からすりゃ、そうなるわな」
   町人B「おお怖(こえ)ぇ…。世も末だぁ」
    仙二郎と宮部、二人の掛け合いを聴いて、顔を思わず見合わせ
    る。気まずさを感じた二人、聴かなかった素振りで、うどんの残り
    を食べ急ぐ。
31.  白河宗庵の奥座敷(別棟)・夜
    大奥出入りを許されている呉服商、但馬屋の多兵衛が来ている。
   多兵衛「腰元、女中達の聞こえも宜しいようで…、これも偏(ひとえ)   
        に、お坊主様のお引き立ての賜物と喜んでおる次第で御
        座居ます」
   宗庵  「そのように申されては、恐縮致しますなぁ…(笑って)」
   多兵衛「何をご謙遜なされますやら…。大奥では今や、お坊主様の
        ご威光を受けぬ者は、おりますまい。今後とも、よしなにお
        引き立てのほどを…」
    と云って、脇に置いた風呂敷包みを解き、熨斗(のし)紙に包まれ
    た木箱(二十五両包金が入った五百両)を差し出す。
   多兵衛「これは、ほんの僅(わず)かばかりでは御座居ますが…」
   宗庵  「毎度のご進物、痛み入る」
    と、慣れた手つきで手元へ引き寄せる。
   宗庵  「実はな…、今宵、呼び立てたは他でもない。城中のさるお
        方から、また御所望がありましてな。手ごろな娘はおりま
        せぬか?」
   多兵衛「…、この前、お世話致しました娘御(むすめご)は?」
   宗庵  「それよ。…あの娘は今、座敷牢に閉じ込めておりますが、
        まだ手離すのは惜しゅうてな(照れ笑いして)」
   多兵衛「他の娘どもは?」
   宗庵  「もう、始末しておる頃かと…」
   多兵衛「惜しいことを…。二人とも、まだ五日(いつか)ばかしでご
        ざいましょうほどに…。どちらかを、そのお方へとは、い
        きませなんだか」
   宗庵  「味見した娘を献上というのも憚(はばか)られましてな…
        (嗤う)」
   多兵衛「お悪いお方じゃ、お坊主様は(嗤って)」
   宗庵  「いやいや、お恥ずかしき次第。だがのう、其許(そこもと)   
        も、それを知っておられる上でご助力くださるのじゃから、
        かなりお悪い」
    二人、顔を見合わせて嗤い合う。

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2011年12月27日 (火)

☆時代劇シナリオ・影車・第三回☆生臭坊主(6)

    影車      水本爽涼
     第三回 生臭坊主(6)


25.  長屋(留蔵の家の中)・夜
    干物を摘んで茶碗酒を飲む留蔵。かなり酩酊している。そこへ、入
    入口の障子を破り、紙包みの石つぶてが投げ込まれる。留蔵、幾
    らかフラついて土間へと降り、拾って乱雑に読む。
   留蔵  「…久しぶりだな」
    ひと言、そう呟いて、何もなかったように上へ戻り、干物を齧りな
    がら行灯へと近づくと、その紙に火をつけ煙草盆へ。
26.  飛脚屋(店前)・昼
    お蔦が杖をついて、態(わざ)と店の入口へと近づく。ごった返す
    人の動き。飛脚達の出入りが激しい。お蔦に気づいた店の者。
   店の者「姐(ねえ)さん、危ないよ。押し倒されたら怪我しちまうから
        ね。さあさあ、あっちを通りな」
    その声に気づく伝助、素早く近づくと、お蔦の手をとって誘導する。
27.  同 (店横の路地)・昼
    人込みのない店横の路地まで来て、
   伝助  「姐(あね)さん、何の用で?」
   お蔦  「いやね、十手の言伝(ことづて)だよ。手筈が近いから心し
        ておけってさ(小声で)」
   伝助  「的(まと)は誰なんです?(辺りを窺い、小声で)」
   お蔦  「茶坊主と目付…辺りだね。今のところ…(小声で)」
    そう云うと、お蔦、歩き去る。暫(しばら)く歩き細目を開ける。
    人の気配がないことを確認すると屋根へと飛び、姿を消す。(一瞬
    の早業) 見遣る伝助、お蔦の姿が消えると、
   伝助  「与三父っつぁんの仕事場けぇ…」
    と小さく呟き、店へ戻る。
28.  江戸城中(中書院・奥座敷)・朝
    宗庵が老中の稲葉に謁見している。
   稲葉  「青山監物(けんもつ)推挙によるのだぞ。過分の沙汰と有り
        難く思わねばのう(脇息に片腕を預け)」
   宗庵  「ははっ!(ひれ伏して)」
   稲葉  「そう堅苦しゅうせずともよいわ。面(おもて)を上げい」
    宗庵、ゆっくりと頭を上げる。
   稲葉  「ところで…、そちは色の道にも長(た)けておるそうよの?」
   宗庵  「めっそうもないことに御座居まする(また、ひれ伏して)」
   稲葉  「監物から、そう聞き及んでおるぞ。身共(みども)にも取り計
        らえぬか?(笑って)」
   宗庵  「ははっ! そのようなことなれば、容易(たやす)き事。孰(い
       ず)れ、頃合いを見まして献上に及びまする…」
   稲葉  「献上のう? 献上か、ははは…。急がずともよいでな。楽し
        みにしておるぞ」
   宗庵  「ははっ!

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2011年12月26日 (月)

☆時代劇シナリオ・影車・第三回☆生臭坊主(5)

    影車      水本爽涼
    第三回 生臭坊主(5)

20.  白河宗庵の屋敷(別棟の寝所)・夜
     宗庵が娘と睦みごとの最中。上から俯瞰して撮る二人の姿。嫌
     がりつつも、宗庵の手練手管に悶える娘の顔。そのとき、障子
      向こうから声。
   家臣①「お坊主様!」
     宗庵、行為を中断し、煙たそうに、
   宗庵  「なんじゃ、かような夜分に…」
     半身を起こす宗庵。瞬間、乱れた肌襦袢を掻き合わせる娘。裸
     足の乱れが行灯の光に映え、艶っぽい。宗庵も白衣を整えて、
   宗庵  「苦しゅうない」
     と、威厳を込めて云う。家臣①、障子戸を開け、座したまま一礼
     し、
   家臣①「明朝、辰の下刻、登城せよとの、お達しが、ほん今、若年
        寄の稲葉様から御座居ました」
   宗庵  「そうか…。御苦労であった。下がって休め」
   家臣①「ははっ!」
     一礼して障子戸を閉める家臣①。
   宗庵 「興が冷めたわ…(娘を見て)。そなたも下がって休むがよい」
     娘、立つと足早に寝所を出る。
   宗庵  「思いのほか、首尾よくいったとみえる(北臾笑[ほくそえ]ん
        で)」
21.  同 (寝所の前廊下)・夜
     寝所から少し離れた廊下の隅に座り、不寝番をする家臣②、
     出てきた娘を連れ去る。
22.  同 (座敷牢の部屋)・夜
     かどわかされた娘二人が牢の中の布団で寝ている。そこへ家   
     臣②に連れられた娘が、やってくる。家臣②、錠前を鍵で外す
     と、木の格子牢の扉を開け、
   家臣②「入れ!(娘を押して)」
     と云う。娘が牢に入ると、ふたたび施錠して去る。牢内に灯りは
     なく、牢外に僅かに一つある燭台の蝋燭の炎が微かに揺れる。   
     娘達が、すすり泣く声。
23.  同 (座敷牢の天井裏)・夜
     お蔦が忍んでいる。天井裏で宗庵達の悪事の所業を探った後
     である。下で泣く娘達の様子を見ながら、
   お蔦  「やれやれ…お天道様は、どこにいなさるのかねぇ。それに
        しても、ありゃ極悪坊主だよ。じれったいが、今日は戻る
        とするか」
24.  河堀(橋の上)・夕刻
     柳、屋形船あり。仙二郎と、お蔦が話をしている。定位置で欄
     干に凭れる仙二郎。
   仙二郎「どうだったい?」
   お蔦  「ありゃ、ひどいねぇ。今すぐでも手筈をかけて貰いたいく
        らいの奴さね」
   仙二郎「やはり俺の読みどおりだったようだな…。だが、前(めえ)に
        も云ったと思うが、殺しの証(あかし)が攫(つか)めねえと、
        手筈はできねえ」
   お蔦  「もうひと押し、するかい?」
   仙二郎「そうだな」
   お蔦  「他の連中にも云っとくかね」
   仙二郎「ああ…、手筈が近(ちけ)えってことだけは云っといてくれ」
   お蔦  「分かったよ(仙二郎の前へ手の平を広げて催促し)」
   仙二郎「すまねえ。今日はこれだけしか持ち合わせがねえが、勘弁
        弁してくれ」
    と、両手を合わせ詫びた後、一朱銀、一枚を袖から出し、手渡す。
   お蔦  「まあ、いいか…(不満げに)」
    と云って一朱銀を受けとると瞽女(ごぜ)に戻って去る。仙二郎、そ
    れを見遣り、反対側へと歩き始める。
   仙二郎「へへっ、もう一朱あったんだがな。よし、今夜は久しぶりに鴨
        鍋にでもするか…(反対側の袖から一朱銀、一枚を取り出し、   
        眺めながら)」
    仙二郎が歩く後ろ姿。仙二郎、鼻歌で浮かれて遠ざかる。

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2011年12月25日 (日)

☆時代劇シナリオ・影車・第三回☆生臭坊主(4)

    影車      水本爽涼
    第三回 生臭坊主(4)

16.  白河宗庵の屋敷(別棟の奥座敷)・昼
    宗庵が目付の青山下野守を饗応している。豪華な馳走の膳。
   宗庵  「この前の娘は、お気に召しましたかな?(盃に酒を注ぎ)」
   青山  「ふふふ…(嗤って)、それなりにのう」
   宗庵  「青山様は、お目が肥えておられるまする故、当方もお探し
        申すのに難儀致します(盃に酒を注ぎ足し、小笑いして)」
   青山  「何を申す。そちの足元にも及ばぬわ、ワハハ…」
    と、一笑に付す。
   草庵  「つきましては、私めの坊主頭への差配、何卒、よしなに」
   青山  「おお…いつぞや申しておったのう。…若年寄の稲葉様に、
        近々、話すとしよう」
   宗庵  「これは些少では御座居まするが…」
    傍の木箱を差し出し、蓋を開ける宗庵。中には山吹色に輝く二十
    五両包金の塊が詰まっている。チラッと下を見遣る青山。
   青山  「これは済まぬのう。だが、云っておくが、身共が手に致す
        のではないぞ。全て稲葉様へ献上の為じゃ(箱を引き寄せ
        て)」
   宗庵  「はい、分かっておりますとも」
17.  江戸の街通り(一筋の広い道)・昼
    宮部と仙二郎が連れ立って歩いている。定廻り中の二人。時折   
    り、前後を行き来する町人達。
   仙二郎「宮部さん、娘の、かどわかしゃ、この月に入って何件でし
        た?」
   宮部  「それよそれっ。えっとね…、確か三件だったかしら。それも、   
        立て続けでしょ?」
   仙二郎「ええ、みたいです。いったい誰の仕業なんでしょうねぇ?」
   宮部  「後(あと)が酷(むご)
いわね。最近では、お目にかからない
        事件ですよ」
   仙二郎「はい。なにか、大きな黒幕が動いてるように思うんですが
        …」
   宮部  「私には、そんな、ややこしいことは分かんないけどさ」
   仙二郎「ですよね。…もう少し廻って、昼にしますか?」
   宮部  「そうね、そうしましょ」
    二人、話しながら遠退く。
18.  茶屋(狭い路地)・夕暮れ時
    門付けを、いつものように済ませた、お蔦。遠くから様子を窺う
    仙二郎、二階の障子が閉められるのを見届け、お蔦に近づく。
   仙二郎「歩くぜ…」
    足早やに歩く仙二郎の後方を、お蔦も歩く。
19.  河堀(橋の上)・夕暮れ時
    柳、屋形船あり。話す二人。仙二郎、いつもの定位置で欄干に
    凭れている。
   仙二郎「悪いが、また、ちょいと探って貰いてぇんだが…」
   お蔦  「今度は、どこのどなただい?」
   仙二郎「茶坊主の白河宗庵だ。俺の睨んだとこじゃ、こいつぁどう   
        も、続いてる娘達の、かどわかしと関係してやがる節が
        ある」
   お蔦 「ひと月も経ちゃぁ、殺されっちまうっていうやつだろ? あ
        りゃ酷いねぇ」
   仙二郎「ああ、そうなんだがな。奉行所も今のとこ、お手上げでよ」
   お蔦  「お前さんが云うのは怪(おか)しいよ」
   仙二郎「違(ちげ)ぇねえ。やってらんねぇな。まあ、ひとつ、頼まぁ」
   お蔦  「分かったよ。三日、貰うよ」
   仙二郎「ああ、それでいい。今の茶屋で今時分(財布を取り出し
        て)」
   お蔦  「ほぉ~、今日は催促がいらないようだねぇ」
    仙二郎、苦笑しながら、一朱銀を二枚、手渡して去る。お蔦も
    瞽女(ごぜ)に戻り、杖をついて反対側へと歩きだす。

