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2019年1月16日 (水)

暮らしのユーモア短編集-30- 弱い者いじめ

 春の大型連休が終わり、巷(ちまた)では税金の納付(のうふ)が本格化する、人々にとっては惨(みじ)めなシーズンを迎(むか)えていた。
 コンビニで納税を終えた鰯雲(いわしぐも)は季節に合わないような浮かぬ顔、正確に言えば組織的で高度な国家的振り込め詐欺(さぎ)に振り込んだような顔で店を出た。内心には、一年前、軽自動車税が¥7,200から¥12,900に大幅アップされた怒りが渦巻いていた。そして今年も、鰯雲としては大金の¥12,900を振り込み、コンビニを出たのである。そこでバッタリと遭遇(そうぐう)したのが近所の桃花(ももか)だ。桃花は季節に合った陽気な顔で鰯雲に声をかけた。
「どうされました、鰯雲さん? 浮かぬ顔で?」
「税金ですよ、税金っ!」
「ああ、税金ですか…。それが何か?」
「何かもカニかもありませんよっ!!」
 カニは美味(うま)いなぁ…と思いながらも、鰯雲の怒りは燃え盛(さか)る炎(ほのお)のように益々(ますます)、増幅(ぞうふく)されていった。
「…どういうことですっ?」
「弱い者いじめの¥5,700アップですよっ!!」
「はあ…。何がっ?」
「軽自動車税ですよっ!! 累進課税(るいしんかぜい)の税率、なんとかならんのですかねぇ~!」
「…どういうことですっ?」
 桃花は、ふたたび、どういうことですっ? を繰り返した。
「せめて、私ら年間所得が¥200万以下の者は税率を低くして欲しいってことです。¥500万以上の徴収(ちょうしゅう)出来る所帯、あるでしょ!?」
「ええまあ、あるでしょうが、私に言われても…」
「でしょ!!?」
「はあ…」
「なんとかなりませんかっ!!?」
「私に言われても…」
 桃花は、ふたたび、私に言われても…を繰り返した。
 弱い者いじめは続いていくようだ。

          
                   完

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