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2019年7月

2019年7月31日 (水)

分析ユーモア短編集 <26> 順序(じゅんじょ)

 物事には順序(じゅんじょ)というものがあるっ! と、まあ杓子定規(しゃくしじょうぎ)にそう言ってしまえばそれまでだが、順序という行為を冷静に分析すれば、以外にもそうでない部分が見えてくるから不思議である。
 分かりよい例では、そうなることが分かっていながら渋滞した高速道を順序よくジィ~~っと辛抱強く待つ男が、[こなた]にいるとする。^^[かたや]、分かっているからか下の地方道をスイスイ~~っと飛ばす男が同時にいるとしよう。^^ 高速道なら目的地まで小1時間だが、地方道なら倍の2時間は見なければならない距離で、高速道を選択するのは常識的には間違ってはいない。しかし、結果がどうだったか? を知れば、順序も時によりけり・・だと納得出来るのである。地方道を選んだ[こなた]の男は途中で寄り道をし、美味(おい)しい食事を済ませた上で目的地へ3時間で着いた。気分が悪かろうはずがない。[かたや]もう一方の男は、渋滞がなかなか解消せず、6時間後に着いた。しかもヘトヘトに心身とも疲れ、気分の良いはずがなかった。
 この話は、飽くまでも一例である。そんなことを書いている私も、つい先だってPC[パソコン]がフリーズ[機能が停止し、画面が凍ったように動かなくなる状態]し、回復を要したが、こりゃ、かかるぞっ! と踏んで、PCの回復を待たず、先に美味しい寒鰤(かんぶり)の魚スキをポン酢て味わってから作業を継続したが、ちょうどPCが起動を始めたのだった。むろん、機能回復措置を入力したあとで食事をしたのは申すまでもない。
 このように、順序を変えた方が上手(うま)くいくことが時折りある・・というのが分析結果である。時と場合で…ということだろう。漏(も)れてしまう前にやっていることはあと回しにしてトイレへ駆け込もう! 漏らせば、あとあと、大変だっ! ^

        
                  完

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2019年7月30日 (火)

分析ユーモア短編集 <25> 成(な)りゆき

 やろう! と思ってもいないのに、ついつい、その場の雰囲気に流されてやってしまうことがある。人はその状態を、成(な)りゆき・・と表現する。成りゆきを分析すれば、そこには本人の主体性の欠如、心の不安定な乱れなどの条件に、哀(あわ)れみや同情心が加わることにより発生する確率が高いことが窺(うかが)えるのである。
 とある喫茶店である。一人の男が、のんびりとコーヒーを啜(すす)っている。そこへ、もう一人の男が外から入ってきた。
「おおっ! 久しぶりだなっ、村川(むらかわ)!」
「なんだっ! 町山(まちやま)じゃねぇ~かっ!」
「偶然(ぐうぜん)ってのは、あるもんだなっ!」
「ああ…。よかったら、どうだっ、これからっ! 具合悪いかっ?」
 村川は手指を猪口(ちょこ)に見立て、飲む仕草(しぐさ)をした。 
「いや、そんなことはない。小一時間、潰(つぶ)そうと思ってたところだ…」
 よし、決まった! とばかり、二人は店を出ると、行きつけの飲み屋へと歩(ほ)を進めた。
「小一時間って、ゆっくり出来ねぇ~のかっ?」
「いや、そんなこともねぇ~んだがっ。うちのカミさんが五月蝿(うるさ)くってなっ!」
「ははは…相変わらず敷(し)かれっぱなしかっ?」
「ああ、相変わらずなっ! ははは…」
 二人は、成りゆきで飲むことになり、成りゆきに任(まか)せて時(とき)を過ごした。そうこうするうちに酔いもいい具合に回り、二人は成りゆきのように出来上がっていった。成りゆきとは恐ろしいもので、町山にすれば小一時間のつもりだったものが、三時間を優(ゆう)に超していた。
「こ、こりゃいかんっ! 俺、帰るわっ!」
 町山は腕を見て時の経過を知り、ギクッ! と驚いた。
「そうかっ? せっかく盛り上がったのになっ!」
「ああ、またなっ! ぅぅぅ…今日はこの後(あと)が辛(つら)いっ!」
「ははは…今日もだろっ! 支払いは俺がっ!」
「すまねぇ~なっ! いつも…」
「ははは…いいってことよっ!」
 町山は村川と飲むとき、いつも成りゆきに流れることにしていた。その訳は単純で、支払いの心配がなくなるからだった。
 成りゆきを分析すれば、格好いい股旅時代劇ではないが、足の向くまま気の向くまま・・そのまま流れに任せた方が割合、スムーズにいく確率が高く、好結果が得られるようだ。^^

       
                  完

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2019年7月29日 (月)

分析ユーモア短編集 <24> 実行

 言うは易(やす)く、行(おこな)うは難(がた)し・・と、よく言われる。それほど物事を実行するのは難(むずか)しいということだ。
 実行という言葉を分析すれば、いろいろなことが分かってくる。言うことは口だけの動きだからそうでもないが、実行は当然、身体のいろいろな部位を駆使(くし)して動かすから体力を消耗(しょうもう))することになる。消耗すれば、どうなるか? 言わずもがなで、疲れる訳だ。また、言うだけなら失敗はしないが、実行に失敗はつきものなのである。だから、実行に決断する勇気は欠かせない。あいつは風呂屋の釜(かま)だ! とは誰も言われたくはないだろう。言うばっかり→ゆうばっかり→湯(ゆ)ぱっかり・・ということだ。^^
 とある観光地で、料金制のバンジージャンプが行われている。もちろん観光客の娯楽を目的として設けられたもので、下は断崖絶壁(だんがいぜっぺき)の地だ。そんな中、ビクついて戸惑(とまど)う参加者を見ながら、二人の観光客が話し合っている。
「フン! あんなの簡単さっ!」
「ははは…お前は昔(むかし)の床屋(とこや)かっ!」
「昔の床屋? …なんだ、それはっ?」
「床屋だよっ、散髪(さんぱつ)の!」
「分からん!!」
「結(ゆ)うばっかり・・言うばっかりっ!」
「おお!! それならやってやろうじゃねぇ~かっ!」
 売り言葉に買い言葉、からかわれた男は料金を支払い申し込んだ。だがしかし、である。いさ゜、自分の順番になると、震(ふる)えて足が竦(すく)み、手にしたロープを投げ出した。
「お客さん、お金は返しませんよっ!」
「はいっ! 結構ですっ!」
 係員に念を押され、からかわれた男は青菜に塩のような小声で言った。
 実行を分析すれば、決断する勇気がないとショぼくなる・・ということだろう。^^

                         完

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2019年7月28日 (日)

