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2018年6月11日 (月)

逆転ユーモア短編集-11- しまった!

 人が生きていく上で失敗は付きものである。まさか…と思っていたことが逆転して悪くなったり、または正反対の結果を招(まね)いたりと、人生はとかくそうしたものである。だから、しまった! と悔(くや)やんだことも、強(あなが)ち、悔やまなくてもよかった・・と逆転することも起こるのだ。
 ここは、とある神社の境内(けいだい)に設けられた社務所前の御神籤(おみくじ)台である。参詣(さんけい)を終えた男がガチシャガシャと御神籤筒を振り、三度目の御神籤を引いた。出てきた竹籤(たけひご)の先には、[凶]の墨字が記されていた。
「チェ! 凶しか出ねえんじゃねえかっ!!」
 そこへ、神社の宮司が偶然(ぐうぜん)、通りかかった。これ幸(さいわ)いと、男は宮司を呼び止めた。
「あの~~っ!!」
「はいっ! なにか?」
「この御神籤、[凶]しか入ってないんじゃないですかっ!?」
「いえ、決して、そのような…」
「だって、三度引いて、三度とも[凶]ですよっ!」
「どれどれ…」
 宮司がガチシャガシャと御神籤筒を振って籤を引くと、中から[大吉]と書かれた竹籤が出てきた。
「ほらっ! でしょ?」
「怪(おか)しいなぁ~…」
 訝(いぶか)しげに男は宮司から御神籤筒を受け取ると、また振って籤を引いた。中から出てきた竹籤は、やはり[凶]だった。
「ほら、ねっ!」
「いえ、これは偶然ですよ!」
「いやぁ~、私には、そうは思えない。嫌だなぁ~、怖(こわ)い怖いっ!」
「お詣(もう)での方、[凶]はなにも悪い八卦卦(はっけ)とは限りませんよ。今が最悪の凶と逆転してお考え願えれば、それでよろしいかと…」
「どういうことです?」
「ですから、今が最悪ならば、これからは吉事が起こるとお考えいただければ…」
「ああ、なるほどっ! ということは、これからは吉だと!」
「そうそう! そうですよっ!」
 男は嬉(うれ)しそうに御神籤筒を置き、社務所で料金を支払って凶の[おみくじ]紙をもらうと、有難げに懐(ふところ)へ入れた。
「またお詣でくださいませ…」
 朗(ほが)らかに立ち去る男の後(うし)ろ姿に、宮司はひと声、かけた。そして男の姿が消えたとき、宮司は、「しまった!」とひと声、発した。
「凶の[おみくじ]は、木に括(くく)りつけてお帰り願うのを言い忘れたわい。凶事が起らねばいいが…」
 宮司の心配を他所(よそ)に、男にはそれ以降、逆転した吉事が続いたということである。

        
                   完

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