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2018年12月 7日 (金)

泣けるユーモア短編集-90- 陽気(ようき)

 陽気というのは妙なもので、陽気(ようき)がいい・・と言えば、なんとなく場が華(はな)やぐ。逆に、なんか陰気(いんき)だなっ! となれば、場は急にシラけて萎(しぼ)む。どちらも目には見えない雰囲気だが、陽気は世の中には欠かせない存在だ。というのも、世の中はどうしてもマイナス要因を導(みちび)きやすく、陰気な様相を帯びやすいからだ。分かりやすい例だと、事件、事故などだが、私達の生活に直結した暮らし向きなどでも見られる。
 うららかな春、とある公園のベンチで、どこにでもいそうな二人の老人がベンチで話し合っている。
「日銀がゼロ金利・・とかでしょ?」
「そうですなぁ…。この国、大丈夫なんでしょうか?」
「はあ…。この先、あまり大丈夫でもなさそうですな、ははは…。陰気な話です」
「ポカポカと陽気はよくなりましたがっ! ははは…」
「ええ、そのとおりでっ。金を預(あずけ)けることもできゃしないっ!」
「と、いうことは、どうなんです? 銀行のお金は?」
「お金が預けられない訳ですから、お金がない・・ってことですか?」
「はい、まあそうなりますか…?」
{はあ…。まあ、そうなるでしょうな。ということは、金を貸し出せなくなる?]
「はあ…。まあ、そうなるでしょうな。となれば、益々(ますます)、世の中、陰気になりますか?」
「はい! まあ、陽気にはならんでしょうな」
「負のスパイラルですか? アホですな」
「ええ! アホ、バカ、チャンリンってやつですよ。政策が守りの陰気政策です。もっと陽気にやらないとっ!」
「バッ! と?」
「バッ! とは、バブルでダメでしょうが…。国力を梃子(てこ)押しするそれなりの色気は必要なんでしょうな」
「色気は陽気? ですなっ!」
「そう、陽気! 好景気にモノトーンは似合わないっ!」
「なるほどっ! ということは、日銀はっ?」
「陰気政策ですから、アホなんでしょうな、きっと。ははは…」
「ははは…陽気な私らにはご縁(えん)のない世界の話ですがっ、ははは…」
「ははは…忘れましょ、忘れましょ。それにしても、いい陽気だっ!」
「ですなっ!」
 陽気は大らかで、泣けることはないようだが、実は値上がりで楽しみにしていた天麩羅うどんが食べられなくなり、泣ける思いの二人だった。

         
                  完

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