分析ユーモア短編集 <23> 社会的習慣

 社会的習慣は様々(さまざま)な形で私達の生活に影響を及ぼしている。この事象を分析してみよう。
とある一例である。
『そろそろ年も終わりか…』
 と、思い、年賀葉書を購入して書く。この社会的習慣は当然ながら個人の時間を費(つい)やすから影響を与える。と思っていると、書いた相手から[喪中(もちゅう)につき年賀欠礼]の葉書が舞い込む。
『しまった! 書いてしまったぞっ!』
 と、口惜しがり、
『また寒中見舞いの葉書を書かねばっ!』
 と、意気込む。そして、夢中で[喪中と夢中のダジャレです^^]寒中見舞いの葉書を書く。書き終わって、
『これでいいだろっ!』
 と、思った途端(とたん)、<寒中見舞いは社会的習慣として1月8日以降に出すものです>という検索情報をネットで知る。さらに、料金が上がっていて追加料金の切手が必要なことに気づく。
『まあ、仕方がないっ! 明日(あす)、切手を買うか…』
 と、増えた手間に溜(た)め息を一つ吐(つ)く。そうこうするうちに、時間が刻々と過ぎていく・・というのが、社会的習慣の目に見えない軋轢(あつれき)なのである。
 社会的習慣は必ず守らねばならないものではない。だが、守らないと社会から異端視(いたんし)される。タメ口を叩(たた)く馬鹿も出るくらいだ。^^ ある種、無言(むごん)の社会的強制でもあるのだ。それが、人々に益(えき)を齎(もたら)しているうちはいいが、負担となっている場合が多い。結果、その社会的習慣によって人々は益々、疲弊(ひへい)する。早く断ち切り、廃止するのが得策だが、慣習による商慣習法という法律があるくらいで、なかなかそうはならない。
 これが社会的習慣の悲しい分析結果だ。ただ、皆さんにお読みいただいているこの拙(つたな)い短編集は、飽(あ)くまでも個人的習慣で書いている文章である。^^

        
                  完

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2019年7月27日 (土)

分析ユーモア短編集 <22> 法律

 小難(こむずか)しい話になるから、顎(あご)が外(はず)れない程度に欠伸(あくび)でもして読んでもらえばいい。睡眠不足の方はウトウトと眠っていてもらっても、いっこう構わない。
 法律は人々が社会生活を営(いとな)む上で規範(きはん)となるルール・・だと分析できるが、その一方、個人を拘束(こうそく)する目に見えない手錠のようなものにもなるから過度や誤って成立すればド偉いことになる。なかなか廃止されないからだ。この事実は戦前の軍部によって成立した幾つかの法律を紐解(ひもと)けばお分かりいただけるだろう。
 とある未来生活の一場面である。父親とその息子が話している。
「2キロから3キロ地帯は走っちゃいけないんだって言ってたよ」
「ああ、新しい交通法が施行(せこう)されたからなぁ~、セコい話だっ!」
「笑えない、笑えないっ! そんな親父ギャグ」
「ははは…申し訳ない。それにしても、空の上も混んで渋滞(じゅうたい)するようになったからなぁ~。じいちゃんが、俺の頃はお日さまには清々(すがすが)しい青空だった・・とか言ってたな…」
「青空に車は似合わない、似合わないっ! 空を飛べるようになった法律が悪いんだよっ! 車は地上を走らなくっちゃ!」
「だなっ! 法律が悪いっ! 父さんも、そう思うぞっ!」
 二人は、庶民にはどうにもならないことで意気投合(いきとうごう)した。
 法律を分析すれば、結果として捉(とら)えどころのない話となる。^^

         
                  完

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2019年7月26日 (金)

分析ユーモア短編集 <21> 始末(しまつ)

 物事(ものごと)を始めれば、やがて終わるときが来る。始める前に準備した物や事(こと)は、終えた時点で元へ戻(もど)したり終息(しゅうそく)させねばならない。これを始末(しまつ)という。始末を分析すれば、「あと始末が出来てないじゃないかっ!」とか、「ゴミの始末をしなさいっ!」などと怒られれば、始末が悪いということに他ならない。怖(こわ)いのもある。「フフフ…始末しろっ!」というドラマの台詞(せりふ)は悪者の語る言葉だが、殺してしまえっ! という内容をオブラート(少し古い表現法で、現代ならカプセル^^)に包んだように暈(ぼか)した殺人命令なのだから怖い。他にも物を始末する・・という場合があるが、この場合はどうもケチっぽい。^^
 とある会社の物流倉庫の中である。責任者の工場長と営業部長が山積みされたストックの商品を見ながら溜(た)め息混じりに話している。
「少しは始末しないとなっ!」
「はいっ! 申し訳ありません…」
「なにも部長の君を責めている訳じゃないが…」
「いや、売れる! と進言したのは私ですから、私の責任ですっ!」
「まあ、責任話はいいとして、少しでも始末して捌(さば)かんとなっ!」
「原材料費の支払いもありますから…」
「で、君の始末はそれだけ? 離婚騒ぎになってるそうじゃないかっ」
「はっ! そちらも近いうちに始末させますっ!」
 営業部長は苦(にが)笑いしながら小声で返した。
 分析の結果、始末という言葉が口に出るときは、余りいい話にはならない場合が多いようだ。^^

         
                  完

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2019年7月25日 (木)

分析ユーモア短編集 <20> 水と火

 水と火の関係を分析すれば、間逆(まぎゃく)の存在である・・といえる。だが、孰(いず)れにも良い悪いがある。火の良い場合は、湯を沸かす火や調理する火、聖火、悪い場合だと失火の火事がある。また、水の良い場合は、湯を沸かす水や飲料水、聖水、悪い場合だと大雨による洪水や水難事故などるとなる。水と火がいい頃合いに適合[マッチ]すれば淡くにる。淡という漢字は三水(さんずい)という編(へん)に炎(ほのお)と書くが、まさにいい感じを連想させる感じなのである。このように水と火は有効に、しかも適度に調和して使われれば必ずしも間逆といえなくなると定義される。
 二人のご隠居が銭湯の浴槽に浸(つ)かっている。
「いいお湯ですなっ!」
「さよですか? 私はもう少しぬるい方がいいんですが…」
「ほう! 熱いですか?」
「ええ、まあ…」
「火の方が水に勝っとりますか…」
「はあっ?」
「いや、べつに…。そうか、水派か…」
 訝(いぶか)しく思われたからか、熱湯好きの老人は小声でボソッ! と呟(つぶや)いた。
「はい、私は水の贔屓(ひいき)筋でして…」
「…贔屓筋? でしたか?」
「はい、さようで…」
 二人は好みの相違からか、しばし、押し黙った。
 水と火が適度に存在するには、一定の条件が揃(そろ)う必要がある・・と分析できる。これは、需要と供給の関係、労使関係、国民と政治の関係など、加えて、ビミョ~~な夫婦関係にも言えるのである。^^

         
                  完

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2019年7月24日 (水)

分析ユーモア短編集 <19> 勝つということ

 勝つということは、⇔で、反対の負けるということも同時に起きる・・と分析が出来る。例(たと)えば、喧嘩(けんか)や争いごと、さらに拡大して紛争、さらに拡大すれば戦争へと過激になる。だが、勝つということが本当に勝つということなのか? といえば、必ずしもそうではない・・と、分析が出来るのだ。負けるということは負けに違いないが、勝つということも負けなのだ・・といえるのである。争うことが修羅だと定義をすれば、勝つということも負けるということも修羅な状態なのだから、負けだ・・と分析結果はなる。
 とある二人の男が語り合っている。
「彼は相変わらず?」
「そう、相変わらずらしいな」
「そうか、勝ってるんだな…」
「そうかなあ?」
「ああ、勝ってるから相変わらずなんだろ?」
「相変わらずだから、負けなんじゃないか?」
「と、いうと?」
「勝つことから抜けられないんだから負けだろ?」
「… ああ、そうなるのか」
「ああ、そうなるんだよ、きっと」
「そうだな…。他のことが出来ゃ~しねぇ~もんな」
「そうだよ。俺達みたいに早く撤収した方が勝ちなんだよ」
「だなっ! いろいろ、してるもんなっ!」
「ああ、いろいろなっ!」
 二人はお互いに納得したのか、大笑いした。
 勝つということはこの程度のことで、勝とうという気分が、すでに自分に負けている・・と、分析結果は出るのである。^^