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2011年12月24日 (土)

☆時代劇シナリオ・影車・第三回☆生臭坊主(3)

    影車      水本爽涼
    第三回 生臭坊主(3)


12.  江戸の街通り(一筋の広い道)・夜
    仙二郎が屋台に向かって歩いている。
   仙二郎「いけねえ、霰が降ってきちまったぜ(慌てて小走りする)」
13.  街通りの蕎麦屋の屋台(内)・夜
    仙二郎、駆け込んで暖簾を潜る。
   仙二郎「いつもの、かけだ」
   又吉  「へいっ! 毎度」
   仙二郎「汁は、たっぷり入れてくれ。ふぅ~、寒くって、いけねえや。
        風邪、ひいちまわぁ」
    又吉、微かに笑う。
   仙二郎「昨日(きのう)は、うっかり寝ちまってな。帰(けえ)って、空きっ
        っ腹に一杯(いっぺえ)ひっかけたのが悪かった。朝まで白
        河夜船よ」
   又吉  「結構な、ご身分で(笑って)」
   仙二郎「まあ、そういうねえ。…話ゃぁ変わるが、昨日(きのう)の茶坊
        主様の行列、お前(めえ)も見たろ? 夜船のよぉ」
    又吉、できた蕎麦の鉢を仙二郎の前へ置きながら頷いて、
   又吉 「へいっ、お待ち!」
    仙二郎、汁を先に啜り、その後、割り箸を取る。腹が空いていたの
    か、貪るように食べ始める。無言のまま半ば食べ、
   仙二郎「ありゃ、白河宗庵といってな、余(あんま)り出来のいい茶坊
        主じゃねえみてえだ。飽くまで、俺の勘なんだがな。続いて
        る娘達の、かどわかしゃ、奴に違(ちげ)えねえと踏んでんだ
        がな」
    と云って、また残りの蕎麦を食べる。

   又吉  「その噂は、俺も聞いてるぜ。街中の、お店(たな)の娘が震え
        てるみてえだな(影車の口調で)」
    と、又吉、呟くように云う。
   仙二郎「お蔦に調べ、入れさせる…」
    食べ終えた仙二郎、ぽつりと云い、財布を取り出し、十六文の銭
    を置
く。それとは別に、一朱銀(こつぶ)二枚を加えて、また置く。
   仙二郎「お前(めえ)も何かと入用だろ? とっときな(立ちながら)」
   又吉  「(蕎麦屋の口調に戻り)へいっ! 有り難(がと)やした!(笑
        顔で)」   
    と、暖簾を上げて出ようとする仙二郎の後ろ姿に声をかける。
14.  同 (外)・夜
    仙二郎、空を眺めて、
   仙二郎「おう、霰も止んだみてえだな。それにしても冷えらぁ…」
    と呟いて立ち去る。凍てた夜風が吹き、屋台の風鈴をチリン!
    と鳴らす。
15.  白河宗庵の屋敷(普請中)・昼
    小忙しく働く大工や左官の職人達。その中に与三もいる。(現在
    でいうリフォームの現場)

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2011年12月23日 (金)

☆時代劇シナリオ・影車・第三回☆生臭坊主(2)

    影車      水本爽涼
    第三回 生臭坊主(2)


5. 江戸の街通り(細道)・朝
    人通りの少ない奉行所への近道。
   仙二郎「ははは…、夜廻りを、うっかりしていたぜ。まあ、分かるめ
        い。それよか、今、何時(どき)でぇ?」
    と、呑気に呟きながら、急ぎ足で奉行所へと向かう。
6. 北町奉行所(同心部屋)・朝
    仙二郎、慌ただしく駆け込んでくる。机に向かう全員が、一斉に
    仙二郎を見る。
   村田  「こらぁ! 板谷。今、何時(どき)だと思っとるんだ!!」
    落ちた村田の雷に、たじろぎながら、仙二郎、自席へと座る。
   宮部  「駄目じゃないの(顔を机に向けた状態で、横目だけ流し)」
    と、小声で囁く。遠くから、
   村田  「これで今月は五度目だな!! 欠勤簿は、お前の名だけだ!!」
    同心部屋に笑声が溢れる。
   村田  「後から書いておけよ。もう慣れただろう(少し嫌みで嗤う)」
    ふたたび、同心部屋に笑声が溢れる。
7. 長屋(伝助の家の前)・夕刻
    通い働きの伝助が、飛脚屋仕事を終え、帰ってくる。戸を開け、中   
    へ入る伝助。
8. 同 (伝助の家の中)・夕刻
    戸を閉め、家へ入ったとたん、
   伝助  「そうでぇ! 与三の父っつぁんに板切れを貰わなくちゃなん   
        ねえな…。飯前(めえ)に寄っか…、いや、まだ帰(けえ)って
        ねえかも知れねえ」
    迷いながらも伝助、ふたたび外へ出る。
9. 同 (伝助の家の前道)・夕刻
    出てきた伝助、隣の与三の家へ行く。
10. 同 (与三の家の前)・夕刻
    入口の障子戸の前で、
   伝助  「父っつぁん! 伝助だ。いるけぇ(中を窺うように)」
    中から、与三の声。
   与三  「おう、伝公か。まあ入んねぇ」
    伝助、戸を開けて入る。
11. 同 (与三の家の中)・夕刻
    伝助が戸を閉めて入った途端、
   与三 「切れっ端なら、そら、(指で示して)そこにあるのを持って行き   
        な。でもよぉ、毎度の、
こったが、いってえ何に使うんだ?」
   伝助  「…知れたこった。叩き割って、飯の焚きつけだぁな」
   与三  「そうけぇ…。若(わけ)ぃのに感心なこった。そいでもな、暫
        (しばら)くは大仕事にかかるかるから、次は当てにすんな」
   伝助  「どういうこってぇ、父っつぁん」
   与三  「いやなあに、白河様の御屋敷の普請に加わるのよ」
   伝助  「白河様ってえと、御数寄屋坊主の白河宗庵かい?」
   与三  「そうよ。凄(すげ)ぇ羽振りだ。飛ぶ鳥を落とす勢いだって聞   
        くぜ」
   伝助  「ご大層な話じゃねえか」
   与三  「あたぼうよ(自慢げに)」
   伝助  「はっ、云ってらぃ。飯があるから、そいじゃあな。これ、貰っ
        てくぜ」
    と云って、何食わぬ顔で板や棒状の材木の幾つかを選んで持ち
    去る。

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2011年12月22日 (木)

☆時代劇シナリオ・影車・第三回☆生臭坊主(1)

  影車     水本爽涼
    第三回 生臭坊主(1)

   あらすじ
 大工の与三(よぞう)は、手筈の立て札の材料を入手する伝助とは好
誼(よしみ)がある。その与三が、腕を見込まれ、幕府お抱えの御数寄
屋坊主、白河宗庵の屋敷普請に借り出されることになった。宗庵の羽
振りのよさを与三から聞く伝助。宗庵は組頭として数奇屋坊主を束ね
ているが、裏では娘をかどわかして慰み者にした後、始末するというワ
ルでもある。更には、上役のポスト(数奇屋坊主頭)の地位を狙う出世欲
もある。だが奉行所は、宗庵に関わる事件への目星がつかない。大ワ
ル強欲坊主の宗庵と、力を貸す者どもへ、遂に仙二郎達の手筈による
鉄槌(てっつい)が下される。


   登場人物

 板谷仙二郎 41 ・ ・ ・ ・御家人(北町奉行所 定町廻り同心)
      留蔵 32 ・ ・ ・ ・鋳掛け屋(元 浪人)
      又吉 31 ・ ・ ・ ・流し蕎麦屋(元 浪人)
      伝助 18 ・ ・ ・ ・飛脚屋(町人)
      お蔦 30 ・ ・ ・ ・瞽女(元 くの一 抜け忍)
      (※ 以下 略)

1. 江戸の街通り(一筋の広い道 A)・夕刻
    F.I
    タイトルバック
    薄暗くなった頃、御数寄屋坊主、白河宗庵を乗せた
籠が屋敷へ
    と急ぐ。そ
の行列を、少し離れた店蔭から仙二郎が佇ん
で見つめ
    る。
   仙二郎「ご大層なこった。たかが、茶坊主じゃねえか…」
    と、不満を吐く。行列が仙二郎から少し離れた正面を横切り、遠退
   
く。仙二郎、チッ! と小
声で愚痴り、行列とは反対側へと歩き去る。
2. 同 (一筋の広い道 B)・夕刻
    屋台を担いだ流し蕎麦(風鈴蕎麦)屋が屋台を下ろす。又吉が屋
    台を整えて準備する。そ
こへ仙二郎が、寒さに背を丸め、両手を
    袂(たもと)に入れて近づいてくる。屋台の前で立
ち止まり、辺り
    を窺った後、又吉に接近する。
3. 蕎麦屋の屋台(外)・夕刻
   仙二郎「おっ、早(はえ)えじゃねえか…」
   又吉  「へえ…。ちょいとばかし稼ぎが少ねえもんで…(屋台の大
        まかな準備をしながら)」
   仙二郎「そうけぇ、そりゃ御苦労だな、稼いでくんな(笑って)。また  
        夜廻りで来らぁ」
    と云って通り過ぎる。その後ろ姿に、
   又吉  「へいっ! ご贔屓(ひいき)に」
    と、声をかける又吉。
   仙二郎「茶坊主はいいよなぁ、ははは…(振り返らず大笑いして)」
    又吉、黙って遠退く姿を見遣る。カメラ、仙二郎の後ろ姿を、ロン
    グに引く。
   N   「晴らせぬ怨み、晴らします。今日は東へ、明日は西。北も南
        もワル次第。表じゃ消えぬ世の悪を、裏に回って晒します
       
…」
    タイトル、テーマ音楽など。
4. 仙二郎の住居内(同心長屋)・朝
    仙二郎が大の字になって寝ている。俄かに陽射しが仙二郎の目
    元に当たる。
   仙二郎「…ん? しまった、寝過ごしちまったぃ」
    と慌てて脇差、大刀を腰に差しながら
雪駄を履き、入口の水瓶
    の蓋を開ける。柄杓(ひしゃく)で水を飲み、外へと飛び
出す。十
    手を忘れたことに気づき、また家へと引き返す。十手を腰の後ろ
    に刺すと、ふた
たび飛び出す。

              流れ唄 影車(挿入歌)

          水本爽涼 作詞  麻生新 作編曲   

            なんにも 知らない 初(うぶ)な星…
             健気に 生きてる 幼(おさな)星…
              汚れ騙され 死ねずに生きる
                悲しい女の 流れ唄

              酒場で 出逢った 恋の星…
             捨てられ はぐれて 夜の星…
              いつか倖せ 信じてすがる
                寂しい女の 流れ唄

             あしたは 晴れるか 夢の星…
            それとも しょぼ降る なみだ星…
              辛い宿命を 嘆いて越える
                儚い女の 流れ唄

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2011年12月21日 (水)

☆時代劇シナリオ・影車・第二回☆堅気いじめ(10)

    影車      水本爽涼
    第二回 堅気いじめ(10) 

49. 田代玄蕃の屋敷外(土塀前)・朝
      並んで足を速め、人目から逃れる二人。
    仙二郎「うぅ…、今日は冷えますなあ」
    宮部  「そうね。…雪になるのかしら。いつもの茶屋で甘酒でもど
         お?」
    仙二郎「いいですなぁ。勿論、宮部さんが奢(おご)って下さるんで
         しょ?」
    宮部  「なに云ってんのよ。この前、私が奢(おご)ったじゃない。
         今日は、貴方の番よ。十六文くらい、あるでしょ?」
      仙二郎、顔を宮部の反対側へ背けて、軽く舌打ちする。
    宮部  「えっ? …なに?」
    仙二郎「いや、べつに…」
      北風が吹く。肩を窄(すぼ)めて歩く二人の姿。
50. 屋敷前の立て札
      一枚の紙が釘で立て札に刺されている。そこに書かれた“手
      筈を受けりゃ、地獄へ落ちるのよぉ”の墨字。
51. 街並み(カメラ俯瞰)立て札付近
      次第に上空へとカメラ、アップ。小さくなる街並み。カメラ、歩く
      二人をロングに引く。
    N   「手筈を受けりゃ、地獄へ落ちるのよぉ…」
       テーマ音楽。
55. エンド・ロール
      F.O
   
