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2019年8月

2019年8月31日 (土)

分析ユーモア短編集 <57> 予知(よち)

 すべてのことに言えるのだが、生きる上で未来が予知(よち)出来れば、こんな便利なことはない。悪いことが起こる…と分かれば、予(あらかじ)め、そうならないように策や手段を講じることが出来るからだ。起こる場合でも、最小限に起こるに違いない悪いことを未然(みぜん)に防ぐ策や手段などを講じられる訳だ。孰(いず)れにしろ、先が分かれば私達が助かることに変わりはない。
 とある繁華街の人通りが少ない一角で、椅子と机を置いて座る一人の辻占いがいる。辺(あた)りはすでに夕方近くで、歩道を歩く通行人も少なくなっていた。
「どれどれ、そろそろ灯(あか)りを…」
 そう独(ひと)りごち、辻占いは机の角(かど)に置かれた行灯(あんどん)の蝋燭(ろうそく)に火を灯(とも)した。そのときである。一人のしがない中年男が、前を横切ろうとして立ち止まった。
「見ていただけますか?」
 男はポツリと短く言った。
「… ああ、どうぞどうぞっ! お手を…」
 男が椅子に座ると、辻占いは男の掌(てのひら)を天眼鏡(てんがんきょう)でマジマジと見始めた。
「ほう! これはこれは…」
「どうかしましたか?」
「どうもこうも! この手相(てそう)はっ!」
「はあ?」
「あなたの家へUFOが飛び来たり、あなたを星へ誘(いざな)うと・・出ておりますっ!」
「そ、そんなメロンっ![馬鹿なっ!→バナナっ!→さらに強い驚きを表(あらわ)すメロンっ!となる]」
「はあ? …まあとにかく、私はあなたの未来を、はっきりと予知できるのですっ!」
「ははは…いや、もういいです。これ、お代です…」
 男は見てもらうんじゃなかった…と後悔(こうかい)しながら紙幣を置き、立ち去った。
 その数日後、男の姿は忽然(こつぜん)と世の中から消えた。警察その他の捜査、捜索にもかかわらず、男の消息(しょうそく)は今なお分かってはいない。ただ、辻占いだけには男の行方(ゆくえ)がはっきりと分かっていた。
『ははは…いくら探したって無駄さっ! だって、あの方はTP102星雲の地球で暮らしているんだから…』
 これが本当なのかどうか、私は知らない。^^ ただ、分析の結果、3次元科学をもってしても、予知の能力を完全否定することは出来ないようだ。^^

                         完

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2019年8月30日 (金)

分析ユーモア短編集 <56> 日没(にちぼつ)

 冬の日没(にちぼつ)と夏の日没とでは、その様(さま)に大きな違いが生じる。この違いを分析すれば、沈みゆくお日さまをどう感じるか? といった気分的な違いであることに気づかされる。そんなことは気づかなくていいっ! と思われる方は、風呂上りの一杯を飲みながら適当に寛(くつろ)いでいただけば、それでいい。^^
 秋の日脚(ひあし)は釣瓶(つるべ)落とし・・と言われるほど早いが、冬の日脚は、なお一層(いっそう)早い。気温が下がるから、もう少し沈まないで欲しい…と未練がましく思う日没、これが冬の日没である。逆に、ギラギラと容赦(ようしゃ)なく照りつける猛暑の日が、ようやく西山へ傾く夏の日没は、早く沈んでくれっ! …と懇願(こんがん)して退散を願う日没である。お日さまは一年中、同じように地球上へ恵みの光を与えておられるのだが、地球の地軸が傾いているばかりに、こんな毛嫌いする感じ方になる訳だ。すべては、地球自身が傾いていることに気づいてション! と姿勢を正せば済む話なのである。^^ まあそうなれば、暑い地域は、ずぅ~~っと暑く、寒い地域は、ずぅ~~っと寒い訳で、四季の変化もへったくれもなくなるから、それはそれで面白くない訳だが…。^^
 一人の老人が散歩しながら愚痴っている。
「ったくっ! こう日没が早きゃ、のんびりと歩きもできゃしないっ!」
 いつも約一時間の同じルートを歩む老人にとって、夕飯前の冬場の散歩は、日没が早く急(せ)かされるようで嫌(いや)だった。では、夏場の散歩は、どうか? といえば、その時期もやはり愚痴が聞こえた。
「ったくっ! こう日没が遅(おそ)きゃ、猛暑で倒れっちまうっ!」
 分析の結果、日没に対する人の感性は勝手なもの・・という結論に立ち至る。現に、いい日差しが続く日没の頃、その時期は行楽のシーズンということもあるのだろうが、人は日没を惜(お)しむのである。^^

        
                  完

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2019年8月29日 (木)

分析ユーモア短編集 <55> 御座成(おざな)り

 御座成(おざな)りは当座の間に合わせ・・という言葉だが、分析すれば面白いことが分かってくる。真意は、いい加減なことでその場を逃れようとする背信行為を指す。おざなりの[な]を[お]の前に移動すれば[なおざり]となるのだが、意味は異(こと)なり、大事なことを手を付けずにそのままにしておく意となる。要は、おざなりは、なおざりではないっ! ということだ。^^
 とあるサッカーの試合で痛めた右足の捻挫(ねんざ)を病院へも行かずシップ薬で冷やして御座成りにしていた不精(ぶしょう)は、そのまま放置し、半月ばかりなおざりにしていたため、益々(ますます)悪化させ、代表選手から外(はず)されてしまった。
「どうして、こんなになるまで放っておいたんですっ!!」
 担当した外科の医者は不精の腫(は)れ上がった足を一目(ひとめ)診(み)て真っ赤な茹蛸(ゆでだこ)のような顔で怒った。
「私は不精ですから…」
 美味(うま)そうな蛸だな…と思いながら、不精は冷静に答えた。
「あなたが不精さんだとはお聞きしました。だから、なぜ放っておいたんですかっ!」
 少し冷静さを取り戻(もど)した医者は、ふたたび訊(たず)ねた。
「いや、だから不精ですから…」
「分からないお人だっ!」
「分からないのは、アンタだっ!」
「医者に向って、アンタとはなんですっ!」
 会話が売り言葉に買い言葉となった。
「…アンタだから、アンタと言ったんだっ! …シップで御座成りにしといたんですよっ! こう言や、分かるでしょうがっ!」
「そういうのを、なおざりって言うんですよっ!」
「… ? 御座成りは、なおざりなんですか、先生?」
「いや、私は医者ですから、そういうことは…。まあ、ともかく治療をしましょう!」
 医者は意味の違いに自信がなく、言葉を濁(にご)した。
「はい、お願します…」
分析の結果、御座成りとなおざりは、泳がず楽をする? ^^ 魚のヒラメとカレイの関係に似ているようだ。^^

    
                         完

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2019年8月28日 (水)

分析ユーモア短編集 <54> 要領(ようりょう)

 同じ物事をしても、要領(ようりょう)の良し悪(あ)しで結果に大きな差が出る。要領を分析すれば、その良し悪しの差は時間差に限ったことではなく、その後の生活に多大な影響を与えることになる。というのも、一つの物事が要領が良いことによって、次の物事をやり易(やす)くするからだ。ただ、要領がいいからといって、結果が必ずしも良くはならないという点だけは留意(りゅうい)しておくべきだろう。要領が良すぎると、あいつは要領のいいヤツだっ! …などと思われることもあるからだ。そんなことはどうでもいいっ! 自分は好きなことをして好きに生きるっ! と言われるお方もあろうが、確かにその考えも一理あり、否定は出来ない。杓子定規(しゃくしじょうぎ)に生きず、好きなことをして愚直(ぐちょく)に生きる人生には、新しい可能性が芽生(めば)える可能性もあるからだ。^^ ただし、危険と隣(とな)り合わせということも覚悟しておかねばならないだろう。その危険性を避(さ)けたいなら、人がなんと言おうと思おうと、同じことを愚直に繰り返して生き続けることが懸命(けんめい)だということになる。
 とある中学校の美術の時間である。美術室の中では生徒達が粘土の塑像(そぞう)作りをやっている。モデルは小皿(こざら)の上に盛られた三本のバナナだ。
「どうだっ! 出来たかっ!!」
 偉そうに生徒達へ声をかけたのは美術教師、秋野(あきの)である。
「おお、なかなかいい出来じゃな
   いかっ、田野(たの)っ!!」
 田野は要領のいい生徒で、なかなか上手(うま)く出来ないものだから、チャッカリと斜め前の生徒、仮庵(かりほ)の塑像を真似(まね)て僅(わず)か5分で作ったのである。
「ええ、まあ! 僕はこういうの得意ですからっ!」
 田野は悪びれもせず、したり顔で答えた。
「そうかっ! これなら十分、展覧会へも出せるぞっ!」
「そうですかぁ~?」
 田野は、ますます、したり顔になった。二人の会話を何げなく聞いていた斜め前の仮庵は、『そ、それは僕の真似ですっ!…』とは思ったが、そうとも言えず粘土の手で、ぅぅぅ…と泣けた。
 ━ 秋の田の 仮庵の庵(いほ)の 苫(とま)をあらみ わが衣手(ころもで)は 露(つゆ)に濡れつつ ━ である。^^
 まあ、そんなことで、でもないが、分析の結果、要領よくやられると、要領の悪い人々は泣けることになるようだ。^^