   
                      完

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2019年7月23日 (火)

分析ユーモア短編集 <18> 干(ほ)し柿

 正月の神膳、仏膳用にと丹精(たんせい)込めて吊(つ)るした干(ほ)し柿を、カラスに80%以上、今年も持って行かれ、老人はガックリと肩を落としていた。この事象を分析すれば、『盗られたっ!』と感じた老人は、『被害を受けたっ!』と、さも人の犯行のように考えたのだ。ところが、野生動物・・この場合はカラスなのだが、彼らは生き残りをかけて必死に食料を調達している訳であり、盗った・・という意識は皆無(かいむ)なのである。ただ、生き続けるため・・という本能だけの行為なのだ。それを手間をかけて作ったからか、人は口惜(くちお)しがって盗られたっ! と喚(わめ)く訳だ。
 その翌年である。老人は防止ネットの工事を業者に依頼し、夏過ぎに完成させた。
「フフフ…これで今年はっ!」
 完成した防止ネットを見ながら老人はニヤついた。そして、秋が巡った。老人は、去年と同じように干し柿を作り、やっとカラスに持っていかれることなく完成させた。
「どうやら、今年は…」
 老人は密(ひそ)かに北叟笑(ほくそえ)んだ。その直後、工事代の高い請求書が業者から送られてきた。去年と同様、老人はふたたび、ガックリと肩を落とした。
 分析の結果、盗られたくなければ、冷静に判断して知恵を絞(しぼ)る努力すれば、干し柿の一件は未然に防げたのだ。要は、出費で防ごうとした軽弾(かるはず)みが努力不足なのである。大相撲なら、足が前へ出ていないため突き落とされる・・とかの感じだろうか。^^

                            完

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2019年7月22日 (月)

分析ユーモア短編集 <17> 読み方

 読み方は、ややこしく、人気は人気(にんき)とも読めるし人気(ひとけ)とも読める。ルビを振らない限り、漢字はどうにでも読めるからだが、どう読もうと本人の勝手である。ただ、世間で普通に通用している呼び名があり、本人の気持を阻害(そがい)して『そう読むんですっ!』と目に見えないフォース[霊力]で威圧(いあつ)されれば、『そ、そうなんですか…』と従わざるを得ない。
 麗(うら)らかに晴れ渡った初春の昼下がりである。日向(ひなた)ぼっこをしながら何の心配もなくなった気楽な二人の老人が大相撲の話題で盛り上がっている。
「ええ、そうですなっ! と、なれば、そろそろ、追手鍋(ついてなべ)は大関候補ですかなっ!」
「ツイテナベ? ああ! 追手(おいてなべ)ですか?」
「オイテナベ? ああ、そういう読み方でしたか?」
「ええ、まあ…。世間ではそう呼んどりますからな」
「さよですか。私は、てっきりツイテナベかと…」
「ははは…まあ孰(いず)れにしろ、ナベは同じですな、ははは…」
「ははは…ナベはっ! 今夜は寄せ鍋にしますかな」
「それはいいですなぁ! うちもそうしましょう!」
 分析の結果、読み方は美味(おい)しいもので、どうでもよくなるようだ。^^

         
                  完

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2019年7月21日 (日)

分析ユーモア短編集 <16> 祝日

 最近は国民の祝日に関する法律[祝日法]が改正されてからというもの、祝日が年によって変更される。よ~~く考え、よ~~~く分析すれば、お祝いをする日が年によって変わるというのは、どうも妙で不可解な現象・・ということになる。お祝いする誕生日がその年で変わる訳もなく、いかがなものか? ということだ。むろん、誕生日の場合は遅(おく)れてお祝いしたり、前もってお祝いしたりすることはあるだろう。しかし、国家の祝日の場合は、その持つ意味の深さがまったく大きく、違うのである。政治が悪いっ! とは言えないが、怪(おか)しな話ではある。さらに詳細に分析すれば、その奥底(おくそこ)にはゴールデン・ウイークを大型連休化しようとする不埒(ふらち)な意図(いと)が見え隠(かく)れしないでもない。これとて、それ自体が何も悪いことではないが、妙な現象と捉(とら)えざるを得ない。
 夜遅く、残業を終えた二人のサラリーマンが通勤電車に揺られ、座席で語らっている。
「明日(あす)からの大型連休、どうされるご予定ですっ?」
「ははは…明日は一日、休ませてもらい、グッスリと昼まで寝る予定ですっ!」
「ははは…妙な予定ですなっ!」
「ここんとこ、随分、疲れが溜(た)まっとりますから…」
「なるほどっ! 明後日(あさって)からはっ?」
「明後日は、祝日の振替日の休みでしたな? なんの祝日でした?」
「…さあ? 最近はいろいろと増えとりますからな…」
「まあとにかく、その祝日の振り替え休みなことは疑う余地(よち)がないっ!」
「ははは…そりゃ、そうですっ!」
 二人は妙なところで意気投合した。
 分析の結果、最近の祝日は、お祝いの日・・というより、気楽に過ごす日・・という色彩(しきさい)が濃(こ)い。^^

         
                  完

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2019年7月20日 (土)

分析ユーモア短編集 <15> 人の価値

 世の中の人は様々(さまざま)で、変化に満ちていて面白い。分析すれば、人は生まれた瞬間から、各々(おのおの)が一つだけ他に抜きん出た能力を授かって生まれるようだ。ただ、それが当の本人には分かりにくく、厄介(やっかい)なのである。死ぬ間際(まぎわ)、なんだ、そうだったのかっ! と気づいても、時すでに遅(おそ)しで、チィ~~~ン! とお悔(く)やみ鉦(がね)を叩(たた)かれるのが落ちだ。もちろん、生きている過程[プロセス]で自分の価値を知る人もいる。そんな人は幸せ者だが、大部分の人は宿命や環境に押し流されたり知らずしてこの世からあの世へ旅立つことになる。^^
 とあるテレビ局で収録されている数十年前のクイズ番組のスタジオである。司会者が優勝した超エリート大学の選抜選手3人に語りかけている。
「凄(すご)いですねっ! 全問、正解での優勝ですよっ!!」
「有難うございますっ! 運がよかっただけです…」
「あなた方のような人が、この国を背負(しょ)っていかれるんでしょうね?」
 優勝した選手達は、こっ恥(ぱ)ずかしいのか、ニヤけて暈(ぼか)した。
 そして、数十年が経った現代である。予想どおり3人の選手は国を動かす根幹の地位に昇(のぼ)りつめていた。だが残念なことに、国は借金大国になり果(は)てていたのである。^^
 分析の結果、頭がいいからといって必ずしも価値のある人とはいえず、応用能力とは比例し得ない・・という結論に到達する。真の人の価値は、今より以上にする能力のありや? なしや? なのである。むろん、大食いする能力とは関係がない。^^

        
                  完

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2019年7月19日 (金)

分析ユーモア短編集 <14> 一線(いっせん)