   T「第二回 堅気いじめ  完」
                      
                          第二回 堅気いじめ 完

               流れ唄   影車(挿入歌)

            水本爽涼 作詞  麻生新 作編曲  

             なんにも 知らない 初(うぶ)な星…
             健気に 生きてる 幼(おさな)星…
              汚れ騙され 死ねずに生きる
                悲しい女の 流れ唄

              酒場で 出逢った 恋の星…
             捨てられ はぐれて 夜の星…
              いつか倖せ 信じてすがる
                寂しい女の 流れ唄

             あしたは 晴れるか 夢の星…
            それとも しょぼ降る なみだ星…
             辛い宿命(さだめ)を 嘆いて越える
                儚い女の 流れ唄

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2011年12月20日 (火)

☆時代劇シナリオ・影車・第二回☆堅気いじめ(9)

    影車      水本爽涼
     第二回 堅気いじめ(9)

45. 料亭(座敷)・夜
      (テーマ曲のオケ3 イン)
      綺麗どころを侍らせ、音曲を楽しみながら酒を飲む田代玄蕃。
    田代  「これだけ騒いで金子(きんす)がいらぬのだからな(隣
         で酌をする芸者へ話す)、ははは…」
      と大笑いする。芸者、酒を注ぐ。その杯を飲み干す田代。
    田代  「今宵が楽しみじゃの、玉奴」
      と、酒を注ぐ芸者の耳元へ話す。笑う玉奴。田代、よろけて立
      ち、
    田代  「これでは働けぬでのう。少し風に当たるとしよう(笑う)」
      と云いながら座敷を出る。
46. 料亭の庭・夜
      誰もいない庭にフラフラ出る田代、気分よさそうに酔いを覚ま
      す。そこへ仙二郎が現れる。
    仙二郎「同心の板谷でございます…」
      と腰を落とし、平伏する仙二郎。
    田代  「ん? 暗(くろ)うて、よう見えぬ。…何用じゃ?」
    仙二郎「ははっ。かような投げ文(ぶみ)がございまして…」
      と云うが早いか、近づくと脇差しを抜き、口を片手で押さえて
      田代の腹を突き刺す。そして、
    仙二郎「外道! 地獄へ落ちやがれ…」
      と呟いて、刀を横へと抉(えぐ)る(ブシュブシュ…っと鈍い音
      S.E)。S.E=豚や牛の肉塊をナイフ等で切り裂く音。
      仙二郎、刀を抜き、崩れ落ちた田代の絶息を確認すると、刀を
      鞘へ納め、近くの庭木を揺らす。それを合図に、現れた伝助が
      田代を担ぎ去る。辺りを窺って、仙二郎も闇へと消える。
      (テーマ曲のオケ3 オフ)
47. 江戸の街通り(子の刻)
      大八車に死骸を乗せて走る伝助。
    伝助  「ふぅー、今日の荷は、結構、重(おめ)ぇや…」
      伝助の走る姿。大八車を引き、暗黒の闇夜へと消える伝助。
     (車の走る音S.E)次第に小さくなり消える。S.E=木車を引
      く音(ガラガラ…)
48. 田代玄蕃の屋敷前(門構え)・朝
      立て札と、放置された五人の酷(むご)い死骸。取り囲む野次
      馬(町人・多数)と、それを規制する下役人(手に御用棒を持つ)、
      数人。門構えの屋敷前。
    町人①「またしても影車様だぁな」
    町人②「田代様がワルだったってことかい?」
    町人①「そうだろうよ、このザマじゃ」
    役人①「五月蝿い! 静かにしろ!」
      町人①と②、首を竦(すく)めて立ち去る。入れ替わるように仙二
      郎と宮部の定廻りコンビが現れる。
    仙二郎「おいっ、ちょいと前を開けてくれ(町人達へ割り込んで)」
      と云って前へと出る。
    役人①「お役目、ご苦労に存じます」
      役人①、二人を通す。二人、軽く下役人に挨拶。
    仙二郎「ははは…、随分と派手にやってくれましたなぁ、宮部さん」
      宮部、口に指を立てて、
    宮部 「静かに! 板谷さん。笑ってる場合じゃないでしょ。晒(さ
         ら)されてるのは、曲がりなりにも上役の田代様ですよ」
      と小さい声で注意する。
    仙二郎「ああ…そうでした、すいません。いや、余りに酷(むご)い
         もんで…」
      宮部、そう云われ、死骸を見て吐きそうになる。
    仙二郎「宮部さん、大丈夫ですか?(宮部の背中を、摩[さす]り)」
    宮部  「ちっとも大丈夫じゃないわよ。さあ、早く行きましょ」
    仙二郎「いいのかなあ…(軽く笑って)」
    宮部  「私達は偶然、通り掛かっただけなんだから、それでいい
         の」
      と、仙二郎の袖を引っ張る宮部。
    仙二郎「分かりましたよ…」
      仕方なく宮部の後ろに従い、その場を抜ける仙二郎。

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2011年12月19日 (月)

☆時代劇シナリオ・影車・第二回☆堅気いじめ(8)

    影車      水本爽涼
     第二回 堅気いじめ(8)

37. 夜烏の佐平の隠れ家(部屋)・夜
      (テーマ曲のオケ1 イン)
       佐平が子分の酌で酒を飲んでいる。
    佐平  「もういい。おめえも別部屋で一杯(いっぺぇ)ひっかけ 
         
ろ」
    子分①「へいっ。そいじゃ、あっしは離れにいやすんで…」
       と云って立ち、部屋を出る。
38. 同 (廊下)・夜
       子分①、別部屋への廊下を歩む。突然、天井から子分①の
      背後へ舞い降りた、お蔦。目にも止まらぬ早業で、子分①の
      首(頚動脈)を掻っ斬る。首から吹き散る血しぶき。子分①、
      声を出せないまま、目を開けて崩れ落ちる。
39. 同 (別部屋)・夜
       貸し元の与五郎と子分②が杯を傾けている。二人とも少々、
      酩酊状態。
    与五郎「ん? 今、物音がしなかったか? ちょいと、見てみろ
         い」
    子分②「へい、分かりやした」
      子分②、襖を開け、佐平がいる部屋へ向かう。
40. 同 (廊下)・夜
      子分②、廊下に倒れている子分①を発見し、駆け寄る。
    子分②「おいっ! どうした!」
      その時、ふたたび天井から舞い降りた、お蔦。同じ居合い
      斬りの早業(はやわざ)で子分②の首筋(頚動脈)を、背後
      から、掻っ斬る。折り重なるように崩れ落ちる子分②。
      (テーマ曲のオケ1 オフ)
41. 同 (別部屋)・夜
      (テーマ曲のオケ2 イン)
    与五郎「遅(おせ)いじゃねえか…」
      と、立ち上がる。その時、真上の天井の戸板がスゥーっと
      音もなく開き、鉄製の大丼鉢が与五郎めがけて垂直に落
      下。 (鐘の音S.E)呻く与五郎。(頭へスッポリ被った丼鉢)
      S.E=鐘楼で撞く鐘の音(グォ~~ン)丼を被ったまま与
     五郎、倒れる。
      (テーマ曲のオケ2 オフ)
42. 頭部のX線撮影された映像
      C.I
      頭蓋骨陥没骨折のレントゲン撮影された映像をカメラ、ア
      ップ。
      C.O
43. 病院の診察室・現代
      医師(無名の外科医・特別出演)が椅子に座ってカルテを
      書いている。カメラ、医師の姿をアップ。医師、シャウカステ
      ンのレントゲン撮影された映像を見る。顔をカメラへ向け、
      カメラ目線で、
    医師  「今回も、頭蓋骨陥没骨折による即死ですなぁ(笑っ
         て)」
      と、素人っぽく云う。
44. 夜烏の佐平の隠れ家・夜
      (ふたたび、テーマ曲のオケ2 イン)
      佐平、かなり酔いが回っている。
    佐平  「いけねえや…眠くなってきやがった(赤ら顔の目を
         擦り)」
      横の襖外で携帯用の鞴(ふいご)を手で押し準備する留
      蔵。真っ赤に焼けた鉄製火箸を手袋をして一本持ち、スゥ
      ーっと襖を開ける。して、素早く佐平に近づくと、佐平の口
      を片手で押さえ、両眼へ火箸を押し当てる。(焼入れの音
      S.E)呻く佐平。(焼け爛[ただ]れた両眼)なおも、その火箸
      で佐平の胸(心蔵)を突き刺す。留蔵が火箸を抜くと、前に
      置かれた膳へ崩れ落ちる佐平。S.E=灼熱の金属を水に
      入れた音(ジュ~)。そこへ伝助、現れる。留蔵、視線を伝
      助に送る。暗黙で了解し、伝助、頷く。
      (テーマ曲のオケ2 オフ)

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2011年12月18日 (日)

☆時代劇シナリオ・影車・第二回☆堅気いじめ(7)

    影車      水本爽涼
     第二回 堅気いじめ(7)

34. 料亭(小部屋)・夜
      事が済んだ後、煙管(きせる)で一服、吸う田代。満足げな様子。
      お紋は放心状態。だが、一瞬の隙を突き、田代の刀を取ると斬り

      つける、お紋。田代、咄嗟(とっさ)に避けて刀を手から取り上げ
     
弾みで斬り殺す。絶叫して倒れる、お紋。辺りに飛び散る血しぶ
      木。慌てた田代、乱雑に身支度を整え、部屋を出ようとする。そ
      こへ佐平が駆けつける。
    田代  「いや、身共(みども)の所為(せい)ではないぞ。こ奴が斬
         りかかってきおったのじゃ」
    佐平  「分かっておりますとも…。それにしても、大それたことを…。
         ともかく、お怪我がなくてなにより。…田代様、この場は
         私共にお任せ戴き、さあ、一刻も早くお屋敷の方へお戻り
         下さいまし」
    田代  「さようか…、すまぬのう」
      と云い捨てると、早々に料亭を去る田代。
35. 乙次の長屋(外)・朝
      入口に無惨に横たわる、お紋の遺体。長屋の住人達が取り囲む。
      それを、少し離れた井戸端から、お蔦が眺める。
    お蔦  「このぶんじゃ、的(まと)を伝えるだけじゃ済まないだろうね」
      と呟く。その後方に、いつのまにか現れた仙二郎、お蔦の肩を軽く
      突(つつ)く。驚いた、お蔦、振り返りざま、
    お蔦  「なんだ、十手か。驚くじゃないか(小声で)」
    仙二郎「『なんだ、十手か』は、ねえだろう。隙がござんすよ、姐さ
         ん」
      と、茶化す。
    お蔦  「まだ皆にゃ伝えちゃいないんだが、もう手筈だろ?」
    仙二郎「そうだな…。明日の宵、五つ、例の小屋だ…」
      そう云って、長屋の反対側へ去る仙二郎。お蔦も、あとを追うよう
      に消える。
36. 河川敷の掘っ建て小屋(五つ時)・夜
      仙二郎、留蔵、又吉、伝助、お蔦といったいつもの面々が屯(たむ
      ろ)している。土間に直接、立てられた蝋燭の炎が時折り揺れる。
      各自、決めのない思い思いの位置に佇む。
    仙二郎「悪いが、この手筈にゃ余り出せねえ。それでもよけりゃ、頼
         むとしようか」
    留蔵  「いや俺もな、この手筈は銭金(ぜにかね)じゃねえと思って
         るのよ。夜烏の奴ぁ、前(めえ)から許せねえんだ。銭(ぜに)
         ゃぁ、印(しるし)貰えりゃ、それでいい」
    又吉 「同じく…」
    仙二郎「伝助は、どうだ?」
    伝助  「あっしは走るだけでさぁ。いくらでも御(おん)の字でぇ」
    お蔦  「私も同(おんな)じさ。貰えるに越したこたぁないが、懐
         (ふところ)具合までは探らないよ。夜烏にゃあ随分、阿
         漕(あこぎ)を見させて貰ったからねえ」
    仙二郎「よし! 決まりだな。引き受け料は、いつもの催促なしの
         後払いだ。幾らでも文句はねえな?」
      全員、黙って頷く。
    伝助  「あのう…ひとつ、いいですかい?」
    仙二郎「なんだ?」
    伝助  「立て札に刺す小柄(こづか)は高くついていけねぇ。釘じゃ
         駄目ですかね?」
    仙二郎「はは…、釘なぁ。えれぇ落ちたもんだ。まあ、よかろう。だ
         が、五寸釘にしな」
      全員、微かに笑う。
    仙二郎「手筈通りにいくぜ。…そいじゃ、お開きだ」
      仙二郎、全員を見回して云う。伝助、土間の蝋燭を吹き消す。
      暗黒の闇。