          
                  完

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2019年8月27日 (火)

分析ユーモア短編集 <53> 馬鹿正直(ばかしょうじき)

 世の中で使われる言葉の一つに馬鹿正直(ばかしょうじき)という譬(たと)えがある。この言葉を分析すれば、悪口ではないものの、その正直さには、聊(いささ)か疑問を感じる・・といった意味合いで使われる場合が多いことが分かる。何事(なにごと)も程度ものだ・・という意味を含んでいる言葉ということだ。そんなことはどうでもいいっ! と思われる方は、カラオケでも唸(うな)っていただいていればいい。ただし、ご近所迷惑にならない程度でお願いをしたい。^^
 ここはとある釣(つ)り堀(ぼり)である。客の老人が朝から糸を垂(た)れているが、いっこう当たりがない。時はすでに昼前になっていた。その姿を少し離れた対面の岸から別の中年男が気の毒そうな顔で見ていた。というのも、その男の釣果(ちょうか)は上々で、腹が減ったからそろそろお開きにしようか…と思った矢先だったのである。一匹も釣れずに居続ける老人を、なんとも、気の毒に思えたのも無理からぬ話で、馬鹿正直なお方だ…とも思えていた。
「こっちは、よく釣れますよっ!!」
 中年男は、思わず声を飛ばしていた。
「ああ、どうもっ!! 私、ここが気に入っておりますのでっ!!」
「ああ、そうでしたかっ!! ははは…!!」
 中年男は、言わなきゃよかった…と後悔(こうかい)した。
 分析の結果、すでに一つのスタンス[物事に取り組む姿勢]となっている馬鹿正直な人には、何を言っても無駄だということが分かる。^^

                           完

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2019年8月26日 (月)

分析ユーモア短編集 <52> 食べ物

 食べ物を分析すれば意外なことが分かってくる。世界の食糧自給率は農水省の統計データ(カロリーベース)によれば、数百%の国があるのに比べ、我が国では40%を・・くらいのお粗末さなのである。ということは、私達の口に入っている食べ物の50%以上が…ということになる。これ以上は先々が怖(こ)くて語れない、語れないっ!^^
 食糧以外の食料[主食以外の食べ物]を含めての話となるが、食べ物は私達が生きていく上で一日も除(のぞ)けない命を繋(つな)ぐ糧(かて)なのである。糧かどうかそんなことは分かり切ってるじゃないかっ! 勝手(かって)にしろっ![糧と勝手をかけたダジャレのつもり ^^]などと怒られる方は、風呂上りに美味(うま)い肴(さかな)で一杯やっていて下さればいいだろう。^^
 とある未来の一場面である。
『臨時ニュースを申し上げますっ! 来月からの食糧危機が現実のものとなり、政府は対応措置を講ずべく、総理官邸で緊急閣僚会議を開いておりますっ! 皆さんっ! 冷静に落ちついて行動して下さいっ! 』
 テレビの各局が一斉に臨時ニュースを報じた。
「ふ~~ん、そうなのか…」
 田園地帯が広がる地方では、あまり深刻には受け取られてはいなかったが、都会、特に大都心では暴動にも似た深刻な食糧パニックが起きようとしていた。
 三日後である。テレビは都心の各地で発生する暴動場面を映し出していた。
「とうちゃん! これから、ひとっ走(ぱし)りして肥料用のキャベツ、持ってってやっべっ!」
「おう! そりゃ、いい功徳(くどく)だっ! 豚よりは人様だわなぁ!!」
 二人はお互いの顔を見ながらニヤっとした。
 まあ、こんな大げさな話にはならないだろうが、分析の結果、食べ物がなければ、人は笑えなくなるようだ。^^

           
                 完

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2019年8月25日 (日)

分析ユーモア短編集 <51> 和歌(わか)

 日本文化を象徴(しょうちょう)するものの一つに和歌(わか)がある。短歌、俳句、川柳など、それぞれ趣(おもむき)が深く、人々の心を和(なご)ませる。和ませる歌だから和歌なのだろう。^^
 とある和歌同好会が公民館を貸し切って開催されている。
「ほお! あなたは俳句部門でしたかっ? ですと、そちらのお部屋ですかな。私は川柳部門でしてな、こちらで…」
「ああ、さよでしたか。ではっ…」
 二人の老人が話していると、そこへもう一人の老人が息を切らせて入ってきた。
「も、もう始まっとりますかなっ!?」
「… いえ、まだ20分ほどありますが…」
「あっ! 昨日(きのう)、時間を合わせたときです。1時間、間違っとりました、ははは…」
 早とちりなお方だ…と二人の老人は思ったが、そうとも言えず、笑って暈(ぼか)かした。
「で、あなたは?」
「… 私? 私は短歌部門です。ははは…和歌の世界は奥深く、[分か]りませんなっ!」
 息を切らせて入ってきた老人は、ようやく息を整えながら返した。二人の老人は、ダジャレの下手(へた)なお方だ…と、また思ったが、それも言えず、ふたたび笑って暈かした。
 和歌を分析すれば、暈かすことが求められる奥深い世界のようだ。^^

                            完

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2019年8月24日 (土)

分析ユーモア短編集 <50> 満足感

 物事が達成された…と感じる満足感は個人によってその程度が異なる。ある人は酒を五合は飲まないと飲んだ気がしないだろうし、別の人は缶ビール一本で満足することだろう。^^ 要は、その人の身体(からだ)の感じ方の違いによるものだから、どうこう言っても致し方がない。致し方はないが、その満足感の違いを分析するのも面白い。などと書けば、怒られる方もあろうから、面白いとは言わず、興味が増す・・とでも書いておきたい。^^
 とある列車に乗り込んだ二人の旅行客が席に座って話し合っている。
「この列車、遅いと感じませんか?}
 せっかちな性分(しょうぶん)のAは、腕を見ながら言った。どうも時間が気になる様子である。
「? …そうですか? 私はこれくらいの方が満足感が…。鈍行ですからっ! ははは…」
 Bはのんびり派なのか、すぐに全否定した。
「そうでしょうか? いくらなんでも、この速度じゃ…。ちゃんと着きますかね、時間に」
「ええ、そらもう時刻表どおりに着くと思いますよ」
「そうかなあ~?」
 Aは、なおも列車の速度に不満感が募(つの)った。Bは、『この人、なぜ鈍行を選んだんだろう? 新幹線で行けばいいのに…』とは思ったが、口には出さず、思うに留(とど)めた。共(とも)にするこれからの旅を気拙(きまず)いものにしたくなかった・・という事情もある。
 孰(いず)れにしろ、両者の満足感には違いがあった。二人は満足感の違いで楽しい旅とはならなかった。
 旅は満足感の感じ方が近い者と共にした方が楽しい・・というのが満足感の分析結果となる。^^

         
                  完

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2019年8月23日 (金)

分析ユーモア短編集 <49> 決め台詞(ぜりふ)