 一線(いっせん)を越える・・という言い回しがある。この言い方を分析すれば、いろいろな意味で使われていることが分かる。男女間の場合、一般的には、ああいうことやこういうことを連想させるが、ここでは敢(あ)えて詳細は書かず、読者の連想にお任(まか)せしたい。ニヤつく方は連想が豊かな方だと思われる。^^
 一線が国と国の国境の話ともなれば、越えれば紛争や戦争になりかねない重大事となる。球技の場合、例えばテニスとかバレーボ-ルだと、チャレンジ判定となり、ビデオ映像がテレビ画面に映し出され、「オン・ラインっ!! 入ってますっ!!」とかなんとか、アナウンサーが興奮ぎみに喚(わめ)くことになる。
 とある選挙事務所で数人の参謀が話し合っている。
「どうなんだい? 当選ラインはっ!」
「いや、大丈夫だとは思うが、どうも横一線、って感じだな、今んとこっ!」
「ホニャララ地区は梃入(てこい)れせんとなっ!」
「だなっ! かなり食われてるっ!」
「こっちも、放っとけんから明日から食いまくるかっ!」
「おおっ! 食おうぜっ!」「分かった! 食おうっ!」
 口々に同調する声が飛んだ。そのときである。
「へいっ! お待ちっ!!」
 中華屋の店員が岡持ち片手に威勢(いせい)のいい大声で入ってきた。出前が届いたのだ。
「食おうぜっ!!」
 店員が事務所から去ると、全員、腹が空(す)いていたのか、無言でガッついて食べ始めた。
 この場合の食うは票の食うとは一線を画(かく)し、美味(おい)しい。^^

        
                  完

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2019年7月18日 (木)

分析ユーモア短編集 <13> 態(わざ)と…

 人が意志を持ってすれば本人の責任だが、しようとしていないにもかかわらず、そうなってしまうことがある。分析すれば、目に見える見えないは別として、当然、そうさせる何ものかが存在する。本人による過失であっても、そこには不作為(ふさくい)にそうさせる何ものかが潜(ひそ)んでいるのだ。そうするこの場合の行為は、態(わざ)と…と呼ばれる。神社や仏閣(ぶっかく)の縁日(えんにち)などで見かける屋台の数々(かずかず)。
「あらっ! これいいわねぇ~! おじさん、いくらっ?」
「おっ! お姉さん、いいとこへ来なすった! 今日はもう、店を畳(たた)もうかと思ってたんですよっ! 本来なら¥1,000はもらう代物(しろもの)だが、美人のお姉さんにゃ手も足も出ないっ! すっかり絆(ほだ)されたってんだから仕方がねぇ~やなっ! 閻魔(えんま)さまに蒟蒻(コンニャク)プレゼントしたつもりで¥500!! 売っちゃおっ!!」
「わぁ~安いわっ! お一(ひと)つ、もらおうかしらっ!」
「はいよっ!! 損(そん)はしねぇ~わなっ!」
 などと、超有名な映画の主人公のように声をかけられ、態と…買う女性。俗(ぞく)に桜と呼ばれるそうだが、それに釣られて 周(まわ)りで見ていた人も、ついつい買ってしまうことになる。ある種の販売促進行為で経営学でいうデモンストレーション効果・・とは、いつぞやも書いたとおりだ。^^ この場合の態と…は、人の知恵であり、寄付行為と同じでいい場合だ。
「おっと! 危(あぶ)ねぇ~じゃねえかっ!! 気をつけなっ!」
「申し訳ございません…」
 いい商家の若旦那(わかだんな)が道を楚々(そそ)と歩いていると、どこぞの風来坊が態と…追突して財布を掏(す)る。時代劇でよく見るかけるパターンだが、この場合の態と…は悪い。犯罪行為で実に悪いっ!^^
 このように、態と…は良い、悪いの両方の行為が存在する訳だ。ただ、私が書いているこの短編はボケ封じで、態と…書いている訳ではない。^^

          
                  完

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2019年7月17日 (水)

分析ユーモア短編集 <12> 風

 風の吹くまま気の向くままよぉ~! ・・という演劇の決め台詞(ゼリフ)がある。股旅(またたび)姿の主人公が劇の最後で呟(つぶや)く格好いい台詞だ。
 風は見えず、その日次第で方向を変えて吹くまったく得体(えたい)の知れない代物(しろもの)だが、人の世には欠かせない存在だ。金融・経済に吹き荒れる景気風、気象で寒さの代表格の北風、風向きが怪(あや)しいなどと表現する情勢の風と、分析すれば、世の中にはいろいろな風が吹く。煽(あお)って倒れさせる間抜けな人に吹く突風も時折り吹く。^^
 どこにでもいるような二人の男が、どこでも聞くような世間話をしている。
「どうなんです?」
「なにが?」
「風ですよ、風っ!」
「いや、さっぱりです、株はっ!」
 訊(たず)ねられた男は、市場(しじょう)の株価を思った。
「いや、そうじゃなく、風ですよ、アノ風!」
「アノ風? …アノ風といえば、ああ、アノ風ですか?」
「ええ、ソノ風です」
「今一つですね。なにせ、ここんとこ天候が…」
 否定された男は次にスポーツで天空を舞うハングライダーの風を思った。
「違う、違うっ! 風といえばっ!」
「ははは…うちは家庭円満ですからっ!」
  続いて訊ねられた男は夫婦仲を連想した。
「もうっ! 分からない人とだなっ!!」
 訊ねた男は、とうとう棒を折った。訊ねた男の風は最近、流行(はや)りつつある風邪(かぜ)だった。
 風に邪気が入れば風邪となる訳で、分析できないほど風は多様(たよう)なのである。ただ吹いているだけ・・という歌詞の♪歌♪もあるくらいだ。^^

                         完

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2019年7月16日 (火)

分析ユーモア短編集 <11> 準備

 何をするにも準備は大切である。これをいい加減にしたり怠(おこた)った挙句(あげく)、大失敗してド偉(えら)いことになったりする。下り坂の日に家を出るときの雨傘(あまがさ)、暗い夜道の懐中電灯、料理前の食材の点検、浴室の残り少ないボディ・シャンプーの予備買いetc.・・枚挙(まいきょ)に暇(いとま)がないほど私達の生活の周(まわ)りには準備することが渦巻いている。だから、準備をしているうちに次の準備が必要となり、その次の次の・・となって人生がお終(しま)いになるという趣向(しゅこう)だ。^^ まあ、いざというとき、同じ準備した予備があれば安心だが、アレがないとアンナときアアなって困るに違いないっ! と、当分の間、使わないものまで備(そなえ)ておくというのも、いかがなものか? とも思えるのだが…。^^
 とある家庭の歳末風景である。日曜ということもあり、朝から家族全員で大掃除が行われている。
「おいっ! 洗剤が切れたぞっ! 確か…予備があったよな?」
「と、思うけどっ!? そこの収納箱に入ってないっ!?」
 妻は直球でぞんざいに返した。手が離せない片づけ物をしていた・・ということもある。夫は、収納箱を開け、ガサゴソと探し始めたが、一向に予備の洗剤が出てくる気配はなかった。
「ないぞっ!」
「怪(おか)しいわねぇ。…あっ! それが予備だったかしら?」
「おいおいっ! 頼むぜっ!!」
「なければ、水だけでいいからっ!」
「それでいいのかっ?」
「ええ…」
 妻に言われた夫は、拭(ふ)き掃除の続きを始めた。そして、ようやくすべてを拭き終えたときだった。
「父さん、これっ!」
 子供部屋の掃除を終えて現れた子に、夫は一本の洗剤を差し出された。よく見れば、未使用の予備だった。
「んっ? どこにあった?」
「? どこって、そこの棚(たな)の上」
「あっ! そうだった、そうだった!」
 夫は洗剤が足りなく思え、掃除を始める前に収納箱から予備の洗剤を出し、棚へ置いておいたのだ。そのことを、ついうっかり忘れてしまっていた・・と、経緯(いきさつ)はこうなる。
 分析の結果、準備した予備があっても予備にならないときもある・・というお粗末なお話だ。^^

