« 隠れたユーモア短編集-74- お釣り | トップページ | 隠れたユーモア短編集-76- 語ると述べると主張する »

2018年5月 6日 (日)

隠れたユーモア短編集-75- 励(はげ)む

 何のために生きているのか分からず人は励(はげ)み、生きている。もちろん、生活するためじゃないかっ! 食べるためだろっ! ということになるが、では、何のために生まれ、食べて、生きてるの? と問われたとき、即答できる人は少ないだろう。人の人生とはそんな不思議な世界だが、そんな深く考えず、人はとにかく励んでいる。だが、励まない人も当然、多くいる訳で、現在のように文明化が進み、生活が便利になると、そういう怠惰(ルーズ)な人が増えてきて次第に励まなくなる。そのこと自体は悪いことではなく、励まずグデェ~ンとすることで、身体をリフレッシュできる効果はある訳だ。いわば、機械のメンテナンス、悪い部品の交換、潤滑油をさすとかの効果である。
「君ねぇ~、随分、顔色が悪いよっ! 大丈夫かね?」
 働き者の社員に声をかけたのは上司の課長代理補佐だった。偉そうに言ってはいるが、課長ではなく、さらに課長代理でもない、たかが課長代理補佐が、だ。というのも、次の人事異動で課長代理に昇格できそうな身の上のこの課長代理補佐としては、営業成績がよくても社員に倒れられては困る・・という深刻な事情があったのである。
「はあ、有難うございます。もう、少しですからっ!」
「そう? 明日でもいいじゃないか、そんなに励まなくても…」
「いや、別に励んでいる訳では…」
「いやいや、励んでるよっ、いつも君はっ!」
「そうですかぁ~? つい…」
 社員は課長代理補佐の頭を徐(おもむろ)に見た。頭は見事に禿(は)げ散らかり、光り輝いていた。禿げた上司がいると部下がシコシコと励むのかは不確かだ

       
                   完

|

« 隠れたユーモア短編集-74- お釣り | トップページ | 隠れたユーモア短編集-76- 語ると述べると主張する »