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2019年1月 2日 (水)

暮らしのユーモア短編集-16- 次元考察

 とある公園のベンチである。二人の老いた男が座って語り合っている。
「最近、人を見ることが、めっきり減りましたなっ!」
「ええええ。車や機械はよく動いてますが…」
「そうそう! 車は五月蝿(うるさ)いほど走り回ってますなっ!」
「どうなんです?」
「なにがっ?」
「3次元の車が動いているというのは?」
「3次元の物体が動いているんですから4次元…ですわなっ!」
「ああ! まあ、そうなりますか…」
「ということは、ですよっ! 走る車の中から見える世界は5次元・・ということですか?」
「私に訊(き)かれても…」
「今日は散歩のつもりでこの公園へ歩いて来ましたが、こういう場合は、どうなんですっ?」
「なにがっ?」
「車ではなかったですが、3次元の私達が歩いて動いたってことです」
「それは、あんたっ! 歩き始めた瞬間から、私達は単なる点、要するに3次元物質ではなく1次元物質なんですよっ!」
「ということは、ですよ。歩いている私達が見ている世界は2次元世界ということになりますが…」
「そうそう! おっしゃるとおりっ!」
「ほんと、ですかぁ~?」
「いやまあ…。飽(あ)くまでも一つの考察ですよっ、ははは…」
 訊いた男も笑った男も本当のところは分からなかった。ほぼ停止した春の景色の中を、時間[t]だけが二人の周りを長閑(のどか)に流れていた。これが幸せな次元空間らしい。^^

       
                  完

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