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2018年3月13日 (火)

隠れたユーモア短編集-21- 座敷わらし

 ━ 座敷わらし━ は人が考え出した想像上の妖怪である。隠れた存在として人気があり、これといった悪さをしないから憎(にく)まれもしない。実はこんな隠れた存在は、現実の世界にもいるのだ。
 スナックのカウンターである。三人の客が店へ入ってから数時間が経過していた。随分と酔いも回り、虚(うつ)ろな眼差(まなざ)しで一人の客がもう一人の客に訊(たず)ねた。
「あれっ? 鋤川(すきかわ)さんはっ?」
「… おかしいな。今まで右横で飲んでたんだよ。トイレじゃないかっ?」
 もう一人の客も酔いが回った虚ろな眼差しで、身体を少しフラつかせながら返した。
「そうか…。ウィッ! マスター知らない?」
 一人の客は立ってグラスを拭(ふ)くマスターに声をかけた。
「さあ…? 私が奥から戻(もど)ったときは、おられませんでしたよ」
「どれくらい前?」
「いやあ、ほん今ですよっ…」
「エエェ~~」「ウソォ~~」
 二人の客は同時に驚愕(きょうがく)の声を上げた。
「ははは…、あのお客さん、座敷わらし・・ですねっ」
 マスターは笑いながら、その客がいたカウンターの上を指さした。カウンターの上には数枚の紙幣が置かれていた。

         
                   完

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