 ━ 男は度胸(どきょう)! 女は愛嬌(あいきょう)! 坊さんお経(きょう)! ━ という、誰が言ったか分からないような決め台詞(ぜりふ)がある。^^ この決め台詞を分析すれば、[きょう]を共通にしたダジャレであることが分かるが、その言おうとする内容の奥には、なるほど! と得心(とくしん)出来る深い意味合いがあることにも気づかされるのである。確かに男性は、ここぞっ! というときに度胸は必要だし、女性だって愛嬌がなければ付き合えたもんじゃないだろう。当然、お坊さんも、お経の真意が分からず、世俗(せぞく)に塗(まみ)れるようなお方は、ただの人・・に違いない。^^ このように、それぞれあるべき姿を暗(あん)に堂々と言って退(の)けるのが決め台詞・・である。決め台詞は千差万別(せんさばんべつ)で、歌舞伎の口上(こうじょう)から映画のトラさんが売り言葉にするいい決め台詞など、いろいろだ。^^
 とある秋近い田舎道(いなかみち)を、畑帰りの婆さんがヨロヨロと歩いている。同じ村に住む男がその姿を見て、決め台詞のように、ひと声、投げた。
 「婆さんっ!! …そろそろ茄子(なすび)どきですなっ!!」
「…? はあ?」
 婆さんは耳が遠く、その声が聴こえなかった。
「茄子どきですよっ!! 茄子どきっ!!」
「ああ、茄子ですかいのう。茄子は、もう萎(しお)れる頃ですかのう…」
「ははは…、いや、まだまだっ! もうひと花っ! 二度なりの今の時期、美味(うま)いですからなあ~!」
「ご冗談をっ!」
 婆さんは、どういう訳かスンナリと聴こえ、小笑いした。
 分析の結果、決め台詞は本人に都合がいいと聴こえるようである。^^

         
                 完

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2019年8月22日 (木)

分析ユーモア短編集 <48> 巡りあわせ

 物事や人が上手(うま)い具合に噛(か)み合って接触することを巡りあわせ・・と表現する。この巡りあわせ・・という事象を分析すれば、様々(さまざま)な状況があり、その状況のそれぞれに違った漢字が割り当てられていることが分かる。巡り逢(あ)わせ・・なら親しい人と人が出会う状況、巡り遇(あ)わせ・・の場合は、バッタリと出会う状況、巡り遭(あ)わせ・・ともなれば、悪い出来事に遭遇(そうぐう)した状況、巡り合わせ・・は、人以外の物に出会う状況などと、それぞれ使い分けられている。もう少し簡単なら国語の点数も上がるのに…と学生が思うようにもなる訳だ。^^
 とある教授と学生の会話である。
「それが、どういう訳か、出会わないんですよっ!」
「すれ違い・・なんてことはっ?」
「いや、それが妙なことにタイミングがズレまして…」
「プラスとプラス、あるいはマイナスとマイナスなんだな、君達のこういう関係はっ!」
「はあ? …どういうことでしょう?」
「つまり、君達は磁石(じしゃく)の極(きょく)なんだよ」
「… 極?」
「ああ、磁石のっ!」
「… ?」
「分からない人だなっ! マイナス極とマイナス極、プラス極とプラス極の磁石を近づければ、どうなる?」
「… 近づけません」
「そう!! つまり、それなんだよ。君達の巡りあわせはっ!」
「はあ…。そういうものでしょうか?」
「ああ。そういうものなんだよ、巡りあわせ・・って奴(やつ)はっ!」
「はあ…」
 訊(たず)ねた学生は、一方的に教授に押され、なんとなく得心(とくしん)した。
 巡りあわせ・・を分析すれば、男女差とは別に、人にはプラス極とマイナス極がその時々(ときどき)で生じることが窺(うかが)える。^^

        
                   完

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2019年8月21日 (水)

分析ユーモア短編集 <47> 出来る

 個人差があったとしても、人はある程度までは本人の努力で出来るのである。この出来る・・という言葉を分析すれば、そこには[出来る]という気持の有る無しが影響していることが分かってくる。早い話、出来ると思う気分次第ということだ。単に「ホニャララが出来る」と自慢して言う場合は、ただ出来るのであって、本人の努力とは関係がない。^^ 「やれば出来るから頑張りなさいっ!」と言われたときの出来るは、今は出来ないが、努力をすれば出来る・・という気持を含んでいる訳だ。「いや、私ならそれくらいは食べられるっ!」と自慢する場合の出来るは内臓の能力であって、本人の努力とは関係がない。^^
 とある総合体育館でママさんバレーの練習が行われている。女子コーチは地元出身の元オリンピック選手だ。
「もう少しっ!! あなた達なら必ず出来るからっ!」
 と言いながら、コーチは内心では『この人達には無理かも…』くらいの気持で、奇跡以外、とても出来るとは思っていない。
「はいっ!!」「はいっ!!」…
 ママさん選手達から明るい声が異口同音(いくどうおん)に飛び出す。
 そして、数日が経ったとき、コーチの思っていた奇跡が起こったりする。^^
「やれば出来るじゃないっ!! ねっ!」
 コーチは言った言葉どおりになったことで、『自分の指導で選手達は出来る…』と、自(みずか)らの出来る能力に自信を持つ。^^
 出来る・・という言葉を分析すれば、まあ、このように分析出来る。^^

           
                  完

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2019年8月20日 (火)

分析ユーモア短編集 <46> 味(あじ)

 囲碁のテレビ解説を観ていると、「あっ! そう出ますとホニャララですから、味(あじ)がなくなりますよねっ!」などと解説者が、さも全(すべ)てを知っているかのような口調(くちょう)で語っておられるが、[失礼! ^^]この味という言葉も、分析してみれば、味わい深いことが分かってくる。^^ 例えば、料理の味だと、「…なかなか深みがある、いい味ですなっ!」となる。芸能方面だと、「あの俳優さん、なかなか渋いいい味を出すねぇ~!」である。他にも、「女足軽のSF時代劇ですが、なかなか味わい深い、見応(みごた)えある作品に仕上がってますなっ!」などとなる。^^ 孰(いず)れにしろ、味わい深いことに変わりはないのだが…。^^
 とあるテレビ局の料理番組の収録中である。有名な早口の女性料理家が料理を作っている。裏方のマネージャーが料理家に合図を送るものだから料理家は作りにくくって仕方がない。だが、そうとも言えず、マネージャーのせいにするだけで、多くは語らないようだ。
「ど、どう!?」
 女性料理家は味見(あじみ)用の小皿(こざら)に鍋(なべ)の汁(しる)を少量入れ、忙(せわ)しなく女性アナウンサーの前へ差し出す。
「美味(おい)しいですねっ!」
 アシスタント・ディレクターが『あと、2分。急いで!』と書かれたカンペ[カンニング・ペーパーの略で、台本内容や構成を出演者に掲示する紙(主にスケッチブック)]を、見て下さいっ! と言わんばかりに、女性料理家の前へ突き出す。
「わ、分かってるわよっ!」
 笑いながら、女性料理家は呟(つぶや)く。
「えっ?」
 女性アナウンサーが怪訝(けげん)な顔で女性料理家を見る。
「いいえっ! いいお味でしょ!?」
 女性料理家は味で話を暈(ぼか)す。
「あっ、ああ! はい…」
 キツネに抓(つま)まれたように、女性アナウンサーは返事を返す。
 分析の結果、味は、味よくいろいろな場面で使われている言葉だと分かる。^^

          
                  完

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2019年8月19日 (月)

