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2019年5月22日 (水)

愉快なユーモア短編集-56- 正解

 世の中は何が正解で何が不正解なのか分からないところがある。算数や数学などは、その答えが確実に出るのだが、世の中の動向・・といった目には見えない感覚的な内容はこうだっ! という正解が見出せないのである。例(たとえ)ば政治とか金融政策といった具体的な内容だ。他にも、男女間の恋愛の成功、不成功とか株の相場の損得・・などと挙げれば切りがない。
 男の客が、とある帽子屋で似合いの帽子を買おうと物色している。
「こちらなど、よくお似合いですよ」
 余りの時間の長さに、見かねた若い店員が声をかけた。
「そうかな? これなんか、どうだろうね?」
 若い店員は、それは似合わないだろっ! と一瞬、不正解に思ったが、そうとも言えず、愛想笑いで誤魔化(ごまか)したが、次の瞬間、ここは儲(もう)けか…と悪く思い直した。
「ああ! それもよろしゅうございますね、よくお似合いでっ!」
「ははは…そうかい? どうも、これが正解かなっ! これにするよっ!」
「…はいっ!」
 店員は男が口にした正解という言葉に一瞬、ドキリ! とした。自分が不正解と思った言葉を、心を見透かされたかのように間逆で正解と言われたからだった。そのとき、男の妻と思しき客が店へ入ってきた。
「あら、いやだっ! そんなダサいの買うのっ?!」
「ええっ! イケてるだろっ、お前?」
「なに言ってんのっ! 全然、イケてないっ。戻(もど)ってる、戻ってるっ!」
 店員は、奥さん上手(うま)いこと言うな…と、愉快な気分で不正解を確信した。
 このように、感覚的な正解、不正解は実に曖昧(あいまい)なのである。^^

          
                   完

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