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2018年7月 8日 (日)

逆転ユーモア短編集-38- 感覚

 虫達からすれば、人は天文学的に長生きする動物ということになる。このように逆転して考えれば、人から見た宇宙で起こるさまざまな天文学的現象も、なるほど! と理解できる。感覚として、1光年とかジュラ紀1億5,000万年と言われても、ピンッ! と来ないのに似ていて、桁(けた)はずれた世界が現実に存在するのだ。人には周(まわ)りの限られた感覚だけが理解できるのであり、ミクロ(微視的)過ぎてもマクロ(巨視的)過ぎても、感知できないのは仕方がない。
 とある家の前にある細道である。道伝いに植えられた広葉樹の梢(こずえ)も色づき、賑(にぎ)やかに葉を落としていた。家の前を掃(は)いている木葉(きば)に通りかかった男が声をかけた。
「木葉(こば)さんでしたね、確か?」
「いえ、私は木葉ですが…」
「そうそう、木葉さんでしたね」
「ええ、木葉です。一塊(ひとかたまり)で木に付いている木葉です」
 木場は色づいた広葉樹を指さし、笑顔でそう言った。
「はぁ?」
「いや、まあそういうことです…。で、どちらさんでしたか?」
「ははは…北風(きたかぜ)ですよ、いやだなぁ~、お忘れですか?」
「あっ! これはこれは、北風さん」
「落ち葉ですか…大変ですねぇ~」
「ははは…そうでもないですよ。ゴミだと思うと大変ですがね。逆転した感覚で、自然からのプレゼントと思えば、実に有難(ありがた)いものとなります」
「はあ、そういうものでしょうか…」
「はい! そういうものです。落ち葉は家の庭木の根元に敷(し)きますから。ははは…」
「なるほど! 感覚ですか…。それにしても、この道の木(き)の葉は天文学的ですなぁ~」
「木(こ)の葉です!」
「ああ、はい! 木の葉でした」
 北風は感覚として、木葉に教育を受けた。

         
                   完

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