分析ユーモア短編集 <45> 暑い

 冬に近づけば、寒い・・となるが、当然、夏に近づけば、暑い・・となる。これが四季の移ろいのいいところであり、悪いところでもある。[常夏(とこなつ)の地]と聞けば、快適なハワイのオアフ島とかフィージー諸島のいい気候を連想するが、正確には[常に過ごしやすい快適な気候の地]なのだ。暑いっ暑いっ!! と額(ひたい)の汗を拭(ふ)き、暑いを強調する人々が萎(な)える我が国の猛暑とは雲泥(うんでい)の差なのである。
 暑い・・という言葉を分析すれば、その感じ方にも人によって温度差があることが分かる。この場合の温度差は程度の違いを意味する言葉であり、「ニホンゴ ハ ムズカシイデスッ!」と外国の方々が困惑(こんわく)される気持も分かるような気がする。^^
 とある喫茶店である。クリスマスの夕方、クリボッチ[現代用語で、一人で寂(さび)しくクリスマスを過ごす人]がクリボッチを楽しんでいる。クリボッチの年数が続けば、羨(うらや)ましくなくなり、それはそれで楽しくなる・・というのが分析結果である。^^ 
 店内は暖房が利(き)いていないのか、冷えるほど低い。
「寒いなぁ~! ちょっと暖房、強くしてもらえませんかっ!!」
 店内にいる別の客が、思い余って、ひと声、店員にかけた。クリボッチにすれば、いい頃合いの温度だったから、少し不満が募(つの)ったが、彼は、言うでなく思うに留(とど)めた。
 しばらくすると、店内は暑くなってきた。暑い…と益々(ますます)、クリボッチの不満は募っていった。そのときだった。
「お待ちどうさまっ!!」
 顔馴染(かおなじみ)の女店員が、クリスマス限定サービスのケーキを運んで現れた。クリボッチは毎年のことでそのサービスを分かっていたから、ニッコリ微笑(ほほえ)み、軽く会釈(えしゃく)した。そして、
「もう一杯、いただけますかっ!」
 クリボッチはコーヒーを、おかわりした。
「はい…」
 女店員はトレイへ空(から)になったコーヒーカップを乗せ、微笑みながら去った。クリボッチは、いつの間にか、暖房が強まった暑さの不満を、女店員の微笑で忘れていた。
 分析の結果、暑い・・と思う気分は、小さないいこと・・があれば忘れ去られることが窺(うかが)える。^^

          
                  完

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2019年8月18日 (日)

分析ユーモア短編集 <44> 寒い

 冬に近づけば当然、寒くなるが、その寒いという言葉を分析すれば、なにも寒暖(かんだん)だけに使われる言葉ではないことが分かる。例(たと)えば、「ワッ、寒ッ!」 と、聞こえた場合、その言葉の真意として、[1]冷えて寒い、[2]言われたダジャレとかが拙(まず)く、その場の雰囲気が冷える。あるいは、とても笑えない・・といった二通りに分かたれることが分かる。
 一人の老人が古びた居酒屋で暖(だん)を取りながら一杯やっている。昔ながらの練炭(れんたん)炬燵(ごたつ)の上に金網(かなあみ)を置き、さらにその上には美味(うま)そうに焼けた油揚(あぶらあ)げが香(こう)ばしいいい匂(にお)い放(はな)つ。すでに前もって薬缶(やかん)の中で燗(かん)された酒をチビリチビリとやりながら、老人は焼けた熱々(あつあつ)の油揚げを小皿の醤油につけ、美味(おい)しそうに頬張(ほおば)る。顔がほんのりと赤味を帯び、老人はなんともいえないような笑顔で気持よさそうだ。
「おお、寒いっ! …ほう! 一杯、やられてますなっ!?」
 もう一人の老人が身体(からだ)を震(ふる)わせながら店へ入ってきた。顔馴染(かおなじみ)なのか、二人は顔と顔で挨拶するだけで、多くを語らない。入ってきた老人は向かい合いの椅子へ、練炭炬燵を取り囲むように座る。
「同じでよろしゅうございますかなっ?」
「ああ、はい。いつものように…」
 店主との会話が、このひと言で、すべてが事(こと)足りるのは、常連の強みだ。
「吟醸(ぎんじょう)・常夏(とこなつ)で寒さがやっつけられますからなっ! ははは…」
「仰(おお)せのとおりでっ! ははは…」
 談笑しながら飲み食いし、寒い冬の夜が過ぎていく。
 寒い・・を分析すれば、このように酒の肴(さかな)になることもある。だが店主は、二人の会話をいつも寒いっ! と感じて聞いている。^^

          
                  完

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2019年8月17日 (土)

分析ユーモア短編集 <43> 思いついたが百年目っ!

 思いついたが百年目っ! ・・という気持いい歌舞伎のような言い回しがある。正確には、ここで逢(お)うたが百年目ぇ~~! とかなんだろうが…。^^ この言い回しは、ふと、思いついた以上、やってしまうかっ! …といった前向きの気分で口にする言葉だが、これを分析してみると、良い場合、悪い場合の両方があることが判明する。良い場合は、やったお蔭で間に合った、やっていなければド偉いことになっていた・・ということになる。悪い場合だと、あのときやっていなければ…と後悔(こうかい)する破目になる早とちりによる失敗などだ。
 とあるサラリーマン家庭の一場面である。日曜ということもあり、この家のご主人は、かねてより思い描いていた日曜大工[DIY=do it yourself]を朝から始めていた。ところがこのご主人、そう手先が器用ではなかったから、少しやっては作業が停滞(ていたい)していた。
「これでは、昼どころか一日かかっても出来んぞっ!」
 怒る相手もなく自分に切れて愚痴りながら、ご主人は、とうとう腕組みをすると、さて…と考え込んだ。そのとき、ご主人に思いつかなくてもいいのに、妙な考えが浮かんだ。
「思いついたが百年目~~っ!」
 歌舞伎のようなひと言(こと)を小さく呟(つぶや)き、ご主人は何か得体(えたい)の知れないモノに取り憑(つ)かれたかのように忙(せわ)しなく動き始めた。その姿を遠目(とおめ)に、この家(や)の奥さんが眺(なが)めていた。ご主人の動きは尋常(じんじょう)ではなく、懸命に何かを探しているように奥さんには見えた。
「もう、お昼よっ! なに探してるのっ!?」
 奥さんは問いかけてみた。
「この棚(たな)に置いといた缶の蓋(ふた)はっ!?」
「缶の蓋? …ああ、それなら、一昨日(おととい)、燃えないゴミに出したわよっ!」
「遅(おそ)かりしぃ~由良介(ゆらのすけ)ぇ~~っ!」
 ご主人は、ふたたび歌舞伎のような言葉を小さく呟くと、作業を中止した。
 分析の結果、思いついたが百年目っ! は、必ずしも百年目ではないようだ。^^

         
                  完

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2019年8月16日 (金)

分析ユーモア短編集 <42> 甘(あま)い

 甘(あま)い・・という言葉を分析してみよう。分析などしなくてもいい。甘いのは苦(にが)くないことだろ? と僻目(ひがめ)で思われる方は、美味(おい)しい牡蠣鍋(かきなべ)でも突(つつ)いて一杯やっていて下さればいい。^^
 甘いは、なにも味覚(みかく)だけに使われる言葉ではない。考えが甘い・・などと、十分に整っていない、あるいは行き届(とど)いていない場合にも使われる言葉なのである。
 ポカポカ陽気の昼下がり、とある二人のご隠居が、退屈(たいくつ)を紛(まぎ)らわそうと将棋を指(さ)している。
「いや! その手は流石(さす)に甘いでしょうなっ! この角(かく)が成って竜馬が行けば、明治維新となりますからなっ!」
「はあ?」
「いや、甘いのですよっ、その手はっ! 昨日(きのう)の美味しかったお汁粉(しるこ)より甘いっ! 実に甘いっ!」
「甘い、甘いって、そんなに?」
「ははは…そんなに、です。そう指されるなら当然、コレで必死がかかります。と、なれば、コレをコウ指す他なく、コレコレでチィ~~~ン! あの世ですな」
「あの世? そんな大げさなっ!」
「いいえ、甘過ぎる卵焼きは食べられたもんじゃないっ!」
「はあ、そらまあ、そうでしょうが…」
「そういや、先だっての出汁(だし)巻きはいい味でしたなっ!」
「ああ、確かに…。アノ店はなかな評判がいいようですなっ!」
「そうそう! また近いうちに参りましょう!」
「はあ、是非(ぜひ)!」
 いつの間にか将棋は忘れ去られていた。
 分析の結果、甘い話題は話が弾(はず)み、上手(うま)く纏(まと)まる効果があるようだ。^^

           
                  完

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2019年8月15日 (木)

分析ユーモア短編集 <41> 古い種(たね)

