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2018年6月12日 (火)

逆転ユーモア短編集-12- 遅(おそ)かれ早かれ

 遅(おそ)かれ早かれ、そうなるのであれば、逆転の発想で、そう急ぐこともなくデェ~~ンと開き直ってゆったり構える・・というのも一つの手段ではある。
 夜、七時を過ぎた会社のオフィスである。
「いつも残業続きで悪いねっ! 落谷さん、今日はもう、引いてもらっていいよっ!」
 離れたデスクに座る課長席の山家(やまが)が万年平の同期、落谷に慰労の声をかけた。
「いやぁ~もう馴れてますよっ! それに今、帰ったところで、恐妻は鼾(いびき)をかいて熟睡(じゅくすい)中で、遅かれ早かれ、売れ残ったコンビニ弁当、一つですから…」
 山家は「侘(わび)しいねぇ~』と思わず言おうとし、慌(あわ)てて口を噤(つぐ)んだ。
「…いやまあ、それはそうなんでしょうが…。どうです! 帰りにちょこっと店で食べて帰りませんか? 私の奢(おご)りでっ!」
「いや、それは悪いですよっ、課長!」
「同期の間で課長はよしましょうよ、課長はっ! 誰もいないんですから…」
「はあ、どうも…」
「山家で結構です、山家でっ!」
「いくらなんでも、呼び捨てはっ!」
 山家は聞いた瞬間、『呼び捨てるんかいっ!』と思ったが、思うにとどめ、笑って暈(ぼか)した。
「ははは…、山家さんでいいですよ」
「はあ、どうも…」
「行きつけの、いい店がありましてね。一杯も飲めます」
「そりゃ、いいですねっ! しかし、奢りというのは…」
「まあまあ、そう言われず…。私も、帰ったところで遅かれ早かれ独り身ですから…」
 落谷は聞いた瞬間、『侘しいなっ!』と思ったが、思うにとどめ、笑って暈(ぼか)した。
「ははは…でしたね」
「ははは…まあ」
 二人の職場上の立場は逆転していたが、遅かれ早かれ、急ぐ必要もない孤独な同じ穴の狢(むじな)だった。

          
                   完

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