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2011年12月17日 (土)

☆時代劇シナリオ・影車・第二回☆堅気いじめ(6)

    影車      水本爽涼
     第二回 堅気いじめ(6)

26. 夜道(細い路地)・夜
      乙次が今日も酒に酔い、よろけながら右へ左へと歩いている。
27. 乙次の長屋(外)・夜
      足元、ふらつきながらも、乙次、帰ってくる。
28. 同 (内)・夜
    乙次  「帰(けえ)ったぞ!」
      家の中は静まり返って、闇が広がる。
    乙次  「ちぇっ、なんでえ。もう寝ちまったのか」
      と、一瞬、不審に思うが、酔いの所為(せい)か、ドスッと崩れ
      るように鴨居へ腰を下ろす。そこへ乱入する夜烏の子分、数人。
      有無を云わさず、乙次を刀で刺し殺す。
29. 同 (外)・翌朝
      長屋の連中が騒いでいる。下役人も数人いる。そこへ仙二郎と
      宮部が現れる。
30. 同 (内)・翌朝
      入口を野次馬が入らないように警護する御用棒を持った下役人、
      二名。
    仙二郎「ちょいと、通してくれ」
    役人①「ご苦労さまです」
      と仙二郎、宮部を通す。惨めな乙次の遺体。仙二郎、見入って、
    仙二郎「ひでぇことをしますねえ…」
    宮部  「ほんと…。私、こういうの苦手なの(顔を背けて)」
    仙二郎「ははは…、そうでしたな。しかし、それにしても酷(むご)い
         …」
    宮部  「誰が、こんなことすんのかしらねぇ。ああ…嫌(いや)! 
         嫌(いや)だわ」
    仙二郎「どうも、この手口は夜烏の仕業みたいですが…」
    宮部  「板谷さん、そんなことが分かるんですか?(怪訝[けげ
         ん]な面持ち)」
    仙二郎「いや、飽くまでも私の勘(かん)ですがね」
    宮部  「ねぇ、他の人に任せて、見なかったことにしましょうよ
         ぉ」
    仙二郎「これは…宮部さんのお言葉とも思えませんが」
    宮部  「私達の廻り番じゃないんだし…」
    仙二郎「はいはい、そうしましょ。じゃあ、他の連中が来ないうち
         に、遁ズラってことで…」
      宮部はもう、入口を出ている。仙二郎も追うように長屋を出る。
31. 乙次の長屋から少し離れた細道・朝
      仙二郎、宮部が並んで歩いている。
    仙二郎「宮部さん、確か…乙次には娘がいましたね?」
    宮部  「ええ、お紋さんだったかしら」
    仙二郎「怪(おか)しいですねえ…、姿を見なかったと思うんです
         が」
    宮部  「そんなこと私に訊かれたって」
    仙二郎「そりゃそうだ…(笑って)」
      歩き去る二人の後ろ姿。
32. 料亭(小部屋)・夜
      奥の間に色布団が敷かれ、その上で縺れる田代とお紋の抗
      う姿を行灯の光が照らす。
33. 料亭を照らす上空の月
      煌々と、冴えて輝く月。お紋の泣き叫ぶ声が止む。

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2011年12月16日 (金)

☆時代劇シナリオ・影車・第二回☆堅気いじめ(5)

    影車      水本爽涼
     第二回 堅気いじめ(5)

22. 料亭(座敷の天井裏)・夜
      忍んで潜入した、お蔦。戸板の隙間より下の様子を窺い、
    お蔦  「十手が云った通り、こりゃ相当のワルだねぇ(呟く)」
23. 茶屋(狭い路地)・夕暮れ時
      門付けが済んだ、お蔦。遠くから首を縦に振り合図する仙二郎。

      お蔦、細目を開け、気付く。そして、仙二郎の方へ杖をついて歩
      く。仙二郎も歩き出す。
24. 河堀(橋の上)・夕暮れ時
      柳、屋形船あり。話す仙二郎とお蔦。欄干に凭(もた)れている
      仙二郎。
    仙二郎「夜烏の佐平か…。あいつぁ闇の元締めと云われるだけあ
          って、なかなか尻尾を出しやがらねぇ。そうか…、田代は
          奴と、つるんでやがったか」
    お蔦  「十手の上役も相当のワルだよ。お前さんも、あんなのに使
         われてんだから気の毒なもんさね」
    仙二郎「同情は有難(がて)ぇがな、奴は、もう長くねえ(決断した
         ように)
    お蔦  「手筈かい?」
    仙二郎「ああ…近くな。まだ殺しちゃいねえからなあ。…その頃よ」
      と、立ち去ろうとする。その後ろ姿に、
    お蔦  「どうする、皆に伝えとくかい?(目を開けて)」
    仙二郎「(振り返り)そうだな。的(まと)だけでも云っといてくれ」
      ふたたび後ろを向き、去っていく仙二郎。それを見遣る、お蔦も
      瞽女(ごぜ)に戻り、反対側へと去る。
25. うどん屋(内)・昼
     仙二郎、『みかさ屋』で昼食にうどんを食べている。食べ終えた
     隣席の町人が二人、何やら話す。
    町人A「おめえ、なぜ影車ってえか、知ってるかよ」
    町人B「俺が知る訳(わき)ゃねえだろ」
    町人A「いや俺も小耳に挟んだだけなんだがな、何でもよぉ、ある
         時、街の衆がな、怖いもん見たさで夜中に飛び起きてよぉ、
         そいで、戸口の方へ近づいた

    町人B「ほぉ、そいで?」
    町人A「戸を、ほんの少うし開けて、恐る恐る覗いたと思いねぇ。
         そしたらよぉ、姿のねえ人の影だけが、車を引いてスゥー
         っと消えてったそうよ」
    町人B「そいで、影車ってか?(笑って)」
    町人A「いや、それは聞いた話だってことよ。密かに夜半、それも
         な、決まって子の刻に引く音が聞こえるからだって者(もん)
         もいる」
    町人B「いってぇ、どっちなんだよ?」
    町人A「いや、俺にもわからねえ」
    町人B「なんだよ、そりゃあ…」
    町人A「でもよぉ、最近は、さっぱり見ねえな?」
    町人B「違(ちげ)ぇねえ」
      仙二郎、二人の会話を食べながら苦笑して聴いていたが、食べ
      終えて、
    仙二郎「父(と)っつぁん、銭は、ここへ置くぜ(十数文を古びた木の
         の卓上へと置き)」
      と云って立ち、出口へと向かう。縄暖簾を潜ろうとしたその時、奥
      の方から、
    店主  「有り難(がと)やーしたぁ(年老いた声)」
      と、掛け声がする。仙二郎、その声を背に受けて店を出る。

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2011年12月15日 (木)

☆時代劇シナリオ・影車・第二回☆堅気いじめ(4)

    影車      水本爽涼
     第二回 堅気いじめ(4)

16. 乙次の長屋(外)・昼
      佐平の子分が五人やって来て、荒々しく中へ入る。
17. 同 (内)・昼
      お紋が内職の傘貼りをしている。そこへ乱入した子分達。乙次は、
      いない。
    子分①「悪く思うなよ」
      と云うが早いか、お紋に猿轡(さるぐつわ)をし、縄で括ると担ぎ
      去る。抗う、お紋。
18. 夜烏一家の賭場(別部屋)・昼
      佐平はいない。代貸しの与五郎が親分風を吹かせて中央に座
      る。多くの子分衆。お紋を拉致した五人の子分が戻る。
    与五郎「おう! ご苦労だったな」
      お紋を引き連れた一人が、
    子分④「で、この玉、どうしやす?」
    与五郎「お頭に、お伺いを立てる。それまで、奥の土蔵に放り込ん
         でお け!」
    子分④「分かりやした。おいっ! 来るんだ」
      と、お紋を奥の土蔵へと連れ去る。その後ろ姿に、
    与五郎「お父(と)っつぁんを怨むんじゃねえぞ(云い含めるよう
         に)」
      そう云い捨てて、賭場へと立ち去る。
19. 同 (奥の一角)・昼
      やって来た与五郎、どっしりと座る。
    与五郎「どんな塩梅(あんべぇ)だ?」
    子分①「へい、先ほど千石屋の若旦那が、お見えになりやした」
    与五郎「あの若造は、いい金蔓(かねづる)だ。大事に扱えよ。
         ん?(子分①の顔を見て念を押し)」
    子分①「分かってやすよ。それより、あの乙次の奴ぁ、どうしや
         す?」
    与五郎「また来てんのか。懲りねえ奴だなぁ…。(呆れて)もう取
         るもんがねえんなら適当に始末しろい」
    子分①「分かりやした。で、お頭は?」
    与五郎「いや、儂(あっし)にも行き先はお話にならなかったから、
         分からねぇ。たぶん、田代様絡(がら)み、だろうよ」
20. 料亭(外景)・夕暮れ時
      頭巾を被り、人目を避けるかのように料亭へ入る田代玄蕃の
      姿。
21. 同 (座敷)・夕暮れ時
      佐平が田代を待っている。そこへ田代が現れて座る。酒と豪
      華な馳走の料理膳。
      (この料亭は夜烏一家の島内[しまうち])
    田代  「佐平、待たせたのう…」
    佐平  「こちらこそ、かような刻限に、お呼び立て致しまして…
         (平伏する)」
    田代  「して、話とは? 今日は急いでおる故、手短に申せ」
    佐平  「まあ、そうおっしゃいませず、ご一献」
      銚子を持ち、酒を勧める佐平。杯を差し出す田代。
    佐平  「実は…、最近、探索方の動きが激しいようで…(田代
          が飲み干すのを確認し、もう一献を勧めて注ぎ)。田代
          様のお力添えで、なんとか穏便に取り計らって戴きた
          く…(また酒を勧めて)」
    田代  「そうか…。差配違いじゃが、知る者もおる故、できぬで
         もない」
    佐平  「これは、ほんの手土産がわりでは御座居ますが…(菓
         子鉢の蓋を取り二十五両の包み金が、かなり入ってい
         ることを示して)」
    田代  「…(ニンマリと嗤って)、いつも、すまぬのう」
      と、慣れた手つきで引き寄せる田代、暫く間合いをおく。
    田代 「あい分かった、佐平(嗤って)」
    佐平  「器量のいい娘も準備致しておりますので、お味見の
         方も…」
    田代  「(顔を緩ませて)そうか…、それは楽しみじゃのう(嗤っ

        て)」

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2011年12月14日 (水)

☆時代劇シナリオ・影車・第二回☆堅気いじめ(3)

    影車      水本爽涼
     第二回 堅気いじめ(3)

11. 夜烏の佐平の隠れ家・夜
      灯明が揺れる。神棚を背にして酒を呷(あお)る佐平。傍らに控え
      る子分衆、数人。
    佐平  「乙次(おとじ)の貸しは、どうなってる? 取れねえような
         ら…」
       と、子分①をギロッと睨む。
    子分①「へい、分かってやす。奴にゃあ、器量のいい娘が一人、おり

         やす。吉原に叩き売りゃ、結構な実入りになりやすぜ」
    佐平  「ただ叩き売るだけじゃ、面白くもなんともありゃしねえや。田
         代様に味見して戴くか?」
      杯を干しながら、佐平、嗤う。
    子分①「その前(めえ)に、お頭が…」
    佐平  「ふふふ…それも悪くは、ねえな」
      一同、軽く嗤う。灯明の灯りに浮かび、揺れる全員の姿。
12. 乙次の長屋(外)・夜
      乙次が酒に酔い、フラフラ帰ってくる。
    乙次  「帰(けえ)ったぞ!(戸を開け)」
13. 同 (内)・夜
    お紋  「お父(と)っつぁん、また飲んで…」
    乙次  「うるせえ! …甲斐性で飲んでんだ、文句あっか」
    お紋  「働きもしないで、よくそんなお金があるわね」
    乙次  「てやんでぇ…」
      草鞋(わらじ)の紐を解こうとして、そのまま仰向けに倒れ、寝息