 女性はともかくとして、男性の場合、老人でも精力さえあれば子には恵まれる。例(たと)えが下世話(げせわ)で申し訳ないが、これも偏(ひとえ)に分析の手法であるから、お許しいただきたい。^^ 
 精子は、年齢にはまったく関係なく若い。そこへいくと、植物の古い種(たね)、特に野菜の種ともなると、これは、もういけない! 一年置けば、待てど暮らせど芽が出ない・・という悲しい結果を迎える場合があるのだ。
 古い種を分析すれば、動植物の関係なく、種属(しゅぞく)によるその強靭(きょうじん)さの違いが見えてくるのである。
 とある家庭菜園で男が野菜の種を蒔(ま)いている。
「どうかなぁ? 去年の古い種…。まあ、いいかっ! 出なきゃ、また買うさ…」
 男は独りごちて、野菜の種を蒔き終えた。男の妻はアメリカ・リンカーン大統領の母、ナンシー夫人のような女性で、男が蒔く姿を遠目に眺(なが)めて呟(つぶや)いた。
「… 間違いは始まりの元(もと)・・って言うから…」
 妻は男の間違いを指摘(してき)せず、するに任(まか)せた。
 そして2週間ばかりが瞬(またた)く間に流れた。
「妙だなあ~?」
「なにが?」
「いや、芽が出ないのさ…」
「そら、そうでしょ! 古い種だもの…」
「ああ、やはり…」
「お隣(となり)のお爺(じい)さん、80で子供作ったけど…」
「はいはいっ! 頑張りますよっ! 頑張りゃ、いいんでしょ!!」
 男は妻に焚(た)きつけられた気分がした。
 収穫が遅れたせいで、その年の野菜は小さかったが、分析の結果、古い種は新しい種に勝(まさ)る・・ということもあるようだ。^^

         
                  完

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2019年8月14日 (水)

分析ユーモア短編集 <40> もう、いい…

 人が諦(あきら)めたり諦めかけたときに吐(は)く言葉に、もう、いい…という言い回しがある。この、もう、いい…という言い回しを分析すれば、以外と、もう、よくないことが見え隠れする。^^ そう言えば、相手はより同情して、やってくれるだろう…とかなんとか考える巧妙な手口(てぐち)だ。その気にさせる言い回し・・とも言えるだろう。
 とある小会社が手形の不渡りを出し、倒産の危機を迎えていた。
「ぅぅぅ…。しゃ、社長~っ!!」
「もう、いい…。君らはよくやってくれたっ! 俺が悪いんだっ! あんな屑(くず)会社の口車(くちぐるま)に乗ったのがいけなかった、すまないっ! だがな、もう、いいんだっ!! もう、いい…」
 もう、いい…を繰り返した社長だったが、どうしてどうして、決して諦めてはいなかった。内心は煮えくり返る思いで、くそっ! このまま済(す)ませてなるものかっ!! だった。この復讐心(ふくしゅうしん)は意外な行動へと社長を走らせることになった。自らの土地、建物を抵当(ていとう)に銀行から融資(ゆうし)を受け、手形決済の資金に当てたのである。
 一ヶ月後、会社は社員の総力をあげての活躍により危機を脱し、経営は順調な回復を見せつつあった。だがどういう訳か、社長は、ただ一人、浮かぬ顔だった。
「…如何(いかが)されました、社長?」
 浮かぬ顔の社長に秘書課長が訊(たず)ねた。
「んっ? いや、べつに…。もう、いい…もう、いい…」
 社長は自分に言い聞かせるように、もう、いい…を繰り返した。社長の不甲斐(ふがい)なさに見切りをつけた妻が家を出て、行く方知れずになったのである。しかし、社長は決して諦めてはいなかった。その証拠(しょうこ)に、密(ひそ)かに探偵社に命じ、未練がましく妻の行方(ゆくえ)を探(さぐ)らせていたのである。
 分析の結果、もう、いい…は、ちっともよかないのである。^^

          
                  完

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2019年8月13日 (火)

分析ユーモア短編集 <39> やり残し

 物事をやり始めたのはいいが、やり残したとしよう。さて! 皆さんなら、如何(いかが)されるだろう? ^^ もちろん、そのときの状況やその方の性格にもよるだろうが、このやり残しを分析するのも一興(いっきょう)である[時代劇のお殿様風の表現法^^]。
 とある菓子餅(かしもち)屋で老店主が手仕事の餅を作っている。一日に売れる餅の数は、おおよそ決まっていて、その数に合わせて多少の多い少ないはあるものの、ほぼ決まった数を、せっせと汗して老店主は作っていた。いや、汗は汚いから、単にせっせと作っていた。^^ その日も早朝からいつものように作っていたが、電話が入り、急な用ができた。さあ! どうするか…と、老店主は思案した。急な用は中途半端なことに昼前の11時過ぎだった。その時間帯は客が多く、その日の売り上げがほぼ終わる忙(いそが)しい時間帯だった。売れ切れでありません…などと不名誉なことを言うのが嫌いな老店主だったから、売り捌(さば)く数を作れないなら、いっそ店を臨時休業にした方が…と悩んだ。だが、それもどうだろう…と思え、ついに、よしっ! 取りあえず作れるだけ作ればなんとかなるだろう…と結論し、作り始めた。いつもなら朝食を食べてからだったが、その日はむろん、朝食抜きである。作り始めて数時間、いよいよ用で出かける11時があと30分に近づいてきた。やり残しは、あと数十個だったが、もはや猶予(ゆうよ)はない。
「あああ~~~っ!!」
 老店主は急に叫んで立ち上がると、その場で卒倒(そっとう)して気を失った。
「だ、大丈夫かいっ!」
 妻が駆け寄ったが、老店主の意識は、すでになかった。幸いにも病的な卒倒ではなく、数時間後、老店主は無事、意識を回復した。
「…今、何時だ?」
「お昼の2時半…」
「あああ~~~っ!! やり残しがっ!!」
 老店主は半身を起こし、人指し指と高々指の2本を立てた。
「… ?」
 意味が分からず、妻は訝(いぶか)しげに老店主を見た。
 まあ、やり残しも案外、気にするほどのことではない・・という一例だが、分析結果では、ご詠歌(えいか)を途中で[休憩して再開するなど]放って置かない方が好結果が得られる・・と出ている。休憩している間に関ヶ原は…。^^

                         完

 ※ やり残しの2件は、臨時休業と代理人で解決したそうです。^^

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2019年8月12日 (月)

分析ユーモア短編集 <38> 隙(すき)

 世は無常で、隙(すき)を見せれば、その隙を衝(つ)いて魔が人に襲いかかる。人は脆(もろ)いから、その風に、ついつい影響されがちだ。一時期、そんな時代劇も流行(はや)ったが、なろうとままよっ! 好きにしてくれっ! と思われる方は、好きな酒でも、カッ食(く)らって、ご機嫌な気分で眠って下さればいい。^^ 分析すれば、ともかく、世渡りは手抜かりなく用心深く生きることが肝要(かんよう)となる。用心していても安全でなくなるのだから、この世は怖(こわ)~~いっ!^^
 剣道のとある道場である。早朝から、剣道塾に入塾を許された塾生達が竹刀(しない)を手に、稽古(けいこ)に余念がない。熱気と掛け声が入り乱れる中、道場主と師範代の二人が話をしている。
「あの二人、隙だらけですなっ、先生!」
「ああ、新しく入ったばかりだからな…」
「いや、それにしても、隙だらけですよ。あんな隙だらけなの、私、見たことありませんっ!」
「まあ、そういうな、師範代。そのうち上達するさっ!」
「そうでしょうか?」
「ああ。だいいち、私らの生活はこの塾生達にかかってるんだからなっ!
「ええ、まあ…」
 そのとき、道場主の妻が盆に菓子鉢に入った茶菓子と茶入りの湯呑みを持って現れた。
「あなた、ご休憩をっ!」
「んっ! ああ、有難う…」
 道場主は美味そうな菓子だ…とばかり、つい手を出してしまった。そこに隙が生まれた。
「あなた、袴が綻(ほころ)びてますわよっ!」
「んっ? おお、そうだったか…。あとで繕(つくろ)いでくれっ!」
「はい…」
 師範代は、ニタリ! と一瞬、顔を緩(ゆる)めた。先生にも隙はあるんだ…と思えたからだ。
 分析の結果、いくら隙がない人でも、つまらない隙は必(かなら)ず生じるのである。^^

