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2019年8月 2日 (金)

分析ユーモア短編集 <28> 遠き道

 ━ 人生は遠き道を行くが如(ごと)し、焦(あせ)るべからず ━ と家康公が口にされたかどうかは定かではないが、そんな格言めいた古い言い伝えがある。他にも、━ 急がば回れ ━ とかいう言い方もあるが、孰(いず)れにしろ、先の道が長ければ、余り急がず、自分のペースで慌(あわ)てずに進もう・・という意味が込められている訳だ。今の時代、遠い道はバイク、自動車、新幹線、さらにもっと早いリニア・モーターカー、さらにさらに早い飛行機が重んじられているが、果たして遠き道へ着くために本当に早いのか? を分析してみるのも面白い。^^ 馬鹿野郎! 早いに決まってるじゃないかっ!! と問答無用にお考えの方は、美味(おい)しい河豚鍋(ふぐなべ)を賞味(しょうみ)していただいていればいい。^^ ただし、河豚に当たって河豚[ふぐ、と、すぐ、をかけたダジャレ^^]に死んでも、責任は一切、持てないから、そのつもりで…。^^
 とある一品料理店である。二人の男がカウンター席で熱燗(あつかん)の徳利(とっくり)を傾けながら肴(さかな)の小鉢(こばち)を突(つつ)いている。
「いやぁ~、ここの料理はいつ来ても美味(うま)いよなっ!」
「そうですかぁ~?」
「ああ、美味いっ! 親父さん、なにか秘伝(ひでん)でもあるのかいっ?」
「ははは…秘伝なんてもんはありませんよ、お客さん。まあ、あるとすれば、拘(こだ)ってるってことですかね…」
 カウンター前で手を動かす店主が一瞬、その手を止め、訊(たず)ねた男を見て言う。
「と、言うと?」
「ええ、まあねぇ~。他の店と違い、材料の仕込みに3倍はかけますから…」
「3倍っ!!」「3倍っ!!」
 二人は異口同音(いくどうおん)に口を揃(そろ)えて驚いた。
「ええ、まあ…」
 店主は少し照れて小声で暈(ぼか)した。
「この味に至るまでが遠き道なんだなぁ~…」
「まあ…」
 店主はふたたび照れて暈したが、照れ過ぎて蛇口を閉め忘れた。
 遠き道を分析すれば、慌てず急がないのが一番だが、からといって、着いたあとも油断してはいけないということになるだろう。着いて兜(かぶと)の尾を締(し)めよっ! なのである。^^

         
                  完

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