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2018年11月 5日 (月)

泣けるユーモア短編集-58- 差

 ぅぅぅ…と泣ける慎(つつま)ましさで日々を暮らす人々と、湯水(ゆみず)のように金を好き放題に使い、豪勢に暮らす人々・・この両者の差は、いったい、どこで? どうして? 生まれたのか? を真摯(しんし)に考えて研究する一人の学者がいた。その名を黒髪(くろかみ)という。黒髪は表立っては普通のどこにでもいる教授だったが、研究室に籠(こ)もると尋常(じんじょう)なその姿は一変し、まったくの変人へと化したのである。
「ハハハ…やはりそうかっ! この集積データによれば、この時点でヒヒヒ…と魔に襲われた・・となる。で、その魔力に魅せられ金持ちへ・・か。フフフ…なるほど。ということは、へへへ…魔に襲われないと金持ちになれない・・ということになる。襲われるか、襲われないかの差ということだな。ホッホホホ…」
 黒髪はハヒフヘホを駄洒落(ダジャレ)のように上手(うま)く遣(つか)って嗤(わら)い、結論づけた。
「ということは、教授。魔をいかに我が掌中(しょうちゅう)に取り込めるかの差・・ということですか?」
 助手の白髪(しらが)は少し虚(うつ)ろな目で、黒髪に訊(たず)ねた。
「ああ。まあ、そうなるかな…」
「しかし、発覚してますよっ! その後が哀(あわ)れに…」
「それは君。取り込んだ魔を取り逃がしたのさ。それだけ甘い小者(こもの)ってことさ。魔に見放されちゃ、ぅぅぅ…と泣けてお終(しま)いってことだな」
「なるほど! 魔に逃げられない差ってことですか?」
「そうそう、差、差! あっ! 店屋物の鰻重が早く食わないと冷(さ)めちまって泣けるぜっ! 冷(ひ)えたのとホッカホカの差は大きいっ!」
 差は鰻重の冷たさ暖かさ・・ということらしい。

                           完

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