       
                  完

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2019年7月15日 (月)

分析ユーモア短編集 <10> 出来事

 日々の出来事は千変万化(せんぺんばんか)する。その事象は人の意思とは関係なく起こるから、人力(じんりき)でどうこう出来る筋合いの話ではない。それらを分析すれば、悪い方では天災、人災、弔事(ちょうじ)など、いい方は幸運な出来事や慶事(けいじ)などとなる。これらが様々(さまざま)に形(かたち)や時(とき)を変え、人を取り囲もうとする。家の中は未(ま)だしも、一歩(いっぽ)外へ足を踏み出せば、吉事、凶事は別として、起こそう起こそう! と、いろいろな出来事が待ち構えている訳だ。^^また、何かが起きなければ、人の世は面白くも可笑(おか)しくもない訳で、味気(あじけ)ない世の中になってしまうから困ったものだ。
 先々(さきざき)に起こる出来事が分かれば、なんの問題もないが、残念なことに人にはそれが分からないのである。
 とある地へ旅した中年の旅行客が、チケットが取れず、空港の待合室で途方に暮れている。
「…どうかされましたか?」
 声をかけたのは、気のよさそうな一人の旅行客だった。
「はあ…。帰りのチケットが満席で取れなかったんですよ」
「ああ! 事故で乗り換えがありましたからねぇ~。乗り換え客が優先でしたか…」
「ええ、まあ…」
「どこまで帰られるんです?」 
「鶏殻(とりがら)です…」
「味見(あじみ)の鶏殻ですか? なんだ、同じじゃないですかっ! よかったらコレ!」
「えっ!? それじゃ、あなたが…」
「実はチケット、もう一枚あるんですよ。家内が急用で一緒に戻(もど)れなくなったもんで…」
 気のよさそうな旅行者はもう一枚のチケットを背広の内ポケットから取り出すと、中年の旅行客に見せた。
「地獄で仏だっ! ありがたいっ!!」
「ははは…そんな、大げさなっ! 困ったときはお互いさまです」
「それじゃ、コレ…」
 中年の旅行客は財布から紙幣を取り出すと、航空運賃を支払おうとした。
「いいんですよっ!」
「いや、それではっ!」
「…弱ったなぁ~。なら、着いた空港レストランで奢(おご)って下さるということでは?」
「はあ! それでよろしいですか? でしたら、それでっ!」
 押し問答の挙句(あげく)、この出来事は美味(おい)しいもので目出度(めでた)く一件落着した。
 分析の結果では、美味しいものが出来事を好転させる効果がある・・ということになる。^^

        
                  完

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2019年7月14日 (日)

分析ユーモア短編集 <9> 焦(あせ)る

 物事をしていると、ついつい焦(あせ)ることがある。それで首尾(しゅび)よくいけばいいのだが、概(がい)して失敗したりするものだ。例(たと)えば、車で急いでいて、近回りしようと道を変えた結果、逆に遅(おく)れたり事故になる場合である。この事実を分析すれば、やはり心の有りように問題があることが多い。性格ということもあるが、その時々の状況が多分(たぶん)に影響しているのである。もちろん、同じ状況に遭遇(そうぐう)したとしても、個人差は当然、生じる。前述した性格の違いによるものだ。
 とあるスーパーで安売りの販売が行われようとしている。時間限定だから、それを目当ての主婦がさり気ない素振(そぶ)りで店の品を見ながら買い物をしているが、むろん、安売り目当てで買うはずもない。そして、その安売りタイムがやって来た。主婦達は一斉(いっせい)にその特設売り場へと殺到(さっとう)した。誰もが焦るから、混雑は頂点に達し、戦場の様相を見せる。ところがどうしたことか、一人の主婦は後方でジィ~~っと構(かま)え、動こうとしない。
「あらっ! 奥さま。買われないのっ?」
「ええ、まあ。ほほほ…」
 訝(いぶか)しげに知り合いの主婦が訊(たず)ねたが、後方の主婦は、いっこう慌(あわ)てる気配を見せず、一笑(いっしょう)に付した。
「はいっ!! 売り切れでぇ~~すっ!!」
 店員が大声で叫ぶと、買えなかった主婦達は、そそくさと特設売り場から遠ざかり始めた。そのときを待っていたかのように、後方の主婦が店員の前へ近づいた。
「取っといてくれたわねっ!」
「ええ、まあ…。参ったなぁ~、奥さんにはっ! ははは…」
 店員は小声で返した。二人は近所同士で、なにかと店員は弱みを握(にぎ)られていたのだ。その弱みを突いて、主婦は事前に手を回しておいた・・ということだ。
 知恵と要領があれば、そう焦ることもない・・というのが分析の結果だ。^


                           完

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2019年7月13日 (土)

分析ユーモア短編集 <8> 加減(かげん)

 程度を越せば、物事はすべて駄目になる。となれば、ほどほど・・が求められる訳だが、それが加減と呼ばれる性質のものである。分析すれば、いい加減にしろっ! と怒られる場合は過ぎた状態である。逆に、風呂で、ぬるいなっ! と感じる場合は足りない状態、いい湯加減だっ! の場合は加減がピッタリ! と合った頃合いの状態ということに他ならない。需要と供給、労使関係、与野党の関係、国と国民の関係、企業と労働者etc.すべてにおいて、この加減が重要となってくる。片方に偏(かたよ)れば、片方はいいようにも思えるが、結局は悪くなった片方のせいで双方とも駄目になる命運を辿(たど)るから怖(こわ)い。その意味でも、分析を重ねて加減を探ることが大事だ! と言わざるを得ない。
 とある理髪店で一人の客が散髪中である。
「お客さんは随分、毛深(けぶか)いですねぇ~」
 顎鬚(あごひげ)をカミソリで当たりながら、店主が客に訊(たず)ねた。
「そうかい? その分を頭に回したいよっ!」
 客の頭は顎鬚とは反比例するかのように、ほとんどなかった。
「ああ…ですねぇ~。ほどよい加減がいいんでしょうが…」
「コレばっかりは、なっ! ははは…」
 客が思わず笑った瞬間、カミソリで顎が少し切れ、血が滲(にじ)んだ。店主は慌(あわ)ててタオルで顎を拭(ぬぐ)った。
「どうも、すいません!」
「いや、俺が笑ったからだよ親父さん。笑うのも加減しないとなっ! は、はは…」
 客は顎を動かさず、小さく笑った。
 このように、加減はすべてに求められるのである。^^

                          完

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2019年7月12日 (金)

分析ユーモア短編集 <7> 調子(ちょうし)

 人の気分には調子(ちょうし)というものがある。調子を分析すれば、絶好調だなっ! と言われた場合は調子がいい訳で、ここんとこ、ダメなんですよ…と、愚痴(ぐち)を零(こぼ)すようなときは、明らかに不調なのである。お調子者(ちょうしもの)だよっ、あの人はっ! と陰口(かげぐち)を叩(たた)かれるような人は、調子はいいが、よ過ぎる訳だ。^^
 とある会社の事務室である。残業を終えた真黒(まぐろ)は肩を揉(も)みながら、もう片方の手でパソコンの電源を切った。そのとき、後ろから声をかける者がいた。先輩の海老尾(えびお)である。
「お疲れっ!」
「ああ、これは先輩! まだ、いらしたんですか?」
「うん、俺は今日だけだけどなっ! 君は連日じゃないかっ! ははは…出世(しゅっせ)狙(ねら)いかっ?」
 そう疲れも溜(た)まっていないのか、海老尾は調子いい声で快活(かいかつ)に放った。
「そんな…」
 疲れが溜まり、余り調子がよくない真黒は、テンションを下げた声で小さく返した。
「無理するなよっ! さあ、いこう! 景気づけに奢(おご)るよっ!」
 海老尾は、いきつけの店のある方向を指さした。真黒も何回か入った小料理屋だったから、ピンッ! と来た。
「はいっ!!」
 真黒の調子は俄(にわ)かに回復し、よくなった。
 人の調子は、話によって、すぐ変わる訳だ。^^

