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2017年7月13日 (木)

よくある・ユーモア短編集-78- 先を読む

 腕組みをしながら川山は考えていた。ああ、すれば・・当然、こうなる…とすれば、こうすれば・・どうなる? …と、あれこれと巡っていたのである。だが、なかなか思うように先は読めなかった。ああ! そうすれば、いいかも知れない…待てよっ! しかし、こんなことになることも有り得(う)るからな…と、やはり決断できるような結論は出ず、川山は、なおも先を読み続けた。
 そうこうするうちに太陽は中天まで上がり、昼どきになっていた。先方の話では夕方の5時までに・・だから、まっ! いいか…と腹が空いていた川山は、余裕めいて昼にすることにした。
 だが、川山の考えは間違っていた。昼食時間をゆっとりと過ごし、ふたたびさて、どうしたものか…と先を読み始めたが、やはり午前中と同じで結論が出ず、考え倦(あぐ)ねることになってしまった。腕を見れば3時過ぎだった。川山は少し焦(あせ)り始めた。先を読む場合は、じっくりと構え、焦ってはいけない。気持ちが先に立ち、先を読めなくなるのだ。すると、悪くしたもので益々(ますます)、焦る。焦れば先が読めなくなる。この繰り返しが負(ふ)のスパイラル[渦巻き状に上下する様態]という悪循環を起こし、ついには何を考えているのかさえ見失うのである。川山が、そうだった。
 約束した5時が迫っていた。
「あっ! すいません。申し越しの件なんですが、先が読めません! 封じ手ということで…」
『はあ? 何のことです? 当方としましては、そちらさまの出方によって対応をさせていただく予定でございますので、如何(いかん)とも…』
 電話に出た先方の底海は囲碁や将棋の棋士のようなことを言われ、困った。実は底海も川山の出方によって対応を変える先を読んでいた。結局、二人とも先を読み過ぎた挙句(あげく)、一日を無駄にしてしまう結果となったのである。川山も底海も、こんなことなら…と後悔した。
 先を読むことも大事だが、それも人生では程度もので、読み過ぎると上手(うま)く進まなくなることは、よくある。

                            完

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