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2019年5月20日 (月)

愉快なユーモア短編集-54- 見てくれ

 見てくださいっ! とか、どうよっ! と他人目をよくしよう・・とする考え方が、見てくれ・・と言われる言葉である。漢字では見て呉(く)れと表記するが、ある種の実益(じつえき)に乏(とぼ)しいパフォーマンスだ。プライドや名声を高めるチャリティー、形ばかりの慈善活動、実名を出す高額の寄付etc.と、枚挙(まいきょ)に暇(いとま)がない。人は、この見てくれをよくすることで世間に対する対面を保持しようとする。見てくれなど、どうでもいいっ! と考えられるのはプロ中のプロで達観した者である。
 二人の男が車から降り、同窓会が開催予定されている会場に着いた。一人はポロっちい今にも壊れそうなポンコツで、片やもう一人が降りた車は超高級の豪華な外車だった。二人が駐車場に車を止めて降りたときのタイミングが、偶然、ピタリと一致した。
「あっ! これは長者(ながもの)さんじゃありませんかっ!」
「おおっ! これはこれはっ! …確か、貧坊(びんぼう)さんでしたな?」
「なかなか、見てくれのいいお車で!」
「ははは…たかが数千万の安物ですっ! …そう言われるあなたのお車も随分とレトロですな…。お高いんでしょうなっ?」
「ああ、これですか? コレはコレだけのもんです」
「いやいや、なかなかどうして! こんな車はどこも走ってませんぞ」
「そらそうでしょ。アチラコチラと渡り歩いて、まあ恐らく、私が最後になるポンコツ車です。しかし、よく走りますよっ! こんな硬いシャーシの車は今どきないですからなっ、ははは…」
「…」
「見てくれは悪いんですが、内容がいいっ! 私の宝の一つですよ、ははは…」
「はあ…」
 貧保は物怖(ものお)じせず、愉快な気分で笑い、長者は逆にテンションを下げた。
 見てくれも内容もいいのが一番だが、次に選ぶなら、見てくれよりも内容となる。^^

          
                  完

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