      を立てる乙次。
    お紋 「仕様がないわねえ…」
      と云って、手内職の傘貼りを中断し、羽織りを持って乙次に近づ
      く。
      静かに羽織りを被せ寝顔を見遣る、お紋。
14. 茶屋(狭い路地)・夕暮れ時
      お蔦、いつものように三味線を弾き、門付けをしている。仙二郎、
      少し離れた所から様子を窺い、終わるのを待つ。
    二階客「いい喉、聴かせて貰った。ありがとよ…。ほれ(紙包みの金
         子[きんす]を下へ、障子の隙間から投げ)」
      投げられた紙包みを拾いながら、
    お蔦  「また、ご贔屓(ひいき)に!」
      と云って、二階の障子が閉じられるのを待つ。仙二郎近づく。
    お蔦  「そろそろ現れると思ったよ」
    仙二郎「歩くぜ…」
      仙二郎、早足で、その場を離れる。遅れて後を追う、お蔦。
15. 河堀(橋の上)・夕暮れ時
      柳、屋形船あり。仙二郎、橋の半ばで止まり、欄干へ凭(もた)れ
      る。
    仙二郎「俺の上役に田代って内与力がいるんだが、どうも奴の素行
         が良くねえみてえなんだ。ちょいと、探りを入れてくんねえ
         か…」
    お蔦 「分かったよ。…で、そいつぁ、何をやらかしたんだい?」
    仙二郎「いやな…、どうも賄賂(わいろ)で太ってやがるみてぇなん
         だ」
    お蔦 「ふ~ん。そいじゃ、いつものように三日ばかし貰おうかね」
    仙二郎「ああ、それでいい。三日後の今時分、茶屋で待つ」
      と云って去ろうとする。その後ろ姿に、
    お蔦 「いつもの、は?」
     仙二郎、ギクッとして振り返り、
    仙二郎「そうだったな…」
      と、懐(ふところ)より財布を取り出し、一朱銀を二枚、手渡す。受け
      とった、お蔦、目をふたたび閉じ、瞽女(ごぜ)へと戻る。
    仙二郎「じゃあな…」
      二人、反対方向へと去る。

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2011年12月13日 (火)

☆時代劇シナリオ・影車・第二回☆堅気いじめ(2)

    影車      水本爽涼
     第二回 堅気いじめ(2)

4. 夜烏一家の賭場・外(月夜)
     お蔦が出てくる。十六夜月が煌々と輝いて、雲が流れる。
   お蔦  「おお…今夜も冷えるねえ。夜啼き蕎麦でも食べようかね…」
     一人ごとを云いながら、杖を突いて去る、お蔦。カメラ、闇へ消え
     る後ろ姿を捉える。
   N   「晴らせぬ怨み、晴らします。今日は東へ、明日は西。北も南も
        ワル次第。表じゃ消えぬ世の悪を、裏に回って晒します
…」
     タイトル「影 車」、テーマ音楽など。
5. 蕎麦屋の屋台・外(月夜)
     F.I
     暗闇の道から現れたお蔦、屋台の暖簾を潜って座る。
6. 同・内(月夜)
     又吉が小忙しく働いている。
   お蔦  「今日は、シッポクにしておくれ」
   又吉  「へいっ! 毎度」
     又吉、手慣れた動作で、湯切りした蕎麦へ野菜、蒲鉾、椎茸、刻み
     葱を乗せ、出汁を加えるとお蔦の前へ出す。お蔦、割り箸をとり、
     少しずつ食べ始める。
   お蔦  「暫(しばら)く、手筈も御無沙汰だねぇ」
     啜りながら、そう呟く、お蔦。
   又吉  「…のようで」
     とだけ答え、又吉は、多くを語ろうとはしない。
7. 同・外(月夜)
     雲間から現れた上空の十六夜月。流れる雲。
8. 同・内(月夜)
     食べ終えた、お蔦。小銭二十四文を置き、
   お蔦  「そのうち…お呼びがあるだろ」
     と、ぶっきら棒に云って立ち、杖を持つと屋台を出る。
   又吉  「また、ご贔屓(ひいき)に!」
9. 北町奉行所・内(同心部屋)・昼
     大勢、机に向かう。その中に仙二郎、宮部もいる。今日は五月蝿
     い同心頭の村田は休暇で不在。
   宮部  「板谷さん、聞きました? 内与力の田代様、余り評判が良く
         なくってよ(オカマ口調)」
   仙二郎「そうですか…。いや、私は別に何も聞いてませんがね」
   宮部  「そおぅ? …いえ私もね、聞いただけだし、はっきりとは分
         かんないのよ。これは飽くまで噂なんだけどさぁ…何でも、
        た くさん賄賂(わいろ)を貰ってるんだって」
   仙二郎「…村田さんがいないと、よく喋るなぁ」
     と、顔を宮部の反対側へ背けて呟き、溜め息を吐く仙二郎。
   宮部  「えっ? なに?」
   仙二郎「いや、別に…。もう昼時(どき)ですなあ…(腹がグゥ~と鳴
         る S.E)」
    仙二郎、苦笑して宮部を見ながら腹を摩(さす)る。
10.小料理屋の二階・部屋(夜)
    仙二郎と同心達の新年会。座は、かなり盛り上がっている。裸踊り
    を始める者もいる。特別招待された同心頭の村田だけが、全員か
    ら浮いたように、一人、素面面(しらふづら)で硬く飲む。
   宮部  「村田様、さあ、ご一献」
    機嫌を窺うように銚子を持ち、酒を勧める宮部。仕方がない…とい
    う感じで、
   村田  「そうか? すまぬのう」
    と、杯を差し出す村田。浮かれる同僚に混じり興じる仙二郎。それ
    を見遣る村田。
   村田  「あいつは、こういう場だと元気だな」
    呆れた村田、愚痴る。
   宮部  「板谷さんは、ああ見えて、コツコツ励んでるんですよ」
   村田  「そうは思えんがな…」
    仙二郎も裸踊りを始める。ただ呆れる村田。宮部も弁護できない…
    と、途方に暮れ、諦めて仙二郎の姿を見遣る。

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2011年12月12日 (月)

☆時代劇シナリオ・影車・第二回☆堅気いじめ(1)

    影車      水本爽涼
     第二回 堅気いじめ(1)
 
  
あらすじ   


 夜烏(よがらす)のお頭の異名をもつ佐平とその配下の子分達。堅気の
 衆から悪どいイカサマ博打(ばくち)で金をせしめている。闇の元締めと
 恐れられる佐平。夜の賭場でしか、その姿を目にした者はいない。自殺す
 る者、娘を売り飛ばされる者、さらには闇へと葬られる者と、悪事は益々、
 その残虐さを増していく。金品を見返りにお目溢(こぼ)しする悪役人(内
 与力・田代玄蕃)。今日も一見、平穏な江戸の街に暗躍する悪い奴ら。仙
 二郎達の手筈が始まる。

   登場人物

  板谷仙二郎 41 ・ ・ ・ ・ 御家人(北町奉行所 定町廻り同心)
       留蔵 32 ・ ・ ・ ・ 鋳掛け屋(元 浪人)
       又吉 31 ・ ・ ・ ・ 流し蕎麦屋(元 浪人)
       伝助 18 ・ ・ ・ ・ 飛脚屋(町人)
       お蔦 30 ・ ・ ・ ・ 瞽女(元 くの一 抜け忍)
      (※ 以下 略)

1. 夜烏一家の賭場・夜
    F.I
    
タイトルバック
    
腹に晒しを巻いた壺振り。二列に対面して博打に興ずる客達。燭台
    の灯りの中、中央の壺振りの動きに全員の視線が集中。
   壺振り「丁半、駒、揃いやした。…開(ひら)けやす」
    静かに壺を開ける、壺振り。
   壺振り「五、一(ぐっぴん)の丁!」
    一同から溜め息と喜声。列の中に座る、お蔦の姿。駒木を客に回す
    三下①~③。
   三下①「姐(あね)さん、つきなさるねぇ」
   お蔦  「欲がないから勝てるのさ」
    三下①、嗤う。お蔦の前に駒木が堆(うずたか)く積まれている。
2. 夜烏一家の賭場(奥の一角)・夜
    佐平が煙管(きせる)を吹かしながら、どっしり構えて座る。
   佐平  「おいっ、余(あんま)り勝たすんじゃねえぞ(賭場の様子を見
         つつ煙草盆へ煙管の火を手で叩き出し、刻み煙草を新たに
         詰め換えて)」
   子分①「へいっ!」
    と頷いて立ち、壺振りの方へと動く。
3. 夜烏一家の賭場・夜
    子分①、壺振りの耳元で何やら囁く。壺振り、頷く。
   壺振り「さあさあ、ようござんすか? ようござんすね? 壺、入りや
        す!」
    手慣れた仕草で賽子(サイコロ)を二ヶ、壺に入れ、振った後、叩く
    ように白地の布畳上へ降ろす(この時、すでに隠し置いたイカサマ
    賽を一ヶ、入れ替えている)。
   壺振り「さあ、はった、はった!」
    客達、駒木を手前へ出し、
   客達  「丁!」
   客達  「半!」
    と、各自、声を出す。壺振り、丁半の駒木を確認し、
   壺振り「丁半、駒、揃いやした。…開(ひら)けやす 」
    壺を先程と同様に静かに開ける壺振り。
   壺振り「二、三(にぞう)の半!」
   お蔦  「ちょいと待った!!」
    と、急に大声を出す、お蔦。続けて、
   お蔦  「賽の音(ね)が変わったねぇ…」
   壺振り「(激昂して)なにい?! おい! 因縁つける気かい、姐(ねえ)
        さん」
   お蔦  「いえね、そう思っただけさ。気を悪くしなさんな(引く)」
   壺振り「だったらいいんだ。怪(おか)しなことを云わねえでくんなよ
        (溜飲を下げて)」
   お蔦  「今日は、これまでにしとくよ。ああ…勝ちが随分、減っちまっ
         た…」
    杖を持ち、立ち上がる、お蔦。
   三下①「ちょいと姐(あね)さんを通してやってくんなさいよ」
    と、目の不自由を察して、そう云う。

                  影車(挿入歌) 流れ唄 
                   水本爽涼 作詞  麻生新 作編曲 

            なんにも 知らない 初(うぶ)な星…
             健気に 生きてる 幼(おさな)星…
                汚れ騙され 死ねずに生きる
                悲しい女の 流れ唄

                酒場で 出逢った 恋の星…
             捨てられ はぐれて 夜の星…
                いつか倖せ 信じてすがる
                寂しい女の 流れ唄

             あしたは 晴れるか 夢の星…
            それとも しょぼ降る なみだ星…
               辛い宿命を 嘆いて越える
                儚い女の 流れ唄

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2011年12月11日 (日)

☆時代劇シナリオ・影車・第一回☆悪徳商法(13)

    影車      水本爽涼
     第一回 悪徳商法(13)

84. 大黒屋の店内(廊下)・夜
            仙二郎「外道め、地獄へ落ちろい」
       と呟くように云って、刺した刀を障子から抜く。
85. 同 (座敷)・夜
       崩れ落ちる嘉兵衛。目を開けたまま絶命する顔。   
86. 同 (廊下)・夜
       仙二郎、静かに刀を鞘(さや)に納め、庭より闇へ去る。
      (テーマ曲のオケ3 オフ)
87. 御番所近くの街通り(広い道)・朝
       立て札と、放置された六人の酷(むご)い死骸。取り囲む野次
       馬(町人多数)
    町人①「さすがぁ、影車だぁな。おやりになることが、けた外れだ
         ぁ」
    町人②「違(ちげ)ぇねえ…」
       そこへ仙二郎と宮部が定廻りとして現れる。
    仙二郎「こらぁ、邪魔だ。離れろい!」
       と、仙二郎、町人①、②を追い払う。
    宮部  「まあ…酷(むご)いことを。…嫌だわ」
       宮部、無惨に捨てられた死体の山を見て、顔を背ける。
    仙二郎「宮部さん、
上からの触れだぁ。かかわらねぇ方がよさそう
                  ですよ。
さあ、早く行きましょ(宮部の袖を引く)」
    宮部  「…そうね。おお、怖い怖い」
    仙二郎「すまねぇ、ちょっと開けてくれ」
       と云いながら、宮部を後ろに従え、野次馬をすり抜けて去る。
88. 立て札
       一枚の紙が小柄(こづか)で立て札に刺されている。そこに書
             かれた“手筈を受けりゃ、地獄へ落ちるのよぉ”の墨字。
89. 街並み遠景(立て札付近)・朝
       次第に上空へとカメラ、引く。小さくなる街並み。歩く二人。
    N   「手筈を受けりゃ、地獄へ落ちるのよぉ…」
       テーマ音楽。
90. エンド・ロール
       F.O
   
   T「第一回 悪徳商法  完」
                                       
                            第一回 悪徳商法 完

             流れ唄  (影車挿入歌)

          水本爽涼 作詞  麻生新 作編曲

           なんにも 知らない 初(うぶ)な星…
            健気に 生きてる 幼(おさな)星…
             汚れ騙され 死ねずに生きる
               悲しい女の 流れ唄

             酒場で 出逢った 恋の星…
             捨てられ はぐれて 夜の星…
              いつか倖せ 信じてすがる
               寂しい女の 流れ唄

             あしたは 晴れるか 夢の星…
            それとも しょぼ降る なみだ星…
            辛い宿命(さだめ)を 嘆いて越える
                儚い女の 流れ唄