          
                  完

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2019年7月11日 (木)

分析ユーモア短編集 <6> 先読み

 将棋や囲碁のプロ棋士は必死に先を読む。読むのはいいが、読み過ぎて振り出しへ戻(もど)る・・ということもある。
「10秒ぅ~! … 20秒ぅ~~!! 1っ! 2っ! 3っ!」
 と、急(せ)かすように時計係に告げられると、やかましいわっ! とは思わないのだろうが、恨(うら)めしく思え、思わずエエイッ! と、つまらない手を指したり打ったりする破目になる。分析すれば、不言実行(ふげんじっこう)の四字熟語が示すとおり、先読みをせず、浮かんだことをスンナリとやった方が上手(うま)くいく・・ということにもなる。まあ、これも程度もので、スンナリやり過ぎた挙句(あげく)、失敗する・・ということも当然、起こり得るから、微妙な間合(まあ)いの判断力が必要視される・・というのが分析結果だ。
 通勤途上のとある男が、車を運転している。
『この時間だと…アノ道はいつも混んでるから、コッチだな…』
 瞬間、そう思った男は、ハンドルを回して十字路を右折した。ところが、である。空(す)いているはずの道路が車で数珠(じゅず)繋(つな)ぎになっている。男は思わず、ウゥ~~! と困ったような呻(うめ)き声をあげた。先読みせず、スンナリと直進していれば、スンナリと職場へ到着出来たのである。結局、男が庁舎の執務室へ入ったのは、出勤20分遅れだった。
『シメシメ、誰もいない…』
 男がそう思いながら辺(あた)りを見回したそのときだった。
「あとからでいいから、届け、出しときなさいよっ…」
 徐(おもむろ)に執務室へ入ってきた上司の小声である。
「は、はいっ!」
 男は身を竦(すく)めた。
「ははは…冗談だよ、冗談! 渋滞だろっ! 私も三日前、20分遅れさっ、ははは…」
「そうでしたか?」
「君は出張でいなかった日だ。先読みはいかんな。いや、いかんいかん…」
「ははは…なんだ、そうでしたか」
「仕事は先読みしてくれよっ!」
 二人は賑(にぎ)やかな笑い声を上げた。
 このように、先読みも分析すればケース・バイ・ケース[場合によりけり]なのである。^^

       
                  完

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2019年7月10日 (水)

分析ユーモア短編集 <5> 機嫌(きげん)

 人の機嫌(きげん)を分析するのも面白い。むろん、多かれ少なかれ、機嫌が悪くなりやすい気短(きみじか)な人と、なりにくい気長(きなが)な人の差はあるが、周囲の環境や状況によって左右されるのも事実である。この事実は、気短とか気長は関係なく、人の心を良くも悪くもする傾向があるようだ。例(たと)えば、好きな人に逢いに出かけたときの心境はウキウキしているだろうから、悪かろうはずがない。逆に、嫌いな授業を受ける前の心境は? と問えば、言わずもがなで、生徒諸君には、よくお分かりのはずである。^^
 とある料理専門店である。店に入って注文を終えた二人の男が機嫌よく語り合っている。
「いや、ここの天丼(てんどん)は美味(うま)いんだよっ! ははは…」
「それは俺も認めるっ! ははは…」
「それにしても遅(おそ)かねぇ~か?」
「だなっ! もう、かれこれ20分だぜっ…」
「今の時間帯、他に客もいねぇ~しなぁ?」
「そうだな? 態々(わざわざ)、この時間帯を空けて来たというのによぉ~」
「親父ぃ~!!」
 片方の男がついに痺(しび)れを切らせ、奥にいる店主へ声をかけた。
「へいっ!! なにかっ!?」
「なにかっ? じゃねぇ~よっ! 俺達の天丼はっ?」
「あっ! 注文なすったんでしたかっ? すっかり忘れてました、ははは…」
「ははは…じゃねえよっ!」
「すみませんねぇ~お客さん。これから休憩しやすんで、1時間後になりますが…。それでよろしいですかねっ?」
 よい訳がなく、二人の男の機嫌は俄(にわ)かに悪くなった。
 まあ、機嫌とは、分析すればその程度で変わるもののようだ。^^

        
                  完

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2019年7月 9日 (火)

分析ユーモア短編集 <4> 売れ筋(すじ)

 商品には売れ筋(すじ)・・というものがある。買い手の需要が高いものが売れ筋ということになるが、さて、何が多く売れるだろう? と予測して、売れ筋になるに違いない…と仕入れ量を増やしたところ、それほどは売れず、ストックを抱(かか)える・・てなことにでもなれば大ごとだ。ここで頼りになるのが過去の分析データである。去年はコレほど売れていたんだから今年はナニぐらいだろう…と目論(もくろ)む訳だ。ただ、このデータも、その年の流行(はや)りには歯が立たない。流行は当然、ブームで売れ筋になる。といって、大量に仕入れれば、売れ残って在庫となるから厄介だ。そんなことで・・でもないが、売れ筋の分析は緻密(ちみつ)さを要求されるのである。
 多くの在庫を前に販売部長の漆(うるし)は頭を抱えていた。考え倦(あぐ)ねていたという意味で、決して両手で頭を持っていた訳ではない。^^
 漆の予想では、在庫の商品は飛ぶように売れ、恐らく底をつくだろう…という読みだった。ところが、いざ発売の日を迎えると、陳列(ちんれつ)された商品の前には人っ子ひとりなく、閑古鳥(かんこどり)がアッホ~~アッホ~~! と郭公(かっこう)のように鳴いてはいなかったが、静まり返っていたのである。
 漆は売れ筋を読み間違えた自分の分析の甘さに、クック~…と、鳩(はと)のような小声で咽(むせ)び泣いた。そのとき、常務の割箸(わりばし)が倉庫へ入ってきた。
「漆さん! うどんやラーメンに君(きみ)は合わないよっ!」
「はぁ?」
「まあ、そういうことだっ! ははは…」
 割箸はポ~ン! と軽く漆の肩を叩(たた)くと倉庫から出ていった。
 売れ筋の分析は常識の範囲内が安全のようだ。^^

         
                  完

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2019年7月 8日 (月)

分析ユーモア短編集 <3> 我儘(わがまま)