         
                  完

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2019年8月11日 (日)

分析ユーモア短編集 <37> 三(さん)竦(すく)み

 グーはチョキには勝つがパーに負ける。チョキはパーには勝つがグーに負ける。パーはグーには勝つがチョキに負ける。ではグーチョキパーが三者で戦えばどうなるか? 三者は氷のように動けなくなる・・という奇妙な結果が生じる。この現象を三(さん)竦(すく)み・・と呼ぶ。三竦みを分析すれば、なかなか面白い。^^
 とある会社である。Aは平社員でBの課長には頭が上がらない。BはAに偉(えら)ぶれるが、部長のCには頭が上がらない。で、Cは? といえば、A、Bともに偉ぶれそうなのだが、実は浮気相手との密会場面をAに見られ、Aには頭が上がらない。
 課内の一場面である。
「ダメじゃないかっ! A君!」
「はい! 以後、気をつけますっ!」
「ほんとに君というヤツはっ!!」
 課長のBが平社員のAを課長席前へ呼び出し、小言(こごと)をたれている。そこへ部長のCが偶然(ぐうぜん)、入ってきた。
「どうしたんだっ? B君。大層(たいそう)、お冠(かんむり)じゃないかっ…」
 怒られているAを見ながらCは庇(かば)うように言った。
「はあ! 実はAが、また契約をボツにいたしまして…」
 Aは、いいところへCが現れた…とばかり、ニヤついた。
「こらっ! 部長を前に何をニヤついとるんだっ!」
「ま! まあ、いいじゃないかっ、君っ! 失敗は誰にもある。つ、次、頑張ればいいじゃないかっ! だろっ!?」
「はあ。それは、まあ…」
「次は大丈夫だよなっ? ははは…A君」
「はっ! 部長、頑張りますっ!」
「もう、いいっ!」
 Bは仕方なく、Aを開放した。
 と、まあ、こういう三竦みもある訳だ。これは、ほんの一例だが、分析すれば世の中には、いろいろな三竦みがあり、実に面白い。^^

        
                  完

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2019年8月10日 (土)

分析ユーモア短編集 <36> 浮かぶ瀬

 諺(ことわざ)に、━ 身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあり ━ というのがある。この諺を分析すれば、要するに、迷っていることでも思い切りよく勇気を持ってやれば、案外、上手(うま)くいくものだ・・ということである。むろん、上手くいかず、浮かぶ瀬に乗った途端(とたん)、沈む・・ということも有り得る。そういうときは、お気の毒っ! と慰めの言葉をかける他(ほか)はないのだが…。^^
 浮かぶ瀬も、今のような世知辛(せちがら)いご時勢(じせい)ではビミョ~~な存在以外のなんでもない。
 とある平凡な会社である。二人の社員が語らっている。
「まだ、これだけあるんだ。なんとかして欲しいよっ!」
「いや、お前は、そんなにしなくっても大丈夫さっ! ははは…苦労性(くろうしょう)な奴(やつ)だなっ!」
「そうかぁ~? いや、こうしてやってる残業が、俺にすりゃ浮かぶ瀬なんだからな」
「いやいや、やったとしてもだっ! 飛ばされるときは飛ばされるんだぜ。お前もこの前の人事、知ってるだろっ?」
「ああ、あいつな! あいつ、今、どうしてる?」「まあ、それなりに地方で出世してるそうだぜ」
「そうなんだ…」
「地方へ飛ばされた結果だから、返って浮かぶ瀬だつたのかもなっ!」
「やめたやめた…」 
 浮かぶ瀬の残業に見切りをつけ、二人は巷(ちまた)の飲み屋へと向った。
 分析の結果、浮かぶ瀬は深く考えない方が浮かぶようだ。^^

                           完

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2019年8月 9日 (金)

分析ユーモア短編集 <35> 効果

 人は生きる間に様々(さまざま)なプラス[+]効果とマイナス[-]効果を世の中に与えている。むろん、本人はそのことに気づかず諸事を行って生きているの訳だが、その詳細を分析してみることにしたい。
例(たと)えば、人が働く・・これは当然、プラス効果になることは誰も否(いな)めないだろう。働けば当然、腹も減る。で、食べることになる。マイナス効果だ。これは一例だが、人はこのようにプラスとマイナスの効果を与えながら生き続けている訳だ。要は、生産がプラス効果、消費がマイナス効果・・と捉(とら)えれば分かりやすい。さらに、その順序も重要だと分析できる。例えば、物事を完成させてから食事をする場合と、まあ、食べてからにするか…とか、ちょっと休憩して続きを…と考える者とでは、効果はどちらも同じに見えるが、結果は大いに違ってくるのだ。片方はすでに完成されて食べている。もう片方は完成されずに食べている・・ということだ。これを簡単に説明すれば食べ終わったとき、前者は[+]-[-]=0であるのに対し、後者は[-]-[-]=-2と効果がなっている訳である。完成されずに食べ終えた者が、その後、完成したとしても、効果は-2+1=-1なのである。これが、手順前後による結果の大違いとなるのである。
 とある下町の生活場面である。煎餅(せんべい)職人の父親が一生懸命、地道に煎餅を焼いている。
「父ちゃん、風呂が沸いてるよっ!」
「おっ! すまねぇ~な。ははは…だがなっ、今、父ちゃん、手が離せねぇ~から、お前、先に入っちまえっ!」
 父親は仕事を終えてから、風呂で疲れを取ろう…とプラス効果で考えた。子供は、父ちゃんは疲れてるから、先に入ってもらおう…と、これもプラス効果で考えた。この家庭では、この時点でプラス2の効果を生み出していたことになる。
「あんたっ! 今夜は、好きな小芋の煮っころがしだよっ!」
 そこへ、母親が父親の気分をよくするプラス効果の声を台所から響かせた。
「おっ! こりゃ、いいやっ!」
 母親のプラス効果で、プラス3の効果がこの家庭で生じたことになる。効果がプラス3ともなれば、これもう、円満な笑いが起こらぬはずがない。事実、その後の夕食は、親子三人の笑い声が絶えなかった。
 この世では、マイナス効果を減らすプラス効果を出来るだけ生み出せば、人は幸せに生き続けられる・・というのが分析結果である。「あんさん、仕事のわりによう食べやはるなぁ~」と言われるマイナス効果は、どうなんだろう? と思えるのだが…。^^

 
                          完

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2019年8月 8日 (木)

分析ユーモア短編集 <34> 苦楽(くらく)

 我が国のとある超有名な宗教では、輪廻(りんね)する六道のうち、人の世は争いが絶えず、苦楽(くらく)に満ち溢(あふ)れた世界だとされる。そうだなぁ~…と思えることは、確かに多々ある。しかし、楽を勝ち得た者達が人の道に合格なのか? と問えば、必ずしもそうではないと分かる。人としては負け組だとしても、人として十分、合格だ・・という人はいるのだ。逆に勝ち組でも失格や不合格の人々も当然ながら存在する。要は、人の世は試行錯誤(しこうさくご)の連続で、自分を高める修行の世界なのだ・・と超有名な宗教は説(と)くのである。まあ、私は疲れるから、余り深く考えたくないのだが…。^^ 筆を進める立場上、仕方なく分析をしなければならないのは骨が折れる。えっ?! そんなことより夕飯? …夕飯は昨日(きのう)の残り物の鮭(さけ)を焼けば事(こと)足りる。^^
 苦楽で、楽な方の地位、名誉、出世、富裕、縁などの諸事は、まったく人の完成された道には関係がなく不合格の場合も多々、生じる・・との分析が成立する。具体例では、出世して疑獄事件でアウトな人は、何のために出世したか・・を忘れた不合格な人となる。逆に苦の方は、生きる過程で落ち葉のように消えていく不幸せな人も、頑張って潰(つい)えたなら十分に合格と審判[ジャッジ]される訳だ。そう気づけば[正覚(しょうがく)と仏教では説くそうだ。生姜(しょうが)ではない^^]ということで、苦楽はどちらも小さい方が…という結論に至るのである。
 お盆で忙しい寺から、アルバイトを頼まれた学生が、俄(にわ)か僧に身を窶(やつ)し、檀家(だんか)回りをしている。
「…はて? お見かけしない方ですなっ?」
「いや、なに…。ご住職が都合で来られないということでして、私(わたし)が…」
 学生は口にした瞬間、しまった! と思った。私ではなく、私(わたくし)と言うべきだった…と思った訳である。[し]一字のことながら、[わたし]に比べ、[わたくし]だと重みもあり、僧の風格があるのだ。すでにこのとき、学生には苦が付き纏(まと)っていた。まさに、若気(わかげ)の至(いた)り・・という例(たと)え通り、アルバイト料のお布施(ふせ)で楽をしようとした学生の気分は気疲れの苦へと転じた。
 このように、苦が楽に、楽が苦に・・なるのが苦楽の分析結果となる。^^

