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2017年11月 2日 (木)

思わず笑える短編集-90- 優先順位

 要領よく物事を熟(こな)す人は、優先順位を即座に判断する能力に長(た)けている。たとえば、AとBに同じ一日に幾つかかの仕事が与えられたとする。もちろん、その幾つかかの仕事は、どの仕事から熟してもいいのだが、Afはスンナリと昼過ぎにはやり終え、Bは夕方になっても出来なかったのである。この二人に言えることは、優先順位の判断力が違った・・ということである。Aにはその判断力がありねBにはなかったと・・ただ、それだけのことなのだが、半日の時間差を生じてしまったのだ。Aはその半日で美味(うま)い餅(もち)とや寿司、高級ステーキ、カレーなどを腹を壊(こわ)すほど鱈腹(たらふく)食べて満足し、Bは夕方になり、ようやく仕事をやり終えてとき、空(す)きっ腹に疲れと不満だけが残った・・ということだ。
 田舎(いなか)物産の常務室である。
「麦田専務派の動きはどうかね、菜花(なばな)君」
「はっ! 今のところ、コレといって目立った動きはないようでございますが…」
「君は、すぐそういう楽観的なことを言う。この前もそんなことを言って、先を越されたじゃないかっ!」
「はあ、あのときは、予想外の出来事がありましたもので…」
「とか、なんとか言って、君は、いつもそうだ…」
 蓮華(れんげ)常務は穏やかな口調で言った。
 こちらは専務室である。
「蓮華常務派の動きはどうなってる、水田君」
「はっ! 今は、このようなことに…」
 水田は麦田専務にIパッドを見せた。そこには常務室で話し合う蓮華と菜花の姿が映し出されていた。
「ははは…どうせ、私らのことを語り合ってるんだろう…」
「どうも、そのようです」
「この前も君に先を越されたからな、菜花君は」
「はい、彼と私の条件は同じだったのですが、幸いにも私の判断の方がよかったようで…」
「いや、そうじゃないんだよ。君の優先順位が勝(まさ)っていたのさ、ははは…」
「と、申されますと?」
「いや、君は知らんだろうが、私のところに送られてきた先方の資料に寄れば、菜花君は数日、遅れていたそうだ」
「そうなんですか」
「ああ、そうなんだよ。優先順位の発想の差が蓮華常務派の先を越した・・ということだ」
 そう言いながら、麦田は穏やかに笑った。ところが、である。蓮華も麦田も、すでに優先順位が遅れていた。その頃、すでに苗代(なわしろ)副社長の社長昇格が社長室で決定されていた。

                          完

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