 自分の思い通りにならないと、ご機嫌が悪くなる・・この心理を我儘(わがまま)という。分析すれば、世の中は個人中心に動いている訳ではなく、当然ながら自分の思い通りにいかないのが常(つね)である。多くの人々はある時は折れ、またある時は妥協(だきょう)して世知辛(せちがら)いこの世を生きている訳だ。むろん、折れたり妥協する必要のない少数の人々は、思い通りにならなければご機嫌が悪くなり、意固地(いこじ)になったりする。これが我儘と呼ばれる性質のものである。この我儘はその人自身が考えを悔(く)い改(あらた)めない限り、決して治(なお)ることがない病(やまい)のようなもので、始末が悪い。
 とある大実業家の我儘に育てられたドラ息子が、偶然、目に留(と)まった洋服店で買い物をしている。
「これ全部、買います」
「いや、それは…」
「買えないのっ? 爺(じい)、らしいよっ! なんとかしなさいっ!!」
「は、はいっ! かしこまりましたっ!!」
 ドラ息子の我儘に、いくらなんでもそれは…と思いながら、お付きの執事(しつじ)は真逆の言葉を口走った。 
「そう申されましても…」
 間髪(かんぱつ)置かず、店員が執事の心を代弁した。そのとき、若い一人のヤンキーが店に入ってきた。
「オッ! コレいいやっ! コレ、買うぜっ!」
「ダメだよっ! これは僕が今、買ったから僕のものだっ!」
「何、言ってんだっ、こいつっ!! どこにおめぇ~の名が書いてあるってんだっ!! おおっ!」
 若いヤンキーは凄(すご)んだ。
「じ、爺っ!!」
 ドラ息子は震(ふる)え声で執事に下駄を預(あず)けた。
「まあまあ、そうおっしゃらず、これをっ…。他のお店で、おひとつなんとか…」
 執事は鞄(かばん)から100万円の札束(さつたば)を三束(みたば)取り出すと若いヤンキーの前へ突き出し、手渡そうとした。
「オッ?!! おお…」
 若いヤンキーは札束に凄まれ、抗(あらが)うことなく札束を受け取ると店を出ていった。
 この世では金がモノを言うと、我儘も通るようだ。^^

         
                  完

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2019年7月 7日 (日)

分析ユーモア短編集 <2> 縁

 縁は異(い)なもの味(あじ)なもの・・とはよく言われるが、それほど縁とは計(はか)りしれず妙なものなのである。縁を分析すれば、人の目には見えない漠然としたものとして運とよく似通っている。人がさまざまな人や事態、事象に遭遇(そうぐう)したとき、その人や事態、事象と拘(かかわ)り深くなるか否(いな)かは人それぞれで、その深さを世捨て人(びと)のように斜(はす)に構えて分析するのも面白い趣向(しゅこう)だ。
 とある魚屋である。買い物客と店主が店先でなにやら話している。
「いやぁ~そう言われますがね、お客さんっ! これでも十分、勉強させていただいとるんですよっ!」
「いやいやいやっ! まだまだ勉強不足なんじゃないかっ! もっと、いい成績を取ってもらわないとっ! この店とは先代からの古ぅ~~いお付き合いなんだからさっ! もう、ひと声っ!!」
「そう言われても…。弱りましたなぁ~…」
「なにも弱るこたぁ~ない! 太っ腹(ばら)でズドォ~~ンとっ!!」
「太っ腹(ばら)でズドォ~~ンとっ!? 仕方ありませんねぇ~。じゃあ、あと50円だけですよっ! ほんとに、もうっ!! うちは赤字続きだっ!」
「ははは…それでいい、それでいいんですよっ! 縁がありますねぇ~、この店とは…」
「…」
 店主は、あなたとは縁遠(えんどお)くなりたいっ! とは思ったが、そうとも言えず愛想(あいそ)笑いで暈(ぼか)した。
 縁を分析すれば、当然、よい縁だけでなく悪い縁も生じる危険性があるから、気をつけよう!^^

         
                  完

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2019年7月 6日 (土)

分析ユーモア短編集 <1> 人間 

 人間・・これ即(すなわ)ち、学問でホモ・サピエンスと分析されることは、多くの人々が知っている。だが、その個人を分析する学問は余りよく知られていない。…というか、学問として分析出来ないのが人間の人間たる所以(ゆえん)なのだ。いくらコンピューターの人工知能をもってしても、人間の不可思議な知能には及ばない。その理由は、正解、不正解は別として、時折り人間が常識では有り得ない非常識な結論を導き出すからだ。無限大に近い可能性を導き出す機械をしても、この不可思議な結論を導き出せる人間には到底(とうてい)及ばないのである。
 とあるゲームが人間対コンピューターで行われている。
「… これはっ! もはやコンピューターの勝ちですねっ!」
 実況のアナウンサーが興奮気味に声を荒げた。
「いや、まだ分かりませんよっ!」
 横に座る解説者が、すぐに全否定した。
「…だって、もう!」
 確かに、勝負は誰の目にもコンピューターの勝ちに見えた。
「いやいや、まだまだ分かりません!」
 解説者は自信ありげに言い切った。
「ははは…そんな、馬鹿なっ!」
 実況アナウンサーが笑い捨てた瞬間だった。手番の人間が誰の目にも負けと思える決断の手を動かした。その手が終わった瞬間、コンピューターは理解できず、予測不能の結論を導き出して高温化し、挙句(あげく)の果てに機能を停止した。
『カイロ ホジ ノタメ キノウヲ テイシ シマスッ!』
 これがコンピューターが最後に発したメッセージである。
「ふふふ…これに限るっ!」
『アナタハ カンゼンニ クルッテイルッ!』
「ふんっ! 大きなお世話だっ! ははは…」
 対戦する人間は機械の弱みを知っていた。^^

         
                  完

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2019年7月 5日 (金)

愉快なユーモア短編集-100- 愉快

 人生、すべて愉快に過ごせるに越したことはない。そんな天上にいるような美味(おい)しい人生がある訳もなく、どんな人にも程度の差こそあれ、向かい風の障害が立ちはだかる・・としたものだ。えっ!? 私は無いよっ! というお方は神さまか仏さまに違いない。^^ ただ、不愉快なことも愉快にする方法はあるにはある。その方法を知らないから、人は一喜一憂(いっきいちゆう)し、試行錯誤(しこうさくご)を繰(く)り返すのである。その結果、堕落(だらく)する者、向上する者、いろいろな人生に分かれることになる。愉快は不愉快×不愉快=愉快という数式で成立するのだが、これはどういうことなのか? を具体例でお分かりいただきたいと思う。^^
 とある公会堂である。招待された講演者が多くの聴衆を前に熱弁をふるっている。
「… ということでして、私は相変わらず、かような地位に甘んじているのでありますっ!」
 会場から、ドッ! と笑声と拍手が湧き起こった。
『それでいいじゃないですかっ!』
 笑声のあと、会場から小さな声が講演者をめがけて飛んだ。
「あ、ありがとうございますっ! 不愉快だった私ですが、皆さまの賛同(さんどう)を得たようで、愉快になりましたっ! ははは…」
 この例は何を物語るか? だが、講演者に賛同した聴衆も講演者の話を聴き、不愉快に思えたのである。要は、不愉快×不愉快=愉快という数式が定理される訳だ。^^ ある種、-(マイナス)効果同士の慰(なぐさ)め合い・・とも取れるのだが…。^^ 
 もう一つ、具体例を挙(あ)げてみよう。挙げなくていいっ! と思われる方は、揚(あ)げたての串カツを頬(ほお)張りながら一杯やっていただいていればいい。^^
 とある屋台で二人の客がいい気分で飲んでいる。
「えっ!? んっな馬鹿な話があるかっ!? 俺は昔からいる生(は)え抜きだぞっ!」
「そら、そうだっ! 俺だって、生え抜きだっ! あんな若僧(わかぞう)に先を越され、黙って働けるかっ!」
 二人はそう言ったあと、急に押し黙り、咽(むせ)び泣きを始めた。
「ぅぅぅ… でもな、働くしかないかっ!」
「だなっ! ぅぅぅ…」
 そのあとしばらくして、屋台に笑声が起きた。
 このように、不愉快なマイナス×不愉快なマイナスは愉快なプラスの効果を生むのである。^^