         
                  完

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2019年8月 7日 (水)

分析ユーモア短編集 <33> 順調(じゅんちょう)

 物事がスンナリと思い通りに進む状況を人々は順調(じゅんちょう)と表現する。日本語は表現方法がいろいろとあるから分かりづらい・・とは、ある外国の方の弁だが、裏返せば、それだけボキャブラリーが多い、いわばコボル[コンピューターで表現する高級言語]のようなよく完成された言語ということだ。まあ、それは兎(と)も角(かく)として、順調について分析してみたい。例によって、分析しなくったって順調は順調だっ! と言われる方もいるだろうが、それも一理(いちり)あり、お暇(ひま)な方は読んでいただけばいいくらいのものだ。^^
 順調にやっている内容が推移(すいい)するには、それなりの原因、理由、経緯(いきさつ)、運の巡り、間(ま)の良し悪しetc.が介在(かいざい)していることを、当のやっている本人は認識していない。認識してやっているなら、それは神様であり仏様・・ということになる。^^
 ごった返す連休のとある観光地である。
『お子様が迷っておられます。ご家族の方は館内の案内受付まで至急(しきゅう)、お越し下さいませ…』
 美声を自慢げに響かせ、案内嬢がアナウンスする。迷った子供にすれば順調に歩いていた訳で、決して迷おうとしていた訳ではないはずなのだ。それでも迷った原因を分析すれば、視界(しかい)を遮(さえぎ)ったり進行を妨(さまた)げる大勢の人々・・という原因が見え隠れする。大勢の人々がいなければ恐らくその子供は迷うことはなかったろうし、案内受付に保護されることもなかったはずだ・・と、フツゥ~~の分析ではそうなる。ところが、現実はそうではなかった。その頃、子供の両親は観光地のトイレにいた。
「あなたっ! 早くしてよっ! 次の予定があるでしょ!」
「そんなこと言われても、腹が痛いんだからさぁ~!」
 トイレの外で大声を張り上げて切れる妻に、トイレで用を足す夫は弁解がましく返した。妻が切れた原因は夫の俄(にわ)かな腹痛によって順調な行動が妨げられた点にある。^^
「…あらっ? どこへ行ったのかしら、あの子? まっ、いいかっ! その辺にいるわね、きっと…」
 いい加減な親もいるものだが、この場合、妻の機嫌が悪かったということに加え、トイレの前に視界を遮る木々が植えられていた・・ということもある。野生動物の場合、こういうケースは余程のことがない限り、まず起こらない。^^ 結局、この家族の順調の崩れは、すべて夫の腹痛にある・・と、こうなる。
 順調を分析すれば、案外、つまらない原因が順調を崩すことが多い・・と分かる。^^

                           完

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2019年8月 6日 (火)

分析ユーモア短編集 <32> 納得(なっとく)

 人によって納得(なっとく)の程度は異(こと)なる。飴玉(あめだま)一つで、いとも簡単に納得する人から、数億を積まれても納得しない人まで、世の人は様々(さまざま)なのである。この納得という心の動きを分析するのも案外、面白い。この慌(あわただ)しい師走(しわす)に、何を呑気(のんき)に分析してるんだっ! と、怒られる方もお有りだろうが、そこは一つ、温(あった)かい甘酒でも啜(すす)ってご容赦(ようしゃ)願いたい。甘いものがダメな方は、美味(おい)しい肴(さかな)で酒でも飲んでいて欲しい。だが、孰(いず)れもセルフ[ご自身]でお願いする。^^
 仲のいい二人の男が飲み屋店で怒りをぶちまけている。どうも今回の人事異動が不満な様子だ。
「だろっ!? 俺が怒るのは、その点だっ!」
「たかだか入社3年の青二才に、10年目の俺らが負けたんだぞっ! 納得できるかっ!」
「いや、その通りだっ! あんな若造(わかぞう)に、『はいっ、分かりましたっ! 課長補佐代理っ!』なんて言えるかっ!?」
「言えん言えん、とても言えんっ!」
 二人は、今春の人事異動で課長補佐代理心得に昇格したばかりだった。
「ぅぅぅ…、派遣社員の連中の方が、まだましだっ!」
 一人の男は激昂(げきこう)して、酒が入ったコップをガブ飲みした。そこへ店主が顔を突っ込んだ。
「まあまあ、お二方(ふたかた)。これは奢(おご)りです」
 店主は美味(うま)そうな一品料理の皿を二人の前へ置いた。
「ああ、どうも…」
 二人は、すぐ納得して大人(おとな)しくなった。
 分析の結果、納得が出来る心の発生は、些細(ささい)なことのようだ。^^

                           完

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2019年8月 5日 (月)

分析ユーモア短編集 <31> 気分

 人の気分を細(こま)かく分析すれば、多岐(たき)に分かれる。そんなもの、分析しなくていいっ! と言われる方は、カレンダーを見ながら、今年も残り少なくなったなぁ~などと気楽に欠伸(あくび)をしていただいていればいい。^^
 さて、気分だが、その人の心の在(あ)りよう、性格、取り巻く外的環境の状態、健康状態etc.種々(しゅじゅ)の要素が微妙に絡(から)まることにより変化することが分かるが、その変化のメカニズムは非常に難解なのである。というのも、外的環境の状態の一つをとってみても予測不能なくらい先々で変化をするからだ。当然、その影響を受ける人の気分も、その時々で様々(さまざま)な変化を見せることになる。
 とある漁港である。多くの小型漁船が係留(けいりゅう)されている。
「ああっ! 気分がいいやっ~~!!」
 夜の漁(りょう)から帰ってきた若者が茹(ゆ)で上がった蛸(たこ)のような日焼けした顔で両手を広げ、ひと声、張り上げる。どうも豊漁(ほうりょう)のようだ。そこへ一匹の猫がヒョコヒョコと貫禄よく現れ、小さく「ニャァ~~~」と低い声で鳴いた。
「おう! 父(と)っつぁんっ! お前も気分がよさそうだなっ! ホレッ!」
 若者は船べりに遺された数匹の魚をヒョイ! と船上から岸壁へ軽く投げる。父っつぁん・・と名づけられたその猫は、その魚をゆっくりと慌(あわ)てることなく、食べ始める。どうも、この辺(あた)りを領分(りょうぶん)[テリトリー]にしているボス猫のようだ。その証拠(しょうこ)に、他にも数匹の猫が遠くから様子を窺(うかが)うが、決して近づこうとはしないからだ。それが分かっているのか、父っつぁんは軽く食べ終えると、半分ほどを残し、満足げに気分よく歩き去る。人の場合だと、波止場のマドロスは格好よく立ち去る・・とかだろうが、猫だから、そう格好よくはいかない。とはいえ、猫達を気分よく一瞥し、『あとは、お前達で食いなっ!』とでもいう感じで貫禄(かんろく)十分だ。それを見る若者が、またひと声、気分よく張り上げた。
「よっ! 千両役者!! 日本一(にっぽんいち)っ!!」
 数匹の猫は、我(われ)先にと残された魚に食(く)らいつく。食いそびれた猫は、気分悪げに歩き去る。
 気分は、こんな感じで現れるようだ。^^

                           完

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2019年8月 4日 (日)

