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2019年3月 7日 (木)

暮らしのユーモア短編集-80- 冷却(れいきゃく)

 暮らしがマンネリ化すると、自然と、とんでもない個人の我侭(わがまま)が噴(ふ)き出すことになる。その我侭を自制(じせい)出来るうちはいいのだが、マンネリ化すると適度な緊張感が消え、その我侭をとめることが出来なくなる。すると、どうなるか? 懸命(けんめい)な皆さんなら、よくお分かりのはずである。口に出せば、当然ながら相手の聴覚がその我侭を聞くことになる訳だ。相手にすれば、そんな他人の我侭など聞きたくもない訳で、場合によっては反発されたりして拗(こじ)れることにもなる。だが一端、拗れて双方が熱くなれば、放っておくことで加熱して喧嘩になる可能性もあり、非常に危(あや)うい。この事態を食い止める手段が冷却(れいきゃく)なのである。冷却といっても、何も温度を下げて冷(ひや)す・・ということだけではない。冷静になる・・という場合でも使われる言葉だ。
 マンネリ化した、とある熟年夫婦の会話である。
「朝には出しといてくれ! と言ったろっ!!」
「あら、そうだった…」
「ったくっ! 俺の話をちゃんと聞いてろっ!」
 顔を洗ったばかりの夫(おっと)は、朝からご立腹(りっぷく)である。その怒り具合は、恰(あたか)も薄くなった頭頂部から湯気(ゆげ)が立ち上る感がしないでもない。
「そこまで言うこと、ないでしょ! 頭を冷しなさいよっ!」
「やかましいっ! 冷すのは、お前だっ!!」
 そのとき、どういう訳か火災警報器が作動し、天井(てんじょう)に設置されたスプリンクラーから噴霧上の水の放水が始まった。ビショ濡れの二人は右往左往(うおうさおう)して慌(あわ)てた。そして、口喧嘩のことなどすっかり忘れてしまった。双方、頭を水で冷され、冷却されたのである。
 マンネリ化した暮らしの中では、冷却が重要な部分を占(し)めることになる。^^

        
                   完

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