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2018年9月14日 (金)

泣けるユーモア短編集-6-  感無量女優                                 

 いい意味で泣ける・・ということがある。所謂(いわゆる)、感無量といえる状態で、心理は感動に打ち震(ふる)え、ぅぅぅ…となっている訳だ。こうなると、自然と脳神経の命令で涙腺(るいせん)が緩(ゆる)むことになる。緩めば当然、涙が頬(ほお)を伝う・・と、こうなる。ここまで感無量になれるには、相当、感が極(きわ)まらねばならない。芸能方面、特に演劇の関係では、この集中力が要求され、この技量に長(た)けた者は名優と呼ばれる。要は、その人物に成りきれるか否(いな)か・・ということに他ならない。
 とある撮影所近くの大衆レストランである。片隅(かたすみ)の一角(いっかく)で監督と助監督と思(おぼ)しき二人が食事をしながら話をしている。
「川蟹(かわがに)座里(ざり)ちゃん、最近、メキメキ腕を上げたねぇ~。そうは思わない?」
「いやぁ~そうなんですよ。何かあったんですかね? 以前と全然違う。演技に幅(はば)というか、味(あじ)のようなものが…。今日の感無量のシーンなんて、私まで泣けて困りましたよ」
「そうそう、旨味(うまみ)がねっ! いやぁ~、僕も泣けて目頭(めがしら)が熱(あつ)くなったよ。で、この次のやつ、主役のキャストで考えてんだけどね、どう思う?」
「ええ、いいんじゃないですかっ!」
「そうか、感無量女優の誕生だなっ、ははは…」
「ははは…感無量女優ですか」
 泣ける演技が上手(うま)い感無量女優は笑えるのだ。

            
                 完

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