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2017年8月 3日 (木)

よくある・ユーモア短編集-99- 本音(ほんね)

 人は知らず知らずのうちに自分を飾る。いや、自分は飾ってないぞっ! と言われるお方も、どこかで自分をよく見せよう…と着飾っておられるのだ。それは目に見える外観、見えない心理面の両面を含めてである。
「ははは…何をおっしゃる。たかだか、2億程度の儲(もう)けですよ。大した額じゃない」
 顔で笑いながら、その実、ホールディングス会長の平岡は、どうだっ! 大したものだろう…と内心で自慢していた。この自慢する内心が平岡の本音(ほんね)である。聞いているのは、これも平岡と肩を並べるほどの大物で、AT財閥の総帥、編竹(あみたけ)だった。
「いやいやいやいや…ひと言(こと)で2億を稼(かせ)げるお人は、そうざらには、おられませんよ」
 にこやかな顔で返した編竹だったが、その実、私だってその程度はすぐに動かせますよっ! …と内心で見栄を張っていた。この見栄を張る内心が編竹の本音である。双方、外見も超一流ブランドの特注品の背広で着飾っていた。これは目に見え、どうだ! いい服だろう! とばかりに双方が主張する本音だ。
「どうです? 今夜あたり、一献、傾けるというのは…」
「ほう! いいですなっ! 料亭、鰻政ですか…。あそこは300年の老舗で、天然ものですからな」
「そうそう! 秘書に手配させておきます。今宵(こよい)、六時あたりで、いかがですかな?」
「はあ、それで…」
 この飲み食い話に関しては双方とも本音で、強(あなが)ち人は飲み食いの話となると、本音で語ることが、よくある。

                             完

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