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2019年3月 5日 (火)

暮らしのユーモア短編集-78- この先

 日常の暮らしの中で繰り返し訪(おとず)れる生活時間のサイクル・・人は至極(しごく)当然のようにその日その日を送っている。だが、よくよく考えれば、この先どうなるか? という事態は、誰にも分からない訳だ。1、2分先のことを、恐らくこうなるだろうから…と脳裏(のうり)に描きながら人は動いてはいるが、妨害(ぼうがい)、予想違い、突然の勃発(ぼっぱつ)事態といったことで、この先の目的が果たせなくなることは起こり得るのだ。それが、私たちが生き続ける人間社会なのである。
 まだ都市化していない町に建つ、とある日本家屋の一軒家(いっけんや)である。ようやく本格的に降り出した梅雨空を庭から眺(なが)めながら、どこにでもいそうな中年男が、ぼやいている。しょぼ降る雨はやんだり降ったりを繰り返し、梅雨だぞっ! と、恰(あたか)も主張しているかのようだ。
「ふんっ! 随分(ずいぶん)なご挨拶(あいさつ)だったなっ! 梅雨入りした見込みですっ・・とかなんとか言ってたがっ! 見込みじゃなかったんじゃないのっ! これが、梅雨だよっ! 梅雨ってもんだよっ! もう一度、出し直せよっ!!」
 そこへ前庭から男の妻が現れた。
「なにブツブツ言ってるのっ?」
「いや、なにもないさ…」
 男は、聞こえなくてよかった…と思いながら暈(ぼか)した。
「傘で玄関が濡れるから、ここから上がるわねっ!」
「…」
 男は、勝手にすりゃいいだろっ! くらいの気分で、口にするのが憚(はばか)られたのか無言(むごん)で流した。というのも、今夜はスキ焼にするわっ! と明るく言って妻が買い物に出た・・という食事情があったせいだ。口にすれば、この先、どういう事態になるか? は、妻の性格からして男には十分、分かっていたのである。妻は傘を庭先に置くと、足継ぎ石の上で靴を脱ぎ、上がった。
「安くて、いいお肉が手に入ったの…」
「おお、そうかっ! そりゃ…」
 男は、この前の肉は硬(かた)かったぞっ! 今日(きょう)のは柔(やわ)らかいんだろうなっ! とは思ったが、この先を考えれば口にするのが憚られ、また思うに留(とど)めた。
 この先・・を全(まっと)うするには、事前の手当(てあて)や予防、下調(したしら)べ、それに我慢(がまん)などが必要なようだ。^^

        
                   完

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