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2018年6月 6日 (水)

逆転ユーモア短編集-6- 判決

 ここは地方裁判所の廷内である。裁判長が姿勢を正し、まさに判決文を読み上げようとしていた。
「…事件について、判決を言い渡します。被告人は前へ…」
 結果を先に述べると、被告人に言い渡された判決は無罪だった。検察側は即日抗告し、控訴審が開廷されることとなった。
 その、数ヵ月後の控訴審が行われている高等裁判所の廷内である。いよいよこの日、判決が下ることになっていた。
「被告人は前へ…」
 地方裁判所の裁判官よりは少し威厳めいた裁判長が姿勢を正し、まさに判決文を読み上げようとしていた。
 結果は逆転の有罪で、今度は弁護側が即日抗告し、上告審が開かれることとなった。上告するには上告するだけの事由が必要で、この事件の場合、無罪とも有罪ともつかない際どい審理の連続だったことと、社会的影響が余りにも大きい・・と思われたため、最高裁・小法廷は上告を認めたのだった。
 上告審の審理が終わった最高裁判所・小法廷の廷内である。高等裁判所の裁判官よりさらに威厳めいた裁判長が姿勢を正し、まさに判決文を読み上げようとしていた。
「主文、被告人は無罪。原審の審理は高等裁判所へ差し戻す」
 またまたの逆転判決だった。
 そして15年が経った今、逆転が逆転を呼び、まだ裁判は継続している。
 社会的に影響が大きいと判断された事件で検察、弁護側双方に事実を裏付ける決定的な証拠が出なければ、まあ、こんなお粗末なことになる。 

                         完

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