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2011年12月10日 (土)

☆時代劇シナリオ・影車・第一回☆悪徳商法(12)

    影車      水本爽涼
     第一回 悪徳商法(12)

71. 大黒屋の店内(座敷)・夜
       戸田と嘉兵衛の酒宴。行灯に浮かぶ二人の姿。
    嘉兵衛「おいっ! 銚子が空だよ」
       と、店の者を呼ぶ。女中、急いで銚子を数本、盆に乗せて入り、
       置くと、足早に去る。
    戸田  「それにしても大黒屋、あれには死ぬ心地がしたぞ(嗤う)」
    嘉兵衛「いや、私こそ参りました。まさか舌を噛み切るとは思っても
          みぬことでございましたから…」
    戸田  「さもあろう」
    嘉兵衛「孰(いず)れ、この埋め合わせは致しますゆえ、何卒、ご勘
          弁を…」
    戸田  「うむ…、まあよいわ、過ぎたことじゃ。それより、始末は上
          手くつけたであろうの?」
    嘉兵衛「へえ、それはもう。今頃は河辺をプカリプカリ…(嗤っ
         て)」
    戸田  「ほんに、悪い奴よのう」
       二人、嗤い合う。厠(かわや)へと中座する戸田。
72. 同 厠(かわや)外・夜
       
(テーマ曲のオケ1 イン)
       廊下を酔いにまかせて気分よく歩き、厠(かわや)へ入る戸田。
73. 同 厠(かわや)内・夜
       天井と戸田の顔。小便を気持ちよくする戸田。その真上の天井
       板、スゥ~っと、音もなく開く。
74. 同 厠(かわや)天井裏・夜
       大丼鉢を持つ又吉の両腕。鉄製の大丼鉢を伏せた形で戸田
             の頭上へ垂直に落とす又吉。(鐘の音S.E) 呻く戸田。(頭に
      
スッポリ被った大丼鉢)S.E=鐘楼で撞く鐘の音(グォ~~ン)
       
(テーマ曲のオケ1 オフ)
75. 頭部のX線撮影された映像
       頭蓋骨陥没骨折のレントゲン撮影された映像。
       C.O
76. 病院の診察室・現代
       医師(無名の外科医・特別出演)が椅子に座ってカルテを書い
             ている。カメラ、医師の姿をアップ。机前のシャウカステン映像
             を見て、
    医師  「頭蓋骨陥没骨折による即死ですなぁ(笑って)」
       と、素人っぽくカメラ目線で云う。
77. 大黒屋の店内(小部屋の中)・夜
       
(テーマ曲のオケ2 イン)
       浪人①~④の四人がいる。一人①は酒を飲み、残りの三人②
             ~④は賽子博打(さいころばくち)・チンチロリンをやっている。
       ①、酔いを醒まそうと障子を開け廊下へと出る。(障子は閉め
       る)
78. 同 小部屋前の廊下・夜
       浪人①が暫(しばら)く廊下を歩いて進んだ時、急に天井から
             舞い降りた、お蔦。目にも止まらぬ速さで①の首筋を、後ろか
             ら三味線の仕込みで居合い斬り。暫(しばら)く氷結して立つ
             ①、その後、ゆったりと崩れ落ちる。それと同時に、首から吹
             き出して飛び散る血しぶき。
79. 同(小部屋の中)・夜
    浪人②「なにか音がしなかったか?」
    浪人③「気のせいだろう…(チンチロリンを一時、止めて)」
    浪人④「いや、拙者も聞いたぞ」
    浪人②「怪(おか)しい、…見て参ろう(立つ)」
       浪人②、部屋を出る。(障子は閉める)
80. 同 小部屋前(縁の下)・夜
      
(テーマ曲のオケ1 イン)
       縁の下に隠れていた留蔵、携帯用の鞴(ふいご)を手で押し、
            真っ赤に熱せられた菜切り包丁を確認し、飛び出す。
81. 同 小部屋前(廊下)・夜
      留蔵、背後から浪人②を掴み、両眼へ菜切り包丁を押し当て
            る。(焼き入れの音S.E)叫ぶ②。(焼け爛[ただ]れた両眼) な
            おも、その包丁で②の首筋(頚動脈)を斬る。 吹き出す血飛沫
            (しぶき)。②、呻いてバサッと倒れる。S.E=灼熱の金属を
            水に入れた音(ジュ~~)
82. 同(小部屋の中)・夜
       浪人③と④、異変に気づき刀を取って立つ。その時、いつのま
             にか天井裏へ忍んだ、お蔦、下へ飛び降りて二人を居合い斬
             り(目にも止まらぬ早技)。派手に飛び散る血しぶき。
      
(テーマ曲のオケ1 オフ)
83. 同(座敷)・夜
      
(テーマ曲のオケ3 イン)
    嘉兵衛「戸田様、遅いねぇ。どうなすったんだろう(首を捻って)」
       と云って、立つ。障子に近づく。その時、障子越しに聞こえる声。   
    仙二郎「てめえみてえな奴ぁ、生かしちゃおけねえ…」
    嘉兵衛「何者だい?!」
       と、怒って障子を両手で開けようとする。その瞬間、仙二郎が
       刀を障子越しに突き刺し、腹を抉(えぐ)る。(ブシュブシュ…と
       鈍い音S.E) 嘉兵衛、目を剥(む)きながら呻く。血しぶきで染ま
             る障子。S.E=牛、豚などの肉塊をナイフ等で切り裂くような
             音。

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2011年12月 9日 (金)

☆時代劇シナリオ・影車・第一回☆悪徳商法(11)

    影車      水本爽涼
     第一回 悪徳商法(11)

66. 大黒屋の店内(小部屋)・夜
       行灯の灯り。舌を噛み切った、お美代。口から血を流し、死ん   
       でいる。うろたえる戸田の姿。
    嘉兵衛「…これは…(驚いて)」
    戸田 「み、身共(みども)は知らぬぞ…」
       と、慌てて刀を腰に差し、どぎまぎと、その場を去る。
67. 上総屋の店前・昼
       黒山の人だかり。騒ぐ町人達。立て札と×状の竹で封鎖され
       た店前。
68. 立て札
       廃絶、獄門との、お上(北町奉行所)よりのお達し。その立て
       札を見る群衆。
    群衆①「不憫(ふびん)だねぇ…」
    群衆②「こんな馬鹿な話があるもんかね」
       と、群衆(女二人)が話す。多くの群衆の中に、お蔦や仙二郎も
       いる。
    お蔦  「旦那、またお会いしましたね。…いったい、なんの騒ぎな
         
んでございます?(瞽女[ごぜ]として)」
    仙二郎「瞽女(ごぜ)さんか。いや、なあに…、お店(たな)がな、
         取り潰しになったって騒ぎよ」
    お蔦  「なんとかならなかったんで、ござんしょうかねえ(嫌み、たっ
         ぷりに)」
    仙二郎「すまねえ。俺のような、しがねえ同心の一存じゃあなぁ…」   
       情けなそうな仙二郎。小声で、
    仙二郎「あっ、鴨鍋の手筈を忘れっちまった(意味深に、お蔦を見
         て)」
       と、云ってスゥ~っと去る。
69. 河端の細道・昼
      通行人の一人(町人)、浮かぶ不審物を見つけ、駆け寄る。恐る恐   
      る引き上げて見ると、お美代(水死体)の変わり果てた姿。S.E   
    町人①「お~い! 土左衛門だぁ!」
      と叫ぶ。他の通行人も数名、駆け寄る。そこへ、仙二郎が通りかか   
      る。声を 聞きつけ、急いで近づく。
    仙二郎「上総屋の、お美代だな…。こりゃ、飛び込んだんじゃねえ
          や」
    町人①「お役人、そんなことが分かりやすんで?」
    仙二郎「ああ…、目星は、粗方(あらかた)ついてる。それにしても、
          ひでえこと、しやがる」
70. 河川敷の掘っ立て小屋(あばら屋)・夜
       仙二郎、留蔵、又吉、伝助、お蔦らが一堂に会す。灯りは土間   
       に直接立てられた蝋燭(ろうそく)が一本。各自、適当に散ら
       ばっている。
    仙二郎「それじゃあ、頼んだぜ。伝助、おめえ、後(あと)のことは
         分かってるな」
    伝助  「へっ、いつものこった。ひとっ走(ぱし)りするだけでさぁ」
    仙二郎「立て札は?」
    伝助  「あと二度ばかし、いけやす」
    お蔦  「お前、大工の与三(よぞう)と好誼(よしみ)があるそうじ
          ゃないか」
    伝助  「姐(あね)さん、よく御存知で…」
    お蔦  「そりゃそうさな。お前のことなんか、全てお見通しだよ」
    伝助  「へへ…流石、元忍(もとしのび)の姐(あね)さんだ」
    お蔦  「おだてんじゃないよ(苦笑する)」
    仙二郎「いいか、手筈は、さっき云った通りだ。しくじりは許さね
          え。…引受料は、いつもの、あと払いだ、分かったな」
        と、全員に聞こえるように云って見回す。
    伝助  「一人頭(あたま)、一両…、いつもながら、よく都合がつき
                  やすねぇ?」
    お蔦  「そりゃそうさ。十手は、せしめるのが得手(えて)なんだ
          よ」
    又吉  「盗賊の、お頭(かしら)の方が似合ってんじゃねえか? 
                  十手」
    留蔵  「(渋く笑って)金の在処(ありか)の洗い出しゃよう、手筈
          つけるより上手(うめ)え」
    仙二郎「冷やかすんじゃねぇ。ワルから盗るんだ、文句なかろう」
       蝋燭(ろうそく)の灯りに、全員の笑顔が揺れて浮かぶ。

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2011年12月 8日 (木)

☆時代劇シナリオ・影車・第一回☆悪徳商法(10)

    影車      水本爽涼
     第一回 悪徳商法(10)

59. 回船問屋、上総屋の店外(路上)・朝
      大勢の町人(野次馬)。その中に瞽女(ごぜ)の、お蔦や同心の   
      仙二郎もいる。役人に連行される店の者達。黒山の人だかり。
    お蔦  「やっておくれだねえ(微かな声で)」
    仙二郎「おお、瞽女(ごぜ)さんも見物かい?」
    お蔦  「はい、通り縋(すが)りの者でございます。何事でござん
         しょう?」
    仙二郎「いやぁ、つまらねえ馬鹿騒ぎだあな…(笑う)」
      と云って、群衆の中へ消え去る。
60. 大黒屋の店内(座敷)・夜
      忍びで戸田が来ている。上座で酒を飲む戸田。前に豪華な料理
      膳。酌をする嘉兵衛。
    戸田  「(嗤って)これで、そちが申すとおりの筋書きになったのう」   
    嘉兵衛「全ては、戸田様のお蔭で…」
    戸田  「見返りは高くつくぞ(嗤う)」
    嘉兵衛「分かっておりますとも。あとは、入札(いりふだ)を手前ど
         もにお申しつけ戴ければ…(戸田の杯へ酒を注ぎ)」
    戸田  「悪どい奴よのう。だが、今は一存ではいかぬ。佐倉様の
         奉行職を引き継いでのことじゃ」
    嘉兵衛「はい、それも充分、承知いたしております。ご用立ては如
         何ようにも」
    戸田  「(頷いて)その節は、頼みおく…。して、上総屋の娘は如何
         する?」
    嘉兵衛「遠国の女郎屋へ売り飛ばす算段が、すでについておりま
         する」
    戸田  「(悪どく)そうか…。抜け目がない奴じゃ」
    嘉兵衛「その前に、お殿様にお一つ、…お味見して戴くということ
         で…」   
      嘉兵衛、いやらしく嗤い、戸田も無言で頷いて嗤う。
61. 同 (座敷・屋根裏)・夜
      お蔦が天井に忍んで、戸板の節目より下の様子を窺う。
    お蔦  「悪どい奴らだねぇ…。こりゃ、手筈が早まるよ(微かな声
         で)」
62. 北町奉行所(内部屋)・昼
      大勢が机に向かっている。眠っていた仙二郎、目覚めて欠伸
      をする。背を伸ばしたところを上司の村田、目敏(ざと)く見つ
           ける。
    村田  「またか…板谷(諦めきって)」
      仙二郎、村田を見て苦笑いし、ボリボリと頭の後ろを掻く。隣
           席の宮部(オカマ)、それを見て小声で、
    宮部  「下を向くのよ、下を!」
      と、諭す。仙二郎、軽く舌を出し、従う。
63. 大黒屋の店内(部屋)・夜
      行灯の灯り。布団が敷かれている。肌襦袢一枚で後ろ手に括
           (くく)られ猿轡(さるぐつわ)をされた、お美代が寝ている。戸田
           が寄り添うように寝て、
64. 同 (部屋の外・廊下)・夜
      行灯の光が障子越しに戸田の覆い被さる姿を影絵に映す。
           暫(しばら)くして戸田が突然、絶叫する。
65. 同 (廊下)・夜
      戸田の声を聞きつけ、嘉兵衛が廊下を早足で部屋前へ。
    嘉兵衛「戸田様、如何なされました?」
      と、障子前に座り、訊ねる。
    戸田  「苦しゅうない、…入れ!」
      嘉兵衛、障子を開ける。

