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2019年1月11日 (金)

暮らしのユーモア短編集-25- 品種

 春の風物詩として、イチゴは欠かせない。
 久しぶりに心地よい風が流れる休日、数人の中年や初老の男達が、とある公園のベンチに座り、暇(ひま)そうに語らっている。
「いや! 断然、あま姫、でしょう!」
「いやいや、世の中、そうは甘くないっ! そこは当然、春ほのか、じゃないとっ!」
「そういや、春ほのかは少し渋(しぶ)めでしたねっ! しかし、私はダントツで豚王(ぶたおう)ですねっ! あれは、いいっ! 実に美味(うま)いっ!」
「いやいやいや、美味いかどうかは知りませんが、豚王・・名が悪いっ! いかにも臭(にお)いそうな…」
「そうかも、知れませんがねっ! 一度食べてみなさいよ、あんたっ! 病(や)みつきになること、請(う)け合いですっ!」
「豚王・・そんなに美味しいですか? 豚の生姜(しょうが)焼きは確かに美味(おい)しいですが…」
「そんなことを言ってるんじゃないっ! イチゴですよ、イチゴっ!」
「ははは…イチゴは分かってますよ。冗談ですよっ、冗談っ!」
「どんな品種でもいいじゃないですかっ! 本人が美味いと感じりゃ。違いますかっ?」
 一同がその男の顔を見た。
「確かに…」
 そして、静かに全員が頷(うなず)いた。
 食べる人が美味いと感じれば、よく知られていても知られていなくても品種は関係ないのである。

         
                   完

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