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2017年10月30日 (月)

思わず笑える短編集-87- 地震のメカニズム

 滑川(なめかわ)教授は腕組みをしながら、地震のメカニズムの研究に取り組んでいた。次の日は国営放送の報道特別番組に招聘(しょうへい)されていた教授は、番組で何らかの根拠(こんきょ)を提示しようと模索(もさく)していたのである。
 次の日のテレビ局収録現場である。
「今回、起こりました地域の周辺では多くの細かな活断層が走っておりまして、それが火山活動によって活性化されたものと…」
 教授と同様に招聘されていた地震学者が詳細を科学的に語っていたときだった。
「いや、そうじゃないんですっ!」
 滑川教授は地震学者の発言を遮(さうぎ)った。
「失礼なっ! その根拠はっ!」
 地震学者はキッ! と教授を睨(にら)んで声を大きくした。
「霊動学から申しますと、今回の地震もやはり大魔神の怒りが地を震(ふる)わせたのですよ」
「何言ってるっ! 馬鹿かっ、あんたはっ!!」
「ほっほっほっ…あなたも言われますなぁ~。いいえ、私はバカでもアホでもありません。霊動学者の滑川です…」
 滑川教授は一笑(いっしょう)に付した。
「ど、どういうことなんだっ! せ、説明してみなさいよっ!」
「それは…。そうですな、では語るとしましょう。人の悪いふるまいが一定の限界を超(こ)えますと、大魔神が目覚め、地震を引き起こすのですぞ」
「なんだって? やはりあんたはバカかアホだっ! …なら、その証拠はっ?!!」
「証拠は壊(こわ)れた神社、仏閣・・それに多くの建造物です」
「な、なにいってんだっ! そんなもんが証拠になるかっ!! 私らには活断層という列記(れっき)とした事実があるんだっ!!」
 地震学者は顔を真っ赤にして怒鳴った。
「まあまあ、冷静に…。その説明を聞きましょう」
 司会役のアナウンサーが地震学者を宥(なだ)めた。
「はい…」
 地震学者は矛(ほこ)を収(おさ)め、声を小さくした。
「では教授、教授がお考えの地震のメカニズムについて、もう少し具体的に詳しくお願いします」
「分かりました…。そもそも、大魔神はそう簡単には目覚めませんぞ。活断層があることも事実です。ただ、活断層は大魔神が地を震わせた結果、生じた地の歪(ひずみ)なのですよ。地震は大陸プレートの移動にともない発生する・・と科学では申します。しかし、霊動学では、引き起こすか引き起こさないかを決断するのは大魔神と考えております」
「なるほど…。で、そのメカニズムは?」
「メカニズムの詳細は至って簡単です。人の行いです。ポイ捨てゴミが地を汚す一定基準を超えれば・・ということになりますかな」
「その一定基準とは?」
「それに関しては、今、研究中ですが、反省が見られない一定の基準があるようですな」
「なるほど…。では、これで報道特別番組は終わります。お二方(ふたかた)とも、有難うございました」
 地震学者は多くを語れず、報道特別番組は終了した。

                            完

 ※ 滑川教授は、私小説[幽霊パッション]に登場した霊動学の権威者で、スピン・オフで登場していただきました。地震で被災されました方々に、平穏な暮らしが一日も早く戻りますよう、祈ってやみません。

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