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2011年12月 7日 (水)

☆時代劇シナリオ・影車・第一回☆悪徳商法(9)

    影車      水本爽涼
     第一回 悪徳商法(9)

51. 大黒屋の店内(座敷牢・外)・夜
      お美代、猿轡(さるぐつわ)、体を括(くく)られ牢の中。
    嘉兵衛「悪いようにはしない。しばらく我慢するんだよ(嗤う)」
52. 同 (座敷牢・内)・夜
      お美代、抗う。身体の自由が利かない。嘉兵衛、いやらしく嗤う。      
53. 茶屋(狭い路地)・夕暮れ時
      仙二郎と、お蔦が話している。
    仙二郎「また歩くぜ…」
      お蔦、仙二郎の後ろに従う。
54. 街路の河堀(橋の上)・夕暮れ時
      柳、屋形船あり。仙二郎、欄干(らんかん)に凭(もた)れている。
    お蔦  「大黒屋と戸田が、つるんでるのは間違いない。ただ、今の
                  
とこ、何を企(たくら)んでやがるか迄は…」
    仙二郎「手筈はワルというだけじゃ、俺達の掟(おきて)では、つけ
                  られねえからなぁ…。暫(しばら)く、泳がすしか手はある
                  めえ」
    お蔦  「そうだねえ。入札(いりふだ)がどうのこうの、とは語ってや   

         がったが」
    仙二郎「大黒屋は大ワルだ、何をしやがるか…。探り、続けてくれ」
    お蔦  「あいよっ!(手の平を出す)」
    仙二郎「ちぇっ、出費が、かさむぜ…」
      とボヤき、懐(ふところ)の財布から1朱銀、二枚を出し、手渡す。
      お蔦、笑って受けとると目を閉じ、瞽女(ごぜ)に戻る。杖をつき
     
去る、お蔦。それを見遣る仙二郎。
    仙二郎「ちっ、今夜の鴨鍋がフイになっちまった…」
      と愚痴りながら、お蔦とは反対の方向へ去る。肩を落とし歩く仙
           二郎の後ろ姿。
    仙二郎「そうだ! また大黒屋から、せしめてやるか…(軽く笑っ
          て)」
55. 運河(幅広)・昼
      進む御用舟、三艘。上総屋の回船へ横付けする御用舟。数名
      の役人が各艘に乗り込んでいる。
    上役人「皆の者、抜け荷が必ず隠されておる筈じゃ。心してかか
         
れ!」
56. 上総屋の回船の中(積み荷を満載)・昼 
      荷を改める下役人(数名)
57. 上総屋の回船の下(御用舟、三艘)・昼
      知らせを待つ御用舟の上役人と配下。そこへ上から声がする。
    下役人「ありましたぞぉ~」
    上役人「おおっ、でかした。(仰ぎ見ながら)大儀!」
58. 回船問屋・上総屋の店内(帳場・土間)・朝
      昨夜、帰らなかった、お美代、お照のことで店は混乱含み。お内   
      儀は蒼白。
    長兵衛「恐らく大黒屋が仕組んだことに違いない。私ゃ、これから
                  御奉行所へ訴え出るから、店の方は番頭さん、頼みまし
         
たよ」
      頷く番頭、高助。お内儀を慰める長兵衛。息を切らし、そこへ
      手代、多吉が駆け込む。
    多吉  「…だ、旦那様! 大変でございます」
    長兵衛「どうしたんだい?(心配げに)」
    多吉  「こちらへ、御番所のお、お役人が、大勢でやって参りま
         す…」
    長兵衛「なんだって?!(驚いて)」
    高助  「本当なのかい? 多吉、それは」
    多吉  「は、はい…まもなく」
      声が終わらないうちに、上役人が多数の下役人を従え、入ってく
      る。
    上役人「上総屋! 抜け荷のかどで召し捕る。神妙にお縄を頂戴
                   いたせ。それいっ!」
      号令一過、下役人達が長兵衛、高助、多吉など、主だった店の
      上層部を捕縛する。泣き叫ぶ、お内儀、お紋。
    上役人「引っ立てい!」
    お紋  「おまえさん…(長兵衛に、すがり)」
      長兵衛、悔しそうな表情。後ろ手に縄を巻かれ、下役人に押され
           暖簾を出る。。他の捕縛された者達も同様に外へ押し出される。

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2011年12月 6日 (火)

☆時代劇シナリオ・影車・第一回☆悪徳商法(8)

    影車      水本爽涼
     第一回 悪徳商法(8)

43. 江戸の街通りと蕎麦屋の屋台(夜半) 
      又吉が働いている。そこへ、紙に包まれた石つぶて。又吉、それ   
      を拾い読む。
    又吉  「手筈が延びたか…(紙を懐[ふところ]へ)」
44. 長屋(留蔵の家の中・夜半)
      留蔵が徳利の酒を茶碗に注ぎ飲んでいる。入口の障子紙を破
     
り、紙包みの石つぶてが投げ込まれる。留蔵、のっそり土間へと   
           動き、拾って見る。そして乱雑に読む。
    留蔵  「……」
      無言で何もなかったように上へと戻り、茶碗酒を啜る。紙を行灯
      の火で燃やし、煙草盆へ。そしてまた、茶碗酒を啜る。
45. 人の気配がない細道(夜)・カラオケ(1)
      お照が提灯を持ち先導。従い歩くお美代。稽古事の帰路。突然、   
           現れる黒装束の二人組。前後に別れ、お照とお美代を囲む。
    お照  「何者です!」
      浪人①(黒装束)、問答無用とばかりに、一刀のもと、お照を斬り   
      捨てる。呻いて倒れる、お照。
      提灯が道へ落ち、燃える。叫んで、その場を逃れようとする、お美
      代。
    浪人①「おっと、そうはいかん!」
      お美代に猿轡(さるぐつわ)をする浪人②。準備しておいた籠へ、
      お美代を押し込め、籠を担いで去る二人。
    お照   「お・・お嬢さま…」
      名を呼びながら息絶える、路上のお照。
46. 回船の中(微かな月夜)・テーマ曲のオケ2 イン
      臨検前の積み荷を満載した船。密かに忍び込んだ黒装束(浪人
      ③)、ご禁制のマリア像と西洋式銃一丁を肩から下ろし、荷の中
           へ隠す。
    浪人③「よし! これでよかろう。引きあげるとするか…」
47. 回船の上(微かな月夜)
      闇の中。浪人③、闇に紛れて舷(ふなばた)より縄梯子を下ろす。
      下の小船(浪人④が待つ)へ降りようとする。
48. 回船の左舷(微かな月夜)
      下から照らす光。縄梯子を下へと降りる浪人③。
49. 回船の下(水に浮かぶ横付けられた小舟)・微かな月夜
      浪人④、浪人③が乗り移ったのを見届け、櫂(かい)を漕ぎ始め   
      る。(縄梯子は浪人③が外す)小舟、闇の中へと消え去る。
50. 御番所の中(舟役人の控え部屋)・朝方
      舟役人に話をする侍(戸田源之丞の家来)。
    家来  「このような付け文(ぶみ)があってな…。(文をみせ)何事
          もなければよいのだが、一応は知らせておこうと罷(まか)   
          り越した次第でござる」
    舟役人「それは、かたじけない」
    家来  「当家とは拘(かかわ)りなきことではござるが、殿の上意で   
         あるゆえ、参ったまでのことでござる」
    舟役人「あい分かり申した。配下の者どもに命じ、早急に積み荷を
         改め直しまする(軽く会釈)」
    家来  「では拙者は、これにて…」
    舟役人「ご苦労でござった」

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2011年12月 5日 (月)

☆時代劇シナリオ・影車・第一回☆悪徳商法(7)

    影車      水本爽涼
     第一回 悪徳商法(7)

38. 回船問屋・上総屋の店前・夕刻近い昼間
      荷車、舟の積み荷の降ろし、帳簿をつけて荷を確認する手代な   
      どの人々。
      活気づく店前。下女を伴った上総屋の娘、お美代が踊りの稽古
           から帰ってくる。
    奉公人「お嬢さま、お帰りなさいまし」
      と、あちこちから声が飛ぶ。笑顔で軽く頷きながら店の暖簾をく
           ぐる、お美代とお照。
39. 回船問屋・上総屋の店内(帳場・土間)・夕刻近い昼間
      番頭や手代、丁稚などから、
    奉公人「お帰りなさいまし」
      と、声が飛ぶ。二人、笑顔で下の土間から奥へと消える。入れ替
           わり、店主、長兵衛が上の居間から現れる。番頭の高助、近づく。
    高助 「旦那様、お嬢さまがお帰りになりました」
    長兵衛「そうかい。今日は早かったね」
    高助  「そのようで、ございますな」
      高助、帳場格子の内より、勘定帳の一冊を取り出し、
    高助  「旦那様、先月までの差し引きでございますが…」
      と、帳簿を長兵衛に示す。
    長兵衛「はい、ごくろうさん。(数枚めくって)あとから見ておく
         よ。それよか番頭さん、次の船(ふな)改めは大丈夫なん   
         だろうね?」
    高助  「はい、粗相のないよう、多吉に手配させてございます」
    長兵衛「そうかい。なら、いいんだが…。先に潰された加賀屋さん
         の二の舞だけには、ならないようにしないとね。大黒屋の
         連中が、何を仕掛けてくるか分からないから、用心するん
         だよ」
    高助  「畏(かしこ)まってございます。多吉にも念を入れるよう申
         し伝えますので…」
    長兵衛「呉々(くれぐれ)も頼んだよ」
      と云って、帳簿を持ち、ふたたび奥の居間の方へと消える。高
      助、その後ろ姿に軽い会釈。
40. 長屋(留蔵の家)中・夕刻近い昼間
      入口の近くで鋳掛け仕事に精をだす留蔵。外から男の声。
    又吉 「留よぉ、また噂が立ってるようだぜ…」
      灼熱(赤橙色)の鍋を叩きながら、
    留蔵 「用がねえんなら帰(けえ)ってくんな。手筈以外(いげえ)
         は顔を見せねえ決まりだろうが…(朴訥に)」
    又吉 「そりゃそうだがよ。ま、いいじゃねえか」
    留蔵 「よくもねぇだろ。伝え向きなら話は別だが。こんなとこを、
         日中(ひんなか)うろついたらよぉ、仙さんに怒られるぜ、
         又。フフフ…(冷たく)」
41. 同 外・夕方近い昼間
      又吉、ひと目、入口の障子を見遣り、渋い顔で消える。
42. 大黒屋の店内(座敷)・夜
      数人の浪人と嘉平兵衛が密談の、さなか。
    嘉兵衛「先生方、頼みましたよ」
    浪人①「分かっておる。拙者は、お美代を、かどわかせばいいの
                  だな?」
    浪人②「それがしも、付いて参ろう」
    嘉兵衛「残りの先生方は、積み荷の細工をお願いしますよ」
      残りの浪人二名、頷く。
    浪人①「先に手付けを貰っておこうか」
    嘉兵衛「抜け目がないですな。(懐[ふところ]を探り、袱紗[ふくさ]
         を取り出し、小判二十五両包金を四つ、それぞれの前へ
                  一つづつ置く)」
      浪人達、嗤いながら金子(きんす)を手にし、懐中へと納める。
    嘉兵衛「これは前金でございます。首尾よくいきました暁には、こ
                  の倍を、それぞれ、お支払いいたします」
    浪人①「あい分かった(頷く)」
      他の三名も同様に頷く。

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2011年12月 4日 (日)

☆時代劇シナリオ・影車・第一回☆悪徳商法(6)

    影車      水本爽涼
     第一回 悪徳商法(6)

