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2018年5月 4日 (金)

隠れたユーモア短編集-73- 進化と退化

 人は千差万別(せんさばんべつ)で、あることに対して優(すぐ)れた機能を持つ人もいれば、その逆で、さっぱりだ…と悲観する人もいる。オリンピックを一つ例に取ってみても分かるように、普通の私達から見れば、よくもまあ、あんなに速く…と思える機能の差が歴然とある。その優れた遺伝子は受け継がれ、さらに優れた機能へと進化する。ここには隠れた生命の神秘が存在する。だが、進化の逆も当然ある。使わない機能は次第に退化する訳だ。
 ここは、とある会社の研究開発室である。室長がデスクに部下を呼び、訊(たず)ねた。
「いったい、どうしたんだね? あれだけ新しいアイデアを出していた君が…」
「はあ、どうも、すいません…」
「いや、謝(あやま)るこっちゃないが。確か2年前、新しいソフトを導入してからだ」
「はい、助かってはおるんですが…」
「PC[パソコン]がほとんどやってくれる分、空(あ)き時間が出来たんだから当然、アイデアは生まれるはずなんだが…」
「はあ、常識的にはそうなるんでしょうが…。室長、私は退化したんでしょうか?」
「はあ?」
「いや、なにもありません…」
 部下のアイデアを生み出す能力は完全に退化していた。その半面、室長が楽しみとしている昼の定食を予知する能力は進化し、ほぼ100%の的中率を持つまでに高められていた。使う機能は進化し、使わない機能は退化する・・これが生命の隠れた神秘
なのである。

                   完

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