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2020年7月 9日 (木)

楽しいユーモア短編集 (70)負担(ふたん)

 同じ楽しいことでも、度重(たびかさ)なれば、負担(ふたん)となって楽しくなくなる。楽しいという状況には、心が開放されていて、自分の意思で自由に物事が出来る・・という条件が付く。好きなことでも負担となれば、楽しいどころか、逆に苦になるのである。こういう心にさせるのが私達の目には見えない魔と呼ばれるもので、地獄へ落ちていただくしかない教唆(きょうさ)犯と呼ばれる存在なのである。この負担にさせる目に見えない存在は、目に見えない以上、人間の警察では捕(とら)らえることは不可能で、冥府(めいふ)十三王庁で逮捕してもらうしかないだろう。^^
 深夜に及ぶ残業をしている、とある会社の課内である。誰に強制された訳ではないが、一人の社員が懸命に仕事をしている。
「負担は嫌(いや)だが、これもカミささんに怒られるよりはいいか…。先月も、『あらっ! 少ないわねっ!』って、こうだもんなぁ~」
 どうも、負担を感じながら、仕事の実績を上げることで給料アップを目論むんでいる節(ふし)がなくもない。すでに時間は深夜の10時になろうとしていた。そのときである。課のドアがギギィ~~っと不気味(ぶきみ)な音で開き、懐中電灯を照らしながら一人の警備員が入ってきた。
「なんだっ! 手羽崎(てばさき)さんでしたか…。お疲れさまです」
「あっ! これは警備の登坂さんっ!」
 手羽崎はギクッ! として振り向き、驚きの声を出した。
「そういや、お家(うち)を新築されたようで…」
「それそれっ! そうなんですよ、登坂さん。なにせローンでしょ! 負担がねっ!」
「それで、残業ですか…」
「ええ、まあ…。なにせ、コレを持って帰らないと、女房(にょうぼ)がっ! ははは…」
 手羽崎は手の親指と人差し指で円を作って笑った。
「大変ですなぁ~」
「その負担に比べれば、コッチの方が楽ですよ、ははは…」
 二人の笑い声は、深夜の暗い課内で不気味に響き渡った。
 楽しい気分を味わうためには、負担が付きものなのである。^^

                           完

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