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2018年5月26日 (土)

隠れたユーモア短編集-95- 運動会

 運動場の一角に設(もう)けられたベンチに座り、母校の小学校を訪れた葛餅(くずもち)と煎茶(せんちゃ)が話し合っている。
「ほう! 春か…。どおりで静かなはずだ。毎年なら今頃、賑(にぎ)やかなんだがな」
「なにせ、暑いだろ。熱中症対策だそうだ…」
「ははは…こんなこと言っちゃなんだが、馬鹿だな、先生方も。時期を遅(おく)らせばいいだけの話だろ。なにも初秋でないといけない、という決めはない。晩秋の11月初旬、中旬でもいい訳だっ」
「それはまあ、そうだが…」
「だろ? だいたい、運動会は秋、としたものだっ!」
「ああ、まあな…。ただ、遅らせば文化祭とかもあるからな…」
「文化祭を11月に! という決めもないぜっ」
「それもそうだが…。まあ、文化の日って祝日があるからだろ」
「文化の日は文化の日っ! というだけのもんさっ!」
「んっ? ああ…」
 熱い煎茶の湯気(ゆげ)に葛餅は食べられそうになった・・ということではなく、煎茶の話に頷(うなず)く他なかった。
「これには隠れた緻密(ちみつ)な読みが秘められてるっ!」
 煎茶は時間が経(た)ったから少しぬるくなったはずなのに、益々(ますます)、熱くなった。
「ははは…大げさなっ。緻密な読み・・ってのは?」
「教師も人の子。生徒に倒れられちゃ困るわなっ。そこでだっ! 春めいた頃にやりゃ、安心だ・・と考えた訳だ」
「なるほどっ! コトが起こらなけりゃ、その身は安泰! って訳か」
「まあ、そこまでは言わんがな。コトなかれ主義・・ってのはアリかもな」
「そうだな。しかし、受験とか他の諸事情もな」
「諸事情もっ!? ふん! ♪ショ ショ 証城寺(ショジョウジ)♪ も、へったくれもないっ!」
「上手(うま)いっ! だが、春でも熱中症の危険性がある・・って言うぜ」
「だから馬鹿だ・・と言うのさ。ははは…、暑い運動会の時期には校内で文化祭を、十分涼しくなった文化祭の時期には外で運動会をやりゃいいだけの話さっ」
「おおっ、テレコ[逆]になっ! そりゃ、いいや。ははは…」
 運動会の開催時期が春に変化する原因に、先生方の緻密な読みがあるのか? 私は知らない。ただ、煎茶が言ったように、秋の開催時期をテレコにする・・というのも一つの方法だとは思える。

                           完

 ※ 運動会の開催時期に対する考え方には個人差があります。^ ^

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