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2020年6月30日 (火)

楽しいユーモア短編集 (61)前後(ぜんご)

 楽しい物事も、その前後(ぜんご)で気分が大きく変る。当然といえば当然の話だが、これから…というときは、ウキウキと楽しい。例えば、旅に出る場合だと、前の日は心が弾(はず)んで楽しいものだが、帰った後(あと)ともなれば、疲れた苦痛だけが残り、楽しい気分は旅の途中で、どこかへ置き忘れているのだ。これは何も旅の行楽に限ったことではなく、食欲、色欲、出世欲、物欲・・など、総ての欲に通じる現象なのである。達成される前はワクワク、ウキウキと楽しい訳で、達成された後は、なんだ…くらいに萎(しぼ)んで、ちっとも楽しいとは思えない。それでも楽しいと思えるお方は相当、欲深(よくぶか)な好き者といえるだろう。^^
 明日、宝くじの結果が分かる前夜である。一攫千金(いっかくせんきん)を夢見る父親は、いつもと違い、どういう訳か落ち着かない。
「あら? お父さん、もう寝るの? 随分、早いわね…」
「んっ? ああ、疲れたからな…」
 娘に訊(たず)ねられ、父親は思わずそう返した。宝くじが気になってな・・などとは、娘にとても言えなかったからだ。ところが、その次の夜は、いつもどおりの時間に戻(もど)っていた。娘は、またダメだったんだわ…とは分かっていたが、知らない態(てい)で黙っていた。ところが、である。なんと父親の宝くじは当たっていたのである。父親は必死の努力で平静を装(よそお)い、楽しい気分をひた隠して娘に気づかれまいとしたのだ。
 このように、物事が前後で変化したかどうかまでは、外見上、必ずしも分からないが、変化は少なからずしている訳だ。後が楽しいことを祈ろう。^^

                           完

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