         
                   完

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2019年7月 4日 (木)

愉快なユーモア短編集-99- 探す

 何げなくやっていると、ふと物忘れすることがある。集中力を欠いた結果なのだが、当の本人はやっている途中でそのことに全(まった)く気づいていないから、終わったとき困ることになる。何げなくやってしまう・・その本人の軽い所作に問題があり、さて、どこへやった? と、右往左往(うおうさおう)して探す訳だ。なかなか見つからず、すっかり予定が狂ってしまうことにもなりかねず、この軽い行動パターンは悔(く)い改めねば偉いことになる。
 一人の老人が、あれこれと公園の中を探し回っている。何を探しているのかは当の本人以外は分からない。そこへ、もう一人の老人がリールに繋(つな)がれた犬を連れ、散歩に現れた。
「ほう! 何かお探しですかな?」
 通りかかった老人はリールを木に括(くく)り、探す老人に近づくと訊(たず)ねた。
「やあ、これはお隣のっ! 実はかけていたメガネが見つからんのです。先ほどまでペンチで本を読んでおりましてな。落とす訳がないんですが…。はて? 弱った…」
「ははは…メガネですかな? メガネはありますぞ、頭の上に」
 散歩の老人に指をさされ、探していた老人は思わず頭へ手をやった。
「ああ! ありましたっ!」
「ははは…よくあることです。では…」
 老人は歩き出したが、木にリールを括りつけたことをすっかり忘れていた。
「? おやっ!」
 散歩の老人は犬を探す破目になった。
「犬ですかな? 犬はアソコに…」
「ああ! どうもっ!」
 慌(あわ)てながら散歩の老人はリールを括った木の方へあと戻(もど)りした。
 集中力が途切れると探すことになるから注意しよう。^

          
                   完

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2019年7月 3日 (水)

愉快なユーモア短編集-98- ほどほど

 なんといってもこの世は、[ほどほど]が生きやすい。風呂の湯でいえば、好みの差こそあれ、熱(あつ)過ぎもせず、かといって温(ぬる)過ぎもしないという[ほどほど]加減が快適に浸(つ)かれ、ホッコリできる目安(めやす)だ。当然、愉快な気分にも浸(ひた)れるというものである。^^
 ダラァ~~と気楽に生きるのもいいが、それも程度ものだ。逆に、四角四面にキッチリ! 生きるというのは、肩が凝(こ)って疲れてしまう。そうなれば、[ほどほど]の出番となる。^^ 餅(もち)でもパスタでも、さらにうどんや蕎麦(そぼ)でも、[ほどほど]の歯ごたえがいいに決まっている。
 選挙後のテレビ番組で評論家が思うところをぶちまけている。どこか、思い通りにならなかった結果の憤懣(ふんまん)を愚痴(ぐち)っている感がしなくもない。
「そうおっしゃいますが、予想どおり、[ほどほど]の結果になりましたよね」
 アナウンサーが宥(なだ)めにかかる。
「馬鹿を言わんで下さいっ! どの辺が[ほどほど]なんですっ!? あなたが言われる[ほどほど]とは、どんなのですかっ!? 誰が見たって保守系の独走じゃないですかっ!」
「まあまあ、そう興奮なさらず、[ほどほど]に…」
「そら、そうですが…。それにしても、今回の結果は[ほどほど]じゃなかったですよっ、どうみてもっ!!」
 解説者は益々(ますます)、意固地(いこじ)になり、「ほどほど」から遠退(とおの)いた。
 ほどほど・・というのは、簡単なようでなかなか難(むずか)しいのである。^^

                            完

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2019年7月 2日 (火)

愉快なユーモア短編集-97- 出世

 出世は大事なのだろうが、かといって家族を犠牲(ぎせい)にしてまで達成せねばならないものではない。古くは万葉集に山上憶良が、━ 銀(しろがね)も 金(こがね)も玉(たま)も 何せむに 勝(まさ)れる宝(たから) 子に及(しか)かめやも ━ と詠(よ)んだ和歌と言わんとするところが似通(にかよ)っている。出世は家族が栄え、生活も安定した上で、出来れば…くらいの軽い気分でよい訳だ。加えて健康も大事だ。格言めいて言われる ━ 生きているだけで儲(もう)けもの ━ ということである。^^
 家族を犠牲にして大臣という地位にまで出世したとある代議士が受託(じゅたく)収賄(しゅうわい)の疑いで地検特捜部に逮捕(たいほ)された。
 とある代議士が取調べを受けている。
「そんなに出世したいですかぁ~? 私なんか、ずっと平(ひら)検事のままでいいと思ってるんですがねぇ~。聞くところによれば、あなた、奥さんにまで見限られたんでしょ?」
「放っといて下さいっ! ソレとコレとは話が別でしょ!!」
「果たして、そうですかねぇ~。私は家庭を捨ててまで出世したくない派ですから。ははは…」
 出世した結果、いろいろ起きるのだとすれば、出世せず、人生を平凡に過ごす方が得策(とくさく)なのかも知れない。^^

         
                   完

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2019年7月 1日 (月)

愉快なユーモア短編集-96- 用心

 ♪マッチ一本、火事の元ぉ~ 火の用心、ご用心~♪ チョンチョン チョチョ~~ン[拍子木(ひょうしぎ)の音]♪マッチ一本、火事の元ぉ~ 火の用心、ご用心~♪ チョンチョン チョチョ~~ン[拍子木の音] …
 遠い記憶ながら、子供時代、拍子木を叩(たた)き、手提灯(てぢょうちん)を持ちながら、数人で村の家々近くの道を巡った記憶がある。その頃を知られる皆さんには、そんな懐(なつ)かしい記憶はお有りだろうか?^^ 長閑(のどか)だった昭和三十年代前半の話だから、今の時代にはそぐわないかも知れない。だが、殺伐(さつばつ)とした今の時代だからこそ、火の用心に限らず、用心はより以上に必要だ! とも言える。一度(ひとたび)、家を出れば、交通事故、オレオレ詐欺etc.枚挙(まいきょ)に暇(いとま)がないほどの用心が必要なのだ。
 老人が一人、寂しそうにトボトボと歩いている。そこへ、自転車で交番の巡査が通りかかった。
「おじいさん、どうされました? なんか、元気なさそうですが…」
「はあ、そりゃもう、元気も出ません。この前、新しく買った自転車で町へ出たのはいいんですが、盗(と)られました」
「なにを?」
「なにを? ってあなた、もちろん自転車をっ! ですよっ!」
「そりゃ、お気の毒なことで…」
「用心して、二重(にじゅう)に鍵をかけたんですけどねぇ~。悪いのがいますねぇ~」
「はい、今の時代ですから…」
「ですから、歩くことにしたんですよ。私の足までは盗りゃ~しないでしょうから」
「ははは…それはないでしょうが。それじゃ、お気をつけて…」
 巡査はギコギコと古い自転車を漕(こ)ぎ始めた。そのときである。老人が躓(つまづ)いて転(ころ)んだ。
「どうされましたっ! 大丈夫ですかっ!!}
 巡査は振り返りると、慌(あわ)てて自転車を止め、老人へ駆け寄った。
「ははは…大丈夫ですっ!」
 老人は、すぐ立ち上がった。
「よかった! お足元、注意して下さいよっ!」
「老いには勝てませんなっ! ははは…足を盗られましたよっ!」
 二人は愉快な笑い声を上げた。
 用心しても盗られるときは盗られるようだ。^^

       
                   完

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