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2019年5月10日 (金)

愉快なユーモア短編集-44- 資格

 世の中を愉快な気分で生きていく上で、資格は大きなウェートを占める目に見えない個人の重要な装備だ。何も持っていないと軽くあしらわれる場合でも、資格一つ、それも、誰もが一目(いちもく)置く[リスペクト{尊敬}する]資格なら尚更(なおさら)である。
 とある大手企業である。朝から多くの採用希望者が一人づつ呼ばれ、面接員が横一列の長椅子に並ぶ中、面接を受けている。
「37番、戸板です…」
 戸板はペコリ! と一礼したあと、面接員の前にポツリと置かれた折り畳(たた)み椅子に座り、紋切り型で口を開いた。今日で数社目の面接なのだが、戸板はいつも国営放送の喉(のど)自慢じゃあるまいし…と、常々思えていた。そして、今日もそう思ったのだが、合格通知が欲しいばかりにそう言った。
「戸板さんですか。…履歴に書かれている以外に、何か資格はお持ちでしょうか?」
「はいっ! 最近なんですが、面接コンサルタントという資格を一つ取りました」
「面接コンサルタント? 聞き慣(な)れない資格ですね。それは、どういった?」
「どういった、こういったも。今日の面接、そのものの資格です」
「? よく分りませんねぇ~。具体的には?」
「ははは…ですから、あなた方が今、やっておられるようなことですよ」
 戸板は愉快な気分で答えた。
「と、言われますと?」
「ですからっ! 面接員養成の資格です」
「私達のような面接員になるための資格ですか?」
「そうです! たとえばですね。…あなた方は、どのようにして面接員になられたんですか? 面接員の資格はお持ちなんですか?」
「いいえ、持っていません。会社の命令で…」
「そうですか…。もう、結構です。お引取り下さい」
 面接員達は立ち上がって戸板に一礼すると、ソソクサと面接会場から去った。
 資格が物を言うのである。^^

   
                        完

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