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2017年5月14日 (日)

よくある・ユーモア短編集-18- 縁起を担(かつ)ぐ

 羽衣(はごろも)塗装店は従業員3人[羽衣を含む]、女事務員1人の計4人の小さな店である。羽衣と他の店員は、店から少し離れたところにある会社の塗装作業をしていた。別に羽衣の塗装が上手(うま)く、評判がいいから依頼の電話があった・・という訳ではない。羽衣という珍しくなんともお目出度(めでた)そうな名に興味をそそられた社長の鶴の一声で委託された経緯(けいい)があった。社長にすれば、他にも何か会社にいいことが起こるのでは・・という縁起を担(かつ)ぐ気持もあったようだ。それは羽衣が工事を終えたとき、最後の仕上げを終えた現場で社長自らが話して分かったことである。
「君のところは手作業に拘(こだわ)るね」
「はい! それが私の店のモットーですから…」
「店の名前のよさで縁起を担いでお願いしたんだが、それだけでもなさそうだ」
「いやね、そんなこともないんですが、コンプレッサーなどによる吹き付け用の機械は一切、使いませんから手間取りますが、それがなかなか評判がいいようで、助かってます」
「ははは…うちとしては、綺麗で長く持ちゃそれでいいんだ。それに加えて…」
 社長は語尾を暈(ぼか)した。
「加えて?」
「その…なんだ。縁起をね…」
「ああ、なるほど…。それは私の店だから、どうこうなるという筋(すじ)の話ではありませんが…」
「いや! 羽衣は天女(てんにょ)を連想させ、縁起がいい」
「はあ、まあ…。そういうものでしょうか?」
「ああ! そういうものだっ! 昨今の景気が今一の時代には特にね」
 どうなるのか先が見通せない今の時代、神様、仏様、キリスト様…様と、縁起を担ぐことは、世間、いや、世界でよくある。

                            完

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