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2018年5月 3日 (木)

隠れたユーモア短編集-72- 暇(ひま)な研究

 餅川はお彼岸のオハギをモチモチと食べながら遠く過ぎ去ったあの頃に思いを馳(は)せていた。妙なもので、美味(うま)いものを食べていると気分のよい記憶が甦(よみがえ)ることに餅川は、ふと気づいた。だがこれは、なにも美味いものを食べたときに限ったことではなく、満足感があるときに現れる何か隠れた作用があるのではないか? とも思え、餅川は研究してみることにした。世の中には随分と暇人(ひまじん)もいたものである。
 まず、餅川はひと汗かいたあと、風呂に入りながら記憶を探った。確かに、いい記憶が甦ってきた。これもありか…と、浴室を出たあと、餅川はこの研究成果をメモ書きした。その後もいろいろと試(ため)したが、確かに快適→いい記憶の甦りという図式が導(みちび)けるようだった。では、その逆の場合は? と、餅川は正反対の事象も試してみることにした。すると、汗をかいて作業をしながら記憶を辿(たど)ったときに浮かぶ記憶は暗い、辛(つら)い、悪い・・といった記憶だった。こうした事実に餅川は快適と苦の間に生じる記憶には反比例の法則が存在することを確認した。誰にも言えない暇な研究の成果だった

                          完

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