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2017年5月11日 (木)

よくある・ユーモア短編集-15- つい、口にしたくなる

 平松は歳末の買い物をして、レジで支払いをしていた。よく買いに来るスーパーだったから、平松の顔は売り子の女店員によく知られていた。後ろに客がいなかったからか、その日の女店員といくらかの会話が弾(はず)んだ。
「今年は暖かいですね」
 女店員が器用にポス・システム[今では当然のようになったレーザー光による感知認識システム]で籠(かご)に入れた商品を読み取りながら、それとなくポツリと口走った。
「そうですね、今年は雪が少ないですから助かります。まあ、2月頃になれば分かりませんがね…」
 平松としては、別に助かる訳でもなかったが、流れでつい、口にしたくなり、そう口走っていた。すると、また女店員から返ってきた。
「去年も1月頃にはよく降って困りました…」
「タイヤは一応、スノーに変えました…」
「そうですか。どこかへ行かれるんですか?」
「いえ、別に…。◎◎へ行ってみたいんですが…」
「ご実家ですか?」
 そう女店員に訊(き)かれ、平松は『そうです!』と、格好をつけてつい、口にしたくなった。
「いえ、そうではないんですが、何度も行ってますから…」
 危うく残し、平松は偽(いつわ)らずに、真実を語った。世の中には、格好をつけて、つい、口にしたくなることはよくある。別に格好をつけず、有りのままを語れば楽なのだが…。

                            完

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