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2019年3月19日 (火)

暮らしのユーモア短編集-92- 手動と自動

 暮らしも日々、便利になり、大よそのことは機械化された時代である。例(たと)えば農耕(のうこう)だが、昭和30年代は後部にY字形の鋤(すき)をつけた牛が人に急かされるように追われて田畑を耕(たがや)していたのである。耕運機という自動で耕す機械がなかった時代だから、それも必然だったのだろうが、今の時代は便利さが異常なほど多様化して人がずぼら[ルーズ]馴(な)れしてしまい、非常に嘆(なげ)かわしい。
 駅前の喫茶店でコーヒーを啜(すす)りながら、二人の老人が四方山話(よもやまばなし)に花を咲かせている。
「どうも最近は、いけませんなぁ~。ええ! いけませんいけません!!」
「なにが、そんなにいけないんですかな?」
「ええ、よくぞ聞いて下さいましたっ! 世の中、すべて自動ですぞっ!」
「ええ、そうです。昔に比(くら)べりゃ、随分(ずいぶん)と便利になりました…。それが、いけませんかなっ?」
「ええ! いけませんいけませんっ! 便利はいいんですが、どうも便利になり過ぎましたっ!」
「便利になり過ぎた・・とは?」
「手動で出来ることでも自動ですぞっ!」
「ほう! 例えばっ?」
「例えば…そうですな。今朝、私がやっておりました草(くさ)取りです」
「草取り? …除草ですかなっ?」
「ええ、そうですっ! 私の場合、根から手動でやっつけ、ビ二ール袋ですっ!」
「…ビ二ール袋?」
「はい、中へっ! 数ヶ月で土に戻(もど)ります…」
「なるほどっ! さしずめ、温(あたた)かい料理ですなっ!」
「…温かい料理?」
「はいっ! 温かい料理! 温かくて美味(うま)い料理ですなっ! ひと味(あじ)違いますっ!」
「よくぞ言って下さいましたっ! 手動ですなっ!」
「そう! 手動っ! 手間(てま)をかけた分(ぶん)、いい味になりますっ! ははは…」
「ははは…」
 そんな話をしながら、二人は三十分後、自動の列車に乗り、旅立った。^^

         
                   完

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