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2018年5月12日 (土)

隠れたユーモア短編集-81- 抽選券

 伊根は、スーパーで買物をした金額をレジで支払い、¥1,000分で1枚の抽選補助券を数枚、手渡された。帰ってその券を見ると、抽選の有効期間は来月の3日まで・・とあった。ああ、そうなんだ…と伊根は単純に思った。だがここには、巧妙に仕組まれた隠れたスーパー側の経営戦略があることに、伊根は気づいていなかったのである。というのも、1回、抽選するには10点が必要で、補助券には硬貨で擦(こす)ると1、2、3点の孰(いず)れかの点数が浮き出る仕組みになっていて10点以上が必要だったのだ。早速(さっそく)、伊根はシコシコと券を硬貨で擦(こす)ってみた[飽(あ)くまでも券です ^^]。結果は、どの券も1点だった。そう易々(やすやす)と2点、3点は出ないわな…と、伊根はまた単純に思った。経営学でいうところのデモンストレーション効果という手法だ…と伊根は、また単純に思った。客寄せ効果というやつである。だが、この段階でも、伊根は隠れたスーパー側の巧妙な経営戦略に気づいてはいなかった。
 その後、買物を数度した伊根だったが、やはり1点券ばかりだった。そうこうしているうちに、8枚で8点となった。よし! 今日、買物をすれば10点は超(こ)えるから抽選が1回できるな…と伊根は、またまた単純に思った。買物を終え、勇(いさ)んでレジへ向かった伊根だったが、貰(もら)えるはずの抽選補助券は貰えなかった。んっ? と伊根は思いながら、買物収納台へ買物籠を置き、持ってきていた補助券をポケットから取り出し、シゲシゲと見た。すると、そこには補助券の進呈は28日までとなっているではないか。その日は30日だったから、貰えないのも道理だった。抽選有効期間中ではあったが、あと2点分の補助券を貰えなければ抽選は出来ず、なんの意味もなくなる。このとき、伊根は初めて巧妙に仕組まれた経営戦略に気づかされたのである。伊根は8枚の券を破棄(はき)してくれるようレジ係に頼み、スーパーを出た。あと味が悪い買物となった。
 抽選券には隠れたナニモノかが潜(ひそ)んでいるから、油断は出来ないっ! というような、そんな大げさな話ではない

                            完

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