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2019年5月 8日 (水)

愉快なユーモア短編集-42- らしからぬ

 人は時折り変化を見せる。動物には少なからず本能があるが、人は霊長類という最も知能に恵まれた存在ゆえに、理性で大まかなことを抑え、制御できる能力を持つ。が、しかしである。平穏な心理状態の場合はいいのだが、心に動揺、心配事などが生じると、一転して、らしからぬ言動、行為に及ぶことがあるのだ。それでも、その言動、行為などが社会で許される範囲ならまだいい。問題は、らしからぬでは済まされない犯罪となるケースだ。
 ここは、とある交番の中である。一人の男が巡査と口論している。
「そんな身なりで歩いてりゃ、誰だって不審尋問しますよっ!」
「ではなんですかっ! この格好で歩いちゃいけない! って言われるんですかっ!!」
「なにも、そんなことは言ってないでしょうがっ! 妙な格好されてるから、妙だなぁ…と思ったから、ここまでご同行を願ったんじゃありませんかっ!」
 最初は冷静に対応していた巡査だったが、次第に興奮してきたのか、巡査らしからぬ対応になりつつあった。
「これの、どこが妙なんですっ! 素っ裸ならまだしも、ステテコ姿で手拭(てぬぐ)いでほっ被(かぶ)りして、下駄で歩いてちゃ悪いんですかっ!!」
「なにも、そんなこと言ってないじゃないですかっ!」
「いいえ、言ってますっ!」
 巡査は、こりゃダメだなっ! …と思ったのか、らしからぬ行動に出た。椅子から立ち上がると、床の上へ正座し、深々と男に土下座したのである。
「わ、私が悪うございましたっ! …どうも、すいませんっ! お引取り願って結構ですっ!}
「…も、もういいですよっ! わ、分かりゃいいんですっ!」
 男は、そそくさと交番をあとにした。巡査らしからぬ逆手(さかて)に取った行動が功を奏(そう)したのである。巡査はニンマリとした。実のところ、早く男にお引取り願い、昼食にしたかったのだ。空腹を我慢していた巡査は愛妻(あいさい)弁当を食べながら、らしからぬ微笑(えみ)を浮かべた。
  このように、らしからぬ・・は、その後の結果に愉快な変化や不愉快な変化を齎(もたら)すのである。^^

                               完

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