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2017年9月11日 (月)

思わず笑える短編集-38- 停止

 いつものように虎川はパソコンを起動し、職場から持ち帰った作業を継続しようとした。ところがである。束(つか)の間(ま)、立ち上がったパソコンが、この朝にかぎりウンともスンとも言わなくなったのである。要は、停止してしまったということだ。この突然の停止には、さすが扱(あつか)い馴(な)れた虎川も驚いた。この日は土曜の閉庁日で、役場ではなく自宅だったのが勿怪(もっけ)の幸いだった。虎川は最初のうちは、それほど深く考えていなかった。再起動でもすりゃ、すぐに…くらいの軽い気分である。ところが、どっこい、そうは問屋が卸(おろ)さず、パソコンは店を畳(たた)む危機…いや、停止の危機に陥(おちい)ったのだった。それに虎川が気づいたのは、およそ30分ばかりが過ぎ去った頃だった。
「妙だな…」
 虎川は腕組みし、はて? と、囲碁のプロ棋士のように長考に入った。だが、どうしても停止の理由は分からなかった。昨日(きのう)の終了までは順調に起動しており、取り立てて弄(いじ)った記憶もなかったから、原因がまったく掴(つか)めなかった。虎川は、アレコレと試みたが、やはりパソコンはウンともスンとも言わなかった。
『修理に出すか…』
 停止したままなら、やはり思いつくのはプロ棋士風? の第一感として電気店への修理出しである。いや、別にプロ棋士でなくても思いつくことなのだが…。
 さて! と、原因を探るのをやめ、餅は餅屋だ…とばかり、虎川は電気店へ下駄(げた)を預(あず)けることにし、椅子(いす)から立ち上がった。そして、和室を数歩歩いたときだった。電源に繋いでおいたはずのケーブルがコンセントから抜けていた。結論から先に言えば、停止したのはパソコンの不具合によるものではなく、充電不良によるパソコンのバッテリー切れ・・ということになる。
「なんだっ!!」
 虎川は気づかなかった自分自身に腹が立った。お蔭(かげ)で午前中の作業はチャラとなり、虎川としてはサッパリである。虎川は、上手(じょうず)の手から水だな…と、またプロ棋士のように偉(えら)そうに思った。これでは、先が思いやられる。

                            完

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