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2017年9月13日 (水)

思わず笑える短編集-40- バイメタル

 バイメタルという金属物は、なかなか重宝されている。自動信号で切り替わる・・という性質の物ではなく、温度の高低により歪曲(わいきょく)したり伸びたりする伸縮性がある金属物なのである。この特性を利用して、今までも、さまざまな電気製品などの部品として利用されてきた。角鹿(つのじか)は金属そのものではなく、その理論的な部分を世界経済に取り入れられないものだろうか…と、コンビニで1個¥100のおにぎりを頬張(ほおば)りながら、偉そうに考えていた。テレビには今を時めく政界のお歴々が、議員バッチを光らせながら格差社会について論じていた。角鹿の背広には何も付いていなかった。ということは、偉(えら)ぶって考える必要もないのだ。しかし、角鹿は経済学者でもないのに、図書館の専門書から得た知識を生かし、研究をしていた。ケインズが唱えた有効需要理論の修正理論であるバイメタル理論である。この理論によれば、富裕層の富は一定の限界を超えれば、吐(は)き出さないと滅亡するというものである。またその逆で、貧困層の生活レベルが一定の限界を超えた段階で富裕層への道が開ける・・という夢のような理論である。角鹿は、もう1個、おむすびを買っておけばよかった…と雑念を浮かべながら、空いた腹で、そう思った。平等は、なかなかこの世では難しいのである。テレビのチャンネルを変えると、芸能人が美味そうに高価な料理を食べていた。ああ! いいなあ…と角鹿は、また思いながら残ったおにぎりを齧(かじ)った。

                            完

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