分析ユーモア短編集 <30> 疲れる

 人の疲れる原因を探(さぐ)れば、それは心身の二面で起こると分析できる。気疲(きづか)れ・・と呼ばれる心理面の疲れは、表立(おもてだ)った身体(からだ)の異常ではないから、傍目(はため)には分かりにくい。恋の病(やまい)と呼ばれる状態に至っては、本人がその気配(けはい)を見せない限り、他人にその気疲れは、ほぼ100%の確率で分からない。^^ 一方、身体の疲れも同様に、他人には分かり辛(づら)いが、疲れが溜(た)まると、次第に表面化して、「おいっ! 顔色が悪いぞっ! 大丈夫かっ!」などと声をかけられるようになるから、まだ気づかれる機会もある。しかし、近年の過労死という過酷(かこく)な労働災害は、他人を気づかせはするが、それ以上、どうにも出来ない社会の歪(ひず)みを感じさせずにはいられず、腹立たしい! …と、私が腹を立てても、どうにもならないのだが…。^^
 ある会社の事務室である。二人の男がロッカー室の前で背広上の作業服を脱ぎながら、語り合っている。
「あいつ、タフだなっ! これで、三日続けて残業だぜっ!」
「俺達と違って、課長代理補佐候補だからなっ!」
「飽くまで、課長代理候補じゃぁ~ない!」
「当然、課長候補でもないっ!」
「ははは…三日続きゃ、疲れるだろうがなっ!」
「いや、もう十分に疲れてるさっ! ははは…」
「まあ、俺達は疲れることなく美味(おい)しく食べ、美味しく飲んでと…」
「意識せずになっ!」
 出世を意識しない二人は大笑いしながら退社した。
 分析の結果、何事も意識すれば疲れるようだ。^^

         
                  完

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2019年8月 3日 (土)

分析ユーモア短編集 <29> 万事休(ばんじきゅう)す

 どんな人でも進退窮(しんたいきわ)まる・・という状況がある。このような最悪の状態を、人々は万事休(ばんじきゅう)す・・と表現する。今の造形語風に略せば、バンキュ~である。^^ 決してオバQではない。^^
 この危機的状況を分析すれば、意外とそうではないことが多い。その事実に気づくためには、[1]として、まず冷静に落ちつくことが求められる。[2]として、最悪の事態に立ち至ったとき、冷静に落ちつける心の鍛錬(たんれん)が必要となる。ダメになってから落ちついても意味がないからだ。
 とある居酒屋である。一人の男がいい気分で酒を飲んでいる。いつも寄る店ならいいのだが、生憎(あいにく)その店が臨時休業だったため、その近くの店へ入ろうとした。ところが、その日に限って知り合いから頼まれた用事があった。用事といっても、多寡(たか)が知れた買い物だったが、念を入れられたのは今夜の八時までにという時間制限があった。腕を見れば6時過ぎだったから、まあ、時間はたっぷりある。あとにしよう…と男は軽く踏んで店へ入った。ところが、これがいけなかった。その店は多くの客で込んでいて、席が空(あ)くまで入口で待たされる破目になったのである。この時点でも、まだ男はそんなに困ってはいなかった。しかし、そう思った直後、異変が起こった。俄(にわ)かに男の体調が怪(あや)しくなったのである。まず、全身に悪寒(おかん)が走り、体熱が上昇、男は知らない店先で身動きが取れなくなった。万事休す・・である。
「ど、どうされましたっ!?」
 店を出ようとした客がフラついて今にもその場へ倒れそうにしている男に声をかけた。偶然にもその客は医者で、こういう事態に場馴(ばな)れしているのか、落ちついていた。
「うぅ! 調子が…」
 男は、身体(からだ)の異常をその医者に訴えた。医者はすぐに手持ちの往診かばんを開け、必要な応急処置を施(ほどこ)した。
「私の医院はこの近くですっ! 歩けますかっ!?」
「はあ。まあ、なんとか…」
 男は医者に抱きかかえられながら医院へと向った。
 一時間後の八時過ぎ、男は医院で回復した。
「し、しまった!」
 男は目覚めた診察ベッドの上で頼まれた用事を思い出した。
「ど、どうされましたっ!?」
 ふたたび、医者は男に訊(たず)ねた。
「万事休す! です、先生っ!」
「なにがっ!?」
 訝(いぶか)しげに医者は男を見ながら、その訳を訊ねた。
「なんだ…」
 医者は、その訳を馬鹿馬鹿しく思った。
 分析の結果、万事休す事態は、他人には分かりにくく、意外と万事休さない。^^

        
                  完

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2019年8月 2日 (金)

分析ユーモア短編集 <28> 遠き道

 ━ 人生は遠き道を行くが如(ごと)し、焦(あせ)るべからず ━ と家康公が口にされたかどうかは定かではないが、そんな格言めいた古い言い伝えがある。他にも、━ 急がば回れ ━ とかいう言い方もあるが、孰(いず)れにしろ、先の道が長ければ、余り急がず、自分のペースで慌(あわ)てずに進もう・・という意味が込められている訳だ。今の時代、遠い道はバイク、自動車、新幹線、さらにもっと早いリニア・モーターカー、さらにさらに早い飛行機が重んじられているが、果たして遠き道へ着くために本当に早いのか? を分析してみるのも面白い。^^ 馬鹿野郎! 早いに決まってるじゃないかっ!! と問答無用にお考えの方は、美味(おい)しい河豚鍋(ふぐなべ)を賞味(しょうみ)していただいていればいい。^^ ただし、河豚に当たって河豚[ふぐ、と、すぐ、をかけたダジャレ^^]に死んでも、責任は一切、持てないから、そのつもりで…。^^
 とある一品料理店である。二人の男がカウンター席で熱燗(あつかん)の徳利(とっくり)を傾けながら肴(さかな)の小鉢(こばち)を突(つつ)いている。
「いやぁ~、ここの料理はいつ来ても美味(うま)いよなっ!」
「そうですかぁ~?」
「ああ、美味いっ! 親父さん、なにか秘伝(ひでん)でもあるのかいっ?」
「ははは…秘伝なんてもんはありませんよ、お客さん。まあ、あるとすれば、拘(こだ)ってるってことですかね…」
 カウンター前で手を動かす店主が一瞬、その手を止め、訊(たず)ねた男を見て言う。
「と、言うと?」
「ええ、まあねぇ~。他の店と違い、材料の仕込みに3倍はかけますから…」
「3倍っ!!」「3倍っ!!」
 二人は異口同音(いくどうおん)に口を揃(そろ)えて驚いた。
「ええ、まあ…」
 店主は少し照れて小声で暈(ぼか)した。
「この味に至るまでが遠き道なんだなぁ~…」
「まあ…」
 店主はふたたび照れて暈したが、照れ過ぎて蛇口を閉め忘れた。
 遠き道を分析すれば、慌てず急がないのが一番だが、からといって、着いたあとも油断してはいけないということになるだろう。着いて兜(かぶと)の尾を締(し)めよっ! なのである。^^

         
                  完

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2019年8月 1日 (木)

分析ユーモア短編集 <27> 虫の知らせ

 上手(うま)い言い回しに、虫の知らせ・・というのがある。なにも虫が態々(わざわざ)出向いて、『ホニャララですよ…』などと知らせる訳がない。^^ 飽くまで、そんな微(かす)かな霊感(れいかん)のような感じを指す言葉なのである。
 花瓶(かびん)に風雅に挿(さ)された芒(すすき)の穂。三宝(さんぼう)の上へピラミッド形(がた)に見映(みば)えよく盛られた月見団子。蒼白(あおじろ)く照らす満月の光。そして静かさの中に聞こえる虫の集(すだ)き。そんな中、一人の男がドッペリと縁側(えんがわ)に腰を下ろし、何を思うでなく無我の境地(きょうち)で満月を愛(め)でている。そこへ一匹の猫がニャァ~~! と鳴くでなく楚々(そそ)と現れる。男は、ふと、その猫の動きで我に返る。と同時に、団子を猫に食われそうな虫の知らせを知る。^^ 結局、お月見相場の話ではなくなり、雑念が巡るのである。ところが猫は団子を食べることなく、男の横へドッペリと腰を下ろし、毛繕(けづくろ)いを始める。
 分析すれば、虫の知らせも結局のところ、当(あ)たり外(はず)れがある訳だ。^^

                           完

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