32. 戸田源之丞の屋敷(内景)土塀下・夜
      飛び降り、様子を窺うお蔦。(三味線は背に回し、杖は塀下に置   
      いたのち)目にも止まらぬ速さで屋敷の屋根へ、ふたたび飛んで
      移動。
33. 同 (内景)屋根裏・夜
      僅かな隙間より下の様子を窺うお蔦。下では、戸田と大黒屋が
           酒を酌み交わす。
34. 同 (内景)部屋・夜
      覗かれているとも知らず、
    戸田  「かようなものも、あったに越したことはない。孰(いず)れ
         はこれも、佐倉様に献上することになろう。そちの願い、
         出世の暁にはのう。大黒屋、それには山吹色の輝きもあと   
          少しのう。(嗤う)」
    嘉兵衛「へえ、それはもう…。それより、お役に着かれました暁に
         は、入札(いりふだ)の件、何卒(なにとぞ)よしなに(嗤う)」
    戸田  「分かっておる、分かっておるわ。そちも諄(くど)い奴よの
         う(嗤う)」
35. 同 (内景)屋根裏・夜
    お蔦  「ふん! やはり、噂どおりのようだねえ。ワルが二匹かい
         …」
36. 茶屋(狭い路地)・夕暮れ時
      三日前と同じ場所。お蔦、仙二郎を待っている。今日は門付け
      をしていない。少し間合いを置き、仙二郎、現れる。
    お蔦  「遅かったじゃないか」
    仙二郎「すまねえ。野暮用で遅れちまった(申し訳なさそうに首筋を   
         擦りながら)」
    お蔦  「あらかた、調べは、ついたよ」
    仙二郎「そうか…、ご苦労だったな。歩きながら話すとするか…」
      二人、(少し離れ、目立たぬように)歩き出す。
37. 河堀(橋の上)・夕暮れ時
      柳、屋形船あり。仙二郎、橋の欄干へ凭(もた)れかかる。カメ
      ラ、アップ。
    仙二郎「…ってことは、やはり戸部と大黒屋が、つるんでやがった
         のか…。筋書きが読めてきたぜ」
    お蔦  「で、どうするんだね?」
    仙二郎「慌てるねえ。手筈は、そのうちつける」
    お蔦  「だってさ、他の連中にゃ、今日、手筈を伝える約束なんだ
         ろ?」
    仙二郎「そうなんだがな…。大黒屋は、いいとしてだ…、戸部が屋
         敷内(うち)じゃ下手(まず)かろうが…」
    お蔦  「(頷いて)お屋敷を出るのは、登城か用向きのある時…」
    仙二郎「ああ、そうだ。その辺りを、もうひと押し、頼めねえか」
    お蔦  「分かったよ。他の連中にゃ、付け文(ぶみ)で知らせとく
         よ」
    仙二郎「厄介かけるが、宜しく頼む。俺も役所筋で調べちゃみる
         が…」
    お蔦  「あいよっ。そいじゃ、三日ばかし貰おうかね」
    仙二郎「ああ…。三日後の暮れ六つ、茶屋前で、なっ(二朱を渡す)」   
      と云い残し、仙二郎、橋を去る。お蔦も反対側へ足早やに消える。

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2011年12月 3日 (土)

☆時代劇シナリオ・影車・第一回☆悪徳商法(5)

    影車      水本爽涼
     第一回 悪徳商法(5)

29. 戸田源之丞の屋敷(外景)表門・夜
      静寂の表門。
30. 同 (内景)部屋・夜
      戸田、脇息へ肘(ひじ)を預け、思案に耽(ふけ)る。
    戸田  「そろそろ大黒屋も目についてきおったのう…(ひとり言)」   
      そこへ家臣の声がする。障子越しに、
    家臣  「殿。嘉兵衛が、目通(どお)りを願い出ておりまするが…」      

    戸田  「ふん! かような夜分(やぶん)にいったい何事ぞ」
    家臣  「用向きは分かりませぬが、何やら献上したき品があると
          か…」
    戸田  「そうか…通せ(煙たそうに)」
    家臣  「ははっ!」
      家臣、素早く下がる気配。
    戸田  「大黒屋め、まだ儲けるつもりとみえる(ひとり言)」
      嘉兵衛、座って障子を開け一礼して入る。手には風呂敷包み。
    戸田  「おお…嘉兵衛か、久しいのう。して、かような夜分に何用
         じゃ?」
    嘉兵衛「ははっ! 戸田様におかれましては、お変わりもなく御息
         災にて、何よりと存じ上げます(平伏したまま)」
    戸田  「堅苦しい挨拶などよいわ。面(おもて)を上げい(威厳を含   
          み)」
      嘉兵衛、ゆっくりと顔を上げる。
    嘉兵衛「今宵、罷(まか)り越しました訳とは…。長崎より届きまし
          た、かような品を(風呂敷包みを解いて)戸田様にご覧に
          入れようと思った次第でございまして…(笑顔)」
      戸田の正面前へ華やかな宝石細工の品、差し出す。戸田、見蕩   
     (みと)れて、思わず手にする。
    戸田  「これは…、南蛮ものじゃな? いい輝きをしておるのう」
      なおも見蕩れる戸田。金、銀、ダイヤ、トパーズ、エメラルドなど
           の目も眩(くら)む宝飾品。
    嘉兵衛「どうでございましょう、お気に召されましたかな?」
    戸田 「ふふふ…。して、見返りは何じゃ? この強欲者めが」
    嘉兵衛「いえいえ、戸田様の方こそ…」
    戸田 「なにぃ? (嗤う)」
      二人、嗤い合う。急に真顔に戻った嘉兵衛。
    嘉兵衛「入札(いりふだ)の件…何卒(なにとぞ)よしなに」
      と、頭を下げる。
    戸田 「(大笑いして)やはりのう…。さもあろう、さもあろう」
      二人、また顔を見合わせ嗤う。
31. 同 (外景)表門・夜
      お蔦が杖をつき、通りかかる。
    お蔦 「噂に違(たが)わず、阿漕(あこぎ)なことをしなさる、お役人
         のようだねぇ(ひとり言)」
      屋敷を通り過ぎざま、目をギッと見開き、睨む。次の瞬間、土塀   
      の瓦上へ飛ぶ。

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2011年12月 2日 (金)

☆時代劇シナリオ・影車・第一回☆悪徳商法(4)

    影車      水本爽涼
     第一回 悪徳商法(4)

22. 大黒屋の店内(座敷前・前栽[せんざい])・夕方近い昼間
      お蔦が杖をつき、現れる。
    お蔦  「お呼び戴き、ありがとうござんす」
      障子越しの声。
    嘉兵衛「瞽女(ごぜ)さんかい? そこではなんだ…、上がってお入   
          り」
      お蔦、縁側下の置き石より上がり、廊下の障子を開け、座敷へ
      と入る。障子を閉める。
23. 同 (座敷)・夕方近い昼間
      杖の先が偶然、千両箱に触れる。お蔦には、それが何かは分か
     るが(薄目)、
    お蔦  「あっ! とんだ粗相(そそう)を…」
    嘉兵衛「いいからいいから…。さあ、お座り。(好色な目で)先に、
        酌を頼もうかね(手の小判を懐に入れ)」
      お蔦、杖を畳へ置き座る。首から吊るした三味線も外して置く。
      手先で探りながら銚子を持つ。酌をする。嘉兵衛、ニンマリと胸
      元を見ながら杯(さかずき)を口にする。
    嘉兵衛「姐(ねえ)さん、いい女っぷりだねぇ…」
      片手をお蔦の胸元へ入れようとする。
    お蔦  「あらまあ…ご無体な」
      軽く、いなす。
    嘉兵衛「ははは…、冗談。冗談だよ」
      お蔦、笑って三味線を手に取り、都都逸を弾き始める。
24. 江戸の街通り(一筋の広い道) 昼
      仙二郎、うどん屋の『みかさ屋』と書かれた暖簾から賑やかな
      通りへ。ばったり、やくざ風の源次と、出食わす。
    源次  「旦那、お久しぶりで(笑う)」
    仙二郎「おお、源次じゃねえか。もう悪さはしてねえだろうな(笑
          う)」
    源次 「へえ…それはもう。今は、人足頭(がしら)を、やっとりや
         す」
    仙二郎「ほぉ~、そりゃ何よりだ。この次ゃ、手加減できねえから
         な。励めよ」
      と、源次の肩を軽く叩き、通り過ぎる。源次、仙二郎の後ろ姿
      に軽い会釈。
25. 同 昼
      通行人が時折り、往き交う。仙二郎の歩く姿をカメラ、アップ。
    仙二郎「かけ一杯(いっぺぇ)か。これじゃ、もちゃしねえや(腹を
         押さえ苦笑)」
26. 大黒屋の店前・昼
      仙二郎が歩いてやってくる。暖簾をくぐる。
27. 大黒屋の店内(帳場・土間)・昼
      誰(店の者・複数)ということもなく、
    店の者「いらっしゃいまし!」
      と、多くの声。仙二郎、十手を抜き、定廻りだと臭わせる。
    仙二郎「別段、変わったこたぁ、ねえか?」
    手代 「これは板谷様。お役目ご苦労に存じます。はい、今のと
         ころは…。これは、些少(さしょう)ではございますが…(笑
                 いながら)」
      仙二郎の片袖の中へ手を入れる。
    仙二郎「(一分金[こつぶ]、二枚を確かめ)おう、これは、すまねえ
                 な(笑顔)」
      と、何げなく、金子(きんす)を懐(ふところ)へ。
     仙二郎「じゃあな…」
      何事もなかったかのように暖簾から外へ。
28. 大黒屋の店前・昼
      仙二郎、大きく欠伸しながら背を反らす。歩きながら、また賑
           わう通りへ。
    仙二郎「団子でも食ってくか(笑う)」

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2011年12月 1日 (木)

☆時代劇シナリオ・影車・第一回☆悪徳商法(3)

    影車      水本爽涼
     第一回 悪徳商法(3)

14. 仙二郎の住まい(外)・夕方
      屋敷とは名ばかりの同心長屋。仙二郎、奉行所から帰ってくる。   
    仙二郎「残りものが…確か、あったな」
15. 同 (内)・夕方
      ひっそりしている。仙二郎、木戸より入ってくる。廊下より上がり、
      戸締りしていない障子を開ける。隅の飯櫃(めしびつ)を覗き込
      み、  
    仙二郎「やれやれ、今日はいけるぜ」
      安心した仙二郎、大の字になる。少しして、急に半身を起こし、       
    仙二郎「あっ! おかずがねえや、…こりゃ、弱ったな。芳(よし)   
          婆さんに漬けものでも貰うか…」
      と、情けなそうな顔で、重い腰を上げる。
16. 芳婆の家・内(長屋・粗末な佇まい)・夕方
      仙二郎が頼み込んでいる。
    芳婆  「仙さんにかかっちゃ断れないねぇ。ほらっ、これ(漬けもの      
           の大根を一本、目の前へ差し出す)」
    仙二郎「婆さん、すまねえな… 」
      面目なさそうに軽く会釈。受け取る。
    芳婆  「ほんとに…、早く嫁もらいな」
      頭を掻きながら、仙二郎、早足に去る。
17. 北町奉行所 外(豪壮な外観)・朝
      門番が二名、立つ。
18. 同 内(同心部屋)・朝
      大勢が机に向かっている。仙二郎、片隅に座り鼻糞をほじくる。
      上司(同心頭)の村田、それを見ている。
    村田  「こらっ板谷! またか…」
      仙二郎、申し訳なさそうに会釈。同僚の隣席に座る宮部(オカマ)。   
      気がある。
    宮部  「駄目でしょ、村田さんには注意しなくっちゃ、ネッ」
      小声で甘く囁く、宮部。目が潤んでいる。
    仙二郎「やってらんねぇな…」
      と、宮部の反対側へ顔を背け、仙二郎、呟く。
    宮部  「えっ? なにか云った?」
    仙二郎「いえ、別に…」
19. 大黒屋の店内(帳場・土間)・夕方近い昼間
      夕方近く。お蔦が番頭の喜助と話している。客で賑わう店。
    喜助  「まあ…お前さんがそこまで云うんなら、一応、旦那様にお
         伺いは立てますがね…(渋い顔)」
    お蔦  「一節(ひとふし)だけでも、ようござんすから」
      と頼み込む。喜助、奥へと去る。お蔦、顔を伏せたまま、編み笠か
      ら店内の様子を窺う。
20. 同 (渡り廊下・座敷前)・夕方近い昼間
      喜助、座敷の障子前へ座る。
    喜助  「旦那様、瞽女(ごぜ)が一節(ひとふし)、唸らせて欲しいと店
         
に来ておりますが…」
      と、中を窺うように云う。中から、
    嘉兵衛「ああ…、いつぞやの女かい? いいだろ。丁度、酒にも飽き
         
た頃さな。前栽(せんざい)へ回っておもらい」
    喜助 「はい、旦那様…」
      と云って立つ。早足で去る。
21. 同 (座敷)・夕方近い昼間
      酒を飲む嘉兵衛。すぐ傍らに千両箱。片手に杯(さかずき)、片
      手に小判。輝く小判の光沢に見惚れて、
    嘉兵衛「フフフ…(悪どい嗤い)」

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